光と闇の楔 ~【マァト】と【主系列星】達と存在(そんざい)達の行方~
かなり時間があいた自覚あり。
にもかかわらず今回はほとんど話はすすんでおりません。
なんか五月以降、仕事が忙しくなったのもあるのか、
今まではストレス発散で打ち込みしていた気力がぱたっと低下……
反省しないと…とおもいつつも時間ばかりがすぎてゆく…
今現在の年末は毎年のごとくに12時間以上勤務がつづいているこの現状・・
気晴らしとして数日かけて打ち込みしたのにそれでもたったのこの程度・・・
このお話ももう少ししたら完了です。
気が向きましたらもうしばらくお付き合いください・・・
しかし副題と小説の内容がともなってない……(自覚あり……
一部、一話とだぶっているのはお約束
ストーリー展開は完全に時の巻き戻しパターンもあったのですが、
とりあえずこの打ち込みパターンにて。
何はともあれ、ゆくのです
※今回は約20KBです
全ての命には心がある。
全ての心が抱く思いは命それぞれ。
しかし、心が抱く思いは強くもあり、そしてまた弱くもある。
その思いを強く思い描き、またそれらを持ち続けることにより、その思いは現実となる。
現実となった思いの力はそれぞれの命の原動力になることもあれば、
逆にその思いの力が強すぎて、新たな命の欠片を生み出すこととなる。
ほとんどの命あるものは、あまりにも巨大すぎる思いにさらされると自らの心を押しつぶしそうになってしまう。
そんな心に押しつぶされ、また自らの意識を見失わないためにと設けられた理。
念、とよばれしそれらは強さ、そしてその特性によってこれまでその姿形を変えてきた。
呼び方も様々。
いい方向性に強く願われて誕生した存在は【ロア】と呼ばれし存在となり、
負の心をもって誕生したものは【ゾルディ】と呼ばれし存在となる。
【ゾルディ】と魔獣はあるいみ同意語、といっても過言でない。
不確かな不確定の器しかもたないものを基本、ゾルディ、とよび、
どうみても確実に完全に器を得ているものを魔獣、と人々は呼んでいた。
もっとも、その器が念に入り込まれ生ある存在から変化したものか否か、
というのはその姿をみれば誰しも一目瞭然。
人は…否、自分達はいつからその事実を忘れていたのであろう。
忌み嫌うだけで、それらの本質が全ては自分達の心の中にある、ということを。
自分達の心がきちんと自分達で処理できていれば、世界が【念】の脅威におびえることもなかったというのに。
光に包まれ、まどろむ意識の中、唐突に理解する、否、今まで忘れていた。
さらにいえば理解しようとしなかった世界の理。
すべての命ある存在達の心の中にその理はすっと染み込んでくる。
命ある存在達は知らない。
マァトの引き継ぎによって起こったこの光を利用して、自らの内部にいる全ての命あるものに、
今まで幾度も説明しても間違った解釈にとらえ、また理解しようとしなかったこの世界の理。
それらを光の中に組み込んで、自然に全ての心の中に【惑星の意思】が強制的に埋め込んだ、ということを。
その理を理解した命ある存在達がたどる道は、かつてと同じか、それとも新たな道を歩むのか。
それは、個々の意識次第……
光と闇の楔 ~【マァト】と【主系列星】達と存在達の行方~
ふわふわと体が地につかないそんな感覚。
周囲はあわい光につつまれているというのに、眼下の緑がとても眩しい。
空にあたる場所は常に虹色の光が降り注いでおり、今いる場所の特定すら難しい。
…本来ならば。
「まずはお目覚めをお喜び申し上げます。新しき我らが【マァト】様」
「先代様もお疲れさまです」
「かのものは三の姉様。あなたのところでうけもつの?」
緑の絨毯の上に位置するはいくつかの影。
ふわふわと浮いている彼女達はそれぞれに独特なる雰囲気をもっている。
もっともそれぞれがそれぞれにその場にいる一人の少女に敬意を示しているのが見て取れる。
「ざっと確認したところそのほうが無難のような気もするし。
彼が率先して介入しようとしていたかの国にひとまずは預けるわ」
黒い長い髪が風もないのにふわりとなびく。
「何でしたら我らが聖地にて彼らを預かりますが……」
すでに【マァト】としての力の引き継ぎはおわった。
今、彼女にできるのは今の今までマァトとして務めた知識での補佐。
「先代様。大丈夫です。私の子供達もそこまでやわではありませんし。
それにロキ達も面白そ…もとい、鍛えがいがある、とおもってるみたいですし」
この場に集められているのは、惑星の位置たる意思
…すなわち太陽系に位置する主たる惑星の意思達だけではない。
マァトとして完全に引き継ぎを終え、そしてまた覚醒を果たしている佐藤美希、と名乗っていた少女。
真名はリーナ・イノ・アルデュイナ。
その手に抱かれている小さな子猫は今はすやすやと寝息をたてている。
佐藤美希として過ごす前の記憶も全てもどっている。
かの地に出向く前は天宮真緒という名でもあった。
同じような世界に呼ばれて移動していたのははたして偶然なのかそれとも必然なのか。
おそらくは無意識のうちににたような場所を選んでいたのであろう、と予測はつくが。
今となってはいくら彼女とて判らない。
すべてが自分であり、またその気になればアンテナのごとくにいくつもその意識を具現化できる。
それが今完全に覚醒したがゆえに、美希ことリーナは理解ができる。
おそらくこれからは、真名でよばれることは二度とない。
いずれは先代もまた輪廻の輪の中に還りゆき、一人でこの世界を守ってゆくこととなる。
近くにいたがゆえに子猫であるミューにはすくなからず影響を与えてしまっていたらしく、
すでに普通の子猫ではなくなり、どちらかといえば聖猫といっても過言でなくなっている。
その気になれば子猫のミューのみで一つの小宇宙の意思の管理くらいは簡単にできるであろう。
「とりあえず。今現在はこの【世界】の【時】を完全に止めている状態になっていますけど。
そろそろ聖地に移動いたしましょう。心残りなどはありませんか?」
すでに力の引き継ぎはおわっているがゆえに、かつてのような強大な力は今はない。
それでも一番マァトに近しい力をもっているのも事実。
すでに知識などの引き継ぎと引き渡しもすんでいる。
しかし知識だけで実戦できるとはかぎらない。
これから自らが実戦しておこなうことにより、【世界】はあらたな歴史をまた刻んでゆく。
強き力があまり一か所にとどまることは歪みを新たに発生させる原因ともなりかねない。
この場にて時を完全にとめていられるのもまた目の前の三の意思、となのっている存在があるがゆえ。
間近で視たからこそ【理解】しまた【納得】もした。
どうしてこんな場所でそんな【存在】としているのかはわからないが。
それは自分達にはあずかり知らぬことであり、また知るようなことでもない。
すべてはかの意思のままに自分達はここにいる(・・)、のだからして。
時を止めているのも限りがある。
美希達がいなくなれば、美希達の記憶は関係者以外から奇麗に削除される。
それがこの【世界】の理であり節理。
星々の意識体達はその記憶を有するがそれ以外の普通の存在達からはその記憶はなかったこととなる。
もっとも、星の意思が選び記憶が消えないようにと措置を計った場合にはその理は適応されない。
しかしこのたびの出来事はどちらかといえば記憶を消してしまったほうが後々影響もないであろう。
それは無意識ながらも話しあいはしていないが、すべての主系列星達の意識体達の意見の総意。
それぞれがそれぞれ思うことはあるにしろ、きたときと同様に、
そのまま美希となのっていた少女は【マァト】として銀河系の中心たる【聖地】へとむかってゆく。
しばしその場にて、そんな彼女達の姿をみおくるディア達は各自において、
それぞれ思いつくかぎりの敬意をもってしばし新たなる自分達の【主】にむかい、
深い忠誠を誓ってゆく。
それは代々におけるマァトの引き継ぎ時期において、
その場にたずさわった存在達からしてみればしごく当然の行為。
誰も言葉をはっすることなく、ただひたすらに、止まっていたはずの時は静かにゆっくりと流れだしてゆく。
「さてと。とりあえず今回の騒動も落ち着いたことだし。皆はどう処理するつもり?」
先刻、いろいろとあったがどうにか次代でもあった少女は正式に後継者となり、
この地より旅立っていった。
あとは後始末を施すのみ。
時は流れ始めたが今現在、この【太陽系】内においては光に包まれた状態のまま。
この場にいる彼女達が解除しない限り、
この地におけるすべての存在達は不思議なる空間より解き放たれることは絶対にない。
ほっとひといきついたのち、今まで黙っていたすべての意思を代表するかのごとく、
この中においては一番発言力のある【大姉】とよばれしこの星系の主導を握る意識体の台詞。
「三の意思はどうするの?一番生命が多くて直接的に影響があったのは三の惑星でしょ?」
事実、意見を発した【大姉】のいうことは間違っていない。
それゆえにその場における全ての視線がそのままディアにと注がれる。
今のディアの姿は人の世に紛れて生活していた姿に近しいものの、
髪と瞳の色が異なっているがゆえに同一人物だ、と気づくものはまずいない。
そもそも雰囲気からして異なる気配をかもしだしているがゆえに、
もしもこの場にディアの人の世の知り合いがいたとしてもまず判らないであろう。
もっともこの姿そのものを彼らが視ることはまずできない。
「ソトホースを含めた初期の存在以外からは記憶を消そうとはおもってるけど。
姉様達はどうおもう?」
ここ数年における出来事は普通の存在達からしてみればいろいろとありすぎたであろう。
どちらにしても再生の時より発生した…もとい発生させた存在達においてはきちんと事実を知るためにも、
記憶操作などはほどこすつもりはさらさらない。
おそらくはこれからの時において同じようなことがおこることはまずないであろうが、
それでもこのたびの出来事は負の力が増せば増すほどおこりえる出来事でもある。
その規模が一つの惑星中に納まるか、はたまた銀河…否、宇宙全体における範囲にとどまるか。
それらの規模はあるにしろ。
だからこそ全てをなかったことにして新たに道を歩む、というのも一つの手ではあるが、
それでは望む成長がみられない。
「記憶を消しても漠然とした思いや願い、根本的なものは残すつもりではあるけどね」
同じ過ちを繰り返さないためにもそれは必要事項。
「ロキ達はならかつてのように彼らの宮殿にいてもらう、ということでいいのかしら?」
彼ら家族はこの場にいる意識体をとることのできる星々によって産まれたもの。
基本的にこのたび動いたのはディアであるものの、
しかし彼らの命はこの太陽系そのものを具現化させているといっても過言でない。
「大姉様のいうとおりでいいとおもう。
一時期はマァト様の聖なる力で負の力は抑えられるけど。
反動で一時増えるのも今までの代替わり時にはおこってるって話しだし」
その話しは彼らが意識として目覚めた当時に本能的に知っている。
彼らそのものも世界の一部であり、ゆえに意識がはっきりとした時点にて、
宇宙に満ちるそれらの意思より無意識より様々な情報を得る。
五の意思であり、別名木星ともよばれるそんな惑星の意識体に対し、
「とりあえずそれぞれの惑星における処置はそれぞれが管理するとして。
ならロキ達家族にはかつてのとおり、ということで。
三の意思もそれでいい?一番面倒なのがあなたのところみたいだけど」
申し訳なさそうに太陽の意思たる存在がディアにむけていってくる。
「まあ、この時期に地上に出向いていた私の責任でもあるし。
とりあえず会議の話しあいなども記憶は操作というか漠然としたものに据え変えるし。
伝道師やリュカといった彼らの記憶はそのままにして、
本来ならば時間を巻き戻すといった方法をとってもいいけど、それだとね~」
しみじみとおもわずつぶやくのは仕方がない。
たしかにその方法もできなくはない。
しかしそれには【星力】をかなり昇華してしまう。
それに何よりもせっかく目覚めている新たな黄竜をまた誕生前に戻してしまうのももったいない。
この場にいる意識体はこの【場】にて主系列星と呼ばれしものたちのみ。
神々にしろ何にしろ全ては【主系列星】達の意思により生み出されたに他ならない。
ゆえに全ての決定権はこの場にいる【意識体】達にゆだねられている。
すべての星々に生息している存在達は知るよしもない。
そもそもそのような会話が交わされていることなど知るよしもなく、
彼女達の手により今後の話しあいがしばし淡く白く輝く空間において繰り広げられてゆくのであった――
「……は!?我らは一体!?」
何か白昼夢をみていたような気がしなくもない。
巨大なる負の力が押し寄せてくるような、そんな夢。
しかし本来ならばありえない。
この地に【主】がいる限り。
「失礼します。補佐官様。謁見の手続きをしてほしいのですが……」
ふときづけばなぜか補佐官の執務室の前にとたたずんでいた。
たしか自分は補佐官に話しがあってここにきたはず。
そう何かどこか夢見がちな思いが抜けないような気もしなくもないが、
今はとにかく用事を…
「……あれ?何のようで我らは補佐官様のもとを訪れようと…?」
思わずその場にいた数名で顔をみあわせる。
何か思考がぼんやりとして思いだせない。
思いだせないが……
『あああああ!!そういえば主様は!!?』
時がたつにつれゆっくりと思考が復活してくる。
この場にでむいた理由。
それは…
『補佐官様!我らが王はいずこへ!!?』
天界と魔界。
それぞれにおいてまったく同じような光景が繰り広げられていることをそれぞれが互いに知るよしもなく、
今はただ、いきなり消えた自分達の王の行方を追う二界における実力者達の悲鳴ともいえる叫びが、
しばしそれぞれの宮殿内においてみうけられてゆく。
彼らは気づかない。
自分達の記憶が改竄されている、ということに。
「む~……」
せっかく地上に上手にうまく抜け出していたはずだというのに。
気づけばいつもの執務室。
どうやらマァトの覚醒に巻き込まれ、時が戻ったのではないにしろ、
それぞれが元ある姿にと戻されてしまったらしい。
「ヴリトラ様?」
「シアン。そのほうはどこまで覚えてる口だ?」
今の今までのことは自分は覚えている。
しかし自分以外のものがどこまで判っているのか、否、覚えているのかがわからない。
「?何のことでしょうか?ああ。新たな黄竜がそういえば誕生したらしいですね」
確かかれらはとある森の守護をしていた竜のつがいであったはずなのだが、
よくよく考えればいつのまに霊獣界にもっとも近いかの地にやってきていたのだろう。
ふとそんな考えが脳裏をよぎるが、しかし彼らがかの地にいて、
さらにいえばようやく新たなる後継者が産まれたのもまた事実。
何かを忘れているような気もしなくもないが、しかしそれが何かはわからない。
「は~…」
おもわずその言葉をきいてため息をもらしてしまう。
真っ白い髪に金色の瞳。
どこか幼さを残すその人の容姿からすれば七歳程度のその姿からは想像できるはずもないが、
彼女こそがこの地の最高責任者でもある竜神ヴリトラそのもの。
自分はこの地を抜けだして、【母】なる元に出向いていたはずだというのに、
気づけばいつもの自らの執務室。
何がおこったのか一瞬理解できなかったにしろ、
世界中より自分の糧ともなる【力】が一時的に失われている現状から察するに、
話しにきく【マァトの覚醒と引き継ぎ】がおわったのであろうことは容易に予測がつく。
「うう。お姉様の意地悪……」
思わず素にてつぶやくヴリトラの気持ちも間違ってはいないのであろうが、
しかし今までのこと。
正確にいうならば、ディア達がかかわった出来事の記憶を無くしているシアンからしてみれば、
彼女が何をいっているのかまったくもって理解できるはずもない。
だからといって今ここで愚痴をいっていてもはじまらない。
まずこの場に送り返されているということはやるべきことがある、ということ。
ならば。
「シアン。とりあえず視察にでむく。用意を」
「…は、はぁ!?ヴリトラ様!?何をいきなり!?
というか、まさかあなたさまはまた執務というか政務をほっぽってお出かけするつもりですか!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・
シアンからしてみればいつもの彼女の気まぐれにきこえるであろう。
しかし事はそういう問題ではない。
ゆえに一瞬無言でお小言をいつものようにいってくる竜王シアンの言葉にたいし無言でにらみつつ、
「今現在の霊獣界の様子を把握するだけだ。意識をすべてにむけるゆえに他者の謁見は全てことわるよう」
視察といっても自らの器にて出向くわけではない。
意識のみを霊獣界全体にむけるだけでヴリトラは容易に全てを視通せる。
その気になればすべての界の様子を視渡せるが、しかし今現在の【力の質量】において、
自らが管理している界だけにとどめておいた方が無難であろう。
今現在、全ての界より、ヴリトラの力の源たる【負の力】。
それは今現在、この惑星上だけでなくおそらくどの場所においても奇麗に浄化されているはず。
産まれいでたときに【母なる意思】よりそのように知識は与えられている。
もっとも自分達が生きている間にこのような出来事に遭遇するなどとはゆめにもおもっていなかったが。
平均的に元となる恒星…つまり太陽とよばれしものの寿命は約120億年程度、といわれている。
その間に代替わりがあることなど奇跡にも等しい確立である。
ゆえにこそその歴史に立ち会うことは誇らしい。
それはわかっているがよもや一部の関係者以外からそれらの記憶を改竄するとはおもってもみなかった。
よくて時間を巻き戻すか、それとも全てをなかったことにするか。
そのどちらかにするであろう、そう予測していただけにヴリトラとしても驚きを隠しきれない。
だからこそきにかかる。
何かほかにも修正がはいっているのではないか、ということに。
そもそも今はいつものように完全に力を発揮できないのも事実。
それほどまでに、世界中より【悪意】という一番【糧】となる力が失われている。
世界の【悪意】などといった【負の力】を浄化させるためにヴリトラは在る。
ゆえに世界からその力が失われている今、いつものように無理はできない。
「…さて。どこからあらたな糧が発生するようになるか」
思わずつぶやくが、おそらく地上、しかも人間達から確実に発生するであろうことは予測がつく。
人というものはいつの時代においても自らの欲望に負けて行動する生き物。
かつてそのためにこの世界は一度滅んだといっても過言でないのだから。
自らが納める霊獣界の現状を把握するためにそのままそっと目をとじる。
それと同時、一瞬ヴリトラのとっていた少女の姿がだぶり、
そこには巨大なる竜の姿が出現する。
それはまるで周囲を飲み込むかのごとくに巨大なるもの。
漆黒の巨体に輝く白き牙、そして周囲をまるで焼き尽くさんばかりの金色の輝きをもつ瞳。
人間形態のときに彼女が白き髪をしているのは竜形体のときの外見が黒一色であるからに他ならない。
すなわち、ときどきは違う色になったほうが面白い、という彼女自身の思いから。
その気になれば地上におけるすべての海という海すらをも呑みこむことが可能。
それをおこなったのは、世界の改革時、すなわち今の体制ができあがる前。
惑星の意思たる【母】の手によりあらたな【理】ができあがる前。
すべての確認がおわったら、ソトホースのところにでもいってみよう。
そんなことをおもいつつも、意識をそのまま界全体にと沿わせてゆく。
しばしそんな主の姿を身守りつつも、
「?めずらしくヴリトラ様が本気をだされていますけど…何かあったのですかねぇ?
まあ、私としてはこのまままじめに仕事をしてくだされば問題ないのですけど」
何かものすっごく彼女に振り回されていたような気がするのは気のせいか。
何となくだが夢の中で彼女が地上に勝手にいってしまい気苦労を重ねていたような気がする。
そのような夢をみた記憶もないが、そんな思いがどうしても先立ってしまう。
彼…シアンは覚えていない。
それが真実であった、ということを。
彼らは、マァトの代替わりにおいて発生した様々な出来事の記憶は消されている。
ゆえに、ディアをおいかけてヴリトラが地上にいったことすらも記憶から抹消されている。
しかし記憶はなくても思いはのこる。
そのように【三の意思】たるディアはほどこした。
それによりそれぞれの存在達がどう反応するかは、各個々次第……
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?』
思わず頭を抱えてしまうのは仕方がない。
絶対に。
「というか、どういうこと!?」
誰ともなく愚痴がでてしまうのもこれまた仕方がないといえば仕方がない。
「あ~。リュカ殿からの伝言で、どうやら銀河系の意思たるマァト様の代替わりの影響、らしいよ?」
ぐたり、とすでにもう疲れ果てた。
これまでの苦労はいったい全体なんだったのか、といいたくなるほどに。
自分達の苦労も努力も全て、ほとんどのものから記憶がきえさっている。
そもそもロアやゾルディといったいきとしいける存在達の心の結晶たる核。
それらが大量発生していたことすらほとんどのものの記憶からかききえている。
しかも漠然とではあるが心にそんなことがあったという記憶は残されているらしく、
ゆえにほとんどの界において戸惑いの声がきこえるのも時間の問題。
【魂通信】においてそれぞれの界における伝道師の仲間達と連絡をとりあった。
どうやらどの界においても同じような状況に陥っているらしい。
「というか、意思様はどうしたいのか」
「我らはあの光でたしかにかつての出来事などをも新たに思い返しはすれどもかわりはなかったしな」
ゆえに連絡を取り合う彼ら【伝道師】達はただただ首をひねるしかない。
そもそも【界渡りのリュカ】から連絡が入るまで何が何だかわからなかったのも事実。
リュカもリュカで三の意思たるディアから連絡をうけ、
それぞれの主たるものに繋ぎをとるべくとびまわっているのですぐには連絡もつかないこの現状。
「あ。ティミ殿から連絡がはいった。あの御方はまたあの街にもどったらしい」
「ふむ。ならば誰か繋ぎをとるためにかの街に潜入したほうがよくないか?」
「伝道師としてでなく普通の人としてか?」
「そのほうが無難ではないの?」
どちらにしても指示をうけなければ先にすすめない。
自分達で勝手に物事を推し進め、星の意思たる母なる存在より怒られてもかなり困る。
「では。尚人。それはそなたにまかせよう」
『意義なしっ!』
「・・・・・・・・ってまていっ!何で俺!?ねえ、何で俺なの!?」
思わず脳内にて行われる会話に突っ込みをいれてしまう。
他にも適任者はかなりいる。
だというのにどうしてこうして自分にその役目がまわってこなければならないのか。
「何をいう。おまえはあの御方がいた学園に一度いったことがあるだろう?」
「そうそう。あのときの記憶が人々から消えているのかどうかまではわからないが。
まあ、消えていない場合を想定して少しばかり若い姿でいけば問題ないだろう?」
「ってまていっっっっっ!何で俺に面倒ごとをおしつけるんだぁ!おまえらぁっっっっ!」
たしかに以前、あの街にでむいた。
ついでにいえばあの街でなぜか学生をしていた【意思】にも出会った。
だからといって面倒ごと…もとい、重大なる任務を任される筋合いはない。
尚人、と呼ばれし青年の名は【佐藤尚人】。
かつてディアが通っていた学園に伝道師として招かれた一人であり、
そしてまた、地球の意思たる彼女がかの地にて学生をしている事実をしっている一人。
たしかあのあとで、ヴリトラ神もまたかの地に出向いていたはずである。
ついでにいえば女神の一人も。
そんな地にどうして自分一人がでむかねばならないのか。
状況をまとめるためにとおこなった全ての伝道師達による【魂通信】。
精神体を通じて行われるそれらは直接それぞれの心に声が響き、
第三者にきかれ心配はまったくない。
しかし、しかしである。
どうしてこうして自分ばかりに面倒事がまわってくるのか。
しばし、尚人の魂からの叫びが彼らの間にてつたわってゆく。
…が、仲間達の中ではどうやら彼、佐藤尚人を人身御供…
……もとい代表者としてたてることはもはや決定事項らしい。
悲痛なる尚人の魂からの叫びを聞き入れるものは…存在していない……
・・・なんかこれをうちこみしている途中に別のことに脳内がとらわれ、
また打ち込み気力が低下し(毎度のことながら)半年たってしまった薫です……
なんか全体的にラストにちかづいたら気力が低下するこの癖がなかなかぬけない……
いや、自覚はあるんですけどね…自覚は……
ラストまでもうすこし。
・・・いつになったら楔の完了までいけるのやら・・・
次回はまたまたいつになるのか不明です・・・あしからず・・・