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ネルフス帝国の消失と再建

気がつくと自分の家ではない所にいた。

「ここは……どこだ?」

知らない洞窟の地べた。

「ここは名もなき洞窟です。」

とコンソールのログが表示された。

コンソール?


体を動かすとカチャカチャと金属音が鳴る。

俺は白銀の金属鎧を着ているようだ。何故?

だがこの鎧は見覚えがある。

とあるゲームのキャラクターのものだ。

というか直前までプレイしてたゲームの。


そのゲームは「ユニオン×ユニオンズ」という勢力を作るVRMMOオンラインゲームだ。

VRMMOなのに経営シミュレーションだったそのゲームで俺は悪の勢力「ネルフス帝国」を作り上げた。悪の勢力としては最大規模の「国」レベルまで。

そして俺の造った悪の勢力はメインの軍団を3つ擁しているがその中の改造強化人間軍団の軍団長が「織聖(しきせい) ヴァイスクラウド」でありその姿に俺はなっているようだ。

「確かに直前までヴァイスクラウドを憑依操作していたが。」

このゲームはキャラクターの憑依モードというものがある。それで俺はこのキャラを操作して正義を名乗る勢力の連中と戦闘をしていた筈だ。


俺はゲームの様にいつもの勢力運営用のコンソール画面を出そうと手をかざすと出せた。いつも見慣れたネルフス帝国の拠点操作や拠点製作画面。

しかしいつもとは異なる表示に俺は驚愕した。

「は? ネルフス帝国の基地が1つも無い!」

百を超える基地を持つネルフス帝国だが今はその数がゼロとなっていた。数十万個体もいた構成員もただ1人ヴァイスクラウドのみ。他の構成員はなんと全員死亡表示。世界マップも現在地の洞窟以外は雲がかかり初期状態になっている。武器、防具といった装備品やアイテムもカラ。あると言えば今俺が身につけている白銀の鎧と刀だけ。資源はゲーム中だとかなり詳細化されており物的資源、人的資源、エネルギーからさらに細かく分けられていたがコンソールを見ると

「希少生物も! 希少鉱物も! 武器もメカも!ほとんどのレアアイテムが無くなっている!」

俺は膝をついた。生まれてこの方感じたことの無い喪失感が俺を支配する。

「これは夢……じゃないな。俺の、俺のネルフス帝国が。」

ネルフス帝国は影も形も無くなっていた。


と、マップ上に赤い点が表示されているのを見つけた。赤い点は「敵生体」の表示だ。その方向を見ると……銀色のコンバットアーマーを着たヒーローが居た。こいつは俺が直前まで戦っていたヒーローだ。敵側のヒーローはプレイヤーの憑依操作ではなく戦闘AIだったが……。よく見るとヒーローの挙動は何かおかしい。


「悪は……殺す。」

そのヒーローは俺を見ると襲ってきた。

「何だと!」

元のヒーローとは似つかぬ野性味溢れた飛びかかり攻撃が来る! ……のを俺はスローモーションを見ているかの様に腰の刀を抜いてヒーローの攻撃をかいくぐりヒーローの首を真一文字に斬った。

「グハッ!」

そのヒーローはあっけなく倒れた。


「これは!? この力は?」

ゲームとは違いヒーローの動きがゆっくりに見えたがゲームと同様に慣れた動作で刀を抜いて敵を斬った。

その後コンソールのログが表示された。

「周囲の敵生体を排除しました。」

「名もなき洞窟を支配しました。」

でマップを見ると「名も無き洞窟」という名前のランドマークとその近辺が青くなっていた。青いのは支配地域の証だ。


そして支配地域には……基地を建造をする事が出来る。

俺はコンソールを操作して作成可能ルームを確認する。

「資金も建材も十分にあるな。」

先程は見落としたが部屋を作る分には十分な量の資金と資源があった。俺は作成可能な部屋を作成してみる。するとただの洞窟がどんどん掘られ「工事中」の看板を掲げた部屋が出来た。


通路……移動のための施設。各部屋を繋げる。

発電所……部屋を機能させるためのエネルギーを作る。

倉庫……資源、物資、様々な物を保管する。

食料部屋……食料を生産する施設。食堂風。

手術室……生物を改造するための施設。

治療室……治療ポッドがあり構成員の治療が出来る。

牢獄……捕虜を一時的に入れる施設。

拷問室……捕虜を拷問して情報を吐かせる。または屈服させる。

洗脳室……生物を洗脳する。

生活用の部屋……各個人が生活するための個室。

機械製造所……資源から各種アイテム、メカを製造する。

精密機械製造所……さらに高性能なアイテムを作る。

ロボット製造所……ロボットを製造する。

モニター室……世界地図の確認。監視装置を設置したポイントは詳細を確認する事が出来る。

技術研究室……各技術の研究が出来る。

などを作った。ネルフス帝国の建造レベルと部屋開発レベルはほぼ極めているため資源さえあれば高性能な部屋を造る事が出来る。


「これは制限がない土地か。」

元のゲームでは街の地下や山中、時にはマンションの一室など様々な場所に基地を作る事が出来たがどこでも土地制限があった。だがこの場所ではそれが無くいくらでも部屋を作れた。普通なら狭い場所にどの施設を作るか悩むのだがそんな事はせずに一本道の通路にどんどん部屋を足すという簡単な基地構成にした。ゲームではあり得なかった作り方だ。


この洞窟内を眺めると謎の力で基地の部屋が自動でどんどん作られている。ゲーム中では容量の問題で工事中の表示だけだったのに。


洞窟の外に出ると草原と森が広がっていた。人工物が少しも見当たらない大自然。

「ここは一体何処だ?」

ゲームの中に入り込んだとすれば日本となるはずなのにここは明らかに別の場所だ。

「何がどうしてこうなった?」

ところで今の俺の姿はヴァイスクラウドだ。強化人間キャラの中で万能で最強だった。

「飛翔」

脚から光り輝く粒子が飛び出し瞬時に空を飛ぶ。戦闘機並のスピードで。飛ぶと前方に自動(オート)障壁(シールド)が展開された。どうやら空圧を防いでいるようだ。

「ゲームでは音の壁なんて無かったな。」


俺はヴァイスクラウドを操り各種 (スキル)を繰り出す。

「飛燕斬!」

電磁(レール)銃突(ガンツ)!」

重力(グラビティ)波動(ブラスト)!」

すると眼下の木が連続でぶつ切りにされ遠くの山に大穴が開く。周囲の景色の一部が消失し焦土が残る。かなり破壊力のある技も実現出来る。


この強力な各技の原理は至って科学的なものだ。という細かい設定資料集があった。架空の新粒子や新元素によるものであるという事だったが実際にそれが実現している。しかもこの科学技術のレベルは元の日本に居た頃とは段違いに高い。

だからこんな事も出来る。

跳躍(ワープ)

俺は瞬時に洞窟の基地まで戻った。

「ふむ。ヴァイスクラウドの力そのままか。」

やはりゲームの中で実際に動かした通りの力だ。


このゲームの戦闘は配下AIに自動でやらせるという人が多かった。運営が操作にリアルを追求した結果、自由度と感度が高くなりほとんどの人が酔うだけで満足に操作できない代物だと言われていた。またAIによる戦闘でも十分に戦力になったので憑依操作モードは不要のシステムと言われる事が多かった。俺も最初は何回か吐いたが今ではこの通りだ。


フルフェイスの甲冑を脱いでみる。

光鏡(ミラー)障壁(シールド)

目の前に展開された鏡の障壁に映った自分を見る。銀髪の細い目の男が映っていた。これは俺じゃない。

「これはヴァイスクラウドの素体となったヒーローか。」

ヴァイスクラウドはヒーローを悪堕ちさせる事で創られたキャラクターだ。ゲーム中では甲冑など脱ぐ事は無いキャラだったが。


とにかく俺はありえない力を持ってこの辺鄙な洞窟に来てしまった。そして失われたネルフス帝国だが……

「また再建すれば良いし構成員も増やせばよい。」


俺は洞窟を出て森の探索を始めた。



#0001基地(名も無き洞窟) 本拠地

構成員1人


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