光と闇の楔 ~女神と大侯爵と生徒達~
・・・・・・・・・・・なんか今日は異様に眠いです・・・
なのでちと短め・・・話がまたすすんでない自覚あり・・です・・・
眠いのでちょっと早めの更新です・・・
じわじわとお気に入りと評価ポイントが減ってます・・・
展開がとろいし、文章力が支離滅裂だからだろうな・・・という自覚はあり(汗
布石は全てに撒き終えた。
あとは、ただ、号令をだすのみ。
「妖精界のほうはどうなった?」
「あちらは、妖精王とその女王がその身をもって結界を張りました。
しかし、そのことで妖精達の力は急激に落ちてゆくことでしょう」
事実、妖精達は王と女王の力をもってして存在していたといっても過言でない。
妖精達の力の活力でもある精気は王達の手により他の妖精達にと循環されていた。
その妖精王達がその身をもって結界をはった、ということは、
彼らはその身を封じておそらく結界を施したのであろう。
これ以上、妖精達が堕ちた存在にならないように。
精霊と異なり、妖精達は好奇心旺盛。
ゆえにこそ、力に呑みこまれる率もかなり高い。
「さて…それでは、宴の開始、といくか。あちらにもその旨を伝えるように」
「はっ!」
さて。
世界の変革の始まりの宴を始めるとしよう。
自分達の勝利を確信し、ひそかにほくそ笑むとある姿がしばし見受けられてゆく――
光と闇の楔 ~女神と大侯爵と生徒達~
「…それでは、私は精神と心を強くするとしますか」
そのほうが自分にかなりあっている。
そもそも、体力をつけさせるのは自分の得意とする分野ではない。
どちらかといえば彼自身は頭を使って行動するほうが得意中の得意。
「では、私のほうが体力づくり、ということで。
確実にここを彼らは狙ってくるでしょうから。生徒達にもそれなりの力をつけてもらいませんと」
とにもかくにも、多少何か忘れているような気もしなくもないが、というか確実に忘れている。
しかし、今何よりも優先すべきことは、今後の対応。
やるべきことは決まっている。
心身ともに強くならなければこれからの襲撃に彼らが足で纏いになり、
さらには敵として操られてしまう可能性はかなり高い。
いつ彼らが襲撃してくるかわからない以上、すくなくとも早めに行動を起こしておいたほうがよい。
「まあ、学校長と理事長からも好きにしていい、といわれましたし」
「…くれぐれも生徒を殺さないように、もしくは糧にしないように、とはいわれましたけどね」
悪魔の中には魂を喰らうものもいる。
実質、アスタロトとて喰らわない、というわけではない。
しかし預かっている生徒達に何かがあればそれはギルド協会側の責任となる。
いくら実力ある女神と大侯爵とはいえ協会側とてそれだけは譲れない。
「それでは、アスタロト様が内側の強化を。私が表のほうを担当いたします。
ふふふ。腕がなりますわ。さいきん新人教育に携わることがありませんでしたし……」
「あ~…」
彼女の新人教育の様子はリュカ、そして彼女の父であるゼウスからよく聞かされている。
ゆえに彼女が担当する生徒達に対し一瞬同情をむけるアスタロト。
彼女はやるからには容赦がない。
手加減、というもを一切加えない。
そのあたりは、母であるヘラの性格を譲り受けている、といえるであろう。
校長室から職員室までに続く廊下の一角において、
【大侯爵アスタロト】と【戦女神アテナ】による今後の対策が話し合われてゆく……
「…あ、あの?これは一体?」
楽しみにしていた魔界からの臨時教師、アシュタロスの授業。
普通の教室での授業ではなく実戦的な授業を行う、ということで、
今現在、四クラスがこの場にそろっている。
何でも合同授業となるらしい。
総合科クラス合同授業。
ちなみに、AクラスからDクラスまでの生徒がこの場に滞在している。
全てのクラスの組数はA。
つまり、AクラスAからDクラスAまでの生徒がこの場に滞在しているこの現状。
生徒全員にグループに別れるように、と指示があり、それぞれが数名づつのグループにとわかれ、
そして全員がグループを作り終えた。
その後、なぜか彼ら生徒の目の前にひらひらと飛んできたのは一枚の紙。
何かがそこに書かれてはいるが、それが何かはわからない。
しかし何か重要なことが書かれている、というのは何となくだがわかる。
それは勘。
「…って、先生!?これってまさか契約書じゃないんですか!?」
一人の生徒がそれの意図に気づいて思わず叫び声をあげる。
ざわっ。
契約書。
それが意図する意味は伊達に学校に通っているわけではない。
誰しも悪魔学で簡単なことは学んでいる。
悪魔が行使する契約書には必ず何かの理由がある。
そしてそれに伴う代償も。
その場にいる生徒達がその声をかわきりに思わずざわめくものの、
「これから行う授業に関する契約書だ。
まあ、本当に死にたい、とおもうものは別に署名しなくてもいいが。
これから私が行う授業はそれぞれの精神と心を強くする授業。
人は軟弱な心では可能性として発狂死してしまう可能性を考慮してのものだからな」
さらっと何でもないように言い放つアスタロト。
「『授業中におけるその魂の安定の保護をうけることをここに承認せし。』
…というか、ロトちゃん、あなた、何するつもり?」
ざわめく生徒達とは対照的にいつのまにか横に移動していたのか、ディアがそんなアスタロトにと問いかける。
「…毎回思うのですけど、
いきなり真横とかに気配を消して、というか、周囲に同化してこられるのはどうかと……
と、ともかく。これから私があなた方におこなうのは、精神を鍛える授業です。
何ごとも心が弱ければどうにもなりません。心がつよくあってこそ何ごともにも立ち向かえる力となります」
ディアに対するアスタロトことアシュタロスのあまりにも特別扱いしている態度はすでにもはや有名中の有名。
ゆえにそんな二人の態度に突っ込む生徒はこの場にはいない。
そもそも噂が一人歩きしている今現在、違う意味で黄色い声をあげている生徒はいるにはいるが。
確かに、言いたいことはわかる。
わかるが、だがしかし、どうしてそこに契約書などというものがでなければならないのか。
「これをみるかぎり、授業中のみ、個々の魂を保護するという制約の契約書、みたいだけど。
まあ、別段これに承諾せずともどうせ授業は行うんでしょう?」
何となく彼がやろうとしていることはすぐさまに理解する。
そして彼の性格上、あくまでも保険、としてこの契約書を配っただけだ、ということも。
しかしここにいるのは自分だけではない。
ゆえに他の生徒のことを考えあえてといかけているディア。
「当然です」
きっぱりはっきりいいきる彼の表情はいっそのすがすがしい。
まあ別に止める必要もなければ、事実、授業の一環としてこのやり方は間違ってはいない。
「まあ、ロトちゃんにきちんと皆にわかるように説明しろっていうのが無理でしょうし。
とりあえず、生徒のみなさん、この契約書はこれから始まる授業のいわば保険のようなものです。
こうみえても彼、一応悪魔ですから、人が耐えられない授業になるかもしれません。
それを考慮しての配慮みたいです。まあそれがわかってても悪魔の授業を素で受けてみたい。
という人は同意しなくてもいいでしょうけど。この契約の効果はあくまでもこのたびの授業中のみ、
なので普通の生活には何ら問題はありませんよ?」
いまだにざわめく生徒達にむかってかるく説明しているディア。
静かにいっているだけなのにその声は全員の耳にととどきゆく。
何のことはない。
この場にいる全てのものに聞こえるようにと意識して紡いだ言葉であるがゆえに全員が理解しているにすぎない。
「…一応って……ひどくありません?」
まがりなりにも、第一級悪魔であり、さらには審問王の役目をもつアスタロト。
「だって、まだまだでしょ?あなたたち?」
「…うっ…」
そういわれれば言い返せない。
実際、いつになったら自分…つまり、補佐官の手を煩わすことがなく執務をこなせるのか。
と今まで散々いわれているのである。
アスタロトとディアの関係をしっていればこの光景も当たり前にうつるのだが、
傍からみれば生徒が教師を言い負かしているようにしか見受けられない。
しかもどうみても生徒のほうが優位。
「さて、みなさんはどう判断しますか?
あ、ちなみにどうやらサインしなくても授業を中止するつもりはさらさらないみたいですよ?」
いまだに戸惑う生徒達にむかい、多少うなだれているアスタロトを完全に無視し、
にっこりとほほ笑みつつもといかけるディアの姿がその場において見受けられてゆく。
「そこ!踏みこみがあさいっ!」
「は…はいいっ!」
希望者のみを集った特殊授業。
我先にと戦女神の行う授業をうけてみたい、という生徒達がこぞって参加した。
その圧倒的な美貌に引かれて多少浮か気分で参加した生徒達は、
そんな甘ったれた考えを根柢から覆すこととなっている今現在。
「まず何ごとにも体力がなければ話しにならんっ!
全員、腕立て伏せ、百回!そこ!さぼるなっ!」
『は…ひゃぃいっ!』
見た目は温和なしかも麗しき乙女。
だというのにこの変貌ぶりは何なのだろう。
相手から発せられる【気】により逆らえる雰囲気ではない。
ぴりびりと肌を裂くような鋭い痛みと息苦しさすら感じるのはおそらく気のせいではないであろう。
伊達に戦女神、と呼び称されているわけではない。
彼女が生徒達に教えるのは、戦術と防衛術。
しかしそれにあたり、どうしても必要不可欠となってくるのは基礎体力。
「こらそこ!ぐすぐずしているとおいつかれるぞ!」
「…って、こんなの詐欺だぁぁっ!」
何やら生徒の大多数からそんな声もあがっていたりするが。
見た目が美人な女神の授業がうけられる。
見た目どおりに優しく、手とり足とり、丁寧に教えてもらえるのだ、とおもって授業参加を希望した。
が、しかし。
ふたをあけてみれば、どこぞの国の軍隊でもやらないような徹底した基礎体力作り。
それが終われば次は戦いの基本となるべく基礎を叩き込む、とのこと。
しかも、常に息を切らさずに早く走ることをも要求され、
走りに自身があります!と教師…アテナの性格を完全に勘違いし、
いいところを見せようとした生徒達はといえば、今現在。
どうみても雷でできた狼のような生物に追いかけられていたりする。
アテナの父であるゼウスが得意とする力は雷。
その娘であるアテナもその性質を受け継いでいる。
「こらそこ!泣きごとをいっている暇があったら体をうごかせ!!」
・・・・・・戦女神、アテナ。
彼女は普段はのほほんとしているようにも見えるが、その実体はといえばかなりひと癖もふた癖もある。
さらにいえば、こういった体力づくりや戦術に関して、彼女は絶対に妥協しない。
たとえそれが相手が誰であろうとも。
女神とお近づきになれるかも、という甘い考えで授業に参加した生徒達は、
しばしの間、アテナの死にたくなるほどの授業に翻弄されてゆくこととなる……
「ふむ。まあ幾人かは署名しなかった存在もいるようだが。まあいい。
それでは、授業を開始する。まあこの授業は至って単純明快。
ただ、自らの弱点を克服すべく、自らの心に立ち向かう、ただそれだけだ。それでは」
全員が全員、先ほど配った契約書に署名したわけではない。
しかしそれは自己責任。
やはり悪魔との契約、というので躊躇した生徒もいた、というだけのこと。
異種間の偏見などはそう簡単には払拭できるものではない。
ましてや悪魔の契約などといった代物はどちらといえば今までよくないイメージばかりが強調されている。
このたびの契約は契約、といっても本当の契約というわけでなく、
いわば授業をうける側の命を一時的にアスタロトが預かる、という趣旨のもの。
一時的にその魂の所有者がアスタロトになることにより、
この授業中、どのようなことがおこっても署名した生徒はとりあえず死ぬことは許されない。
というか死ぬ目にあっても体があるいみ不死となっているので死ぬことはない。
そういうアスタロトの周囲にはくるくると周囲を舞っている先ほど生徒達に配った契約書の束。
その束はアスタロトの体の周囲を風もないのにくるくるとめぐっている。
「では、始めるとしよう」
いってすっと目を閉じ、手を横に突き出すアスタロト。
刹那。
周囲の雰囲気が一変し、瞬く間に周囲が灰色の空間にと呑みこまれる。
「Je lui donne un ordre」
――我は命ず
「Cachez derrière dans la profondeur du coeur de toi et faites-le; un coeur comme la crainte」
――汝らの心の奥底に潜みし畏怖たる心
「Je suis temporaire et reçois un calibre pour mon pouvoir et l'incarne」
――我が力をもってかりそめに器を得て具現せよ
灰色の空間にアスタロトの声が響き渡る。
刹那、ぽっ、とアスタロトの周囲を舞っていた契約書の束が瞬く間に青白い炎に包まれる。
それと同時。
ゆらっ。
生徒達の周囲の空間が一瞬揺らぐ。
次の瞬間。
『う…うわぁぁっっっっっっっっ!?』
周囲から間違えようのない生徒達の悲鳴が響き渡る。
「あらら。みなさん、それ、みなさんの心が生み出した悪夢、ですから。
それに呑みこまれないように心を強くもってくださいね~?」
生徒達が見ている光景。
それは各自が心の奥底で恐怖や畏怖を感じている事柄。
それらが自分に襲いかかる幻術のようなもの。
しかし幻術、といえど魔界の大侯爵ともいわれているアスタロトの術。
そのあたりはぬかりはない。
当然、痛みもあれば感覚もある。
幻影、といえども当人からしてみれば相手はきちんと形を持っている。
すなわち、それぞれにとっておそろしい『何か』が自分に対し攻撃をしかけてきている。
それが彼ら…生徒達にとっての真実。
一人、そんな幻術にまったくひっかかる様子もなく、
のんびりと何もない空間でわめき暴れている生徒達を眺めつつもいっているディア。
傍から見れば生徒達は何もない空間でそれぞれが暴れているようにもみえなくもない。
しかし実際はそれぞれが生み出したそれぞれにとっての恐怖の対象と戦っているに過ぎない。
いきなり出現した恐怖の対象。
その対象と対峙している最中、彼らの耳にやはり先ほどと同じようにディアの言葉がすとん、と耳にはいってくる。
目の前のこれが、自分が生み出した悪夢?
この悪夢に打ち勝つのが授業の目的?
こんな授業を行い、何のメリットがあるのか生徒達にはわからない。
それぞれが今まで心の奥底で目をそむけていた出来事が悪夢、としてその場に再現されているものもいる。
「さすがに始めは個人個人にしたのね~。ロトちゃん」
それぞれの反応をみていてとてもほほえましい。
中には必死で逃げ回っている生徒の姿もみてとれる。
はたからみれば何もない空間から必死で逃げ回っているようにしかみえないのだが……
「…私たちのときには、
それぞれがそれぞれ視えるようにされて試練をだしてこられましたからね…王は……」
幼き日。
特訓と称していきなり【王】から自分達が一番心の奥底で恐怖しているモノが実体化された。
しかもご丁寧に自分達の魂の一部をそれらにもたせて。
つまるところ、自分でその恐怖の対象者を攻撃しなければ、他の存在が攻撃すれば、
自分もまた傷つくこととなってしまう。
つまり自分の魂を自分で傷つけ自らの中に再び戻すのは問題ないが、
第三者が傷つけたりすれば知らないまでも自分の力が削がれることとなる。
その恐怖に打ちかつ方法。
それは全てを克服し自分の力、として認識してしまい自らのものとすること。
そうすることにより相手の力をそげ、逆にそれを糧とすることにより自身の力を向上させることができる。
「問題は、普通の生命体にその方法が通用するか、だけどね」
放っておけば発狂する生徒も多々とでるであろう。
そのために先ほど、仮初めに契約をほどこしたアスタロト。
まあ契約をしなかった生徒はそれは自己責任。
危険性を先に説明したのに署名をしなかったのは各自の自由。
幾度殺されて心が死んでしまおうがそれは自分が選んだ結果にすぎない。
人は究極の状態にまで追い詰められれば、その本性を発揮する。
心の奥底に常日頃は秘めていた思いなどもおのずと表にでてくるというもの。
しばし、何やらのんびりと会話をかわしているディアとアスタロトとは対象的に、
生徒全員による悲鳴と叫びが周囲にと響き渡ってゆくのであった……
くたっ……
死屍累々、とはまさにこういうのをいうのかもしれない。
おもわずそんなことをおもってしまう。
恐怖の克服。
自分は母の特訓でそのあたりのことは多少免疫ができていたらしい。
心の奥底で恐怖している輩だ、といわれてもすぐさまに納得できた。
逃げ回っていてもどうにもならない、というのはディアとの付き合いの上で理解している。
よく精神を落ちつけて解決方法を探ってみれば、答えは自分の心の中にとあった。
恐怖を自ら認め、そしてそれを自分のものとする。
そんな簡単なことがなかなか出来ないゆえに破滅に向かうものも多々といる。
怖いものは怖い、それでも立ち向かってゆく勇気。
その強い心が何ものにも勝る力となる。
「…さすが悪魔といえるのかしら?これって……」
授業中にその恐怖を克服できなかったものは、いまだにその恐怖の残像から逃れられずにいる。
次回の授業まで克服する方法を見つけ出さねば、今後ずっと夢の中で同じようなことが繰り返されるらしい。
先刻の授業時間がおわり、それぞれの生徒がどうやって教室にもどったのかよく理解すらしていない。
あまりにほとんどのものが茫然自失となっているので仕方なく、アスタロトが傀儡の術をかけ、
それぞれの生徒を教室に戻したのだが。
総合科A組Aの中で正気を保っているのはほんのわずか一握りほどの人数。
「しかし、いきなりハードな授業だったな。
しかしあの特訓具合は父上達からよくうけている訓練とほぼ同じ、だな」
伊達に同じような特訓を毎日のように幼き日からうけていたわけではない。
一人の青年がしみじみとそんなことをいいつつ、クラス中をみわたしそんなことをいってくる。
「ウラン。それより、これで次の授業…大丈夫なのかしら?」
「いや、無理じゃないか?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
教室に全員生徒達がもどってきているものの、おそらく全ての総合科の特組は同じような状況だろう。
ゆえに思わずその場にて無言になるケレス達。
ケレス達の思った通り、ケレス達のクラス、総合科A組Aとその他のAクラスもまた
同じような光景が見受けられていたりするのだが。
しかし、いまだに意識がきちんと戻っていない生徒達にそんなことを思う余裕は…ない……
「なぜ…なぜだ!?なぜっ!!」
なぜ、としかいえない。
倒した。
そう、たしかに倒したのだ。
なのに、なのにどうして。
いきなり現れた異形のもの。
それは自分達に攻撃をしかけてきそうになった。
ゆえにこちらとしても攻撃し、そしてどうにか撃退、結果として倒せた。
だというのにどうして。
いきなり守りたかったはずの彼女が胸を抑えてその場にうずくまらなければならないのか。
自分を抱きかかえ、叫んでいる恋人の姿はもはやかすんで見える。
あの異形のものが現れたとき、わかった。
否、判ってしまった。
あれは自分の心が実体化したものに近しい、と。
ずっと負い目を感じていた。
彼に対し。
そして自分がいなくなってしまえば彼が幸せである、とずっとおもっていた。
なのに別れられなかったのは自分の弱さ。
そんな自分は消えてしまえばいいのに、と常々おもっていた。
今日、結婚の申し込みをされてその思いが一気に膨らんだ。
その直後に現れた…真っ黒い、大きな獣。
夢の中で幾度も現れては自分を喰らい、そして守ろうとしていたまっくろい獣。
夢の中でしかでてこなかったその獣がどうして現実に現れたのか、などと彼女に知るよしはない。
わかるはずもない。
彼女が手にしているお守り袋の中にはいっている小さな石がそのきっかけになっている、などと。
その【石】こそが今現在、世界中で回収されている【種】と呼ばれている品であるなどとは。
ばらまかれた種にはもう一つの特徴がある。
すなわち。
種を介して生みだされた【ゾルディ】。
それは産み手の魂の一部を有し形を得る、というもの。
つまりは…第三者が【ゾルディ】を攻撃し倒したとすれば、それを生み出した【核】ともいえる存在もまた傷つき、
そして…魂を傷つけられた存在達はその生命活動を維持できずに…命を落としてしまう。
よもや誰が想像できるであろう。
異形の存在と愛する存在の魂が同一であり、相手を倒せば愛する者もまた死んでしまう、などと。
これこそが、【組織】が世界に放ったもう一つの混乱。
自分達が他者を死に至らしめたと知った時…もろくも心は崩れ壊れる。
それを狙っての行動。
それを狙っての行動。
悲劇はゆっくりと、しかし確実に世界を侵食しはじめてゆく……
「……魂の欠片に付属能力として持ち主の魂の割符…どこまでこちらを翻弄すれば……」
どうにかこうにか収集した【魂の欠片】達。
詳しく解析してみたところ、それらを手にしてい存在の思いを核とし、
さらに実体化するにあたり、持ち主の魂の四分の一を奪って器を成しているらしい。
そのことが検査報告として告げられ、再び頭をかかえてしまう。
その事実が暗に示していること。
すなわち、それは生み出した核となるべきものがそれを倒さずに他者が倒した場合、
核となった存在はどこかで確実に命を落とす。
たとえ命が助かったとしても魂の大半を失った以上、普通に生活ではきしない。
むしろその虚ろに逆にゾルディが入り込み、喰らい尽くす結果ともなりかねない。
それをいち早く見抜いた妖精王達は自らの体を結界の核として起動させることにより、
全ての界から一時期遮断し自分達の眷属を守ることとした。
王が結界の核として身動きとれない以上、妖精達は実体化することもままらならない。
それぞれが本体である植物や他の存在として過ごすしか方法はない。
「…この事実を機動部隊に知らせるべきか、知らさないでおくべきか……」
知らせばおそらく、人々を守るために力をふるっていた彼らは絶対に指揮がおちる。
逆に知らさなければ知らず知らずのうちに誰かを殺していたことを知らないままになる。
後者の場合はいずれは後に知ってしまうであろう事実。
しかしどちらがいい、とは一概には絶対にいえない。
だからこそ悩む。
「…は~。魔界側のほうは?」
「精霊界側は自業自得、というので割り切るそうです。魔界側もしかり」
つまり、優柔不断はここ、天界側だけ、ということか。
そう確信し、幾度となく吐きだしたため息を大きく吐き出し、
「…魂の割符の可能性を全ての場所に通知するように…」
『はっ!』
どの界も自己責任、という言葉のもとに行動するのならば天界側もそれに従うまで。
ゼウスの言葉をうけ、報告をもってきていた兵士の一人があわてて部屋をあとにしてゆく。
「…さて、ヤツラはいったい、何をおこそうとしているのだ?」
そんなゼウスの問いかけに答えてくれるものは…この場には…いない……
生徒達がうけている精神攻撃?それらの光景は各自のご想像に任せます。
あの表現きちんといれたら、残虐描写あり、にしないといけませんので(自覚あり
というわけでかなりオブラートに外からの視点でかいております。
・・・今日はなんかねむいのでまだ早いけどひとまずアップしてからも、ねます…
まだ全部打ち込み住んでいないのに、なろうさんにWGの前半部分を投稿してます。
もっとも、まだイベント?を打ち込みしていないので次回はだいぶ先になる予定。
イベントを二つくらい済ませてからまた2話くらいにして投稿しようとおもってます。
かわったところで区切っている理由は至って単純。
その後でさらり、と精霊王達や主人公の正体が第三者に深く考えればわかるようになってるからです