リトルキラーハント #1生存者
[ご注意]
残酷描写・過激演出
納屋の中は夏の熱気も手伝ってか、カビ臭い匂いが充満していた。
そこに血の鉄臭さも混じって、酷い匂いだ。早く父親の死体を隠さねばという焦りだけが少女の心を支配していた。早く行動しないといけない。だが体が制御できない。恐怖が身も心も硬直させていた。 ひとまず藁の中にその父の巨体をオムレツのように覆い隠してみる。遠くや近くからその藁の山を見て、不自然ではないだろうかと何度も確認した。
死体は隠れたが、少女には隠せない動揺があふれ出る。納屋を出るとき、もう一度藁の山を振り返って、今日から人生が一変する。もう戻れないのだと少女は誓った。
†
「俺は仕事から帰る途中だった。路肩でピンク色のリュックを背負った小さい女の子がちょうど地面に倒れ込むのを見て、助けたくて。車をすぐに止めた・・・」
清潔感漂う病室で、黒人の男が天井の虚空を一点を見つめたまま語りだす。
白い布団とベッドにサンドイッチされた男は唇もかさついていて、顔色も悪かった。
体調がよくないなら、また、日を改めて・・・という訳にはいかない。なにせこの男は今全米を震わせている殺人事件の唯一生存者だというのだ。「コニーさん。犯人の顔はご覧になりましたか?」今はもっと情報がほしい。ブラウン色の御立派な帽子は飾りではないのだ。俺は刑事らしく振舞った。「少しでもいいんです。顔の特徴などでも・・・」やさしさに溢れた声色で引き出そうとする。しかしコニーは素早く首だけをこちらに向け、一拍遅れて
「みてない」
とだけ言うと、コニーは無表情のまま静止した。
だめか・・・。刑事になりきるは良い作戦だと思ったんだが、こういう病んだやつの扱いには、専門のカウンセリングが必要らしい。俺は開きっぱなしのカーテンを周りに勘ぐられないよう行儀よく閉めてからコニーの口に.44マグナムを突っ込んだ。
コニーはよだれを噴き出しながら驚き、喘ぐ。「いいか、静かに。よく聞け」カツカツとコニーの歯に鉄が擦り付けられる。泣きそうな顔でコニーは頷いた。「俺は刑事じゃねぇ。この事件で家族を・・・愛していた家族を殺されたんだ。馬鹿野郎が。お前がここに搬送されたとき、確かに犯人の顔を見たという言葉を繰り返していたらしいな。なのに、なぜ、それを隠そうとしやがんだ?その答えを俺はしってる。お前がテレビショーに出て、そのあと自分の名前で本を出したいからだ。題名は『生存者』か?お前がドリームを掴んでいる間、死者は増えていく。でもお前は本の為に秘密を隠すんだよなぁ?この馬鹿野郎のせいで何人も何人も死ぬんだ」
言葉が止まらなかった。俺はコニーの思惑など何も知らなかったが、秘密を隠すこいつは俺にとっての悪人なのだ。そう決めつけた。大切なものを奪った犯人への増悪が止まらない。
コニーはというと泣きながらパニクっていたが、俺は銃のハンマーをわざとらしく起こしてやった。「5・・・4・・・3・・」コニーは顔をしわくちゃに涙を流し、慌ててマグナムでいっぱいの口の中で、必死にくぐもった声を出した。俺が銃身を引き抜くと嗚咽をかいた後に
「・・・・顔が無かったんだ!後姿はどこにでもいるような五・六歳の子供だが顔がそっくりそのまま削り取られて、目ん玉はむき出しで鼻もないし歯もむき出し・・・!!!」今その場で、その犯人の姿を見ているようにコニーは訴える。
トラウマという暗闇の中から一瞬抜け出したと思うと、コニーは再び暗闇の中へ。目線が空中を見つめたまましばらく動かなくなると、何か見つけた反応の後、突然叫び出した。
「きぃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
カーテンの向こうから医者や看護婦が飛び入り、暴れる身体を抑えつけた。掛け布団でよくわからなかったが、コニーの二の腕の半分辺りからは包帯が巻かれ、腕は無かった。
「あとは頼みます。私は捜査がありますので」そう言い残し、病室を後にした。
#2へ続く
この物語はフィクションです。
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