第二話 隼也立つ。
晴れて異世界に到着した。
異世界に到達して今現在5分ほど経過しています。
俺はね、大抵の事なら我慢できる自信はある。
まず俺は聖剣を抜いてない。
勝手に異世界転移される、パンピーだったらまずここでブチ切れてる。
だがそこは俺、大人な俺はグッと感情を抑えて我慢しました。
何故か? それは勇者になったから。
勇者とはハーレムが付属品でついてくる職業のこと。
それならばあのオカマの強引な転移も許せるってものだ。
日本では何度か彼女も出来たりはした、自分で言うのも変だが一般的にリア充だった。
だから女に飢えている訳では無い。飢えてはいないがいくらいても困りはしない、リア充だけに補充が効く。
ここで寒いお兄さんギャグを放つあたりで俺のリア充力は5だと気づくだろう。
なんだたったの5かゴミめ。
だから異世界での出会いを期待した部分は否定しない。
実際ちょっと期待した。
期待した結果。
地平線まで見渡せる素晴らしい平原を見て俺は自分の視力を疑った。
もう一度言おう。
見事な平原だ。
他は何一つない、家も海も人さえも。
……。
「日本に戻りてぇえええ!!!」
異世界の中心で哀を叫ぶ。
瞳をとじて……また開く。
「変わらねぇえええ!!」
「ごめんね、なんか予定より平原になっちゃったの……海見たかったね」
「うるせぇオカマ!」
そして俺の右手には未だにHoly swordがくっ付いている、呪いの剣だろどう考えても。
「異世界来てもお前は付いて来るんかよ!」
「寂しい事いわないであ・な・た♡」
「う”ぉえ!」
どこぞの世界では左手が鬼の手の先生とか、一匹狼の宇宙海賊で左手がサ◯コガンの男とかいたりする。
俺は右手が聖剣になった。
なんの罰ゲームですか?
アレですか? プラグインとかして電脳世界に入っちゃってたりしますか?
ソードワイドロング揃えたらドリームになったりするんですか?
「はぁ……どうしたものか」
「どうしたのぉ? 何か考え事?」
「お前を消す方法を考えてた」
「あらやだ情熱的、憎しみはやがて愛に」
「ならねぇよ!」
剣を消す方法も大事だが、この見事な平原地帯はなんなの?
世界救うどころか、基礎がもう無いんだけど。
寧ろ今この状況に直面している俺が一番救ってもらいたいわ!
「Holy sword……言いづれぇホリ夫でいいや、おいホリ夫! なんだこの世界説明しろ」
「え、私が夫で貴方が妻? あ、そっち系?」
「どっち系? じゃあホリ剣で」
「それは色々と不味いわ」
「だよね、俺も思った」
芸能界を敵に回すことになるところだった、あ、今のところカットで。
「説明が欲しいって言うと思っていたわ」
「なんだよ、ちゃんと用意してたのか」
「ええ、ステータスオープンって言ってみて」
「そんな事か簡単じゃないか」
俺は右手を天へと掲げ高らかに叫んだ。
「ステータスオープン!」
1秒後、2秒後、まだ変化はない。
10秒、15秒まだ変化がない。
あれ言葉間違えたかな?
「ステータスオープン!」
ん? 反応が無いぞ?
「おいホリ夫、反応が無いんだが」
「プ、ププ……格好つけて叫んじゃって可愛い」
「は? おいどうゆう事だ?」
「う・そ☆」
「……憤怒!」
俺はホリ夫を右手ごと地面に叩きつけた。
偶然又はこうなる様に誘導したのか、叩きつけたホリ夫は地面に刺さった。
剣を突き刺す行為が始まりの合図になった。
——起動プログラム始動、ようこそ隼也様。 惑星「ヘリオスパドス」へ——
天上から機械音声が聞こえて来た。
「何これ? ホリ夫?」
「……」
「おーい」
「……」
「ダメだこりゃ」
声を掛けてみても反応が無い、この機械音声を聞けって事か。
——移籍契約の完了致しました。 隼也様には移籍金額から初期予算を配分致します——
「移籍?」
——現惑星「ヘリオスパドス」は住みたい惑星ランキング最下位を更新中の弱小惑星です——
はい? 住みたい惑星ランキング? 何それ?
——契約満期となった隼也様をトップ惑星である「テラ」より移籍契約を結ばせていただきました——
なに勝手に移籍させられてんの?
——貴方は10ヶ月後本社ビルから飛び降り自殺を遂行致します、よって惑星「テラ」より価値なしと判断されました。 私どもはフリーとなった貴方を買い取った次第でございます——
俺死ぬのか、ってえぇ!! 嘘だろ!?
——本当です、辞世の句は「社会人舐めてた」です。ですがこの契約は言わばチャンスでもあります——
辞世の句酷すぎるだろ、10ヶ月後の俺何があったんだよ。
それに今チャンスって言ったか?
——そうです、貴方にはチャンスが与えられました。 本来の10ヶ月で死ぬまでの間にこの「ヘリオスパドス」をトップリーグに昇格することが出来れば。貴方にまた日本に帰る切符を手にする事が出来るでしょう——
トップリーグ?
——アンドロメダリーグです——
いやそこ聞いてねぇよ、俺はどうすりゃ良いんだ?
——このヘリオスパドスを住みやすい惑星にして下さい——
は?
——では健闘を祈ります、それでは——
「あっちょっと待て!」
そう言ったのも虚しく、それ以降機械音声はしなくなった。
代わりに、大きな音が平原内を駆け巡った。
【神話時代に突入しました】
何もかもが訳が分からない中で突然聞こえたコール。
「どうすりゃ良いんだこれ?」
俺は何も無い平原の上で立ち尽くしていた。