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転生したらアイテムボックスだった件

作者: makuro


俺の名前はアイテムボックスだ。


いや、俺そのものがアイテムボックスなのか。


まぁ、その説明は後でいい。


アイテムボックスとは、ゲームや異世界モノの小説などで登場する大変便利な機能である。

冒険するのに必要な道具、食料、その他諸々を収納する事が可能な冒険者にとって快適な旅をサポートするとてもチートな存在なのだ!

説明しなくても、みんなも良く知ってると思う。


さて、俺もびっくりなのだが、なぜか冒険者とかせめてただの町人とかモンスターとかではなく、まさかアイテムボックスに転生?するとは思わなかった。


*******************


俺の前世は、山田太郎という日本の学生で、普通の地元の公立高に通う高2の学生だった。

もうすぐ夏休み前の中間テストを控えた時期のある日、事故にあってあっけなくあぼんした。


死後の今だからなんとでも言える、俺は イケメン だった ってな !

ははっ……嘘だよ。

でも警察だって殉職すると何階級か上げてくれるらしいしな。

だから、俺の事はせめてフツメンくらいだったって事にしといてくれ。

……いいだろ、それくらい。


*******************


さて、前世にはそんなに未練はない。

大人たちがよく”学生時代が一番楽だった”なんていうのを聞くが、

俺にとっては既にハードモードだったからだ。

どうせ、そんな俺が社会に出たら、より悲惨なな現実が待ってるに違いない!


前世には、夢も希望もない。

ゆえに未練はない。


それよりも、注目すべきことがあると思わないか?


そう


今のこの現状である。


事故の衝撃から意識が飛びしばらくして夢から覚めたような感覚で目を覚ました。


すると、一面が真っ白の空間にいたのである。



とにかく真っ白。



どの位の白さかというと、俺の姿すらも空間に同化して真っ白ってくらいの白さだ。

頑張って両手を見てもぼやっと輪郭が分かるかどうかってくらいの驚きの白さ。

これが逆に黒かったら、俺は 「松⚫️しげる(Lv99)」 になっていただろう。


ま、冗談はさておき、


この時の俺は、瞬時に理解した。



転 生 キ タ コ レ (゜∀゜) !!!



ってね。


この手の小説暇さえあれば読み漁ってて、憧れてて、ずっと夢見てたからさ。


女神にチート貰って俺TUEEEやるんだ。


剣と魔法の世界で、魔力総量∞、HP総量∞、チートモリモリのイケメンになってやるんだ!!


ってね。



だから俺、震えるくらい嬉しかったよ。


早く!女神様(ドジっ子ロリババア)こいっ!


「死ぬ予定なかったのにミスっちゃったテヘペロ///」


って言いに来いよ!!!


ってね。


待ってたんだ、ずっと……



ここには時計ないから時間は分からないけど、


体感で5分待っても、


30分待っても、


そのあともずっとずっと待ってたけど、


正直今でもまだ待ってるんだけど……


神様、現れなかったんだ。



俺が、自身がアイテムボックスだって自覚したのは、謎の草が突然ポンッと表れてからだった。

それから、食料に武器道具類、衣類、獣の毛皮……まるでファンタジーなアイテム類が俺のいる白い空間を埋め尽くさん勢いで彩っていく。

俺だけは相変わらず無色な透明人間だ。

俺だけは……。


一生ここから出られないのかもしれないという考えが脳裏をよぎったが何故か絶望感もないし、悲観的にもならない。

不思議と居心地が良いんだ。


邪魔だし暇だから仕分け作業を始めた。

種類毎、色毎に分けていく。

見映え良く整頓出切るとなかなかに達成感があるな。


薬草や毛皮は増えては纏めて消える。

……俺の持ち主の外の奴、ギルドミッションやってやがる。

外の世界はきっとファンタジックな世界に違いない。


入ってくるアイテムを見れば外の世界は楽しそうだ。

この空間は時が止まっているのかアイテムの全てがプラスチックの様な触り心地で温かみの欠片もない。

自由に動けるのは俺だけだ。


ある時女物の小さな下着が入ってきた。

これまで入って来たアイテム内容から、俺の主は男だと判断いしている。

そこへ来てのこの下着。

良く見れば洗濯前の物だ。使用済みってやつだ。


……俺はこの空間に来て、初めて堪えきれない怒りを覚えた。


許せん。


俺は下着を握りしめた。

暫くして下着が引っ張られる感覚があった。

……外の奴が取り出そうとしているのか?

……させん。


俺は全力で引かれる力に抗った。


……勝った。


俺は外の奴からこの下着を守り抜いた!



『パンパカパーン! レベルが上がりました。管理権限がLv2になりました。システム管理が使用可能です』



突然鳴り響いた音声と共に、目の前にノートパソコンが表れた。


見れば、デスクトップにアイコンが一つ。

……マウスはないのか。使いづらいな。

アイコンをクリックすると表計算ソフトが開き、この空間のアイテムと数が表示されている。

ツールバーには、棚作成や収納という機能が付いているらしい。


ものは試しだ。やってみるか。

棚作成をクリックすると、空間の使用可能位置が表示され、ドラッグして設置場所を指示出来る様だ。

一番端にカーソルを合わせてクリック。

幅1m、高さ2m程の棚が表れた。

表からアイテムを選択して”収納”をクリックすると収納場所を指示する画面が表れた。棚を選択するとその辺に転がっているアイテムが棚に移動した。


ほうほう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この空間に来てからどの位経ったが分からない。


俺の持ち主が死ねば、俺も死ぬのかと思っていたがどうやらそんなことはないらしい。

入ってくる内容物から持ち主が変わった事を感じる事数十人。


アイテムボックスとしての俺のレベルは上がり、今では空間拡張、アイテム合成、アイテム複製なるスキルを手にしている。

持ち主が変われば俺のスキルが0に戻されると思ったがそれは無い。前持ち主のアイテムもそのまま。

ただ新しい持ち主には取り出す事は出来ない。


自由に出来るのは俺だけだ。


稀に気紛れで前持ち主のレアっぽいアイテムを入れてやったり複製してやったりとサービスをしたりしなかったり、過去の持ち主の遺品を見ながらそいつの人生をぼんやり考えたり……と気ままな生活を送っている。


このままずっとここにいたい。

まるでこの空間の神になった気分だ。


持ち主が何千人目か、数えていないので分からないがある時俺自身が引っ張られるのを感じた。


その時の持ち主は女で服や持ち物からセクシー美女を連想していた俺は過剰なサービスを繰り返していたのだ。

空間は某密林の様な巨大倉庫と化し、過去の持ち主のアイテムを合成しまくってやたらレアアイテムを作成しては持ち主のリストに入れてやっていた。


だが、ここの管理者の俺が引きづられるなんて考えもしなかった。

やめろ! やめてくれ! 管理者の俺が居なくなればこの空間がどうなるか分からないんだぞ!

それに俺は!? 俺は一体どうなってしまうんだーーー


……気がつけば草むらの上に寝転んでいた。

俺を見下ろす美女と、何人かの見知らぬ顔ぶれ。


『おかしいと思っていたら、中にこんな子供が入っていたのね』


『お前は誰だ』


『いつからこの中に入っていた?』


突然始まる見知らぬ人間からの尋問に俺は何も答えられない。

何故なら分からない程には人に会うのも話すのもした事がない。


尋問してきた奴は美女の持つ小さな袋を指指した。

……俺のいた空間はあの袋の中だったのか……?


『まあ、子供だし驚いているみたいよ。少し様子を見ましょう』


……子供?

俺は目線を下げて自分の体を見る。

無色透明だったはずの身体に色がある。

裸だ。……しかも女児だ。


俺はアイテム空間から引きづり出されると、なんと幼女になっていた。



信じられない……


信じられないが、俺があの空間に戻れる事は二度となかった。

しかし、アイテム空間の管理能力はそのまま保持していた。


美女とその他のこのグループは、魔王討伐の勇者御一行だった。


こうして俺は、第三の人生を歩む事になる。


美幼女の荷物管理番として。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! 連載で読んでみたいです。
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