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光と闇の楔  作者:
59/74

光と闇の楔 ~光と闇と戸惑いと~

ようやく、邪神三兄弟も参加ですけど、戦闘シーンはオブラートv

と明言しています以上、さらっと流しております。

まあ、ゼウスには尊い生贄になってもらっている、という認識で間違いないです(まて



「ふぅ……」

どうにかなったことに安堵する。

とりあえず、全ての命あるものに、無意味な恐怖を抱かないように。

と念波で伝えた。

かの存在…ゾルディの発生源、

それは何よりも強い恐怖や悲しみ、そして苦しみといった感情が核となる。

中には狂気の心を元にして産まれる輩も多々とはいるが、

大概、そういった存在は魔界によく発生する。

世界各地にばらまかれていた、【魂の欠片】はどういうわけか、

今まで誰も、彼の子供たちが呼びかけても反応がなかったというのに。

永き眠りから目覚めた彼自身がどうやら自らの魂の欠片をどうやったのか集めたらしい。

…おそらく、『神々の黄昏』を完全な状態で使用したのであろう、というのが上層部の意見。

ゾルディ発生はいつものことなので、別段問題なかったものの、

今現在、もっとも問題となっていたのは、かの【種】の存在であった。

「…というか、ロキが目覚めたのはいいのか、悪いのか……」

おそらく、この一件が終われば彼による何らかの行動があるであろう。

以前のように世界を巻き込んだ争いにならなければよいが。

そのためには、自分と彼とで誠心誠意、とにかくひたすらに謝る必要性があるのであろう。

「…ただ、あのロキが大切にしている彼女を味見してみたかっただけなんだがなぁ…」

そうつぶやくあたり、いまだに完全に反省している、とはいえないであろう。

全ての欠片の反応が消えた、と報告があったのがつい先刻。

ゆえに、思わず執務室の椅子にとおもいっきり体を預けたその刹那。

どくっん。

間違いようのない感覚がその魂を震わすほどに感覚全てを巻き込んで、空気そのものが振動する。

「…こ…この波動は…王!?」

しばらく姿を消していた彼らの王。

先日の力の行使からどこかにいるのは判ってはいたが、それがどこかまでは特定できなかった。

波動はゆっくりと、世界に広がっているのか、とある一点より波打つように広がってきている。

「…発生源は…地上界!?」

今までいくら捜索隊を向けても発見できなかった、というのに。

しかし、この力の波動は王以外においては、補佐官しか扱えない。

扱えないどころか、他の存在が不用意にこの力に触れるとまちがいなく魂そのものから消失してしまう。

「ゼウス様!今!」

ばたん!

扉をあけて走ってくる数名の天界人達。

「わかっている。とにかく、我は王を迎えにいってくる」

どこにいるか、はたまた力の発生源がわかればどうにかなる。

万が一、姿を隠して力を隠していたとすれば、自分以外の存在だと見つけにくいであろう。

何より気にかかるのは、かの波動を感じて反旗組織に所属する存在達が黙っている。

とは思えない。

彼らの究極の目的。

それは、王を害し、自らが王になり変ることなのだ、と彼は見抜いている。

それゆえに。

「あとはホルスにまかせる!我はポセイドンとともにでる!」

『はっ!!』

一人で行動していても、まちがいなく隠れるつもりならば撒かれてしまうのは先刻承知。

ゆえに、常にその身を様々な界においている兄であるポセイドンと共に行くことをきめる。

彼ならば万が一、見つけたとして界を渡って移動したとしても、その能力でその波動を感知することは可能。

それゆえの決定。

と。

「ほぅ。今の波動はお前も気がついたか」

ふと気がつけば、いつのまにか目の前に背の高い一人の男性がたっている。

「ポセか。あれを気づかないほうがどうかしてないか?」

「はは。違いない。で、我とお主でかの御方を迎えにいくつもりなのだろう?」

「・・・・・・・・・ああ」

この兄は自分の考えを手にとるようにわかるのか、毎度のことながら先を、先を読んでくる。

たまには出し抜いてみたい、とは昔からおもっているが今までそれが成功した試しはない。

…唯一、ある、といえば自分が月の抱擁を手にいれようと行動を起こした時くらいであろう。

もっとも、それはそのまま世界の混乱に結び付いたのだが……

「では、いくか」

「あとは任せたぞ。ホルス」

いつのまにかその場にやってきていた光と闇を司る神であるホルスにそう宣言し、

そのまま、二人の姿は、オリュンポス山の頂上に位置している、

彼ら主たる原初の神々、そしてまた神々に連なる存在達が生活しているとある宮殿より姿がかき消える。


彼らが王、と仰ぐ存在は、秩序宇宙の代弁者、ともいわれている崇高なる存在。

その意思は彼らが生きているこの【惑星】とも同意語とすらいわれている。

しかし、彼らはよもや、

王の意思そのものが、この惑星の意思そのものであることをいまだに知るよしもない……  





          光と闇の楔 ~光と闇と戸惑いと~





ドォォッン!

バリバリバリっ!

空を切り裂かんばかりの轟音と、白き稲妻と黒き稲妻。

それらが同時に上空より発生し、その場にたゆたう二つの影にと直撃する。

『ほぅ…これは…』

『どうやら、我々の目的の一つがやってきましたね』

手を結んだ段階ですでに意思疎通はできている。

今、彼らがその身に取り込みたい存在。

それは、王はむりだとしても、補佐官、そしてまた、側近達。

精霊達に関しては、一度そのありようを堕とさなければ、自らの身に融合させることはできない。

自分達の駒である組織のトップに呼び出された。

自分達を呼び出すこと、それはすなわち、自分達に取り込まれることだ、と彼らが理解していたかどうか。

一度取り込み、その体を吐き出して、今では完全なる自らの駒とかしている組織の頭首達。

一度、体に取り込んだものは、取り込む前の姿のままに吐き出すことも可能。

しかし、一度取り込まれた存在は絶対的な服従を強いられる。

自我などを保ったままであるがゆえに、中には自らの身を消滅してくれるように、

力ある存在に願うものも多々といる。

…もっとも、大概は彼らを召喚する前に彼らのことを自分なりに調べ、

その危険性を察知し、それにささげる贄を用意して召喚するのが常、なのだが。

どうやらこのたびのそれぞれの組織の首領達はそういったことまで考えが回らなかったらしい。

つまり、自分達そのものが一度彼らに取り込まれ、完全なる僕として存在する形になっている。

…もっとも、その僕、という事実に気づいていない、というのもまた事実なのだが……

「…こちらの楽しみを奪わないでほしいんだけど。

  それはいいとして、ここであったが百年目!ゼウス!覚悟!」

「って、まてぃぃっ!今はそんな場合ではないだろうがっ!!」

ちらり、とその攻撃を仕掛けてきた存在の存在を一瞥しただけで確認したのち、

すっとその手にしっかりと銀色に光る杖を持ちながらも、

そこに浮かんでいる人物にむかって攻撃を仕掛けるロキ。

そんなロキに対してあわてて何やら叫んでいるゼウス、と呼ばれた男性。

「いや、ゼウス。それはキサマの自業自得だ」

そんな彼の横で、漆黒の十二枚の翼をはためかせ、冷めた視線をむけつつも、

淡々といいきっている一人の青年。

「お父様、あいつの体、腐らせてもいい?」

そんな彼の横で、何やらとてつもないことをいっているような気もしなくもない、ヘルの姿がみてとれる。

「…サタン殿。何であの色情魔と一緒にこられたんですか?」

彼がここに出向いてくれば、彼ら父娘の反応がどうなるか。

目に見えていたであろうに、その場に浮かぶ、漆黒の翼をもつ青年にと問いかけるアスタロト。

「…え?え?って、今度は、天界と魔界の側近代理たち!?

  というか、何でこんなところにお父様が!?」

一人、いまだに状況が完全に理解できないらしく、いまだにパニックになりながらも、

それでいて、周囲にぽこぽこ、といって過言でない、ひたすらに空間より出現する異形の存在達。

それらを相手にしていたアテナはその場に現れた二つの人影をみて思わず叫ぶ。

一人は、魔界の実力者、王と補佐官に次ぐ実力者と名高い、暁の魔王。

そして、もう一人は、彼女の父であり、王と補佐官に継ぐ実力者、

娘の目からみても、女癖が悪すぎると断言できる雷神ゼウス。

そんな父である雷神は、現れたと同時、

ロキとヘルにより同時攻撃をうけている。

雷でどうにか防いでいるようにもみえなくはないが、おそらく確実に負けるであろう。

といって、援護する気はさらさらない。

「アスタロトか。というか、ここから王の気配を感じたのだが……

  お主、何かしらぬか?」

ここにきた理由。

それはここ、地上界、しかもテミス王国付近から間違えようのない王の力の波動を感じたがゆえ。

視界の端のほうにおいては、


「って、話しをきけえっ!」

「問答無用っ!」

「女の敵!覚悟!」


何やらロキ親子に追いかけられているゼウスの姿がみえなくもないが、

そんな光景はさくっと無視し、淡々とそこにいるアスタロトにと語りかけている翼をもつ男性。

麗しい、といっても過言でないほど整った顔立ちは、老若男女、全てのものを虜にするほどの美貌の持ち主。

ロキと並んで天界、魔界ともに断言できる美貌の持ち主。

「ああ。それなら、これが原因、だ。補佐官様より預かったこの品の波動だろう。おそらく」

いいつつも、ふわふわとその場に浮かんでいる小さな球体を指し示すアスタロト。

そこには、黒と白、白き光と黒き光。

交互に光を放つ小さな球体が一つ浮かんでいたりする。

その珠より発せられている力の波動は紛れもない、彼らの【王】の気配を示す波動。

「補佐官様…って、ルシファー様がここにおられるのか!?

  というか、どこに!?いきなりルシファー様と王が消えられて我らがどれだけ混乱しているかっ!」

さらっというアスタロトの台詞に思わずくいつくサタンであるが。

「そういわれても。私も詳しくはしりませんよ。

  詳しくしっているのはおそらく、王国の中にいる伝道師サクラ殿くらいでしょう。

  詳しくしりたければ、サクラ殿に聞いてみるのですね」

もっとも、彼女に物ごとを乞う場合、実験体になってしまう可能性を考慮して問いかけねばならないが。


「父上、我らも協力します!」

「きさま!ゼウス!全ての元凶!」


何やらふと別の声が聞こえてくる。

声のしたほうをみてみれば、巨大な蛇と巨大な黒き狼もが加わって、

二人と二匹による攻撃がゼウスにと繰り出されている光景が視界の端にはいってくる。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

一瞬、その光景をみて思わず無言になるものの、

「サクラ殿が?…う、それはまあ、実験体になるのが嫌なのでおいとくとして。

  ところで、どうしてお主やアテナ殿がここでこうしてハスターとショゴスと戦っている?」

まさか彼らの組織の始祖ともいえる存在がここにこうして出てきている、とは思っていなかった。

さくっと何やらいまだに攻撃の音と悲鳴が聞こえてきているような気もしなくもないが、

とりあえずそちらに関しては完全に無視することにし、今の状況を把握するためにも問いかける。

先ほどまで攻撃をしかけてきていた二つの存在もまた、

いきなり自分達そっちけので戦い始めたとある存在達のほうをしばし眺めつつ、

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば、かつてかの存在の妻をあの色情魔が襲ったといったか?』

『そもそも、月の抱擁に手をだそう、とは雷神も馬鹿、ですよね』

何か別の意味でどうやら彼らにすら呆れられているらしい雷神ゼウス。

彼らもまた、そちらの攻撃に加わる気はさらさらないらしい。

数多とあった念の集合体。

それが自分達の存在のありようだ、と自覚している彼らだからこそあるいみ冷めているところは冷めている。

それでも、彼らが生まれた経緯は全てを無に、という概念が基本となっている。

かつての大異変のとき、消滅を選ばなかったのはほかならぬ自らの意思に他ならない。

暗闇に意識が呑みこまれ、次に目覚めた時、今の肉体を得ていた。

幾度も悲劇が起こるのならば、静かに眠りについていればよい。

それが、ハスターの考えであり、そしてまた、ショゴスの考え方としては、

全てが一つの意思のもと、強制的に統治されていれば悲しみも苦しみも関係はなくなる。

そのような概念のもと、彼らは今の今まで存在している。

それでも、かつての自分という形を構成していた数多の【念】はすでになりをひそめ、

それらの念はすでに昇華されて久しい。

ゆえにこうして、新たな念や意思を取り込むことでその体を保っている【ショゴス】と【ハスター】。

ハスターが僕として使用している【バイアクヘー】も、

ハスターが取り込んだ【念】に新たな器を与えているに過ぎない。

念波で会話を交わす、ハスターとショゴスとは対照的に、

実質、四対一で逃げ回っているゼウスの姿が見て取れる。

しかし、そんな彼に力をかそう、という奇特な存在はこの場にはみあたらない。

むしろ、

「しかし…あるいみ、組織の始祖であるこの二つの存在がここにいる。

  というのはあるいみ好機、か?今ここで一度浄化してしまえばしばらくは身動きとれなくなるだろうし」

今できること。

王や補佐官がどこにいるかも気にかかるが、何より今は目の前の彼らをどうにかするのが先決。

伊達に、暁の魔王といわれ、側近代理を務めているわけではない。

淡々と現状を簡単に把握したのちに、今後の対策を打ちだすサタンに対し、

「まあ、我らは補佐官様より遠慮はいらない、と申し使っているからな。

  この背後の王都に関しても、補佐官様が簡易的に結界を張られているから問題はないとおもうぞ?」

事実、簡易的な結界、と当人はいっているが、その結界を解除できるものなどいはしない。

いるとすれば、彼女…否、意思と同等たる存在か、もしくはそれ以上の存在のみ。

中にいる【次代の器】がその気になれば簡単に解ける代物ではあるが、

その当事者である【器】の美希がその方法を知らないのだから実質、この結界が解除される恐れはない。

「そうか。では、遠慮なく我もまたいかせてもらおう。

  ショゴス。そしてハスター。古の契約にのっとり、お前たちのその身を一時浄化するっ!」

契約。

それは彼らがうまれたときにつけられている聖訳。

その契約の内容をしっているのは、初期に生み出された魔王や神々、といった存在達のみ。

『我らも我らとていじがある』

『今度こそ、暁の魔王、その身を我がうちにっ!』

何やら、またまた話しについていけないアテナを置いてけぼりにしつつ、

周囲に意識を保っているのすらやっと、というほどの殺気と威圧感が膨れ上がる。

「…あ、あのぉ?…私、王国の中で人々守ってもいいですか?」

このままここにいたらまちがいなく自分の身が危うい。

戦乙女という役職にあれど、実力差などは嫌でもわかる。

そもそも、この場にいれば自らの存在すら確実に消滅してしまいかねないほどの圧迫感。

「ん?ああ。そうだな。とりあえず、サクラ殿達の護衛をたのむ」

「は、はいっ!」

この場から離れられることにほっとしつつも、ちらり、といつのまにか大地にころがり、

びくり、とも動かない父の姿を傍目に収めつつ、

「…ま、自業自得、だし」

そういいきり、すっと結界の中、すなわち王都テミスの中にと戻ってゆくアテナの姿。

アテナが王都に入ると同時。

王都を中心とし漆黒の空間が出現する。

それらは瞬く間に王都すらをも包み込み、周囲は漆黒の空間にと包まれてゆく……



光と闇。

聖と魔。

それらは全て表裏一体。

片方が偏っていれば確実にどこかに歪みが生じてしまう。

それは唯一、数多の生命が残った惑星だから試せる事柄。

「…連絡係りに【ミ・ゴ】がやってきていなかったら、すぐさま対処ができなかったわね……」

他の太陽系、すなわち、こことは別の恒星群より、この地にたまたま鉱物採掘にやってきていたとある存在。

かの存在の報告によりこの地に偵察隊がやってきているのが事前に判明した。

それが功を奏した、といえばそうしたのであろう。

完全に恒星の引力圏内に入る手前での攻防がどうにかこうにか繰り広げられている今現在。

かの存在はこの地に採掘にやってくるときの拠点として、

冥王星…すなわち、第九惑星における小惑星にその身をおいている。

彼らの呼び方において、第九惑星の呼び方は、【ユゴス】。

彼らは独自の進化を遂げており、ここ太陽系の言い方でその容姿を言い表すならば、

甲殻類が進化した、菌類の一種、としか言いようがない。

もともと、彼らの種族は菌とよばれし存在から進化しており、

しかし彼らもまた独自の科学力を発展させ、それゆえに数多とある恒星群にいろいろと出張を果たしている。

ここ、太陽を中心としている恒星群においては、彼らにとって貴重なとある鉱物がとれるらしく、

昔から定期的に彼らの種族はこの恒星群へとやってきている。

彼らが移動する際に用いる【次元の門】をヨグ=ソトース、といい。

かつて地球上で発表されたクトゥルフ神話の【門にして鍵】の元となった存在でもある。

その、神話の概念は、今の地球上の理に反映され、【門】こと【ソト=ホース】を生み出すきっかけともなっている。

ミ=ゴが生息している恒星群の力はこことは比べ物にはならないほど。

恒星群の力は、そこに生息する命の数で決まる、といっても過言でない。

命が発する様々な感情。

それらが惑星を維持する力となりえる。

生きようとする意思。

そして未来へ続こうとする意思。

全てがあわさってこそ、初めて、【惑星】は【星】たるものとなる。

かつて人類が起こした過ちのこともあり、ある程度人類の抑止力も必要。

という意見が出て生みだされた一つの神。

「ナイアルの力も今回は役にたった、としかいいようがないわね」

「たしかに。アレを創りだしたときには、いろいろと意見でたけどね」

基本的に自ら積極的に【世界】とかかわりをもち、

人類が自ら破滅にむかうように暗躍する神として生み出された存在。

千あまりの体を有し、その体の端末はこの恒星群の広範囲においてちりばめられている。

別名、這いよる混沌。

確かに今までも人類という知的生命体による破滅が訪れかけていたのは事実。

惑星一つならまだしも、空間そのものすら危機に瀕する結果となりえた行き過ぎた文明と科学力。

それらを抑制する目的で、この恒星内においてのみその能力が発揮するようにと創られた。

…よもや、その存在がこうして活躍しようとは、今の今まで夢にもおもっていなかったが……

【ナイアルラルトホテップ】。

かの存在はこの恒星群そのものを守る最後の砦。

全ての惑星の意思が同意したときのみにその姿を現し、その力を有効に発揮することができる存在。

「とりあえず、このたびの偵察隊は全部駆逐し終えたみたいね?」

どこをどう探索しても、不純物が入り込んでいる気配はまったくもって感じられない。

偵察隊が出向いてくることは時々ある。

ここで彼らを撃退しても、すぐに本隊がくる、というわけではない。

そもそも、かの偵察隊は大概どの銀河などにも派遣されている、ときく。

駆逐されるのはいつものことなので、相手がそれに関して気にとめているかどうか、が問題となる。

ただの観察目的ならば、別のその偵察部隊が全滅させられたとしても、相手の本体は気にもとめないであろう。

おそらくは、不純物を撃退した、という認識だけにとどまるはず。

しかし、万が一、ここにかの存在が移動してきたという歪みを感知していたのならば全力をもってして、

この地に対して攻撃をしかけてくるであろうことは明白。

「とりあえず、三番目は今の内乱をどうにかはやくおさめなさいね。

  私は私のほうでここの【マァト】様にお伺いを立てにいってくるから」

念派で問いかけられるような生易しいものではない。

かといって代理をたてられるものでもない。

ならば、自らの意思を分離して、自らが報告にいき指示を仰いできたほうがはるかに早い。

「大姉様。ミ=ゴさんにたのむの?」

彼が出向いてきたのは、【次元の門】を通じてのはず。

その門をつかえば、すぐさまにこの太陽系を含む、全ての源。

この銀河の中心部にたどり着くことも可能。

「それしかないでしょ。とりあえず、各自、警戒はおこたらないように。

  ナイアルには常に警戒態勢でいてもらいましょう」

力が及ぶ範囲外と範囲中。

それら全てにかの体ともいえる意思を配置し常に警戒は怠らないようにほどこしておく。


太陽系と呼ばれし恒星群の引力圏が及ぶぎりぎりの場所。

その境目、ともいえる空間において、実体化した意思達の会話がしばし繰り広げられてゆく――



ばたっ。

「「え?」」

いきなり、目の前の空間が揺らいだかとおもうと、突如としてそこに小さな物体が落ちてくる。

次の瞬間。

その物体は瞬く間に人型にと変化し、くたっとその場に倒れ伏している一人の青年の姿にとかわりゆく。

「…って、リュカさん!?」

そこに現れた青年に見覚えがあるがゆえ、思わず叫ぶ。

とりあえず安全な場所に、というのでディアの部屋でもある寮へとティミの案内をうけて移動していた矢先。

いきなり現れた正体不明の人物に思わずその場にて警戒態勢をとるヘスティアや兵士達とは対照的に、

迷わず倒れている青年のほうへとかけよっているサクラ。

見れば彼にしては珍しく、その体のいたるところに傷らしきものがあり、

しかしその傷はどうやら今では完全にふさがれているらしい。

傷らしきもの、とおもったのはどうやら、服にいくつもの傷が入り、

ところどころ破れ、さらには血液らしきものが飛び散っている様がみてとれる。

「うう…サクラちゃん?…つ…つかれた…ごめん。ちょっとここでねらして……」

かけられた声に覚えがあり、かすむ目をどうにかこらし、

駆け寄ってくる人影の姿をみとめつつ、そのまま、くたり、と意識を手放す。

大主様達、人使いあらすぎっ!

そう心の中で叫びつつ、意識を失う彼の心理はこの場にいる誰もが知るはずもなく。

「って、ええ!?リュカさん!?ちょっと!ここで気をうしなわないでください!

  あなたがここにきたってことは、意思様達からの伝達をもってきたんじゃないんですか!?

  ちょっとぉぉっ!」

彼がいきなり現れる、ということは大概、意思達の伝達を伝えるためであることが多い。

それでなくても、何がおこっているのかよく理解できないこの状況で、

少しでも早く現状を把握したいサクラにとって、願ってもない情報源。

しかし、その情報源ともいえるべき存在はそのまま、くたっと気をうしなっていたりする。

それゆえに叫ぶサクラの気持ちもわからなくもない。

そんなサクラとは対照的に、

「?…あ、あの?この人は…いったい…?」

この人も、今いきなり現れなかった?

ここって瞬間移動が定説になってる世界なのかな?

すこしどこかずれた感覚を抱きつつも、戸惑いの声をあげている美希。

彼女の知っている移動方法は、出現する前と後に必ず光の粒子がその場に発生する。

しかし、どうみてもそんなものは発生していない。

すなわち、

わざわざその肉体の構造を【変える】ことなく移動しているのだ、とおぼろげながらも理解ができる。

先ほどまで日本語で会話していたがゆえに、叫んでいるサクラの言葉もそのまま日本語。

ゆえに、美希には何をいっているかは通じているが、

共に歩いているヘスティアやその他の兵士には何をいっているのか理解不能。

「あ。ごめんなさい。この人は、私の知り合いで、リュカっていうの。とりあえず」

  「すいませ~ん。ヘスティア先生達、この人を運びたいので、

  手伝ってもらえます?ひとまず背負ってでもつれてかないと目覚めそうにないですし」

実際問題として、目を固く閉じたまま、リュカはまったく目覚める気配をみせない。

おそらく、この服の破れ具合やこびりついている血の状況から何かが起こっているのは疑いようがない。

首をかしげ不安そうにといかけてくる美希にとひとまず返事を返し、

後ろについてきているヘスティア達にと呼びかけるサクラ。

何がおこっているのか今いちよく理解しきれないがゆえに、

サクラ達がギルド寮にむかう、といつたところ、詳しく説明を求められ、

結局のところ、ギルド寮に向かいがてら簡単に説明するハメになっているサクラ。

とはいえ、サクラも詳しいことを知っているわけではない。

今現在における、魔界と天界における定義ならば説明は可能だが。

ゆえに、自分のことなどを踏まえて言葉を濁しつつ、説明しながら進んでいたその矢先。

いきなり突如として目の前の空間より出現した青年。

その青年もまた伝道師、と名乗った女性の知り合いらしく、ヘスティア達としては戸惑いを隠しきれない。

そもそも、伝道師、という存在がかかわってきた以上、何がおこっても不思議ではない。

そう心のどこかで覚悟していたが、こうも続けざまにいろいろと起これば状況把握より先に、

どこかあきらめた境地に陥りかけているのも事実。

「…え?運ぶ?…とは?」

そんな最中、いきなり声をかけられ戸惑いつつも、思わず問い返すヘスティア。

「このまま彼をここに寝かしておくわけにはいかないですし。

  ティミが案内してくれるディアさんの部屋にひとまず運びますので」

三の意思が今ここでディア、という名を名乗り、生徒をしている、というのはティミの情報で知りえた。

こちらが意思だの主だのというわけにはいかず、ゆえに呼び名を改めているサクラ。

今、サクラがむかっているのは、ディアが今現在拠点としているギルド寮の中にある彼女の部屋。

とりあえず、ただ入るだけならばその部屋の異常性に気づかれないであろう、とはティミの談。

何しろかの部屋は各場所につづく亜空間もどきが設置されている。

見た目は普通の他の寮の部屋と変わりないのだが、その奥に続く扉からは

どの界にも自在に移動ができるようになっていたりする。

さらにいえば、界、だけでなくどの惑星にも移動可能となっている。

そんな空間を普通の人が目にすればどのような反応をするかわからない。

もっとも、そのあたりの空間においては

完全なる真空の空間なので人でしかない存在は滞在することすらかなわないのだが。

「とりあえず、彼は私が背負っていきますので。手をかしてもらえます?

  一人では完全に意識を失っている彼を背負うのはむりですし」

「は…はぁ……」

サクラがいっていることはたしかに一理ある。

あるが…やはりどこか納得しきれないのも道理。

しかし納得できないまでも、言われれば従うしかない。

少なくとも、伝道師云々というのが事実かどうかは不明であるが、

守護精霊ティミと普通に話している以上、目の前のサクラ、と名乗った人物が普通の存在ではない。

というのは明らかなのだから……





  ちらり、とでてきたナイアラルホテップ~!

  かの神はかなりたしかに使い勝手がいいですよね(しみじみと

  こちらのお話しでは、太陽系を守る要、として創られた、という形にしておりますv

  なんか、最近クトゥルフの神々がでばってるような気がひしひしと…(自覚あり

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