光と闇の楔 ~【ヴォイド】との邂逅~
今回の敵さん、「マーレラ」…何それ?
という人はWikiを参照にしてくださいな。
美希がその正体というか元になった生物さんのことを一応話してはいますけどね(汗
あと、今回は、あるいみグロ!?注意です!
というか、節足動物苦手、という人は絶対に想像はしないでくださいね!!(汗
というか、
今回の敵さんたちの容姿は絶対!に!想像しないに限ります…切実に……
あ、まあベ○ード様関連は問題ないとおもいますよー?
というか、あるいみ有名どころですしね。アレは……
ただし、幹部さん達の容姿は絶対に想像したら負けです。いやほんと。
…下手したらうなされます(自覚あり
※毎日投稿ができなくなっててすいません。
なんでかラストに近づくたびに打ち込み気力がのらなくなっている薫です・・・
読んでくださっている方々には感謝、です!
あと、台詞と情景の合間を今回はあけてみてます。
どうもなろうさんで確認するのにあけたほうがみやすい・・・かな?ううむ・・・
何だ?ここは?
久方ぶりに命あふれる惑星にと降り立った。
しかし、何か違和感がある。
どこがどう、というわけではない。
他の惑星などでは見受けられない、独特な違和感。
しかもざっと確認しただけでかなりの実力をもった存在がこの惑星上にはかなりいる。
惑星全ての生命体の力を使っているのではないのか?というような存在もいれば、
よくわからないがとにかくひたすらに独特な力に特化したものもいるらしい。
らしい、というのは確実に確認していないからであり、またわざわざ確認しよう、ともおもわない。
自分を楽しませてくれる存在ならばよいがそうでなければ確認するだけ無駄というもの。
しかしこの違和感が気にかかる。
何がどう、というわけではない。
知っているようで知らないようで、とにかく常にひっかかる類の違和感であることは間違いない。
「…まあいい。まずは、間者としても使用できた人形がいっていた人間を探してみるか」
この惑星上の大会にて優勝したという人間の少女。
その精神そのものに入り込んで情報をすべて把握した。
この世界はいくつかの【界】という部類にそれぞれ特定の種族が住まう地を分けているらしい。
一番惑星にもっとも近いともいえる地上界。
そこは惑星の表面上にあたり、空中にあるより惑星の力をもっともうける場所でもある。
ちなみに天空には天上界というものがあり、また地下には魔界、といったものもあるらしい。
何だかどこかの世界のお遊び感覚でつくられている
【小説】とかいう輩に似ていなくもないような気がするが。
彼とてそういった類を全て把握していたわけではないので詳しくはしらない。
知っているのは一時彼の配下になったものがそういうのに詳しかったがゆえに、
多少の知識を得ているにすぎない。
しかし、探す、といっても地上界もかなり広い。
力が強きものを探せばいいもかもしれないが、普通力がつよいものはその力を隠す傾向がある。
すぐに見つかる、とはおもえない。
ならばこちらから何かしかけて相手からでてくるのをまつべきか。
それとも力あるものを取り込んで自らの器として利用して相手をおびき出すか。
「まあ、まずは人形達からもう少し詳しく聞きだすか」
目指すは人形と化している輩達が集う場所。
彼は知らない。
その場にこの惑星の【意思】たるディアがいる、ということを――
彼が感じている違和感。
それはこの惑星そのものにおける特殊ともいえる事情によって誕生している現状。
それが違和感の正体である、ということはいまだ誰も気づいては…いない……
光と闇の楔 ~【ヴォイド】との邂逅~
「ほう。まさか大会優勝者が出向いてくるとは好都合」
目の前にいるのはなぜかその半身をうねうねとうならせている、
どうみても下半身が節足動物なのではないか?
というような容姿をしている存在。
ちなみに、うぞうぞうごめく下半身から出ている肢は軽く見積もっても十本以上。
いくつもの固いような小さな毛におおわれたそれらの肢は大地を踏みしめるのと同時、
半分はまるで獲物を求めるかのごとくに腹?の前で組まれている。
あからさまに人ではありえないその容姿は巨大なとある生物を彷彿させる。
「あ~。かつてここでは【マーレラ】って呼ばれていた奴に酷似してるわ。あれ」
思わずその姿をみてぼそっとつぶやくディアに対し、
「?たしかそれって、古生代カンブリア紀にいたとかいうバージェス動物群の一種のですか?
でもたしかあれは全身が二センチにも満たなかったとおもうんですけど?」
伊達に生物学をも学んでいたわけではないがゆえにそのあたりのことは少しばかり詳しい美希。
正確にいうならばここに迷い込んでくる直前にだされていた課題が古代生物に関するものであった。
昔のことに興味があったので美希は古代生物を選んでいろいろと調べていたにすぎない。
しかし、しかしである。
一体どのような進化を遂げたらこのように変化することが可能なのか。
その容姿ははっきりいって異様、としかいいようがない。
頭とおもわしき部分には二対の鋭い棘があり…
もっとも、その棘はどうみても角、のように見えなくもないが。
人の顔らしきものがはりついている…せいかくにいえば、埋め込まれている、
もしくは首から上がはめ込まれているように見える、といったほうがいいであろうか。
ともかく、本来ならば甲殻に覆われているはずの部分には確かに人の顔らしきものがあり、
しかしその頭には二対の鋭くとがった角。
それでいて耳があるはずの部分から伸びているこれまたいくつも鋭い棘がついている触手のようなそれは、
体よりも大きくおもいっきり地面にまで伸びているのがみてとれる。
口から垣間見えるこれまた小さな触角のようなソレからは、
おそらく人でいうところの舌の部分にあたるのか、
とにかくびっしりと毛におおわれたブラシ状となっている。
胴体そのものはどちらかといえば細くもなく太くもなく、といったところなのではあろうが、
しかしどうみてもその胴体らしきものかいくつものたい体節にと分かれており、
ちなみにその体全体もどうみても固い甲殻のようなものでおおわれているのが見て取れる。
人でいう腰のあたりからその甲殻は二つに分かれており、それらがどうやら足代わりになっているのか、
その分かれた二対の甲殻から無数の肢らしきものが生えており、
それの大半はほとんど大地を踏みしめている。
もっとも、胴体を構成している部分らしき甲殻からも無数の肢らしきものが出ており、
それらはぴっしりと毛のようなものに覆われてうぞうぞと気持ち悪いほどにうごめいているのが見て取れる。
「ああ。進化の過程はやはりどうやら同じ道をたどっていたようですね。
今までいた場所でも同じような存在がいたんですか?」
「ええ。もっとも化石から復元させたバーチャルシステムで
生きている様を経験することは可能、でしたけど」
何やらのんびりとケレスやアテナにはまったくもって意味のわからない会話をはじめているディアと美希。
おそらく、二人にバーチャルだの何だの、といってもまったくもって意味不明、であろう。
そんな何やらのんびりと会話を始めている二人に対し、
「というか!何ディアも美希ものんびりとあれをみて平気でいられるわけ!?」
その姿をまのあたりにし思わずさけんでいるケレス。
まあ、普通、このような存在をみて冷静でいられるはずはない。
そう、普通ならば。
「いろんな容姿をもつ存在は見慣れてますし……」
そもそも、美希のいた場所そのものが宇宙空間との交流をすでにもっている場ともいえる。
ゆえに様々な姿をした一応、それこそ【宇宙人】という一言でくくられる異形の存在には結構なれている。
…もっとも、美希としてはそういう存在とかかわり合いをもつ機会はまったくなかったが。
常に情報というか映像上では見慣れているがゆえに多少の異形なる姿には動じない。
それに何より、霊力、という力が開発され、人類もまた力をえたものは姿をかえていたものもいた。
ある場所などではそういった輩にたいして差別が起こっていたりもしたようだが、
しかし世界情勢がそれどころではなかったのも事実。
すくなくとも、地球上においては大異変の後始末に追われそれどころではなかった。
もっとも、そんな地上を見限り宇宙にでてゆく人類もまた多かったのも事実のようだが。
しかし、それらは特定のお金持ちにかぎること。
普通に生活していた人々にそんな余裕があるはずもない。
ましてや美希は母一人、子一人のいわば母子家庭。
しかも母は常に病弱で美希がどうにかアルバイトなどをこなし生活費などをも稼いでいた。
そんな状況で宇宙移住などできるはずもない。
もう少しお金があれば母の病気もどうにかなったのかもしれない。
しれないが…それは今さらいってもしょうがないこと。
そもそも、最先端の魔科学においても母の病気は治せなかった。
霊力が涸渇している、とも病院ではいわれた。
その理由を美希は知らない。
本来ならばすでに死んでいるはずの人物であるがゆえに、ゆっくりと体が衰弱していた、などと。
一体だれが想像できようか。
「私もなれてるし……」
目の前にいるソレをみてもこちらもまた動じることなくこいつがきたのね。
などとのんびりと思いつつもさらっといいきっているディア。
そもそも、魔界においても然り、天界においても然り。
様々な容姿をもつ存在は幾多といる。
たかがこの程度で混乱するような精神は持ち合わせてはいない。
おそらくこの場で人間的な感性をまともにもっているのはケレスただ一人、であろう。
「あれは…っ!おまえは、【ハスター・ホテップ】の幹部の一人!マルマラ!」
そのような容姿をもつものは限られている。
ゆえにその姿を確認し思わずその場にて叫んでいるアテナ。
「それより、ディアさん。私としてはその後ろのモノにかなり違和感があるんですけど……」
それでなくても一人?だけでもかなり印象深いとしかいいようのない、マルマラ、とよばれた存在。
その後ろにちょっとした人間の大人くらいの大きさはあるであろう黒い艶やかな塊があるのは気のせいか。
しかも、わさわさと音をたてて足踏みしているようにも感じなくもない。
というか気のせいだ、とおもいたい。
切実に。
そんな美希の儚き思いもむなしく、
「ほお。これは戦女神のアテナがでむいてくるとは。
つまるところそちらの人間の女の護衛に天界から遣わされた、というところか?」
わさわさと地面にはいつくばるようにしている黒き塊からそのような声がもれでてくる。
「…にゅぅぅ~……」
ぴょこっと美希の腰につけているポシェットから顔をだし、
その姿を目の当たりにして少しばかりかぼそい鳴き声をだしている子猫のみゅ~。
ひききっ。
何となくものすっごく嫌な予感がする。
ひしひしと。
背後の黒き塊はただの塊であってほしかった。
切実に。
目の前にいる信じられない異形の存在。
その姿を目の当たりにしてその背後にいる黒き塊は絶対にアレではない。
そう自分自身に言い聞かせていた。
いたのに、今の声は紛れもないその黒き塊から発せられていたような気がする。
気のせいだ、といってほしい。
だがしかし。
「…あ゛~。そういえば、魔界においてはなんでかアレがあのように進化したのよね……」
その容姿をみて思わずぽそっとつぶやくディア。
まあ、たしかにあの種族は強い生命力をもってはいた。
なので永らく生きていたがゆえに、かつての姿のままによみがえらせた。
結果としてかつてとは異なり、なぜか知能をもった輩が発生したりもしたがそれはそれ。
「いやあの!さらっと怖いことをいわないで!ディア!
というか、アレってやっぱりアレなわけ!?」
「あ~。まあ、あの種族は基本的に生命力強いし。始めはたかが数十センチだったんだけどね~」
「それも怖いからっ!というか始めって何!?始めって!!」
事実、この惑星上においては、かつて石炭紀と呼ばれていた時代に九センチほどの大きさをほこる種族もいた。
「大丈夫よ。基本、あれらの種族は森林などに住まう種族なんだし。
ただ人間社会に溶け込んでいるものはそれなりに対応進化しただけの存在だから」
「それ答えになってないぃぃっ!」
ケレスにとってもっとも嫌いであり嫌悪する対象のソレらしきものがそこにいる。
…しかもかなり巨大な姿で。
あまり巨大すぎるのでその可能性を否定したい。
切実に。
「テケリ・ショゴスに所属する【フレイン】ね。
というかそれぞれの二大勢力の幹部がわざわざどうしてここに?」
二大勢力、といっても実質的にはすでに彼らの組織の頭首はすでに頭首たる存在ではありえない。
彼らの【念】が完全に喰らい尽くされた今、
彼らはあるいみ抜け殻ともいってもいい状態となっている。
彼らのもっていたあるいみ【野心】ともいえるその【念】はすべて【ハスター】と【ショゴリ】。
それらにそれぞれ吸収されている。
アスタロトにより審問にかけられるべく連れ去られている二大勢力の頭首たる存在達は、
いまだにその自我すら取り戻してはいない。
何やら現実逃避を全力でしたいがゆえに半ば叫んでいるケレスをさくっと無視し、
目の前にいるその二つの存在にと話しかけるディア。
そんなディアの台詞をきき、
「ほう。少しは我らのことを知っているようだな?…というか、きさま、何ものだ?」
感じる気配は人のそれとは異なり、完全に周囲の気配に溶け込んでいる。
自分達の頭首が忽然と姿を消し、自分達なりに情報を収集してみれば、
頭首達はなぜか審問官につかまり、今は裁きをうけている最中、らしい。
幾度か助け出そうと間者を紛れ込ませてはみたがことごとくその間者達すらつかまってしまった。
実力があるものでなければおそらくその【場所】にたどり着くことさえ不可能であろう。
カサ…カサカサカサ……
左右あわせて六本ほどある肢をわさわさとすり合わせつつ、
その半身を少しばかり上にとむけてこちらを見据えていってくるソレ。
「私はみていない、みていない、これは気のせい、そう、気のせいよ、気のせい……」
横ではなぜか完全に現実逃避を始めているケレスの姿があったりするのだが。
さもあらん。
何しろ嫌悪しているというか完全に嫌っている【いきもの】がしかも巨大なすがたで、
さらにいえばその黒き輝きをもつ巨体から人の言葉が発せられていれば現実逃避をしたくなるというもの。
「あ~。あなた達がこのゾンビ達を生みだしているわけ?
まあ道具にするにしても、餌にするにしても貴方達からしてみれば一石二鳥なんでしょうけど」
彼らの主食は主に死体。
ゆえにこの光景もあるいみ納得できる。
今、ケレス、ディア、美希、そしてアテナがいるこの場の周囲には、
どうみても腐っている、としかいいようのない様々な容姿をした動物などの姿がみてとれる。
それらがそれぞれに死体のまま動いているその様は、はっきりいって【ゾンビ】といっても過言でない。
ついでにいえばところどころ人型、のようなソレらも交じっているように見えるのは
おそらく気のせいではないであろう。
周囲にあったはずの木々はすでに朽ち果てており、
それらの木々もまたまるで意思をもったかのように根っこをずるずると這わせてさまよっている様がみてとれる。
かなりあるいみこの世のものとは思えない光景が確かに今この場においては広がっている。
もっとも、こういった光景は魔界などにおいては日常的な光景の一つなので
見方によっては異様とは言い難い。
この場に彼らがいるというのは予測はついていたというか知っていた。
自らの内のことである。
知ろうとおもえば全てを知ることも可能。
しかし、ディアからしてみれば気になるのはそこ、ではない。
「……それで?いつまで二人の中に隠れているつもりなんですか?
【超空洞】の【欠片】さん、といったほうがいいのかしら?」
自らが産みだしたともいってもいい存在達ならば内にいても違和感はない。
しかし、そこに異質なものが混じっていればすぐさま把握は可能。
それゆえの問いかけ。
「え!?それってどういう…!…って、何やつ!!」
アテナですら気づけなかった気配。
ディアの言葉とともに、
目の前にいる二大勢力の幹部達の体より黒き煙のようなものが噴き出し周囲を覆い尽くす。
しかしそれらはディア達にたどり着く前にもののみごとにかききえる。
まるで何かの意思がはたらいてかき消されたように。
黒き煙がある程度収まったそこにいるのは、真っ黒い姿をした何か。
しかしそれから感じる感覚はアテナもまったく未知、としかいいようのないもの。
補佐官や、また上司、そして父達から感じる感覚とはまた違う。
どこがどう違う、というのかはわからない。
しかし圧倒的な力の差をすぐさま感じ取り、その場にて警戒態勢を強めるアテナ。
もしも、ディアのいった言葉の意味をきちんとアテナが理解していれば、
警戒どころかとんでもない相手がこの場に出向いてきた、と理解できたであろう。
しかし、幸か不幸かアテナはその事実を知らない。
否、まだ知らされていない、といったほうが正しい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ベアード?」
思わずその姿を目の当たりにしてぽそっとつぶやく美希。
どこをどうみても、自分達のいた場所ではかなり知っている人はしっている
妖怪の類の姿のような気がするのは気のせいではないであろう。
何しろ真っ黒な球体のようなものにいくつかの棘らしきようなものがあり、
強いていうならば、巨大な真っ黒い棘の塊。
そこにぽっかりと光るような二つの目が異様に大きく存在している。
もしもこれが目が一つで口があれば確実に、某妖怪のベアードだ、と
それらを知っているものがいれば断言したであろう。
しかし、なんだろう。
それから受ける感覚はどこか懐かしく、それでいて悲しい。
悲しくて…そしてさみしくて、どこか何かぬくもりをもとめている。
そんな印象をぱっとみただけでふと抱く。
どうしてそのような印象を抱くのかそれは美希にはわからない。
しかし、なぜだか判る。
それはほぼ直感とでもいうのであろうか。
――自らを否定せずに受け入れてほしい。
そう心の奥底で願っているその心がなぜだか視ているだけで伝わってくる。
何?この感じは?
それはまるで…母からよく伝わってきた感覚とよく似ている。
私の傍からいなくならないで。
もう、二度と。
大切な私の……
自分を亡くなった娘の身代りに見立てていたことはしっていた。
母から時折流れ込んできていた心の感情。
どこかそれに似通ったさみしくて、それでいて受け入れてもらえないのならば全てをなかったことに。
どこか極端であり、しかしどこか理にかなっているようなそんな感情。
どうしてそんな感情がその黒き塊らしきものをみただけで流れ込んでくるのか。
しかしそれがなぜか当然だ、とおもう自分もそこにいる。
戸惑いはすれども、しかしどこか冷静な自分がいる。
ゆえに、的外れかもしれないが思わずどこか間の抜けたつぶやきをもらしている美希。
まあ、巨大な例の生物の姿にも驚愕したが、もはやこの世界は【何でもあり】とあるいみ割り切っている。
まだその容姿がいわく、【オオゴキブリ】と呼ばれていた輩であることが救いといえば救いであろう。
もっともそれでもやはり嫌悪という感情は先にくるが、
しかし、一時友人に誘われてやったことのあるゲーム内において同じような敵と遭遇したことがある。
ゆえにそちらについての耐性は少しは美希としてはついている…つもりである。
まあ、あんな巨大なソレを目の当たりにしてケレスが現実逃避をしている理由もわからなくはない。
おそらく耐性などまったくなかったであろうことは容易に予測がつく。
「…ベアードもどきに、さらにはゴ○モドキ…マーレラもどき…
ほんと、異形としかいいようがないし……」
さらにいえば周囲にはどうみてもゾンビもどきとしかいいようのない存在も多々といる。
よくこれで私、正気を保っていられるなぁ~…
どこか自分が自分でないようなそんな感覚を抱きつつも、
おもわずぽそっとそんなことをつぶやいている美希。
そんなケレス、アテナ、そして美希の様子をちらりとみてとりつつも、
「まさか直接、【欠片】で出向いてくるとは……。
でもあなたのような大物がどうして
わざわざこんな辺境の何もない小さな惑星に何か用事ですか?」
おそらくソレがその気になれば間違いなく、大姉様の元…すなわち、
この太陽系を構成している要ともいえる恒星から先にせめるであろう。
しかし、【欠片】は直接、ここ第三惑星にとやってきた。
なぜかはわからない。
しかし知識として知っていたが、他の家族、すなわち同じ惑星達ほど脅威を感じない。
本来ならば目の前にいる存在はそれだけの力をもっている。
それはわかっている。
しかし実際にそれが【欠片】そのものである、と理解してもどうしてかディアの中には脅威、
といった感情はまったくもって産まれない。
むしろどこか冷静にそれを分析している自分に多少驚いていたりする。
そんなディアの反応に少しばかり興味を抱いたのか、
「…?ただの人では……ん?この気配…なるほど。そういうことか。
めずらしいな。惑星の意思が人の姿をとって具現化している、とは」
ディアの気配のそれは周囲のそれと全く同じ。
それがわからない【超空洞】ではない。
しかし、この感覚は何なんだろうか。
惑星の気配とは異なる、何か。
確かに目の前にいる人間の少女の形をしたソレから感じる。
しかしそれが何かはわからない。
惑星の意思が具現化。
その言葉を聞きその場にて思わず意味を計りかねて一瞬固まっているアテナ。
ケレスに至ってはいまだに現実逃避中であるがゆえに
そんな【超空洞】の言葉は聞こえていない。
「それはそちらとて同じでしょう?わざわざ何でそんな黒き球体?
その気になればどんな姿すらあなたは可能でしょうに」
なぜか判る。
なぜかはわからない。
無は有であり、有は無である。
基本無である超空洞は何もないがゆえに何にでもなれる。
もともと形、というものは存在しない。
その意思一つでどのような姿にもなりえるもの。
―― そうして今の【世界】は出来上がっていったのだから……
ふとディアの心にそんな言葉が浮かんでくる。
その意味はディアにはわからない。
しかし、ふとそれは全ての始まりであり、きっかけでもあった。
ということだけはなぜだか理解できる。
本当になぜだが。
「それは我がききたいことだな。この惑星の意思たる存在よ。
わざわざ人の姿を模してまで何をなそうとしている?
命あふれる地であるこの惑星における意識体にしては汝の力は普通より強いぞ?」
そう。
今までみてきたどこの存在よりも、目の前の【意識体】の力は格段に違う。
おそらく、当人は判っているのかいないのか。
この【場】を構成している【主系列星】にあたる【あれ】よりも力は確実に…上。
普通はありえない。
構成している主たる星よりもその意識体の力が上、というのは。
なぜかそう感じるのは【超空洞】の気のせいか、はたまたそれが本質なのか。
それとも、この惑星における違和感がそのように感じさせるのか。
何やら知り合いのような会話をしている目の前のベアードもどきとディア。
そんな二人の姿を交互にみつつ、
「?あの?ディアさん?お知り合いですか?」
とりあえず無難な質問を投げかけている美希。
「あ~。まあ、私のようなものは必ず知っている輩ですし。アレは」
どうやら惑星の意思たる存在達の間では有名な存在であるらしい。
ディアの言い回しにそういう存在なんだ、とどこか違う部分で納得してしまう美希。
あるいみこの世界にきて在る程度感覚がマヒしてきている、といってもいいのかもしれない。
しかしそのマヒしている、という自覚が美希にはない。
それはいいことなのか、悪いことなのか、それは誰にもわからない。
美希における雰囲気とディアにおける雰囲気はどことなく似通っている。
だからこそ気づかない。
【超空洞】ともあろう存在が。
目の前に探し求める存在がいる、というのにもかかわらず、である。
【超空洞】もその意識をディアに向けているがゆえに気づかない。
もしこの場にて気づいていれば確実に行動を起こしている。
「……なるほど。そういうことか」
「つまり、我らが主はキサマに封じられた、とおもっても過言ではないようだな?
よもや【意思】がここにこうしている、とはな。あるいみ好機!!」
意思を葬れば自分達が惑星そのものを把握することも可能。
彼らはそのようにどこか勘違いをしていたりする。
確かに、彼らの目的は補佐官であり、そして各界の王ではあった。
しかし、しかしである。
自分達が存在する惑星の意思たる存在がそこにいれば話しは別。
【意思】になり変ることができれば、すなわち世界を掌握することも夢ではない。
むしろそのほうが手っとり早い。
【意思】の思いは世界の流れ。
【意思】の決めごとは世界の理。
何ものも【意思】の決めることには逆らえない。
それはその【惑星内】における全ての【理】に通用する。
ヴォイドとディアの会話をききつつ、目の前の人間の少女が一体【何】なのか理解し、
その口調に歓喜すらうかばせてそれぞれにいってくる【マルマラ】と【フレイン】。
しかし、二大勢力の幹部でもある彼らは気づかない。
【意思】とは惑星そのものであり、
ゆえに【意思】の消滅は惑星の消滅そのもの、である、ということに。
いつの時代もその知識を完全に理解していない輩は存在する。
そう、今の彼らのように……
「あ~。アテナ?とりあえずケレスを守っておいて?とりあえず結界だけは張っておくから」
「え?あ、は、はいっ!!」
硬直している最中、いきなり話しかけられ思わず直立不動で姿勢を正す。
補佐官ティアマトのことをたしかに目の前の黒き塊は【惑星の意思の具現化】と呼んでいた。
…それはすなわち、
惑星の意思をうけて王が行動していた、という仮説は奇麗さっぱりと否定されたも同意語。
そしてそれが示すこと、すなわち。
…前々からある存在達の間にてささやかれていた噂。
すなわち、補佐官は王と同一なのではないか…というその噂。
たしか、魔界においても同じようなことがいわれていた。
…つまり、それが意味することは…?
アテナの思考はかなり混乱ぎみ。
しかし、何よりも尊敬してやまない補佐官の言葉に従わないわけにはいかない。
今は自分の混乱する思考よりも命じられた職務をこなすのみ。
ゆえにそれらの疑念をどうにか振り払いつつ、
「補佐官様の命ですので。私はあなたの守護にまわります。ケレスさん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」
先ほどまで現実逃避に陥っていたケレスには今の事情がまったくもって飲み込めない。
しかしそれはあるいみ幸せとしかいいようがない。
何しろ目の前でおこっている事情は
世界に通用している常識を全てひっくり返す出来事、なのだから……
ようやく美希にしろ、主人公ディアにしろその本質がちらほらとv
ラストまであと少し!
気がむきましたらラストまでお付き合いいただけましたら幸いです。
Ps:ユニーク総合が五千を超えましたvありがとうございますv