第12話 囚われ冒険者の戦いー前編ー
「…こんな事が裏にあったなんて。」
「裏の方が結構苦労していたんだな…。」
「何か申し訳なく思ってきた。」
「同情するよ。」
上からフレンシア、アルス、シント、カインドが話した。
「…あのさー。こいつのこと許せるのですか?人を死なせておいて…。」
リエンダーがゆっくり話し出す。目は真剣にこちらを訴えている。敵だということを忘れて。
「原因はナタリアにもあるよな…。」
こんな事を言い出したのは、リエンダーではなく、ビレッザだった。
「戦いの中で立ち止まるのはどうかと思う。」
言い放ったビレッザはいつもの様子とは違い、やや冷たかった。
「俺はこの因縁の決着をつけにきた。さあ、始めましょうか。」
声を出して戦いの合図を送った。
「な…何!?。」
皆が驚くなかリエンダーがこちらに寄ってきた。
「さあ、あちらに行きましょう。ルールはどちらかギブアップしたら負け。俺は無期懲役で監獄に行く。
お前は…。」
「冒険者ギルド【wishes】を辞め、冒険者連盟の委員として働く。」
「働くときは永遠に迷宮に行かないのもプラス。…ふっ。どちらにしても二度と外に出られないのか。」
「お互いにね。…ちょっと危険だけど。」
ナタリアも流石に恐ろしいと思っているらしい。2人が5人から離れていくほど、不安が募る。
「負けたら冒険が出来ないのかよ。ひどすぎね?」
「男の勝負ってこいうものだ。」
アルスとシントが話し合っていた。2人とは違う視点でカインドたちが話していた。
「相手は刀か…。ナタリアが有利じゃないか。遠隔操作だから。」
「でも、悪徳ギルドのリーダーでしょ?大丈夫なの??」
「あいつはやわじゃないさ。それに…。」
「「それに??」」
2人の声が重なった。
「ナタちゃんに秘密兵器があるから。ヘーキ、ヘーキ。」
彼の適当な反応に2人は苦笑いするしかなかった。
「正方形バリア…!!」
ナタリアは魔法の本を取り出して、呪文を唱えた。すると、2人の周りから正方形の壁に囲まれた。
「逃げられないようにするためですか。」
「それだけでなく仲間からの援助をなくすため。」
言葉を言い終えたと同時に読む準備をした。
「見たもの全てを固まらせるメドゥーサの目、石化!!」
当たったと思ったが、きれいなステップでかわされた。
「次はこっちの攻撃です。」
リエンダーは構えていたようで、今すぐにも攻撃しそうだ。
「はぁーーーーーー!!」
声を出しながら、ナタリアへとむかう。ナタリアは来る敵に備えてバリアを貼った。リエンダーは分かっていたかのように、刀を向けなかった。そして、小さく呟いた。
「さっきの話、嘘をつくな。」
言われた瞬間背筋が凍りついた。その隙をついて斬りつけた。
「うわぁーーーーーーー!!」
ナタリアはいろいろな所で切り傷が出来た。
「何でやられたの!?今の攻撃だったらかわせたはず。」
「フレンシア、ナタリアさんをよく見ろ。すっかり放心状態だよ。」
「…何かあいつに吹き込まれたのかよ。」
「僕もそう思う。」
ナタリアは普段は戦闘中に動きを止めることはない。リエンダーに何か言われていたことを思い出す。
「あいつはこう言った「さっきの話、嘘をつくな。」と。」
リエンダーが言い出したことに、シントを除いた3人が驚いた。
「ナタリアが嘘をつく理由あるのかよ。」
「自分自身が嘘つきよ。」
「人に擦り付けるなんて最低だ。」
3人ともナタリアへの同情とリエンダーに対する怒りがあった。ただ1人違うことを考えていた。
「ナタリアさんの武器ってもう1つありませんか?」
「どうしてだい?」
ビレッザは予想外のことを言われ、動揺している。
「マントが妙に膨れています。もしかして…」
「その話は後でにして、嘘をついているかどうか気にならないかい?」
ビレッザは怪しげな笑みを浮かべてシントが言う前に、さらに付け加える。
「結論を言わせてもらうと、ナタリアは嘘をついている。」
「どうして分かるんですか。」
待ってましたといった表情を浮かべ、話し出す。
「ナタリアがラターナルさんの死の真相を話しているとき、リエンダーが顔をしかめた。それは何故か。
1.自分がその場にいなかった 2.ナタリアがその場にいなかった 3.攻撃をした
1は論外、2は嘘をつく必要がない、残りは3、矛盾していないから。それにスイッチの話だった。」
一気に話されて、驚きを隠せないシント。
「そろそろ限界なんじゃないですか。」
ナタリアは立っているだけで精一杯でリエンダーは少ししか傷を負っていない。
「…もうお終いです。ナタリア・ラビッカ、もっと楽しませてくれる事を期待してたのですが。」
刀がナタリアの頬に当たり、最後の一撃を与えようとしたとき
「…まだ終わりじゃない。これからが本番だよ。」
顔を俯けたまま、静かに話した。ナタリアは自分の懐に手を入れ、何かを取り出した。だが、何を取り出したか分かるまえにリエンダーの叫び声が聞こえた。勝利の声ではなく、悲痛な声。
「あれは…。やっぱり。」
シントは予測どうりだったらしい。3人まだ状況を飲み込めていないようだ。
「な…何で!?」
「意味分からねぇーー!!」
「これが秘密兵器の正体!?」
彼らが驚くのも無理ない。ナタリアが握っていたのはなんとずっと使っていない剣だった。