第三話 私が神だ、お前だったのか気づかなかったぞ。
「ホリ夫、なんか馬鹿でかい音で神話時代に突入したが、何これ?」
唯一右手に装着された呪いの剣ホリ夫に問いかける。
どう考えてもこいつが元凶である、誠意ある回答を求める。
「え? 挿入?」
「どこに!?」
「私に?」
「お前刺す方専門だろ!」
「ここに門が……」
「そこ柄だろ!」
「粗忽かっ!」
「そこ柄だけに粗忽か?ってか? オヤジか!」
「ナイスツッコミ!」
「うるせぇ、鋳潰すぞ!」
言葉遊びしてる場合じゃ無いんだよ、マジで回答求める。
平原で右手が聖剣の男が一人ポツンと立ってるとか冒険の匂いすらしねぇ。
「割とマジで解説求める、あの機械音声が言ったことは事実なのか?」
「事実よ、マジの大マジ、貴方10ヶ月後に死ぬわ」
「で、あの音声とお前は何か関係があるのか?」
「店長とマネージャーの関係ね」
「てんちょお!?」
「上司が話してたから私は黙ってたの」
「あの機械音声マネージャーなの?」
「そうよ、このヘリオスパドスを含む複数の惑星を管轄している偉い人よ」
「偉いのか……」
「偉いんです」
「お前は?」
「この惑星を管轄する店長です」
「うっそだろ!?」
「つまり私が神だ」
「お前だったのか、気づかなかったぞ」
「また騙されたな」
「また、では無いな」
「良いだろう全ての神よ、そして全ての生命よ、彼に力を与えよ」
「うっ……なんだ急に胸が苦しく」
この痛み、あれだ心筋梗塞になった時の痛みだ……なった事ないけど。
苦しい、それと同時に力が湧いてくる。
なんだ、頭に流れてくる呪文は言わなきゃいけないのか?
あぁ、ダメだ大声で正確に言わなければこの痛みから解放されない。
俺は手を天に掲げた、ステータスオープンの時のように。
3文字の言葉を大声で叫ぶ。
「パ◯ス!」
……最初に言っておこう、決して滅びの言葉ではない。
◯の部分を埋めて答えよう。
「パドス」
そう発言した、この現惑星ヘリオスパドスの略だ。
あの地平線には何もない、平原しかない。
呪文を唱えたら俺の目の前に見知らぬ透明な画面が現れた。
見知らぬというか、ステータス画面だ。
だけど、攻撃力などは書かれていない書かれていた項目はこうだ。
【佐竹隼也】
種族:人間
職業:勇者
初期予算:1000万ドス
時代:神話時代
宗教:無し
状態異常:無し
傾向:無し
社会制度:無し
テクノロジー:無し
幸福度:無し
目標 10ヶ月以内にトップリーグに入る事〈アンドロメダリーグ〉。 現在 シリウスリーグ [5部リーグ]
不達成 無事死亡。
チュートリアル 海を作りましょう。
ナニコレ?
ちょっと待て、色々ツッコミどころがあり過ぎるんだが。
初期予算1000万ドスってなんだよ! ドスってどこの通貨?
宗教とか社会制度とかテクノロジーとかこんなステータス初めてみたわ。
不達成が無事死亡って、死んでる時点で無事じゃないよね?
……とあれこれ言いたい所が盛り沢山なのだが、最後の部分を俺は二度見した。
いや正確には三度見した。
海を作りましょうって何?
チュートリアルでやるレベルじゃないよね?
そもそも作れんの?
「おいホリ夫、チュートリアルに海作れって書いてあんだが」
「そうね」
「いや、どうゆう事か説明してくれ」
「……海を作ります」
「だから説明下手か!」
「はぁ、やれやれ仕方ないわね」
「表情が分からないけど今すげぇムカつく顔してるのは直感で分かった」
「エスパー?」
「伊東?」
「魔美じゃなく?」
「ホリ夫の歳40行ってんなぁ!」
「乙女に歳を聞くのはマナー違反よ」
「聞いてねぇから!」
ダメだこいつと話してると何故かツッコミをしてしまう。
てか、他の惑星に居るホリ夫がなんで地球のアニメ知ってるんだよ。
埒があかねぇ、適当にいじってみるか。
「あら、聞かなくて良いの?」
「聞いても教えてくれないだろ」
「教えるわよ、人を何だと思ってるの」
「オカマ」
「お姉さんね、間違えないで」
「へー凄いですね」
「あ、こいつ聞いてないわ」
「……(ステータス画面をタッチしてる)」
「……剣を突き刺してヘリオスと叫びなさい」
「ヘリオース!」
よっしゃ無視してれば教えてくれると思ったんだよね、今度からこの手で行こう。
剣を突き刺した瞬間にステータス画面が切り替わる、地図のようなものが浮かびあがった。
画面は一面緑だ、緑……分かったわ。
「これヘリオスパドスの地図か」
「よく分かったわね」
「で、どうすんだ?」
「画面の上にアイコンがあるでしょ?」
「あ、本当だ温泉マークがある」
「それが海アイコン、押してみなさい」
「ほい」
海アイコンを押すと人差し指が淡い青色に光った。
なんか神秘的で綺麗だな。
「こっからどうすんの?」
「地図にその人差し指をなぞってみなさい」
「こうか?」
指示通りに地図上を人差し指でなぞる、すると地図の緑から自分がなぞった場所が青く色が変わった。
もしかしなくてもこれって……。
「海作ってる?」
「イエス」
「やってる事神レベルなんですけど」
「私の力を一時的に付与しているからね」
「俺勇者だよね?」
「勇者よ?」
「これ神じゃね?」
「勇者よ」
「勇者の業務内容広くない?」
「通常業務の範疇よ」
「お前何すんの?」
「暇を持て余した神々の」
「遊び」
「という事です」
「働けよ!」
ニートの神がここにいるよ、店長仕事して!
異世界にいるはずなのに異世界感が全くないという恐ろしい体験を現在進行形で体感している俺。
1から……いや0から異世界生活始まるんですけど、比喩表現ではなくリアルで。
それにさっき気づいたんだが。
「なぁ1000万ドスから987万ドスに変わってるんだが」
「あら気づいた? 画面の左上は貴方の予算ね」
「はい? 海作るの金かかるの?」
「かかるわよ、何当たり前の事聞いてるの大丈夫?」
「お金めっさ重要じゃん!」
「そうね、1000万ドスあれば大抵の天地創造は出来るわ」
「天地創造言っちゃったよ」
「さぁちゃっちゃと海作って」
「えぇ……」
仕方ないので海を創造していく、海を創造とかパワーワード過ぎるんだが。
意図したわけではないが地球と似たような大陸になってしまったのは創造力が無いせいだろう。
【海の誕生、ミッション達成】
・500万ドス
・山の創造可能
・川の創造可能
【次のミッション、山と川を作ろう】
「おい、500万ドスをポンっとくれたぞ」
「……」
「俺の価値低くない?」
「そんな事ないわ、激安だったのは認めるけど」
「激安だったの!?」
「ワゴン品だったわ」
「勝手に値引きされてた!」
「そんなことより、さっさと山と川作りましょう!」
「俺の価値をそんなこと呼ばわり!?」
拝啓、お父さんお母さん。
俺異世界で。
天地創造しています。