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自作小説倶楽部 第5冊/2012年下半期(第25-30集)  作者: 自作小説倶楽部
第30集(2012年12月)/「初霜・初雪」&「失敗」
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6 かいじん 著  『初雪』


小学2年の頃の冬、田んぼの中で3人ずつのチームで三角ベースを

やっていた。


そもそも、どんより曇って風も吹いていて、やたら寒かったけど、その内に

雪が降り始めた。


その冬、初めて降る雪だった。


その内かなり激しく降り始めたけど、ゲームは中断されず、アンダースローの

僕は力投を続けた。


夕方、家に帰って来た時には体が冷え切っていて、僕はすぐにコタツに潜り込んだ。


次の日は風邪で学校を休んだ。


・・・


中学2年の時の冬、夜中に降り始めた初雪は朝になると空はもう晴れていたけど

雪が10センチ以上積もっていた。


その日は土曜日だったので、昼頃に学校は終わった。


僕と、その時つきあっていた彼女は、部活やら下校で誰もいなくなった教室でしばらく

過ごして、通学路に人気がなくなってきた頃を見計らって、途中まで一緒に帰った。


校門を出ると道路の雪は既に溶けていたけど、学校のある丘の周囲や、家並みの

屋根にはまだ雪が残っていた。


坂道を下って、橋を渡り土手にまだ雪の残っている小さな川に沿った細い道を

陽を浴びながら僕は彼女と並んで歩いた。


徒歩通学の僕はカバンを肩に背負う様に持ち、自転車通学の彼女は自転車を

押しながら歩いていた。


あの時、僕は彼女の笑った顔が見たくて、彼女を笑わせる事に必死だった。


別にその時に風邪はひかなかったが、僕は彼女に熱があった。


・・・


それから、何年かたって、夜、アパートで小さな鍋に湯を沸かしている時、

ふと振り返って、窓の方をを見てみると外では雪が降り始めていた。


上京してから、雪が降っているのを見るのはその時が始めてだった。


僕は袋に入った麺を鍋に入れて、インスタントラーメンを作り、それをドンブリに

移して、テーブルで食べながら、窓の外で降り続く雪をぼんやりと見ていた。


たぶん、その時には、春がやって来るのが待ちどうしかった様な気がする。


・・・


2013年、正月が明けて間もない頃、会社からの仕事帰り、総武線の電車を

降りて、改札を抜け駅を出た時、この冬東京で初めて本格的に雪が降り始めた。


駅前の雑居ビルやマンションの上空の夜空にかなり大粒の雪が無数に舞い

少し先の方に、去年金環日食があった翌日に開業した634メートルの

スカイツリーの上部が霞んで見えた。


僕はその景色を眺めながら歩き、今年はどんな一年になるのだろうかと

ふと考えた。


 


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