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光と闇の楔  作者:
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光と闇の楔 ~授業開始とクラスメート~

今回は授業内容でこの世界の成り立ちと仕組みをば

誕生してはほろんでゆく生命と文明。

繰り返される命のリレー。

そしてまた、誕生もあれば滅亡もある。

すべては表裏一体。

何ごともいらないものなどないのだから……




        光と闇の楔 ~授業開始とクラスメート~




「はい。それでは今日からCクラスに編入してきたディアさんです」

教室にはいり正面にある教壇に向き合い、

正面をみつつ横に控える少女を紹介するこのクラスの担任教師。

ざっと部屋の内部を見渡せば数十人がそれぞれ机に座り正面をみているのがわかる。

今、ディアがいるのはこの部屋…Cクラスの教室の一つ、C組A、と呼ばれる場所。

Cクラスに振り分けられた存在達の中でも最も成績が優秀とされたものたちが集う場所。

つまりは少し頑張ればもう一つ上のクラスに編入することも可能なレベル。

年齢、そして種族は様々。

大体が何らかの目標をもってこの場にやってきている。

ギルド学校協会。

別名、ギルド学園とも呼ばれているこの地。

だいたい、○○学校○○支部、という形でくぎられている。

ちなみに、この場はテミス王国にある学園、ということもあり

テミス支部、といわれている場所でもある。

「ディアです。よろしくおねがいします」

とりあえずぺこり、と教室を見渡しながらもかるく頭をさげるディア。

長い髪は後ろで一つに束ねてくるっとひとまとめにしてあるので頭を下げても髪がたれることはない。

「それでは、ディアさんはあいているあの席に。それでは、さっそくですが授業を開始します」

使用する教科書などはすべてギルドより貸出されるがゆえに購入する必要はない。

もっとも、筆記具などに関しては各自で購入する必要があるのだが。

いわれるままにあいている席にと座る。

ディアの座った席は後ろから三番目、窓際ゆえに窓から外の景色が垣間見える。

「それでは、本日はこの惑星の成り立ちを説明いたします」

全員が席についたのを確認し、先ほどディアを生徒達に紹介した教師が教壇にたつ。

本日の授業はこの惑星の成り立ち。

そしてまた、周辺の惑星などの成り立ちについて。

「この惑星ができたのは今から五十億年前、といわれています。

  そして同時期に太陽、そして様々な惑星もできた、といわれております」

太陽が形勢されるとほぼ同時に太陽の周囲を回る惑星もまた誕生した。

「そして、今、私たちがいるのが太陽系、第三惑星、と呼ばれる惑星です」

きゅきゅっ。

教壇の後ろにある白いボードにいくつかの文字、そして絵を書き込んでゆく教師。

「さて、それでは質問です。これまでこの惑星上における悲劇はどんなものがあったでしょうか?

  答えられる人は手を挙げてください」

「はい」

「はい。ルナさん」

一人の女性が手をあげ、その女性を指摘する。

「一般には、恐竜絶滅、そして古代滅亡、そして科学滅亡、があげられます」

「はい。よくできました。そう。今ルナさんが指摘したとおり。

  かつてこの惑星上に巨大隕石が衝突し、

その当時反映していた恐竜、と呼ばれる巨大生命を滅ぼした。

  というのはまあ、絵物語などで語られる真実ですね。

  今いる竜族などといった生命体はかれらのゆかりがあるのかもしれませんね」

この地には様々な種族が存在している。

竜族、とよばれる種族もまたしかり。

「私たちが考えなければいけないのは、科学滅亡。

  これは私たち人類が引き起こした最悪の悲劇、といえるでしょう」

自分達が生まれるはるかな昔。

その当時栄えていた人類が生み出した文明。

その文明が開発した兵器。

その兵器によってこの地上における生命がことごとくに死に絶えた。

その事実はいまだにつきることなく語り継がれている。

もっとも、その結果、

地上の生命すべてが死に絶えてしまい、始めから生命誕生がやりなおされたのであるが。

「それでは、今、この世界がある理由を誰か説明…はい。アルナさん」

アルナ、と呼ばれた灰色のローブを着込んでいる男性が指摘されて席を立ちあがる。

「はい。この惑星の神が生命をいつくしみ、あらたな理を創りだしたからです」

「はい。よくできました。

  これから説明するのは今、アルナさんが説明されたこの世界の理について、です」

惑星の神、とよばれる存在。

それは惑星そのものの意思に他ならない。

そしてまた、各自の惑星においてもそれらの意思は存在している。

惑星と心を通わせる存在達にいわせれば、誰しも意思の声をきく素質はある、とのこと。

しかしその声を確実にきける存在はほんの一握りに過ぎない。

「今から約四億年前、この地上の生命はすべて死に絶えました。

  それが俗にいう科学滅亡、です。星の神はこのことをとても悲しみ、

  そして二度と同じ過ちを人類がしないようにそれぞれの【理】を創りだしました。

  そして、その【理】のもと、世界は再構築されました」

きゅっきゅっきゅ。

いいつつも再び白いボードに今度はいくつかの円を書き込んでゆく。

「まず、今私たちがいまいるこの地上、俗にいう【地界】、と呼ばれる地。

  そして天空にある【天上界】、そして精霊達が本来すまう【精霊界】。

  霊獣たちが住まう【霊獣界】、そして魂達が集う【霊界】、死者が集う【冥界】。

  そして闇の力を糧とする種族の住まう【魔界】。そして妖精達が住まう【妖精界】。

  基本はこれらの界によってこの世界の【理】は成り立っています」

それぞれに繋がる【門】があり、その【門】を通じ各【界】には移動ができる。

もっとも、【門】にと繋げる術もあるにはあるがそれはかなりの精神力を要する術でもある。

「基本的には、光の神は天上神、そして闇の神は魔王、もしくは魔神、と呼ばれています」

その呼び名は多々とある。

各地においてその呼び名は様々。

「そして、この地における生命の営みにおける原点ともいえる元素を司っている精霊達。

  精霊王を起点にそれぞれ、様々な精霊達が存在しています。

  妖精王に関してはお伽噺にもありますので、知っている人は知っているでしょう。

  女王がティターニア様、王がオヴェロン様。一般的に私たちにもなじみるある方々ですね」

きゅっきゅっきゅっ。

それぞれの円を描いた場所に各界の名前を書き込んでいき、

その横にそれぞれ説明した内容を書き込んでゆく。

「地の大地を司っている精霊王はノーム様。空気を司る精霊王はシルフ様。

  そして火を司る精霊王様はサラマンダー様。水を司る精霊王様はウンイディーネ様。

  この方々も各地によってその姿などが様々な形で伝わっていますが、

  基本、彼らのような精霊には元の形がなく召喚したものの希望にあわせて姿をかえる。

  というのが一般的な定義となっております」

中には自分好みの姿をしている精霊もいるのだが、一部の存在のみにしかそのことは知られていない。

ゆえに一般的な感覚ではそのように認識されている。

「あと、気をつけなければいけないのは妖精族に関してです。

  妖精達は基本、好奇心旺盛の種族ですが。妖精の中にも少しこまった性格なものがいることです。

  万が一、その妖精、ライネックを召喚した場合、

  はっきりいって術者を含め、周囲の安全は保障できかねます。

  もしあなた方が将来、召喚師などになりたいのであれば

  そのあたりのことは詳しく修学してください」

ライネック。

別名、不吉な鳥、ともいわれているこの妖精はかなり性格に問題がある。

ゆえに別名、邪悪な妖精、とすらいわれている。

「それと、要注意な精霊が他にもいます。

  見た目はかわいらしい仔馬の精霊、ケルピーです。

  彼らはその見た目で自分にまたがった存在をそのまま水にひきこみその肉体ごと喰らいます」

ぱっとみため、真っ白いかわいらしい仔馬であるがゆえに出会った存在達は瞬く間に気を許す。

大体水辺に生息していることが多く、気をつけていれば問題はない。

ないがそれでも毎年多少からずとも被害がでているのは否めない。

もっとも、その精霊を使役する方法もあるにはあるのだが、今はそこまで説明する必要はない。

「では、次に。先ほど出てきた古代滅亡にかかわりがあることです。

  四億六千五百万年前に起こりその当時反映していた恐竜を絶滅させた巨大隕石。

  今のこの【理】においては

  この地上に落下してくるまでにそういった類なものは消滅するようにできています。

  はい、それではその理由を…そうですね。ディアさん、いけますか?」

かつてこの地上を闊歩し反映していたといわれている巨大生命体。

しかしその進化に人類の手が加わっていた、ということはあまり知られてはいない。

もっとも、今をいきるものたちはとある理由でそのことを知ってはいるのだが。

しかしその存在達もそのとき宇宙より飛来した一つの隕石によってその命の幕を閉じた。

巨大な隕石落下が引き金となり急激な天候の変化がおこった。

そして、その変化をいきのびた存在達が次なる世代へとその命をつないだ。

…もっとも、その命をつないだ存在の先に

再び自らの手で破滅を招く、などとは思ってもいなかったであろう。

「はい。隕石は宇宙空間を渡ってきます。引力の関係でこの惑星にひきつけられますが。

  今のこの惑星における引力の定義はかつてと異なり、

  惑星外においてはその定義が適応されないからです」

名指しされたがゆえに無難な返事をかえすディア。

「たしかにかなりまとめていうとその通りではありますけど。

  今、この惑星上には月が二つ、ありますね。その月にもまた精霊が宿っています。

  月の精霊神、または月の女神、ともよばれている彼女達ですが。

  彼女達とそして各【王】達がこの地球のすべてを

  外部からの【破壊】に備えて結界をほどこしているからですね。

  一節にはそれぞれのこの太陽系における各種の星の神々とも連携をとっている、

  ともいわれています」

いいつつも、さらにボードにいくつかの円を書き込む教員。

そしてぐるっと教室を見渡し、

「今までに話題にのぼった存在達すべて、

  それらは心のありようで視れてまた出会える存在ともいえます。

  この地にいきるものたちすべてには【力】があります。その【力】を正しき方向へと導いてこそ、

  各自、【生きている】といえるでしょう。

  午後からはその力の定義ともいえる召喚術に関して教えます」

召喚術、といえどもその落差はかぎりない。

上位にいけばいくほど、『神』に近しいものを召喚できる、とすらいわれている。

…いるが、いまだに『神』を召喚した、という話しは一度も聞かない。

よくて【王】どまり。

「それと同時に、魔法と精神術との差を平行して実戦的に行いたいとおもいます」

精神術、とは文字通り、自らの精神…つまり魂のうちにと眠る力を駆使した術のこと。

そしてまた、魔法、とよばれるものは分けるといくつかの種類に分類される。

ひとつは、自然の力を借りておこなう自然魔法。

精霊達の力を借りておこなう精霊魔法。

ちなみに、自然魔法に関してはどちらかというと一般的にはなじみはない。

つまりあまり普及していない術でもある。

そしてまた、異なる存在より力を借りて駆使するのが白魔術、そして黒魔術、とよばれるもの。

白魔術は名前のとおり、聖なる存在達から力を借りて駆使するもの。

そしてまた黒魔術は魔なる存在より力を借りうけて駆使するもの。

しかしその魔なる力はときとしてもろ刃の刃となりえることから

これもまたあまり普及していないのも事実。

精神力の弱いものがその力を利用しようとするならばまちがいなくその力に飲み込まれ、

悪くて魂そのものを喰われることとなる。

喰われた魂の再生は不可能。

そのまま、その【力】の糧になる他はない。

逆にただ蝕まれただけの【魂】ならば冥界においてその魂の浄化、というものがうけられる。

そして浄化が終わった魂はあらたな【生】をうけるべく転生の輪の中にとはいる。

必要不可欠でない限り、転生後にかつての記憶が残ることはありえない。

「それでは、次に、天界の仕組みにうつりましょう」

詳しく説明するわけではないが

ざっとした大まかな仕組みのみ教えることにより各自の自覚が芽生えることもある。

かつてこのことをきちんと教えなかったがゆえに勘違いした存在達が多発した。

ということにも起因している。

天界、というだけでそこにたどり着けば不老不死になれるなど、

かつてはばかばかしい信仰があったりもした。

たしかに、不老、ということにはかわりはないが、何ごとにも不死、というのは存在しない。

この惑星とていずれは【死】を迎える。

それは誕生したからにはさけられない出来事。

魂の生死のバランスは転生署、と呼ばれる天界のとある組織によって管理されている。

それはどんな種族においても平等に管理されており、またそれゆえに大変な職場でもある。

命をないがしろにするような存在がでたりすればそこより処罰がかせられる。

一般の人々はその処罰に来訪するものたちを【処刑者】と呼んでいたりするのだがそれはそれ。

しかし大概は彼らが出向くことはなく、ほとんどが魔界よりの使者によって処罰はかせられる。

魔界に住まうものたちの好物は【魂の負】ともいえるもの。

それゆえに負の心にむしばまれたものを好んで喰らう。

もっとも、普通に生活しているかぎり、そんな彼らに目をつけられることもなければ、

魔界に存続する存在達としても

地上の存在達と同様に普通に生活している限りそのようなものは滅多と喰らうことはない。

「まず、天空には天神の元、様々な神々が存在しています。

  雷神ゼウス様、そして海神ポセイドン様など。

  ゼウス様に関しては主に天神の代理としても活動なさっておられるらしいです。

  海神様については天界にいつも存在されているのではなく、

  通常はほとんど各界の海域に存在しておられます。

  私たちになじみのある神々としましては、秩序と繁栄を司る神、ヴィシュヌ様がおられます。

  運命を司る神のノルン様。愛の女神イシュタル様。戦いの神、アテナ様。

  知識の神、オーディン様等など。

  他にも様々な神々が存在しています。

  これについては配布されてある【天界の書】を参考にしてください」

配布されている教科書については様々な界について説明がなされているものもある。

詳しくはかかれてはいないが基本的なことはそれに書かれているがゆえに

大まかの仕組みは理解できるようになっている。

ちなみにそれらの神々を元にした物語なども一般に出回っていたりするのだが。

「神々は気まぐれでもあります。万が一、神々に関係するような出来事に巻きこまれることがあれば、

  まずいえることは相手の機嫌をそこねないこと。これにつきます」

かつて機嫌をそこねて国が一つまるごとほろんだという記述ものこっている。

…もっとも、それを行った神は処罰をうけているのだが。

しかしそれは一部の存在にしか知られていない事実。

カラ~ン、カラ~ン……

しばし世界の成り立ちや仕組みなどを説明している最中、外より鐘の音が鳴り響く。

この鐘は昼どきを合図にしており、一般的にこの世界に用いられている時を告げる鐘の音。

時を刻む細工物もあるにはあるが一般にはあまり普及していない。

だいたいそれらをつかっているのは特殊な職業についているものがほとんど。

特殊技術を要する品をつくる場合にはそれを悪用しないようにお目付け役の妖精が使わされる。

妖精の要請をうけて精霊がその品に加護を与えることにより、

その品は初めて起動することが可能となる。

加護がつかない品はいくらつくってもただの置物にすぎずに絶対に稼働することはない。

「休憩時間にはいります。次は大陸についての説明にいきますね。各自予習をしておいてください」

ずっと内容を頭にいれようとしてもどうしても人の脳には限界がある。

適度に休憩しつつ学んだほうが覚えやすい、というのもある。

これは一般的なことで中には逆に一気に覚えたほうが能率がいいものもいる。

人の能力は十人十色、誰しもが同じではない。

ゆえに基本的に一刻ほど学びしばしの休憩の後にと次の授業にはいるようにとなっている。

「…大陸…か……」

クラス担任の言葉をきき、ふと窓の外を見上げる。

普通の存在にはみえないが、空には別の大地が存在している。

いわゆる別次元、とも天界、ともいわれているその地。

地上からは認識されることはなく、逆に天界からは地上を認識することは可能。

もしも今のこの世界で惑星の外にいこうとするならばまちがいなくその天界との壁にと阻まれる。

万が一外に出れるとすればきちんと【許可】を取らなければ外にでることはできない。


かつてこの惑星に住まう者たちは、この場をこう呼んでいた。

太陽系第三惑星、地球。

銀河系、と呼ばれていた

約十万光年の直系をもつその銀河を構成する約二千億個の恒星と呼ばれる星の一つ。

それが太陽と呼ばれしもの。

そして太陽系、とは太陽の重力の影響によって構成されている天体の集団のことを指し示す。

太陽を中心とした惑星の数は数個。

そして三番目の惑星が地球、とよばれしもの。

水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星。

一時期は一部の惑星が太陽系から削除されたりもしたが基本はこの認識でかつては通っていた。

もっとも、これ以外にも太陽系を中心とした惑星はあといくつか存在している。

そして太陽系が位置するのは、それが存在している場。

つまりは銀河系、とよばれしものの中心から2万8千光年辺りに位置に存在し、

銀河系の端の位置にと存在している。

しかしそれらの知識はすでに過去のもの。

今はそのことを知る存在はごくわずか。

かつての人類は惑星の外にまでその知識を伸ばそうとその手を広げた。

結果として自分達が住まう惑星そのものを壊滅させるまでに至ってしまったのだが……

それまでは表にでてくることなく意識のみで存在していた各種の【意思】達。

話し合いにより姿を【固定化】することにより、『命』の幅を広げることにした。

一度人類の手により、

そしてまた星の意思により地上が壊滅してしまったこの地上は一度すべて浄化され、

そして新たな歴史を刻んでいる。

かつては空に一つしかなかった月は二つとなり、

そしてまた空には【天界】という特殊な場所が創られた。

地上においては基本的には六個の巨大な大陸を中心に成り立っている。

個々たる大陸もまたあるにはあるが。

大陸の構成具合は至って単純。

北極点と南極点、とかつていわれていたこの地球における磁場の拠点。

そこを中心として二つの大陸があり、そしてそれを取り囲むようにして四つの大陸がある。

そしてその中心にそれぞれ二か所、中央部分に特殊な大陸が存在している。

それが今の地球の在り方。

種族もかつてとは比べ物がならないくらいに存在している。

もっとも、一度死滅してしまう前に人類が滅亡させてしまった様々な種。

それらについても再び【命】を与えられて存在していたりするものもある。

そして自然においても然り。

砂漠地帯もあれば山脈地帯も多々と存在している。

そして一番かつてと異なっている部分はどの大陸においても必ず火山帯がある、ということ。

かつてを生きていた記憶をもつ【伝道師】達からしてみれば今の世界はまさしく、

かつて彼らがよく娯楽として活用していた『異世界』というのにあてはまるかもしれない。

それほどまでにこの地球は様変わりした。

それは当時でいうところの西暦、二千五百十一年のこと。

そしてまた、人類が新たな兵器を開発したのが二千十一年。

それから五百年をかけて人類は宇宙に進出していこうとした。

否、していた、というほうがいいのであろうが。

しかし突如として襲った『滅び』に彼らは死滅した。

彼らがつくりだした【兵器】とそして【ネットワーク】ともいえるブログラムシステムの暴走で。

その暴走が数名のただの考えのないものたちが創りだした悪意あるウィルスブログラムによるもの。

というのは今の時代をいきているものたちのほとんどは知らない。

否、知るよしもない。

すべての現象において精霊、そして妖精の加護を加えることにより

【生命体】達の行動範囲が狭まった。

もっとも、【地震】【噴火】といった出来事については、

そのことがおこる事前に精霊や妖精達から生き物達に伝わるようになっている。

大陸にはそれぞれその大陸を治める神々がおり、その神々のもと神託が下る仕組みとなっている。

ゆえに人々の信仰も様々。

中には信仰を重要視して戦争にまでいたることもあったりはするが、

その場合には天界より介入があり、大規模な戦争にならないように管理されている。

…もっとも、それでもやはり人、とは愚かなのか自分達の信仰が一番。

とばかりに愚かな行為を繰り返しているのではあるが……




「ねえねえ。ディアさんっていったわよね?ディアさんは将来、何になるかきめてるの?」

そんなことをおもいつつも窓の外をみていたディアにと話しかけてくる一人の少女。

見た目はおそらく十代後半くらいであろう。

淡い栗色に近い茶色い髪とそれよりも少し薄い瞳をもち少しウェーブのかかった髪が印象深い。

「え?私?えっと……」

「私はフラウ。よろしく」

「え。あ。よろしく。

  私はとりあえず資格をとったら旅の商人みたいなのをやろうかな~とはおもってるけど」

にっこりとほほ笑みかけてくるその少女にとりあえず聞かれたことについては答えるディア。

「旅!?この世情なのに!?」

実力のあるものですら旅をするのは今の時世はかなり危険といえる。

それでなくても最近は、ゾルディとよばれし魔物が増えている、というのに。

「薬を売って旅をしようか、とおもってるの。各地の様子をみながら」

「薬?ディアさんは薬の調合とか得意なの?」

「まあ、そこそこ」

たしかに旅人や冒険者などに旅の商人の需要は高い。

しかしそれは需要が高いということは、それだけ外が危険である、ということ。

「何かアテがあるの?」

アテ、とは身をまもる手段が何かるのか、ということ。

それでなくても目の前のディア、という少女は見た目、かなりかわいい。

かわいい、というかよくよくみればはっきりいって美少女の部類に入るのは疑いようがない。

そんな女性が一人旅をしていればまちがいなくゴロツキなどの餌食となる。

「ま、ね」

「う~ん。でもまだ時間はあるんだし。それは危ないから考えたほうがいいとおもうけどな~」

苦笑しつつもこたえるディアにうなりつつも腕をくみしみじみつぶやくフラウ、と名乗った少女。

「そういうフラウさんは?」

「私?私は家族の後をついでお店をつぐつもり。それでここにきたんだ~」

店を継ぐにも資格は必要。

この総合科ならば様々な資格を選択することが可能。

だからこそこの科を選んだ。

ここにくる存在達はそれぞれに自分の将来を考えてやってきている。

中にはとりあえず、という目的でくるものも多々といるが。

それでも学ぶ気がないものはまず入学などしない。

「お店?どこにあるの?」

「この王都から南に数十キロ離れた場所にある小さな町なんだけどね。

  その町の学校よりこの王都のほうが設備や選択科目が充実してるからここにきたの」

たしかに、地方の学校ならば細かな科目などが削られている場合が多々とある。

それは人員などによる影響なのだが。

その地区にあわせた科目を選択し基本、ギルド協会は運営している。

「ならしばらくは寮生活?」

「うん。ディアさんは?」

「私も寮だけど。だけどギルド寮のほうね」

とりあえず入学がきまったときに寮の手続きは行っている。

一般寮とギルド寮の差は、ギルドにて学費を工面するか、しないか、基本この二つにつきる。

ギルドにて依頼をうける予定、もしくは確定の生徒はギルド寮のほうにと所属することになる。

一般寮のほうはその半面、何か依頼、もしくはアルバイトなどをする場合は許可制となる。

そしてまた、ギルド寮のほうには門限はないが、一般寮のほうはしっかりと門限が定められている。

その門限などを破った場合、それなりの罰がかせられる。

あまりに門限をやぶるものなどは最悪、学校を退学させられるおそれもある。

退学させられたとしても再び試験をうけて入学できなくはないが、

やはりそれなりに監視役はついてしまう。

また、普通よりも倍の修学量がかせられる。

「そうなんだ。とりあえずこれからよろしくね。ディアさん」

くすっ。

初対面だ、というのにかなり人懐っこい。

それゆえにくすり、と笑みを浮かべつつ。

「こちらこそ」

かるく手をだし握手を交わす。

と。

から~ん…から~ん……

休憩時間の終わりをつげる鐘と、そしてまた同時に次なる授業開始の鐘の音が鳴り響く。

がらっ。

それと同時に教室の前の扉が開き、次なる授業担当の教師が教室の中にとはいってくる。

「はいはい。鐘がなりましたよ~。それぞれ席についてくださいね」

ぱんぱん。

手をたたき、ばらばらと席をたっていた生徒達がそれぞれの席にともどってゆく。

全員が席にもどったのを見届けたのち、

「はい。それではこれから地理学に入りたいとおもいます」

いいつつも、きゅっ、きゅっ。

正面のボードに世界の地図を簡単にと記してゆく。

上下に一つづつの大きめの大陸。

そしてそれをかこむような四つの大陸。

そして中央にある一つの大陸。

細かな大陸などはどうやら記してはいないらしい。

「それぞれの大陸には精霊達が直接治めている地もあります。

  いい例が闇の精霊の治めている地は年中闇の中、という形ですね」

いいつつも、とんっと大陸の一つの一点を指差し説明する。

いくつかの箇所でそれぞれの精霊が直轄的に治めている場があり、

その場についてはその精霊の恩恵が大きく得られる。

精霊が直接存在している【場】については惑星にとっても大切な【場】でもあるのだが。

その事実は普通の存在達には知られてはいない。

その精霊が直接治めている地にでむき、精霊の加護をうけよう、とおもう輩も少なくない。

もっとも精霊もきちんと性格を見分けて加護をあたえるかどうかは選ぶので最近は悪用されていない。

かつてはそれらを決めずに誰でも加護をあたえており、

その結果かなり混乱したこともあったりしたのだが。

今ではきちんとそれなりの【盟約】ができてそのような出来事は起こっていない。

ぱらっ。

地理学、と書かれている教科書を開き、その表紙をちらり、とみる。

この配布される教科書にはその科目ごとを担当する教員の名前が記されている。

ちなみに○○所属の○○教師、ときちんとどこに所属しているのか、というのまで明記されている。

この教科書には特殊な術がかかっており、その名前のところのみは、

担当がかわったときなどは術をかけなおすことにより名前が一斉に変化する。

つまりは、一冊でも名前を変更すればおのずと同時記入された名前が変更される、という仕組み。

名前の書き込みは術によって行われているのでできる事柄。

地理学を示した教科書には様々な地理に関して大まかな説明がなされている。

その土地の習慣や宗教、そしてその地における名産品や観光名所等など……

このご時世、観光めぐりをするようなのはかなりのお金持ち以外にはいないのだが。

それでもやはく生き抜きに観光にでかける存在達も多々といる。

知っているのと知らないのと、ではやはり違う。

だからこそ、基本的なことはこの学校でもきちんと教える。

入学時期が一致していないゆえに、それまでに修学していない事柄などもありはするが、

基本、様々な試験の結果からその能力を判断し、

卒業できる値になればたとえそれが入学一カ月であろうが、

数日であろうが卒業許可は与えられる。

…もっとも、そういう存在は入学試験のときに判るので、そのまま卒業資格が与えられるのだが……

この世界の主たる地理についての授業内容が生徒達にどんな影響をあたえるかなど、誰にもわからない。

ただ、わかっていることは知ることにより、生徒達の選択の幅がひろがる、ということ。

何も生活するのはここ、テミスでなければいけない、という決まりはないのだから……


  






副題が違ってたので訂正です(気づくのがおそくなりました・・・

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