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瓶詰の地獄  作者: 灰色
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……何て、言えばいい? 僕が悪かった? 酷い事を言ってごめん? 許してくれ? ……それは、本当に僕の心からの謝罪なんだろうか。分からない。だってずっと思ってもいない言葉ばかりを吐いて来たから。飾り立てた本当に聞こえる嘘の台詞を、妹は見抜いてしまう。此れから、僕が言おうとしている言葉も、嘘なんじゃないのか。ただ、自分が楽になりたいだけで、思ってもいない事を言おうとしていないか? 分からない。もう僕は自分が嘘を吐こうとしているのか、いないかすら、分からないんだ。今までは、それで良かったのに。相手を都合良く動かせれば、それで。でも。


彼女に対してはそんな事したくないんだ。


あぁ、でも。この気持ちも。嘘じゃないとは、言い切れない。


そう考えたら、僕は声を掛ける事すら恐ろしくなってしまった。だから、扉を叩く事すらしないで、その場を離れた。何でだ。何でこうなった。あぁ、煩いな。分かっている癖に嘆くなよ。喚くなよ。どうしてこうなったか、何て、今更言うなよ。


 お前が、お前だからだよ。


 そこまで考えて、僕は笑い出したくなった。そうだよ。知っていたとも。だから僕は好かれる為に、演技をして来たんじゃないか! 皆を騙して良い顔をして。誰の事も信用しないまま……誰からも、好かれる為に。あぁ、でも。そんな生き方しか僕は知らないから。知ろうとも、しなかったから。もう本当の事が、喋れない。


 息が苦しい。生きている事が、苦しい。


 此れは呪いだ。


 あぁ、あいつさえ居なければ! 僕は愉快な嘘吐きでいられた! 真実何て下らないと、笑っていられた! そして其のまま、何にも傷付かない振りをしたまま、死ねただろうに! ぁあ、あいつの所為なんだ。全部、全部、全部。今までだって誰にも嫌われたくは無かったさ。好かれたいと願っていたさ。それは今だって変わらない。そう簡単に変わるものかよ。でも、彼女が本当に居なくなってしまったら。本当に影も形も失くしてしまったら。僕の中身は空っぽになってしまうのじゃないか。そこに思い至って、背筋が冷えた。もう思考する事自体が恐ろしくなって、僕は寝床に入った。……今までだって、似た様な喧嘩は良く有ったじゃないか。明日に為れば、きっと元通りだ。自分でも信じていない言葉を繰り返して、僕は目を逸らし続けた。


 ……そして、次の日妹は居なくなっていたという訳だ。


 当然の結果だった。僕は彼女よりも自分を優先したのだから。


 女に逃げられた事は少なくなかった。……その度に、僕は安堵していた。切る手間が省けて楽だったから。次なら幾らでも見付ける事が、出来るから。僕にとって異性はその程度の存在で。誰だって同じ使い捨てで。自分さえ守れれば良くて。だから。だから、どうすれば自分以外を大事に出来るのかが、分からない。こんな時だって僕が考えるのは自分の感情ばかりで。もう諦めればいいのに。その方が、きっと。


 妹だって幸せに為れるって、分かってるのに。


 僕に少しでも兄としての情が有ったなら、此処で終わりに出来るんだろう。勘違いだったのだと言い聞かせて。そう、実際にそうだった。初めの頃は。……あぁ、どうだろう。今だって、ただの勘違いなのかも知れない。嘘かも、知れない。……嫌だな。嫌だけど、もうどうしようもない。此の感情がもし嘘だとするなら、その嘘を永遠に自分に向けて吐き続けてやればいい。死ぬまで、ずっと。どうせ嘘か本当か何て、目と口が濁った僕には、どうせ分かりはしないのだから。

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