光と闇の楔 ~神々の黄昏の威力~
最近、うちこみしてるのに、うちの猫がキーボードと体の間にはさまって、素直に打たせてくれません(汗
かまって、かまって、というのはいいんですけど…キーボードの前でねないでほしい・・・
今もまた、キーの前でねてるのでどけてもすぐにもどってくるという状況。
見難いなりにどうにかこうにか打ち込みしている今現在……
最近、異様にべったりになってきているうちの猫達…なんだかなぁ~……
「…今度は何をつくったんだ?」
彼の作りだす様々な道具の便利性はわかっている。
いるがときおり、かなり困った作品を作りだすのがたまにきず。
天界、魔界における合同会議。
光と闇のバランスが保たれているのか、それぞれの状況を説明するための定期会議。
そんな中でにこやかにある品物を新たにつくった、と報告している一人の天界神。
その笑みからして嫌な予感がするのはその場にいる彼らの気のせいか。
「今回は力作だよ?何と、その名も『神々の黄昏』。
能力的には、神や魔王といった魂を分断、もしくは複製することができて、
さらに元となった存在にはまったく無害。意図的にそれらに属性をつけることも、
制約をつけることも可能。これさえ使えば面倒…いや、自らの力をわざわざ裂いて、
それぞれ影や分身を作りだす必要性がなくなるってことで」
いって、にこり、と手にしているなぜか杖のような代物を手にし、
そして。
「ちなみに、作りたい相手にこの先端をむければ誰でも使用可能にしてみたよ♪」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
目の前のこの美青年は何をいっているのだろう。
というか思わずその場にいる全員が頭を抱えてしまう。
「…というか、それっておもいっきり使いようによっては危険だろうがっ!!」
思わず誰ともなく叫んでしまうのは仕方がない。
絶対に。
つまりはそれを手にしていれば誰の分身をも作りだすことが可能、というわけで……
「昔、この地上にあった、という立体的コピーを参考にしただけだよ?
ただ能力複製とかもそのまんまつけてるだけだし」
「十分だろうがっ!というかそんな危険なものつくりだすなっ!」
「まあまあ、ゼウス殿。…で、ロキ殿?…その、作りだしたそれらに意識とかはあるのか?」
ただの抜け殻なのか、それとも当人の意識を反映することができるのか。
「ああ、それも杖をむけたときにつける制約によって、いろいろできるよ?
たとえば意識をもたないただの人形にすることもできるし。
個々に別の人格をもたせて戦わせ…もとい、いろいろと競わすこともできるし」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、まていっ!!』
何やらさらり、と重要なことをいわなかったであろうか。
この目の前の神は。
「実験で補佐官様につかってみたけどさすがにできなかったよ~。
あ、だけど、ゼウスやサタンにこっそり使用してみたらきちんと発動したよ?」
邪気のない笑みではあるが、その笑みに屈託のない悪戯心が見え隠れしている。
「…って、まて」
「…いやちょっとまて。ロキ殿。その我らのその複製はいったい……」
そんな存在がほいほいと歩いていたら絶対に騒ぎになる。
というか、ものすごく嫌な予感がするのは気のせいか。
ゆえに声をかすれつつもその予感が外れてほしい、と願いつつも問いかける。
「能力と力の一部のみを複製するように作ってみたけど、
魂はそのあたりにただよってた子供の魂いれてみた。
んで、地上にとりあえずほうりだしといたよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ちょっとまていいっっっっっっっっ!!』
ものすごく重要なことをさらり、といわれ、
その場に集まっていた神々、そして魔王達の絶叫がしばしその場にて響き渡ってゆく……
光と闇の楔 ~神々の黄昏の威力~
「ここまで威力があるとは……さすがに発明神ロキともいわれていることはある」
しかも、絶対神が封印していた、という代物。
始めは眉唾の話し、とおもっていたがその威力は絶対的なもの。
今まで自分達が努力していてできなかったことが、
たったひとつの杖もどきで何でもできるようになっている。
魂の欠片の周囲を覆う殻の状態にして自分達の思念をも複製しておいた。
発動時に思念にふさわしき器に乗り移れるようにして。
しかし、ここまでうまくことが進むとはおもわなかった。
王国の主要の地位についているであろう、もしくはそれに連なるものであろう。
そういった存在達に【欠片】を様々な手段をもってして受け渡していた。
【神々の黄昏】は使い手がその杖にはめ込まれている宝玉に自らの力を保存することにより、
どんな世界に移動していても、呼べば必ず手元に出現する、という特性をもっている。
王宮に入り込み、種をばらまき、そして【種】の一斉発動。
殻の状態で思念のみを飛ばしていた状態ではあるが、本体には自らの思念体の光景は手にとるように把握できていた。
右往左往としている中で、たまたま魂を失ったとある器に自らの思念体を乗り移らせた。
あとはかもう単純きわまりない。
王の姿を【杖】にと模倣し、本物の王は幽閉し、王の操り人形を作りだし、自分達の傀儡と成した。
人の王国はとてももろい。
あっさりとこうまでも単純に国が手にはいるなどとは。
国には守護精霊、というものも存在しているが、それも杖の力にて退けた。
そもそも、同一以上の力をもつ相手と戦い精霊が無事でいられるはずがない。
すでに北と南の大陸にある聖殿は制圧には程遠いが地上界においては封印に成功した。
と報告を受けている。
四大大陸、と呼ばれている大陸にはそれぞれ国が存在し、
一つの大陸が一つの国であったり、二、三の国にわかれている大陸もある。
「ユグルの地にはさすがに入り込むことはできなかったようだが……」
それでも、天界などに入り込めたのはかなり大きい。
すでに国も三つ手の内に入ったも同然。
「あとは…地上界におけるギルド協会本部のある、テミス王国を手にいれれば、
我々の目標、世界制覇もすぐそこに……」
国、という立場をつかい、他国に攻め込む。
兵士達が難色を示せば、道具を使い、新たな戦力をつくりだせばいいだけのこと。
神々といった存在ですら複製をつくりだせる【神々の黄昏】。
力もよわい地上界の存在達など複製することはたやすいこと。
「別名、ラグナログ…神々の終焉…か。まさになの通り、だな」
天界や魔界においては実力ある存在達の姿を模倣して自らの戦力にしはじめている。
力も能力も相手のそのままに、自分達に素直に従う戦力。
戦う相手側からしてみれば厄介なこと極まりない。
さらにいえば、複製で作りだされた新たな【器】達はといえば、
基本となった当事者が倒さないかぎり絶対に消滅、もしくは死ぬこともない不死性をもっている。
当事者が攻撃し、致命傷を与えた場合のみに、その力はそのまま当事者の中にと還りゆく。
「神竜ヴリトラに試してみた存在もいたが、アレはなぜか複製がつくれなかったからな……」
どうやらあまりに力が強すぎるものは【道具】の役目を果たさないらしい。
しかし、すでに昔話ともなっている伝説によれば、魔界の実力者サタンや、
天界の実力者ゼウスといった存在達の複製はこれにより作りだせることが可能だ、とわかっている。
一番いいのはそんな彼らの能力などをそのまま複製した輩を自らの戦力の一兵士として起用すること。
そのためには、中枢部に入り込む必要がどうしてもでてくる。
「しばらく騒ぎをおおきくし、中枢部に関係する存在をとにかく表にひっぱりだせば…」
そうすれば、隙をつき、【杖】を使い相手を模倣することができる。
そのためには。
「地上界、天界、魔界、霊獣界。四界のみ、というのもさみしいが、同時に攻撃を開始するとするか」
同時に襲撃が開始されることにより、必ず中枢部の存在達がやってくるはず。
全てはそこが狙い目。
自分達の手のうちに、【神々の黄昏】がある以上、自分達の勝利は間違いないのだから――
「…つ…つかれた……」
アスタロトことアシュタロスとアテナの授業が開始されてもうすぐ一月が経過する。
たしかに知識に関してはそれぞれ各段に各階位の生徒達も向上してきている。
だがしかし、それに比例して半ば狂乱しそうになりかけはじめる生徒もでてきているのも事実。
「恐怖に絡められた生き物の感情を喰らのはおいしいから私はいいけど」
何やらさらっととてつもない重要なことをいっているヴリトラ。
霊獣界にてその界の神として行動しなければいけないのは情勢的にわかってはいるが、
それでもやはり気休めは大切。
というわけで、その身を二つにわけ、一つの身は霊獣界にそのままとめおき、
もう一つはここ、テミス王国にまた戻ってきていたりするこのヴリトラ。
ヴリトラにとって命あるものが発する【負の心】は食料に過ぎない。
そもそも彼女の根本となった核たる感情がそれらの【念】という事実もある。
「組や階位は違えども、まあたしかに。
ヴリちゃんに任せとけば狂う輩もいなくなるのも事実だからねぇ」
ぱたり、と授業がおわり、ほとんど抜け殻状態になってぼやいているケレスににこやかにいっているディア。
基本的に、全ての階位においてクラス全て合同で授業を行っているアテナ達。
アテナの実戦的授業はいまのところほとんどが基礎体力作りという授業に対し、
アスタロトの行う実戦的授業は自らの心の恐怖の克服、といったあるいみ必要不可欠な授業内容。
確かに始めはアスタロトの幻影により、
各生徒達の心の恐怖が実体化し生徒達に襲いかかっているだけにすぎないが、
生徒達の恐怖がある一線を超えることにより、それらによって生徒達は自ら【ゾルディ】を生み出す結果となっている。
始めはただの幻との戦いであったものが、次の瞬間には実戦的な戦いへと変化する。
幻による攻撃は、精神的なダメージはうけるものの、肉体的なダメージははっきりいって受け付けない。
が、しかし、【ゾルディ】という器と化した恐怖の権化は当然、肉体的なダメージをも与えてしまう。
それから逃れる方法はただ一つ。
自力で発生した【ゾルディ】を撃退するより他にない。
一月も同じような授業を行っていた結果、生徒達の中には幻と実体の区別がつくようになってきている存在もいる。
上の階位の生徒達にいたっては、【ゾルディ】が発生する理由。
それらを自分達なりに考えて、ある真実に迫っている存在達も多々といる。
ただ教わるだけでなく、自らが経験し目にすることにより身にしみてわかることもある。
必要以上の恐怖や不安は逆にそれらを増幅するに過ぎない、と。
必要以上の不安や恐怖心はそのまま【ゾルディ】の発生条件にと当てはまる。
そしてまた、核となった存在の恐怖や不安が薄れることにより、【ゾルディ】の力は削がれる。
それはそのあたりに発生している【ゾルディ】すべてにいえること。
恐怖に呑みこまれてしまった生徒達の【心】はヴリトラが喰らうことにより、
生徒達の発狂は今のところ防がれている。
また、ヴリトラが戻ってくるまで発狂しそうになった生徒達には、ディアが浄化を施してことなきを得ている。
つまるところ、どちらの授業においても、授業が終わり次第、
ヴリトラとディアはそれぞれ分担し、
異変があった生徒達を介抱する、という状況がここに出来上がっていたりする。
「でも何だってあそこまでする必要があるの?
そもそも私たちはただの生徒なのに。基礎体力作りとかむちゃくちゃだし……」
亜空間に移動させられ、ひたすらに雷の獣に追われ走り続ける授業や、
何やらものすっごく重たい視えない塊を背にのっけられた腕立て伏せや、
瞬時に交互に移動しないと体全体が痺れ意識をうしなってしまう道具の上での腹筋や。
はっきりいって一生徒がそこまでする必要があるのか?
といった内容の基礎体力作りが多いアテナの授業。
「根性と体力はつくからいいんじゃない?というかあのくらいで根をあげてたらもたないわよ?」
ディアからすればそれらの授業は何てことはない代物。
そもそもそれらを教えたのもほかならぬ【ティアマト】。
彼女が行っていた訓練は今行われている授業よりももうすこしレベルが高い。
ゆえに、ディアの目からしてみれば、
今、アテナが行っている授業はまるで幼子に対する微々たる代物に過ぎない。
「まあ、心身ともに健康で強くなければ何ごとにも対処ができないしね」
事実。
いまだに誰も気づいていないようであるが、彼らはこの王都を狙っている。
しかもすでにいくつかの国をある程度乗っ取り、すでに自らの駒と化している。
天界や魔界などにおいては、実力あるものたちの傀儡を作りだし、
あえてその元の存在のフリをすることにより、機会をうかがっていたりもする。
おそらく近いうちに、彼らはあの道具の別の使い道にも気づくであろう。
そのときが彼らとの決戦のときともいえる。
【神々の黄昏(杖)】の別の使い道。
つまりは、【神々の黄昏】はその【杖】の中に【疑似門】が元々埋め込まれている。
つまり、正規の【門】であるソト・ホースを通らなくても、簡単に【移動】ができる。
かの道具が作られた本当の理由を知るものは少ない。
単純な理由で作られた、という理由を知れば、ほとんどのものがあきれるであろう。
何しろ、かの【神々の黄昏】は、子供たちが父や母を一人占めにしたい。
という要望から生まれた品であり、また大きくなりすぎ始めた長男達を危惧した神々が、
他の界の責任者にしてはどうか、という話しがでてきたゆえに、そのようなものを埋め込みした。
万が一、そのようなことになっても、簡単にそれぞれが守るべき界にすぐに移動でき、
本来は常にいつも家族が過ごせられるように。
彼にとって何よりも大切だったのは家族が共にあること。
しかし、今、かの道具はその用途とはまったく別の使われ方をしていたりする。
…その使い道が、彼の子供たちにさらに懸念を抱かせる行為になっている、と知るよしもなく……
「というか、何でディアはそうけろっとしてるのよ……」
毎回思うが、絶対ディアは謎すぎる。
あのような授業をうけて平気でいられること自体が不思議でならないケレス。
そもそも、彼女が何かに対峙しているのかどうかすら不明。
アシュタロス教師いわく、心がつよければ自らが行う幻影の術に惑わされることはなく、
ゆえに幻影にとらわれることもない、とはいっていたが。
普通に考えて悪魔が行使するような高度な幻影に普通の人間が抗えるとはおもえない。
しかし、実際、ディアは毎回この授業のときにはのんびりとアスタロトと雑談していたりする。
その雑談内容は当然、幻影に捕らわれている生徒達には聞こえるはずもないが。
もしも聞こえている者がいればその内容に旋律するであろう。
何しろ魔界の情勢や天界の情勢などの上層部でしか知りえるはずのないような会話をしているのだからして。
「そりゃ、お姉様だし」
そんなケレスの疑念にさらっといいきっているヴリトラ。
そもそも、ディアにどうこうできる存在など、この【惑星上】には存在しない。
強いていえば彼女と同等たる存在達か、それ以上の存在達くらいしかいない。
そして…そんな【かれら】存在を当然、ケレスが知るはずもない。
ディアの姉妹達、といっている人々がそのような存在だと知るはずもない。
「私的にはロトちゃんの今つかってる幻影ごときで心が壊されるようじゃ、後が怖いとおもうけどね。
というか出来たら全世界の命ある存在達にこれうけて耐性つけてもらいたいのが本音だけど」
もしも、もしもである。
代替わり時期に宇宙空間内の粒子が変動し、その波動により【心】がより強く表れる結果となったとき。
今行っている各界に隔てて簡易結界を施した状態。
この状態でそのような波動は防げない。
そして、そうなった場合、生命体を問わず、何かしらの影響を全ての命あるものたちがうけるであろうことは明白。
今、ここギルド協会学校にかよっている生徒達は文字通り、未来を担う新たな種族、ともいえる。
彼らが卒業したのちに代替わりが発生するか、もしくは在学中に発生するか。
それはまだ定かではない。
しかしどちらにしても、【命あるものたち】の未来を決めるのは彼ら、といえるであろう。
今を生きている存在達もまた、今現在、多々とばらまかれている【欠片】の影響で、
どこまで自身の心に強くなれるか。
それにより今後のこの世界の行方もまた決まってくる。
自分の全てを受け入れ、そしてそれを認め昇華すること。
それこそが【魂】の格をあげうる最適な方法、なのだから。
「まあ、ケレスも文句を言う前に。私の浄化をうけなくても正気を保てるようにならないとね」
「う~……」
毎回、毎回、慣れているつもりでも恐怖に負けて自らを見失っている。
ゆえにディアの言葉に言い返せない。
「いつになったら全員複合授業が行えるのですかねぇ~……」
いまだに個人個人がそれぞれの課題を昇華しきれないでいる。
アスタロトとすれば次の段階に移り、個々の精神にみせる幻影、ではなく。
現実に見せる幻影により、【ゾルディ】のもつもう一つの特性をその身をもって教え込みたいのが本音。
いまだにほとんど知られてはいない。
【ゾルディ】が生みだされた元となる存在の魂の欠片を要することもある…というその事実。
欠片を有したゾルディを害せば、元となった存在もまた傷つく。
今、現在、実際にすでにそのような光景が世界の多々という場所にて見受けられている。
まだ幸いなのか不幸なのかはわからないが、この王国ではそのような光景はみうけられてはいないが。
真実を自らの身をもって知ること。
それによりそれぞれが本当の真意を見極める。
それがこの授業を行っている理由。
「まあ、まだ個人課題がクリアできていない時点で次にいっても確実に死者、植物人間が多発するでしょうね」
アスタロトの言いたいことを察し、さらっといいきるディア。
「…クロノス殿に頼んで時間設定を空間ずらしてもらいましょうか?
そうでもしないと次の段階になかなか進めそうにありません……」
時を操る能力。
ある程度の時は彼…アスタロトとて操れる。
しかしそれは自分の時、限定。
他者の時をいじるまでは滅多にできるものではない。
自身を含め、よくて十名までが限度、である。
「まあ、彼らがせめてくるのが早いか、皆が心に強くなるのかが早いか。どちらか、ね」
「?ディア?先生?何の話し?」
そんな二人の会話にまったくケレスとしてはついてけない。
そもそも、すでにディアとアスタロトが常に傍にいて話している。
というのはこの授業中においては見慣れた光景となってしまい、ゆえにもはやつっこむ気力もない。
いつのまにか浮足だった噂は、アシュタロスがディアの従者、もしくは使いっぱしり、
のように定着してしまい、恋人だだのといった噂は払拭されている。
…もっとも、従者だの使いっぱしりだの、という噂はあるいみ的を得ている、とはいえるのだが。
しかし相手はまがりなりにも悪魔、として認識されている教師。
そのような噂を流す生徒達もあるいみ根性がある、といえるであろう。
下手をすれば噂を流した、というだけで魔界送りにされてもおかしくはないのだから……
「……?ここ…どこ?」
先ほどまで壊れた瓦礫の中に立っていたはず。
身に降りかかった巨大な地震。
ぼんやりと歩いていた。
自分を育ててくれた母が治療のかいもなくあの世へと旅立った。
「…みゅ~ちゃん。ここってどこなの…かな?」
こんな緑豊かな大地があの日本に残っていた、とは思えない。
こういった光景は【立体映像】の中でのみ、その風や感覚を感じていた。
昔、地球上を襲ったという巨大地震。
結果、分かれていた大陸の移動が起こり、日本、という国はとある大陸と陸続きとなった。
地下より噴き出した巨大な【力】は当時、生きていた人々を翻弄し、残った人口はごくわずか。
そんな中で【霊力】と呼ばれる力が発見された。
中には魔力とも呼んでいた輩もいるらしいが。
生きとしいけるものの全てには、魂があり、その魂に力を与えているのが霊力。
そういう概念が根付き、その力を扱った様々なそれまでになかった力が扱えるようになった。
その結果、今まで以上に科学が発展した地球。
しかし、その発展は地球の力そのものを狂わす結果となったらしく、再び地球上を大異変が襲った。
…そこまでは在宅通信教育で習っている。
このようにみずみずしい木々が残っている場所など…今の地球上にはなかったはずなのである。
すくなくとも、全ての木々が変異し、普通の木、というべきものは、今では映像の中でしかみられなかったはず。
なのに、では目の前に広がっているこの光景は何なのか。
「みゅ?」
先月、ふらふらと病院からもどる最中、拾った子猫。
放射線が含まれている、という雨だとわかっていても、傘もささずに歩いていた。
…母の命がもう長くはない、ときかされて。
何も覚えていなかった自分。
地震の跡地で記憶もなくさまよっていた自分を拾ってくれた大切な【母】。
その母に楽をさせたくて今まで頑張ってきていた。
しかし…努力もむなしく、母は旅立ってしまった。
母に身内はいない。
自分を引き取ってくれたのも、その地震で自分の子が死んでしまったからだ、と後からしった。
自分は我が子の身代りだったのだ、とわかっていても、それでも育ててくれた恩にはかわりがない。
「みゅ~ちゃんのこともあるし。…とりあえず、どこか人のいるところをさがさないと……」
拾った子猫は放射線による突然変異種であったらしく、
通常の猫が食べたり呑んだりする物が主食ではなかったらしい。
普通にミルクなどは呑みはすれども、好むのは【霊力】。
無意識のうちに、彼女の【霊力】を吸っているらしく、指をしゃぶっているだけで満腹状態になっている。
肩のあたりで切りそろえられている漆黒のさらさらの髪に漆黒の瞳。
服装もまた上下ともに真っ黒の服は、母の葬儀が終わった直後ゆえ。
今いる自分の場所がわからない。
それでも、守るべき小さな命がある。
それゆえに意を決して歩きだす。
…よもや、この地が今までいた場所とはまったく異なる【太陽系】だとは夢にも思わずに……
ふふ。ようやくキー、となるべき人物?がでてきましたよvええv
あれ?とおもったひとは、もう展開は読めたかと(笑