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光と闇の楔  作者:
52/74

光と闇の楔 ~襲撃と最中の覚醒?~

今回のお話は、合間、のようなものです。

なので物語は進んでおりません。あしからず。

次回より急展開?の予定です。


つまり、今回のは別に読んでも読まなくとも、展開については問題ない・・かな?

ちょこっとはぶこうとおもったシーンを入れてみただけなので・・あしからず・・・



どくん。

「な…何…こ、この感じ……」

何、といっても信じたくはないが、覚えている。

あのときと同じ感覚。

自らの身、すなわち惑星全体が震えるようなこの感覚。

気のせいであってほしいが、気のせいではない。

自らの内にいるべきはずのない気配。

異なる気配が一つと、そして他の【惑星】の子供らしき気配が一つと。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・」

先日の会話が脳裏をよぎる。

もし、もしも、今の状態で、【器】がここに移動してきたとすれば?

「…なんでこうも重なるのよぉぉっ!」

対処を間違えれば【ここ】の未来はない。

「…ケレス!わたし、今日は急用ができたから、ロトちゃんにつたえといてっ!」

教師でもあるアスタロトに伝言することによりうまいぐあいに言い訳など学校側にしてくれるはず。

「え?ち、ちょっと、ディア…って、えええ!?」

それだけいうと同時、ディアの姿は瞬く間にその場。

すなわち、学校に続く道筋から瞬時に溶け消える。

そう、まさに溶ける、という表現がふさわしいほどに、姿がさっと周囲に溶けるように消え去ってゆく。

いきなりといえばいきなりのこと。

目の前でディアが消えたのをうけ、ケレスはただただ驚くしかない。

当然であろう。

何しろ目の前で友達、が消えたのだから。

「ち…ちょっと、何がどうなってるのよぉっ!?」

転移が使えるのはしってはいる。

いるが転移の術といわれている代物はこのように溶けるように消えるものではなかったはず。

すくなくとも事前の現象などを踏まえて転移しなければならないはず。

なのに、これは一体?

一人、いきなりのことでパニックになりつつも、ただただ叫ぶケレスの姿が、

テミス王国の首都テミスの道の一角においてしばし見受けられてゆくのであった……



           光と闇の楔 ~襲撃と最中の覚醒~




状況はあまり芳しくない。

なぜかわからないが、いくつかの国の上層部の存在達がいきなり【堕ちて】しまったらしく、

それまでは徹底して【共同宣戦】を掲げていたのに手の平を還すように反旗組織へと寝返った。

寝返った国の現状は伝わってくるだけでそれはもうひどいもの。

民は必至に保護をもとめ、他国に逃げだしている今現在。

以前よりも野に現れる魔獣や【ゾルディ】の数が膨大に増え、

村や町などがそれらに襲われる数も格段に増えている。

国としては民を守る必要がある。

ゆえに必死にどうにか国をあげて保護活動や駆除活動を繰り広げるものの、まるでいたちごっこ。

つまりは終わりのない無限ループのごとくに。

今現在、どうにか安定を保っているのは、テミス王国と闇の国と、そしてユグル国のみ。

他の国はすでに王都の中に突如として出現したといわれている【ゾルディ】達に襲撃をうけているらしい。

他界からの派遣員も加わり、必死にどうにか駆除活動をしているものの、

他界においてもどうやら同じような現象が起こっているらしく、人員が裂けないのが実情。

ゆえに各国のいまだに陥落していない上層部の存在達はただただ頭を抱えるしかない。

民を守るのに精いっぱいで他国に援助や救援をむける余裕もない。

「…こういうときに、王の加護が発生しませんかね……」つい先日起こった、神の奇跡。

あの現象をどうしても期待してしまうのは、この状況では仕方がない、といえば仕方がないのかもしれない。

あのときもこのような状況になっていた。

異なるのはあのときは、国の中というか城の内部まではそれらが入り込んでいなかった。

ということ。

今回の襲撃は、いきなり城の内部に襲撃者が現れる、ということはざら。

ゆえに城内の警戒も怠れない、ましてや城下の警戒も必要。

警備にあたる兵達はすでにもはや疲れもピークに達している。

さらにいえば仲間であったはずの兵士が突如として襲いかかってきた、という事例も報告されている。


「奇跡、というものは幾度もおこらない。ゆえに奇跡、というのだろう……」

それでも、奇跡を願ってしまう。

このままではおそらく誰もが疲弊しいずれは全て呑みこまれてしまうであろうことが容易に予測がつく。

『は~……』

愚痴をいってもどうにもならないのはわかっている。

だけども愚痴の一つもいいたくなる。

それが今現在置かれている彼らの立場。


「最近は学生達が頑張ってくれてるのでどうにかなっていますがねえ~……」


ここ、テミス王国がいまだに無事、というのは魔界と天界からの使者であり、

臨時教師をしている二人の存在がかなり大きい。

上位神である戦女神アテナと、公には公表されていないが魔界の大侯爵であるアスタロト。

そこいらの存在がそんな二人にかなうはずもなく、

いともあっさりと【敵】は彼らの【影】に撃退されているここ、テミス王国。

噂では、敵の傀儡となり下がってしまった王国がここに攻め入る準備をしている。

というものもある。

どこまで真実なのかはわからない、しかし嘘だともいいきれない今の現状。

数か月前の平和な日常がとても懐かしい。

ほんの数月で世界の情勢は瞬く間に変化した。

全てはかの【大会】をきっかけに変化していったようにも思えなくもない。

道をあるけば、魔獣、もしくはゾルディと必ず遭遇する。

いったいどうしてこんな世の中になってしまったのか。

おそらく、全ては時空神クロノスがいっていた、【神々の黄昏】と【邪神ロキ】の魂が関係しているのであろう。


「先日、ヴルド王国に例の二人が現れたらしく、今現在、王国は混乱に陥っているようです」


次なる報告にあがったのは、率先して攻撃をしかけていたヴルド王国に対するもの。

突如として王の間に少女と狼が出現し、瞬く間に城は陥落してしまったとのこと。

城そのものは朽ちはて、すでに原型をとどめていないらしい。

風の精霊よりの報告なのでそのあたりの情報はまず間違いなく正確。


「…となれば、かの国での【欠片】は回収された、とみて間違いないか?」

「おそらく……」


冥王ヘルと氷の覇王フェンリル。

かの二人が父の魂の欠片の回収に回っていることはすでに周知の事実。

彼らに攻撃をしようものならば、氷の覇王に全ては氷漬けにされ、

冥王ヘルにより、全てのものは朽ち果てる。

基本、向かってくるもの以外には手をださない方針らしく、残されたものは茫然自失となり果てる。

少し前までは恐怖の対象として伝わっていた二人であるが、

ここにいたり、彼らが登場すればすくなくとも自体が好転する、と判った存在達からは、

彼らが出現すると逆に喜びをもって迎えられているらしい。

人、とは状況に応じてころころと態度を変化させる。

そして都合がわるくなれば自分達を救ってくれたものを排除しようとする。

まさにそれが謙虚に現れている例、ともいえる。


「神の奇跡、か。本当、もう一度、神は施しをしてくださらないだろうか?」


一度奇跡を味わった存在は二度、三度、と甘い汁を吸いたくなるもの。

しかし奇跡というものはそれぞれが努力をした結果どうにもならないときに施されるもの。

そもそも、今世界にはびこっている魔獣やゾルディの大量発生はすくなくとも、

そこに生きる存在達がその心を恐怖に染めてしまい自らが作りだしてしまったに過ぎない。

それぞれが自分の中で心とむきあい恐怖に対抗する術を身につければ、

ゾルディ達も力をつけることなく、逆に弱体化してゆく。

今の状況は、どんどん彼らは力をつけていっている。

すなわち、人々、否、心ある存在達の心がどんどん恐怖に彩られていき、自らが処理をしようとしていない証拠。

ギルド協会学校に通う生徒達はといえば、

そのあたりのゾルディ発生の仕組みを身をもってここしばらく経験していた。

ゆえに、各地に実習授業の一環で派遣されたときに人々にその理由を解いてまわっている。

しかし子供のいうこと。

大人たちは素直に聞き入れない。

さらにいえば、子供が出しゃばることではない、と聞く耳をもたないものも大多数。

そのような考えだからこそ、世の中にさらに魔獣がはびこっていってるのだ、と彼らは気づかない。

そして、そういう輩は近いうちに必ず、自身が取り込まれ、【堕ちた存在】と成り果てる。

その心の負の力に負け、自らが負に取り込まれた結果、おこりうる現象。

地上界における現状はまるで地獄絵図、といってもいいような状況になっているが、

天界や他の界においても現状はにたようなもの。

少なくとも、魔界などにおいては常に乱闘、もしくは戦闘がおこる日常が繰り広げられている。

暴力を好まない種族はただひたすらに耐え、戦闘を好む種族は嬉々として参加する。

普段、暴れれば処罰の対象となるゆえにあまり暴れることのできなかった存在達が、

ここぞとばかりに暴れており、魔界に関してはゾルディの被害よりも、

それらの存在達が暴れた結果に対する被害のほうが逆に多い。

それもまた魔界の特性、といえば特性なのであろう。

「いまだ、各界が融合、もしくはまじりあうということになっていないのは、

  門がしっかりとしているからなのであろうな」

すくなくとも、【門】までもが相手の手のうちに堕ちてしまえば世界は混沌と化すであろう。

全ての世界がまじりあったとき、どのような状態に陥るのか、彼らの思考力では理解不能。

かつては様々な【界】はあっても認識できない状態であった、ともきく。

それはもはや伝説の中のお伽噺。


しばし、今現在の対策と、今後の対応、そして少しばかり今現在の愚痴を含めつつ、

ここ、テミス王国の要ともいえる王城の玉座の間にてそんな会話が繰り広げられてゆく……





許せなかった。

何よりも自分自身が。

噂はいろいろと聞いていた。

しかし、自分がその対象になるなど夢にもおもっていなかった。

愛する人のことで話しがある、と呼ばれ出向いたその先でまさかあのようなことがまっているなど。

いったいどうして予測できただろうか。

出された飲み物を呑んだあと、記憶がない。

意識を取り戻したのはなぜか寝具の上。

そして顔色を変えて飛び込んできた愛する人の姿。

ぼんやりとする思考がゆっくりと覚醒し、自分が置かれている現状がだんだんと理解できてくる。

おそらく、何かの薬を盛られた、のであろう。

体の自由がきかない。

だけどこのままでは自らの身が危ういのは理解できる。

どうにかしなければとおもっていた矢先、飛び込んできた最愛の人。

もう、何も考えられなくなった。

彼は自分を軽蔑するだろうか。

だから…全ての力をもってして、自らの魂も体も全て閉じ込めた。

誰が悪い、といえばおそらく自分が悪いのであろう。

出かけるときに不安そうにしていた息子や娘の顔が脳裏をよぎる。

一緒にいく、といったのに一人でも大丈夫だから、といってやってきた自分。

噂はよく聞いていたはずなのに、油断していた自分が情けない。

噂は噂であり真実ではない、と心のどこかでおもっていた。

だから、【ロキのことで大切な話しがある】といわれ、子供たちを留守番させて一人で出向いた。

…まさか、それが相手の思うつぼだった、など夢にも思わずに。

自分の体のことなので、ぎりぎり意識を取り戻したのが間にあったというのはわかっている。

最悪の状態にまでは持ち込まれていなかった、というのも。

だけども、自分で自分を許せない。

もう少しで愛する人を自分の意思ではないにしろ裏切りそうになってしまったこの身が許せない。

…いつか、自分を許せる日がくるのかもわからない。

自分の思いに区切りがつくまで、私は眠りにつく。

ごめんなさい。

愛する子供たち、そして…愛する、あなた。

願わくば、私が眠りについた後も貴方達に幸せがあらんことを……





「……あれ?補佐官様?」

ものすごく久しぶりに出会うような気がするのはおそらく気のせいではない。

ねむい目をこすりつつも見ればそこに浮かんでいるのは両親と同様尊敬してやまない補佐官の姿。

「久しぶり。ヨルちゃん。調子はどう?」

ヨル。

そう呼ぶのは彼の家族と彼女くらいなもの。

「こちらは代わりありません。最近は意地悪な神達も来ませんし」

時折、自分の存在が悪だ、と理不尽にも攻撃をしかけてきていた神々。

ここしばらくはそういった襲撃はまったくない。

自分は何もしていないのに一方的に攻撃をうけるいわれはないとおもうが、

すくなくとも彼自身は戦いなどという代物が好きではない。

その巨大な体をその場に満ちる【海】へと横たえ、鎌首をもたげて問いかけに返事をかえす。

「しかし、わざわざ出向かれてきた…というのは、最近、兄上達からの連絡がないのと何か関係が?」

一人でいる自分を気にして常に様子を見にきていた姉と兄。

しかしここ最近というかここ数日、その姿をみないような気がしなくもない。

もっとも、この空間自体が他の界と時間率が異なっているので気のせい、といえばそれまでだが。

ここの時間軸はそのときどきによって変化する。

今現在の時間軸がどのように変化しているのかまでは彼にはわからない。

時折、この空間に滞在していたがゆえに、元いた界にもどれば数百年は軽く経過していた、

ということも度々起こっている。

この空間を管理しているわけでなく、

ただこの空間に満ちる【海】にその身を置く彼にとってはどうでもいいこと。

暗くて冷たくて、そしてさみしい。

それでもさみしさを埋めているのは自らの体内にいる母の存在ゆえ。

いつも守られてばかりだった。

そんな自分が母を守っている。

その使命感のみが彼をさみしさからどうにか奮い立たせている。

「ちょっとね。それより、中にはいってもいい?」

「…?かまいませんけど。まだ母上様は目覚めてはおられませんよ?」

そもそも目覚める気配の兆候すらない。

あれからどれだけの時がたったのかもわからない。

自らの体もあのときよりもかなり大きくなったと何となくだが自覚している。

この空間内において大きさはさほど問題にもならないのであまり気にしてはいないが。

おそらく他界に出向くことがあれば本来のこの姿ではおいそれと行動もできないであろう。

以前、父より教わった変化の術を用いれば様々なところに出入りは可能であろうが。

父が眠りについた後、母だけでも目覚めないかとおもって母を体内にて守りつつ、

様々な世界にいってみたことがあった。

しかし母の反応はまったくなく、あれからずっと自らの殻に閉じこもっている状態が続いている。

兄達いわく、母は自分自身が許せないゆえに心のやりばを他者にむけないためにも自らの身を封じた。

そういっていた。

そしてそれは補佐官もまた同じ意見であったがゆえに、ならばいつか目覚める両親のために、

と兄弟が話しあい、それぞれが身守ってゆくこととなった。

いつか、かつてのように家族そろって笑いあえる風景が戻ってくることを信じて。

「それはわかってるわ」

本当ならば自然に目が覚めるのを待つつもりであった。

もう少し、彼女自らがその気配に気づいて覚醒するのを待つつもりであったのも事実。

しかし、しかしである。

かの【気配】がこの惑星上に現れた以上、そう悠長なことはいってはいられない。

すくなくとも、各界にほぼかの【魂の波動】は行き渡った。

しかし彼の体内にいる彼女にはその波動は伝わらない。

もう少し波動が全ての界に広まればこの空間にまでその波動が伝わり、彼女の目覚めのきっかけとなるであろうに。

悠長なことをいっていればどうなるかがわからないのが今の現状。

だからこそ、あの気配を察知し、現状を把握したのちにここにとやってきた。

「では母上様によろしくお伝えください」

自分達の声は届かない。

しかし、彼女の声は届いているのは知っている。

そもそも、殻に閉じこもった母を助けたのもまた彼女に他ならない。

害を成す存在ならば問答無用でその魂ごと喰らいつくすが、彼女は別。

自分達の味方だと昔から知っている。

天界のはずれに住んでいた自分達家族を昔から気にかけていた天界の補佐官、ティアマト。

自分達の母は、彼女のことを【意思様】と呼んでいたが。

それが意図する意味は彼ら兄弟にはわからなかった。

父と母はしかしそれで意味が通じていたらしい。

いいつつも、その大きな口をぱかり、とあける。

真っ赤な口に鋭い牙。

二枚に別れた舌先がちろちろと紅く燃えるようにと動いている。

その大きな鎌首の中にはかるく大の大人が数名以上すっぽりと入れるほど。

「最近、何かと物騒だから気をつけてね?ヨルちゃんも」

そんな彼に注意を促し、その場より溶け消える。

目指すは、彼の体内に眠っている彼女の元。




温かな体内の中でまどろんでいる小さな塊。

繭状のその殻はいまだかつて誰にも穢されてはいない。

「さて…と。アングルホダ。もう少しまどろんでいてもよかったんだけど。

  どうもそうはいってはいられなくなったから。あなたの力を借りるわね?」

自分が出向くよりも、彼女に出向いてもらったほうが話しは早い。

意識を覚醒させる方法は至極簡単。

簡単であるが今までしなかったのは彼女の自主性に任せていたがゆえ。

そっと繭に手を触れ、自らが視ている光景をそのまま繭の内部にと流し込む。

彼女ならば気づくはず。

否、気づかないはずがない。

彼女にとって大切な人の波動が世界に満ち溢れ始めている、その事実に。

そしてまた、その魂の欠片が悪用されている、という現実。

どくっん。

光景が流し込まれたその直後。

これまで微動だにしたことのない繭がどくり、と鼓動を打ち始める。

これはきっかけ。

心の檻に閉じこもっていた存在が、目覚め始めるその兆候。


しばし、その場においてその繭の中で眠る存在が目覚めるまでたたずむディアの姿が見受けられてゆく……




「…って、これっておもいっきり反則じゃないのっ!」

思わず叫んでしまうのは仕方がない。

絶対に。

相手が厄介な代物をもっている、とは聞かされていた。

いたが、まさか自分達に対抗するために、自分達の能力を複製した輩を作りだしてくるとは。

能力は自分達と全く同じ。

しかし相手には意思がない。

それだけがあるいみ救い、といえば救いではあるが。

「…こ、これは…精霊神様がどうにか結界を張ってくださっていなかったらここも危ないわ……」

ここを攻めてきている存在達。

それは、自分達、精霊王達を模倣した傀儡達。

能力は全く同じでありながらも、反旗組織側の戦力となっている自分達のあるいみ分身のようなモノ。

そんなモノが自分達に対して攻撃をしかけてきているのである。

あるいみ、自分と戦っているようなもの。

相手に意思がないがゆえにどうにかこうにか退けることはできるものの、

それでも苦戦は必然。

「少なくとも、相手から神々の黄昏を奪わない限り、これはどうしようもないわ。

  シルフ。あなたはその特性を生かして本体より黄昏の杖をどうにか回収してきて!」

こちらは一人に対して、あちらは同じ能力をもつものが数名。

一対複数。

苦戦は必至。

相手側に【神々の黄昏】がある以上、相手の戦力はどんどんと増えてゆく。

まずはその戦力の根源を断つ必要性が生じている。

周囲の大気を水と化し、どうにか応対している水の精霊王ウィンディーネが、

同じく大気を駆使して敵を退けている大気の精霊王シルフにと語りかける。

ここ、精霊界。

精霊界もまた、【神々の黄昏】によってつくられし存在達に翻弄され、じわじわと侵略されている。

このままでは精霊界全体が相手の思うつぼになりかねない。

今はまだ精霊神ユリアナがどうにか結界を強固にしているがゆえに食い止められてはいるが。

戦力によもや四代精霊王達の傀儡が使われるなど、いったい誰が想像していたであろう。

「…で、こんな大変なときに、火の精霊王サラマンダーはなんて゜もどってきてないのよぉおっ!」

誰ともなく思わず叫ぶその声に思わずその場にいる全員がうなづいてしまう。

なぜか精霊界が大変だというのにいまだに地上界において旅にでた、という火の精霊王は、

ここ精霊界にともどってきてはいない。

地上界において反旗組織とおもいっきり鉢合わせ、そちらはそちらで戦っているのだが、

しかしその報告はいまだ彼らには届いていない。

情報系統の混乱。

伝達の混乱は各界においてさらなる混乱を引き起こす。

そして…この混乱は、ここ精霊界だけでなく天界などにおいても同じことがおこっている。

あきらめることなく徹底して自らできることをする。

そうでなくては、加護は得られない。

先日の王の奇跡のこともある。

このたびの襲撃のことについて【意思】がどう思っているのか彼らは知らない。

ただ判るのは、今この現状をどうにか突破しなければならない、ただそれだけ……




太陽系。

第三惑星地球の内部において混乱が続くその最中。

「…三の姉様より連絡があったけど……なんか、不安が的中したって……」

「…みたいね…大姉様が絶叫してたわ……」

それぞれの【意思】のみで【念派】にて会話している【各惑星の意思】達。

先日の話しあいの中ででてきたとある可能性。

しかしまさか本当に起こりうるとは。

「…本当に誰か試練うけてない?ねえ?」

そうでなくては運が悪すぎるとおもう。

切実に。

どうして広大な世界の中でここが選ばれたのか。

ランダムなのか、はたまた試練なのか、それはわからない。

「…器とはいえ本気になったらこんな小さな恒星群くらいあっさりと消滅できるしね……」

しかも、いまだ惑星内で動乱が起こっている三の惑星に移動している、というのも気にかかる。

まだ別の惑星ならば生命体は少ないものの全体的に落ち着いている、というのに。


しかし、起こってしまったことは仕方がない。

出来ることは、全力をもってして器を安全にかの地から迎えがくるまでこの地にて保護するのみ……



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