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ガジェット・ワールド/プロローグ  作者: 饂飩滲みるは
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第ニャニャ章

10/03/2014

書き加えました

 亮介と亜理紗は税関棟の奥の部屋で、2人で向き合っていた。


「言われた通り、必死に分解しまくってレベル3になったわよ」

 亜理紗は不機嫌そうに亮介に言った。


「ああ、そうか、無理を言って悪かったね。それじゃあ、早速……」

 亮介はその先を言おうとして、亜理紗に口元を押さえられ、言葉を遮られた。


「リョウスケ! いい加減一人で何でもやろうとするのは、やめてよ!」

 彼女の瞳には怒りが湛えられていた。


「いつでもそう、新しいMMOにあたしを誘う時は決まって自分がレベルリーダーを勤めなければ満足しないその悪い癖、もうやめたら?」

 亮介は彼女の剣幕に気おされていた。


「あんたは、昔から何もかも分った様で居て、その実もっとも何も分っちゃ居ない人間だわ。自分以外の人間が理解できない、ただの『厨二病』のカス野郎よ!」

 亜理紗は何故か物凄く怒っている。亮介には何が何だか分らなかった。


 彼が困惑して立ち尽くしていると、亜理紗は拳を固めて彼の胸をバンバンと叩き出した。


「……これよ! この体! なんなのよ、こんなのあたしの亮介じゃないわ!」

 彼女の瞳から涙が零れ落ちていた。


『ああ、そうか、俺は自分勝手に身体を改造しちゃったんだよな。亜理紗は俺の事思っていてくれたんだ……』

 彼はとっさに心の中でそう思った。


 だが、彼女の真意は、この新しい世界へ順応する事への根源的な恐怖なのだと理解していた。

 小学生の時から、ずっとそばに居た女の子、愛とか恋とか言うよりも、もっと近くって大切な関係が二人の間には存在した。


 亮介は思い切って、彼女の体を引き寄せ抱きしめて優しく言った。


「ご免よ、亜理紗。僕もこの3日間、心に余裕が無くて、何せ、僕らの気付かないうちに世界は滅んじゃったのも同然だし。僕らはその時に何もかも失ったはずだけど、何者かの気まぐれのお陰で、こうして仮初めの肉体とチャンスをもらって存在している。

 それが、神様の所為なのか、はたまた高度な科学文明を持った異星人のお陰なのか、正直言って僕には分らない。

 でも、僕はその事にとても感謝しているんだ。特に、僕の特別な女の子と一緒にいられるチャンスをを貰った事に……。僕はその子を失うのが死ぬより怖い……だから、僕は僕自身の体がどんな姿になろうとも躊躇しない、それだけは分って欲しいんだ。今ここにいる僕は、君が望んでいる僕じゃないかもしれないけど、君を守るために精一杯努力してるって事をね……」

 亮介は出来るだけ優しく彼女の頭を撫でつけながら言った。


「……それって……私の事……大事に思ってくれているなら……私のこと一番に好きだと思ってくれているなら……許してあげる」

 亜理紗は彼の腕の中で小さく呟くと、彼の胸を押しやって彼から数歩離れて立った。


 どうやら、亜理紗の告白タイムは終了したらしい。


『ちょっぴり残念だ』などと彼が思っていると、亜理紗がゆっくりと着ている物を脱ぎだした。


「あ……え」

 亮介はあっけに取られて、それをただ見ているしかなかった。


「……わかってる? これから私は私じゃなくなるのよ?」

 彼女は謎めいた笑顔を浮かべながらそう言うと、最後の布を手に取って肩越しに背後に投げ捨てた。


 亮介は胸を張って素っ裸で立つ彼女をまじまじと見詰めた。

 おとがいから鎖骨にかけて色気の無い肉薄のライン、乳腺の発達しきっていない甘食のような乳房、滑らかで柔らかそうな牡蠣のごとき腹部、そして秘密の丘からすらっと伸びた野蒜の様な細い足。

 彼女はレベルアップする前の自分の姿を彼に覚えておいて欲しかったのだ。


『あっ……亜理紗の〇〇は陥没型か……』

 性も無い事を考えながらも、彼は目を眇めてじっくりと亜理紗の全裸を記憶した。


「う、後姿は……自信が無いから……ダメ」

 彼女は顔を赤くして言った。


『前は良くって、後ろはダメなんだ? 女の子って分らないな……』

 彼はちらっとそんなことを考えた。


「ちゃんと、目に焼き付けた?」

 彼女は上目遣いに聞いてきた。


「うん、綺麗だね。ありがとう……」

 亮介は亜理紗の目をまっすぐ見て、はにかみながら言う。若干幼児性を残した亜理紗のヌードは、亮介のど真ん中ストライクである。


「さあ、それじゃあ、どうしたらいいの?」

 彼女は両手を広げて言った。


「うん……目をつぶって、頭の中で『もっと力のある身体を』と願うんだ……」

 亮介はためらいながら彼女に告げた。


『この裸体が失われるのは、人類にとっての大いなる損失だよな』彼のためらいはそんな気持ちから来ている。


 すると、瞬く間に彼女の体に圧搾空気が吹き込まれたような感じがして、皮膚の内側から『プシュッ』と筋肉が盛り上がった。


「……もう一回……レベルを上げるわよ」

 彼女がそう言うと、更にその身体は大きく変化した。


 首を支える頚動脈三角筋が盛り上がり顎の下に深いV字の谷間を作り、大胸筋は盛り上がって甘食の様だった乳房は肉まんの様に張りのある半球形に膨れ上がった。外肋間筋がわきの下にピアノの鍵盤のように現れ、腹筋はうっすらと六つに分かれているのが分るようになった。股間の恥骨筋や窩間靭帯、長内転筋が恥骨を中心に複雑に盛り上がり、今までピタッと閉ざされていた太ももの付け根の隙間は大きく押し広げられ背後の景色が見えるようになり、太ももの断面を前後に細長く作り変えた。


 亜理紗はまるで鍛え抜かれた女子体操選手の様な身体に変化していた。子供の体から大人のワイルドな女性の身体に一瞬にして変身していた。


「ちょっと、あたしの身体をジロジロと視線で犯すのはやめてよね?」

 彼女は急に恥ずかしくなったのか、両手で体の肝心な2箇所を隠してしまった。


『おおお……なんか、手で隠す方がエロっぽいんですけど……』

 亮介は胸がドキドキしてしょうがなかった。


「どお? 私の新しい体の感想は?」

 彼女は脱ぎ散らかした下着を手早く付けながら上目遣いに彼に聞いてきた。


「ああ、いや、結構なお手前で……」

 彼は自分でも何を言っているか訳が分らなかった。


「ああん、もう、やっぱりブラジャーは合わなくなっちゃったわ……」

 彼女は素肌に直接Tシャツを引っ掛けた。


『裸Tシャツも破壊力あるよね』


 さばさばとした亜理紗の様子を見て、亮介は心の中でひとりごちた。同時に至高の時間が終了してしまったのを実に悲しく思うのだった。


鋼伝寺亮介・総合レベル10

 肉体強化レベル3

 スキル=暗視・ステータス・アナライズ

 レベルアップボーナス、4


長壁亜理紗・総合レベル3

 肉体強化レベル3

 レベルアップボーナス、0


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