第一話 聖剣を抜く。
更新は不定期になってしまいますが完結はできると思います。
主人公は勇者なのでチートです、ただ俺TUEEではありません。
というよりチートすらも超越しています。
「ふわぁ〜」
やばい眠いぞ、流石に三徹は頭にガンガン響く。
この猛暑の照り付ける8月、小学校のお子さんは夏休み、中学生も夏休み、高校生も夏休み、大学生も勿論夏休み!
良いかお前ら、社会人になると夏休みなんて無いのだ。
世間が熱中症など騒いでいる環境下で俺は外回り営業という地獄のハードコアスケジュールを敢行している。
時間は真昼の12時、コンビニ弁当を買って公園のベンチに座り冷たい弁当を貪る。
……なんか泣きたくなってきた。
そんな悲劇の男『佐竹隼也』は俺だ。
世のお父さんはこんな辛い仕事に耐えてるんだぞガキども、まぁ俺もまだ24歳だ。
大学生から新卒で入社した一年目のペーペーで御座います、あぁー大学生に戻りてー!
過ぎたことを言っても仕方がない、取り敢えずそれはいい。
どんなに辛くても、我が社は年に何人かが鬱で退職しようが、飛び降りビルとして有名だとか。
上の連中は天下り万歳だとか、それくらいなら耐えてやるよ。
問題はそこじゃなくてだな。
「ついに俺にも幻覚が見え始めたか……」
刺さってんだよ、剣が。
目の前に、半分くらいガッツリと。
あれ? ここ公園だよね?
危なくない?
さっきまで刺さってなかった気がするんだけど、見間違えたのかな。
俺は必死に目をこする、三徹で充血確実のその目で。
いくらこすっても、何度見してもある。
「どう見ても剣だよな」
俺は何気なくその剣に手をかけて見た、特に意味はない。
男なら聖剣を抜くのはある種の本能だ。
「あらぁ……抜くの?」
「は?」
なんか凄いケツの穴がキュッとしまるような声が聞こえてきた。
分かりやすく言うとオカマ声だ。
怖いなこの剣、ついに幻聴まで聞こえてきたよ。
「遂に俺にもタルパが出来たか……」
「勝手に幻覚だと思わないで頂戴!」
「あぁ〜もう終わりだ! 手も剣から離れねぇし!」
離したいと思っても剣が手から離れない、これは呪いの剣なのかもしれない。
やらかした、何がやらかしたかと言うとこの状況を他人が見たら頭おかしい人だと思われるところだ。
「抜くの? 抜かないの?」
「うっせぇ! 抜けないの!」
「あら、不感症?」
「ちげぇよ!」
「ホラ見て? あそこの親子貴方を見てるわよ?」
「え、どこ?」
周りを見ると確かに若い母親と幼稚園くらいの娘さんがいた。
「ダメよ、見ちゃいけません」。
小声で母親が言って離れようとしている。
大人になったら言われたくない言葉トップ10に入る語録を言われてしまった。
24歳にして佐竹隼也、変人扱いされる。
あれ、本社ビルって何階だったっけ?
「いい男が落ち込まないの!」
「誰のせいだぁ!?」
「私が貴方を狂わせてしまったのね……罪な女ね」
「ポジティブ解釈ぅ!」
どう考えてもお前男だろ! そのバリトンボイスで両声類とか言っちゃう訳?
ダメだダメだ冷静になれ俺、こいつのペースに乗せられちゃダメだ!
取り敢えずだ、この剣から離れよう。
「ふぅ、呪いの剣よ離してくれないか?」
「話し? 良いわよ何から話す?」
「ん? 微妙にニュアンスが違うようだな、この剣から俺の手を離してくれないか?」
「それは出来ないわ、ごめんなさいね」
「何で!?」
「それを今から話すわ、私の……女の過去の話よ」
「……」
「わたし聖剣なの」
「……」
「そんな『何いってんだこいつ?』みたいな顔しないの、貴方の目の前にあるこの剣は聖剣。 英語で言うとHoly swordよ」
「英語のとこだけやたら発音いいな」
「ありがとう一応帰国子女なの、それで色々なんやかんやあって勇者募集中なのよ」
「説明下手か!」
「貴方はこのHoly swordに選ばれし勇者、このHoly swordを引き抜いてHoly swordと共に異世界を救って欲しいの!」
「なんで聖剣だけ英語で言った?」
「この聖剣の名前がHoly swordだから」
「固有名かーい! 英語の下りいる!?」
結局手から離れない理由言ってねぇ!
俺が勇者? なんの冗談だよ。
「さぁ! 抜きなさい勇者! 抜くの! 抜きまくるのよ!」
「ぜってぇやだ! 断固拒否!」
「あ、UFO!」
「え、どこどこ?」
「えいやぁ”あ”(野太い声)」
「あっ……」
今になって思う、俺は断じて抜いていない。
剣が勝手に抜けたのだ。
俺はハメられたのだ、男なのに。
そうして異世界に行った後で、開口一番にこう叫ぶ。
「日本に戻りてぇえ!!」