冒険、探検、男女ときたらアレでしょう?何故かぼっちなのですが
久々すぎて、話覚えてなかったよ(*´∇`*)
神に愛されし世界[フロンティア]
少しだけ変わっているこの世界には、広大な海の他に五つの大陸が存在する。
世界のヘソと呼ばれる極寒の地、クォーツ大陸。
自然豊な緑に覆われた密林の地、ジェイド大陸。
寂れた赤土の大地が広がる不毛の地、ルチル大陸。
風が生まれる黄金の丘を有する草原の地、アンバー大陸。
雲を突ら抜く高山犇めき合う山岳の地、ゾイサイト大陸。
どの大陸でも人の生活圏は存在しているが、アンバー大陸を覗いた4大陸は今だ未開の地が多い。
ジェイド大陸に至っては、全体の1割すら理解出来ていないのだから、当分世界の謎が解き明かされる事は無いだろう。
だが、あえてそんな未開の地に挑む者達がいた。
彼等は探検家と呼ばれる、未開の地を開拓する無謀でロマンな奴等であった。
時に山岳を駆け降り、時に波を乗り越え、時に密林を切り裂いて。
探検家と呼ばれる彼等は幾多の犠牲を積み上げながら、人々の生活圏を広げていった。探検家達にとってそれは意図して行われた結果では無く、あくまで探検の為に必要な要素を得る為にそうしただけであったのだが、新たな生活圏を得たい人々にとっては、彼等の行動により得られるそれは大変喜ばれる物であった。
そう言った理由等もあり探検家は多くの人に認められた職業の一つになっていったのだ。
そんな未開の地ジェイド大陸には、年々探検家の数が増えている傾向があった。そこにはある噂が関係している。
誰が言い出したのか、ジェイド大陸の中央部には数千年前に滅んだ古代人が造り出した黄金都市があり、その地を訪れる事が出来れば不老不死の力を手にする事が出来て、異性にモテモテになり、ハゲた頭はフサフサに、借金も無かった事になり、美形になり、痩せたり、筋肉がついたり、宝くじに当たったり、ついでに世界の王になる事が出来ると言うのだ。
黄金都市までは兎も角、後のそれは明らかにイタズラであった。大半のイタズラがジェイド大陸にある、某旅行企画会社に勤める社員Aさんである事は社外秘の機密事項である。
そんなアホみたいな噂を聞き付けた、欲望まみれの探検家気取りが犇めき合うジェイド大陸。
その中で今最もホットでクールな町『ゴザルシティ』に、今回の物語の主人公がいた。
そう。
言わずとしれた暴力装置、あるく厄災、世界最強こと我等のアルカディアである。
◇━◇
「うぅ。おかしい。」
アルカディアは困っていた。
何故か?
人が予想以上に居たからである。
アルカディアはとある依頼を受けに、ここにやってきた。
依頼を出したのはアンバー大陸における最大国土を有する『サッパー王国』。その王家、カルロデイ第一王子の直々の依頼であった。
依頼内容は簡単で、『黄金都市とその噂の有無を確認せよ』と言う物だ。
カルロデイ第一王子がカッパハゲを悩んでいる事はサッパー国民の周知の事実であった為、カルロデイが何を気にしてこんな依頼を出したのかは、もう言うまでも無い事だった。
今回、アルカディアが何よりも確認しなければいけない事は一も二も無くフサフサになるかどうかだったが、まぁ、これはアルカディアは知らない。考えれば分かりそうな物だが、こと他人に興味の無いアルカディアはカルロデイの事なんて欠片も知らなかったのだから、仕方ない事でもあった。
まぁ、兎にも角にもアルカディアはここにいた。
今や空前絶後の探検ブームが嵐の如く吹き荒れる、お祭り騒ぎ真っ只中の浮かれまくるこの地『ゴザルシティ』に。
アルカディアは困っていた。
ことこれに限るくらい困っていた。
アルカディアの記憶では1年前はこうでは無かった。
ゴザルシティはそれはそれは閑散とした町で、昼間でも表を出歩く者は数える程度だったのだ。
世界最強な人見知りアルカディアでも、昼間から出歩ける良い町だった。(アルカディアにとって)
「と、兎に角、あ、案内屋さん、探さないと。」
案内屋さん。
アルカディアがそう呼んだ存在は、俗に言う探検家の事である。
探検家と言えどいつも自身の趣味の為に動いている訳ではない。
探検家のその多くが自身の探検により得た知識を使い、副業として未開の地の案内役をしているのだ。
では果たして、世界最強であるアルカディアに案内など必要なのか?そう思った事であろう。結論から言えば必要ではあるのだ。
本来未開の地では注意しなければいけない事が目白押しだ。
そこに住まう猛獣や魔物に用心し、食べ物に注意し、環境に警戒する必要がある。
だが、アルカディアにはそう言った事は些細な問題でしかない。
猛獣も魔物も撫で付けるだけでくびり殺してしまい、一匹で一万人を殺せる毒を持った『マドクフグ』をオヤツ代わりに食し、やりはしないが灼熱の火山地帯だろうと極寒の豪雪地帯だろうと裸で走り回れる能力があるアルカディアにとって、それらは児戯ですら無いのだ。
それならば、やはりアルカディアには案内役は必要では無いのでは無いか?そう思った事だろう。しつこいようだが、もう一度言っておこう。
必要なのである。
何故なら、アルカディアには必要な知識が決定的に欠けているのだから。
端的に言って、馬鹿であるアルカディアは過去百以上の遺跡や歴史的価値のある物を発見している。
だが、世間に発表されている物は十二しか無い。
どうしてか?
それはアルカディアが見つけても報告していないから、ただそれだけである。
時に通り過ぎ、時に壊し、時に住んでみたりもした。
けれど、それがどんな物なのか、どんな価値があるのか、全く興味の持てないアルカディアはろくに報告しない。
普通、町の端っこに廃墟があったとして、それを誰かに教えるだろうか。悪戯小僧なら悪友でも誘って廃墟突入の作戦でも考えるだろうが、そう言った例を除けば恐らく教えたりしないだろう。
アルカディアにとって、世界とは町のような感覚で、遺跡とは廃墟にしか過ぎない物だった。
世界最強にとって、その程度の認識なのだ。
故に、遺跡を探さなくてはならない以上、アルカディアには案内役が必要だった。
見つけるべき物を判断してくれる、知識を持つ探検家が。
アルカディアは人で溢れかえるゴザルシティを殺気と闘気で掻き分けて、以前世話になった探検家の家へと向かった。
◇━◇
探検家。
男が初めてそう呼ばれたのは、思い出すのも懐かしき日々の中。
祖父と共に遺跡を発見したその時だった。
男の名前はロッドバーグマンJr.Jr.。
案内役専門の探検家である。
ロッドバーグマンJr.Jr.、人呼んでジュジュは、今やこの町でさして珍しくもない案内役専門の探検家をしていた。
ろくな経験も無い素人探検家をカモに、案内料に高値を吹っ掛けて、程々で差し当たりも無い案内をやって、日々の糧を適当に稼いでいた。
探検家としてすっかり腐ってしまったジュジュであったが、元々はちゃんとした探検家だった。
何せ親子三代に渡って探検家稼業。
実父も祖父も人生の大半を未開の地で過ごした、根っからの探検家一家であったのだ。
そんな探検家一家に産まれたジュジュは、まさに探検家の申し子、探検家に成るために産まれたサラブレッドであった。
実父や祖父の教えを次々と覚え、歳を10数える頃には二人と共に様々な秘境や遺跡を発見していった。
だが、ジュジュの探検家活動は長くは続かなかった。
探検家ロッドバーグマン。
それが、ジュジュが尊敬する偉大な探検家の師匠であり、実の祖父の名前だった。
その祖父が死んだ。
なんて事は無い。
崖崩れに会い、あっさりと岩に頭をかち割られて死んだ。
何処にでもある、探検家として普通の死に方。
だが、ジュジュにとってそれは、受け止め難い出来事だった。
それからのジュジュはすっかり引きこもった。
逃げるように部屋に閉じ籠り、必要以上に外に出なかった。
その内、探検家である父と母も祖父と同じ様にあっさりと死んだ。
どうやら魔物に襲われて喰われたようだ。
これも何処にでもある、探検家として普通の死に方。
だが、今度は逃げる訳にはいかなかった。
もはや、ジュジュしか受け止める者がいなくなってしまったのだから。
遺体は魔物の腹の中なので、葬儀には二人の姿絵を飾るだけにして形だけの葬儀を済ませた。
それから、ジュジュは生きる為にどうするか考え、自分の唯一の取り柄である探検家として力を使う事にした。
それが、案内屋であった。
ドン。
突然、爆発でもしたかのような衝撃が店の玄関を吹き飛ばした。
物思いに耽っていたジュジュは、心臓が破裂しかね無い程に驚いた。もしかしたら、ちょっと裂けたかもしれない。
ドキドキと脈打つ心臓がやけに煩く感じた。
目の前の出来事にそうなっているのかとも思ったが、違っていた。
そうでは無い。
ジュジュは綺麗にドアが消し飛んだ入口を凝視する。
「ひぃっ!?」
そこに居たのは『世界最強』であった。
「あ、ああああああ、あ、アルカディア!?な、なんだ、何なんだよ!?俺が何かしたかよ!おいっ!」
ジュジュはアルカディアと面識があった。
と言うよりは、以前アルカディアの依頼に巻き込まれて一回死んだ事があったのだ。
ジュジュの魂を回収しにきた死神をアルカディアが殴り殺してしまったの事で甦る事が出来たが、もう関わりたく無かった。
「ジュジュ!!!!!」
アルカディアの怒声が響く。
地獄の主が罪人を呼ぶような、地を這うような声だ。
ジュジュは震えあがった。
「あ、あ、案内、し、して。」
地獄にか!?
ジュジュは本気で思った。
今度こそ、死神どころでなく、冥界まで支配しようと言うのか?!
ジュジュは、本気の本気でそう思った。
「お、おおおお、おおぅ、おおぅごんと、としぃ!!!」
おおぅごんと、しぃ。
一体何を言っているのか、ジュジュには理解不能だった。
泣きたくなってきた。
いや、手遅れだ。既に涙は溢れている。
「と、兎に角、あれだ、落ち着いてくれ!!分からんから、なぁ?ほら、あれだ、案内は間違いなくしてやるから!頼むから落ち着いてくれ!!!」
ジュジュの必死の呼び掛けに、アルカディアは少しだけ落ち着きを見せる。その姿に、ジュジュは心底ほっとし、話を進める。
「えーと、アルカディアが案内を頼むって事は、捜索してるっつーよりは、俺に確認してくれって事・・・・・で、良いんだよな?」
アルカディアは頷く。
「OK。じゃあれか、『そのおおぅごんと、しぃ』って奴かどうか、俺が見れば良いんだな?」
アルカディアは頷く。
「場所に見当はついてんのか?」
アルカディア頷く。
「今から行くのか?」
アル頷く。
「日帰りか?」
ア頷く。
ジュジュはアルカディアに逆らうような事はしない。
彼女が行くと言うのであれば黙って行くし、今から行くと言うなら速攻で支度をするだけだ。
覚悟を決めたジュジュは、取り合えずクローズと書いた板切れを入口に立て掛けた。
◇━◇
ジュジュはその長くも無いが短くも無い生涯で、初めて空を飛んだ。
本来翼のある物限定の風景を眼下に捉え、ジュジュはチビりそうなる股間に気合いを入れ直して前を向いた。
現在、何処から引っ張ってきたか分からないドラゴンの王に乗って、アルカディアとジュジュは『オオゥゴン・シィ』に向かっていた。
本来は黄金都市なのだが、ジュジュが当然のようにオオゥゴン・シィと言うので、アルカディアは黄金都市の名前の事だと勝手に勘違いした。だから、そんな二人の共通認識としては間違いなく『オオゥゴン・シィ』に向かっていた。
「なぁ、アルカディア。今どの辺にいるんだ。」
どうにも見覚えのある場所を上から見ている気持ちになり、ジュジュはアルカディアに尋ねた。
予想では、前人未到と呼ばれる黒耀の絶壁を越えているような気がしていたのだ。
それは両親と祖父が挑み散った、伝説の土地だった。一族の夢であった。
すっかり冒険家としての志しを捨てさっていた今のジュジュにしても、興味の尽きない土地であった。
ジュジュの問いに、アルカディアは首を傾げた後、思い付いたように息を吸い込んだ。
嫌な予感がする。
ジュジュは本能に従い、両の耳を全力で塞いだ。
「わっ!!」
アルカディア小さな口から、森林が震え上がり、地面が割れ、雲が四散する程の大声が吐き出された。
文字にすれば、それは「わ」と言うなんでもない単語。
だが、アルカディアが全力でその一単語をはっすると言う事は、もはや災害のそれでしか無かった。ドラゴンが襲来するとか、大悪魔が召喚されるとか、海竜神アルサダークが津波を起こすとかと同じだった。下手したらそれ以上であった。
ビリビリと揺れる大気が空を駆ける。
距離にして数千キロにもなる距離にあるゴザルシティも例外なく、突然の轟音に襲われる。
観光客は発狂して泣いて逃げ出した。住人は無闇に荒らした密林を思い震えながら懺悔した。街を守る為に雇われていた兵士諸君は退職届けを書く事を決意し、密かに黄金都市を狙っていたとある国の特殊部隊は「撤退します、無理です」と本国に泣きながら報告した。
後に、ジェイド大陸を支配する覇獣王の誕生祭として語られていく、その最初の日になるのがこの日だったりしたが、それはまた別の話だ。
大陸中が色んな意味で慌てふためき混乱する最中、アルカディアは目を瞑りただ耳を澄ませていた。
そして、常人には聞き分けられない小さな音。「わ」と言う山彦を受け目を開く。
「だいたい、真ん中くらい。」
首を傾げながら答えるアルカディアに、ジュジュは戦慄するしか無かった。
確かに、今何処にいるか尋ねた。
だが、それは単なる世間話程度に聞いただけだったのだ。正確に知れればそれに越した事は無かったが、地理に疎いアルカディアにそこまで求めていた訳では決してないのだ。
まして、その何となく掛けた一言が、地面を割り、密林を消し飛ばし、見える範囲の雲をかき消すような被害を出すなんて思ってもいなかったのだ。
ジュジュは予想した。
それは遠く離れているであろうゴザルシティの状態が、近年稀にみる大混乱によって大変な事になっているであろう事を。
そして、自分の仕事である案内の仕事が、ほぼ無くなるであろう事を。
ジュジュは気楽な隠居生活が、たった今終わりを迎えた事を知り、涙を流した。止めどない、濁流の如き涙だ。
その様子に、アルカディアは「感動しているんだな」と勝手に判断した。なので、さして気にせずに視線を前へと戻した。
この時のアルカディアはある意味で間違っていなかった。本来なら、一端の探検家であれば、未開拓の地への踏破は偉業であり、咽び泣いても可笑しくない功績なのだ。
アルカディアはその事に興味を持っていないが、それが彼等探検家の悲願である事は何となく分かっていた。
だから、ジュジュが泣いているのは、未踏の地へのやってこれた事実への感動による物なのだ、とそう思ったのだ。
尤も、この時のジュジュはすっかり探検家である事を辞め、安全な場所で日銭を稼ぐだけの温い生活に満足していたので、感動で流す涙なんて心は欠片も持ち合わせていなかった訳なのだが。
そうこうしている内に、アルカディアは目指していた場所の上空へとたどり着いた。
ジェイド大陸のほぼ中央に位置するそこには、アルカディアが知る限り都市が存在していた。
それが━━━━
「オオゥゴン・シィ・・・・。」
アルカディアは眼前に広がる都市を眺め、その名を呟いた。
勿論、この都市の名前はオオゥゴン・シィなどと言う勘違いの末に辿り着いた名前などではない。一文字すらかすってなかったりする。
だが、すっかり勘違いしているアルカディアは、なんだか古代都市の名前を知っている事実に少し興奮していた。
まるで、探検家みたいだな、と。
ようやく現実に帰ってきたジュジュは、アルカディアに続いて都市を見下ろした。
そこには、確かに都市があった。
だが、そこは古代都市と言って良いのか、微妙な気分にさせられる光景が広がっていたのだ。
いや、古代都市は古代都市であった。建物は軒並み古く、見ただけでも相当な年代物である事は分かった。金銭的な価値にして国が一つおこる程の物がここにある。
だからこそ、それ以上に目を引くそれを看過する事が出来る訳無かった。それほどの都市であるからこそ、そこにいる、ソレを見過ごす事なんて出来る訳がないのだ。
「住んでるじゃん。」
都市は普通に使われていた。
寧ろ現役で稼働していたりした。
「いや、住んじゃってるじゃん。」
人とは言えないが、銀色で艶々した肌をもつ二足で立ちコミュニティを作る知能がある生物が、普通に暮らしていた。
「ここが、オオゥゴン・シィ。」
「いや、まじか。ここが、オオゥゴン・シィなのかよ。」
「伝説の━━」
「━━━オオゥゴン・シィ」
二人は絶妙にはもった。
妙な達成感に包まれる二人。
もう本来の目的とかすっかり忘れていた。
アルカディアは依頼である事を、ジュジュは古代都市がオオゥゴン・シィである事を確認する仕事を。
「帰るか・・・・。」
ジュジュは密林に沈む太陽を眺めながら、そう呟いた。
アルカディアはそれに静かに頷いた。
「帰ろ━━━」
そう掛けた時、アルカディアの脳裏に電撃が走った。
それは、間違いなく今気にする事では無かった。
だが、アルカディアはそれを思わず口に出してしまっていた。
「あっ!!」
衝撃が走った。
アルカディア達の眼前に広がっていた古代都市オオゥゴン・シィは、この間の抜けた一言で消滅してしまった。
一声で、何もかもが吹っ飛んでいってしまった。
もはや、生き残りなんて可能性が頭に過る事も無いくらい、綺麗に無惨に消しとんでいってしまった。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
声が発せられる瞬間、嫌な予感を感じて全力で耳を塞ぎ、ドラゴンの体にこれでもかと身を寄せたジュジュは無事であったが、眼前の光景には口を告ぐんだ。
文句の一つも言いたかったが、言ったらそれこそ殺されそうなので何も言えなかった。
「・・・・・それで、アルカディア。何を思い出したんだ?」
「前払金、払う、忘れてた・・・・・。」
「そっか。まぁ、なんだ、帰ってから、ゆっくり話そうか。」
「うん。」
アルカディアとジュジュは何も見なかった事にして、真っ直ぐに帰った。
オオゥゴン・シィとか、そんな眉唾な話だったのだ。
そんな都市はやっぱり無かった。
町に帰ったジュジュはアルカディアと別れると、直ぐ様家を整理した。夜逃げをする為であった。
その後無事に夜逃げを成功させたジュジュは、アルカディアと会う事は暫くなかった。だが、その夜逃げが原因で彼女が出来た辺りで再び突撃され一悶着と一騒動が彼の平穏を脅かす事になるのだが、それはまたの機会に語るとしよう。
兎に角、後にアルカディアの出した今回の報告書にはこう記述される事になった。
『ありませんでした』
と一言。
◇━◇
その日、ジェイド大陸の中央部に位置する都市『デ・ロ』では盛大な祭りが行われていた。
人類殲滅記念、その前夜祭であった。
自立四足歩行人類殲滅兵器『ギ・ギ・ギ』の完成を持って、デ・ロに隠れ住んでいた亜人族シ・ジの人々は人類の生活域を手に入れる為に戦争をしかける事にしていたのだ。
デ・ロの最高司令官である"ア"は秘蔵の酒を今まで付き従ってくれた部下達に振る舞っていた。
この日ばかりは、厳しい事で有名なアも、部下達に労いの言葉を掛け、気の早い戦勝祝いだと楽しく酒を酌み交わした。
明日は勝つ。
殺すぞ。
奪ってやるんだ。
其々が思い思いの言葉を吐き出す。
彼等にとっては悲願ではあるのだが、人間側からしたらどうしようもなく迷惑な話だろう。
だからだろうか。
彼等を、その悲劇が襲ったのは。
「あっ!!」
その日。
シ・ジの人々は光を見た。
美しくも恐ろしい、白亜の光を。
声が通った後には何も残らなかった。
そこにあった筈の野望も、生活も、何もかも。
一つとして残らなかった。
人間にとって起きる筈の悪夢は、何も問題を起こす事もなく、綺麗さっぱり消え去ってしまったのだ。
後に、とある探検家がここに訪れ、一つの仮説を立てる。
「進みすぎた文明。増長し過ぎた恐れを知らぬ先住民に、神が天罰を与えたのだろう。」と。
他にも幾つもの議論を呼び、その度に多くの学説が産まれては消え、結局の所誰も真実を知らずこの話は終わりを迎える事になる。だがそれは、些細な事なのだろう。
なにせ、やっぱり今回も、我等がアルカディアはぼっちのまま話が終わるのだから。
ロッドバーグマンJr.Jr.
♂
身長 180㎝
体重 83㎏
趣味 ぬぼーってする事
特技 探検
チャームポイント 七転八倒の人生