光と闇の楔~入学試験と仮入学~
一人称でやれば楽なんですけどあえて客観的な視点から挑戦しております・・
確かに自分達で考えて行動することは大切。
しかしやはり上の判断を仰いで行動したいのも事実。
実際、かの判断に間違いなど今までなかったのだから。
「……いったい、どちらに……」
……まずは、魔界側に確認してみて、それから精霊界等。
もしかしたらお一人で外交にいかれたのかもしれない。
そんなかすかな期待をこめつつも、しばし殻の『王座』をながめてゆくいくつかの影……
光と闇の楔 ~入学試験と仮入学~
「しかし…あんた、いったい何なんだ?」
先ほどのことといい、わからないことばかり。
いくら話し合ったとしても完全に和解できるはずもなく。
相手のほうもこれ以上かかわることにより子供に影響がでるのを懸念した。
結果としてそのまま男性を連れて間にはいった少女とともにその場を後にした。
正確にいえばほぼ強制的にその場から連れ出された、といっても過言ではない。
さらさらさら。
目の前にはさらさらと流れる小川。
「私は私。ならあなたは自分が何なのかいえるの?」
そんな男性の言葉にさらっと言い返す。
「まあ、いきなり攻撃をしかけたあなたをこの森の自然が許すはずもないし。
迷いたくなかったら私と一緒に森をでたほうが得策だとおもうけど?」
事実、森の守護ともいえる竜族に手をかけようとした人間を自然が許すはずもなく。
そのままほうっておけば間違いなく男性はこの森で下手をすれば息絶える。
それゆえにこの男性を伴ってとりあえず目的の場所にとやってきているのだが。
「さて、と。これくらいかな?」
目の前で起こったことが理解不能。
少女が大地に手をつけて何やらつぶやいたとおもうと周囲に茂る薬草がいきなり生い茂った。
その光景を目の当たりにしてしばし呆然としつつも少女に語りかけた男性に対し、
さらっといいきっている目の前の少女。
たしかに伝え聞く『言霊使い』の能力は他者の能力などに影響を及ぼす云々、とは聞いたことはある。
そんな唖然としている男性を尻目にさくさくと生い茂った薬草を採取している少女の姿。
「よし。終わりっと。それじゃ、いきましょうか。おじさん」
「おじ…俺はまだ二十代だぞ!?」
たしかに無精ひげなどをはやしているがまだ二十代なのにおじさん呼ばわりされたくはない。
「なら無謀者さん?」
たしかにお金に目がくらんで竜族に挑んだのは事実。
ゆえに、ぐっと思わず言葉をつまらす。
「いい大人なんだから、もう少し思慮深くなることを私としては勧めますけどね」
どうも最近は目先の欲などにおどらされるものが増えているような気がする。
だからこその忠告。
青い瞳に太陽の光に反射するかのような銀色に近い髪の色。
このような髪の色などみたことがない。
だがしかし、目の前の少女の言葉に対して言い返せる材料が男にはない。
「お金が必要ならそれなりに自分でどうにかしないと。
小さな子供でもそれくらいはわかってるとおもうんですけど」
ぐさっ。
さきほどから目の前の少女は耳に痛いことばかりいってくる。
「そういうあんたはいったい何を……」
「みてわかりません?薬草採取です。ギルドの依頼をうけてるんです」
事実、彼女はギルドの依頼をうけてここにきた。
そのことに嘘偽りはない。
「さて。採取完了。それじゃ、森をでましょうか」
「あ…ああ」
何だかはぐらかされたような気もしなくもない。
「…そういや、あんた、名前なんていうんだ?」
今さらながらにそういえば目の前の少女の名前をきいていないことに気付いて問いかける。
「女性に名前をいきなり聞くより、まずさきに自分がなのるのが礼儀ではないですか?
そんな行動をとっていたら永久に伴侶をみつけることすらできませんよ?」
「なっ!大きなお世話だっ!」
いきなり、伴侶、ときたものだ。
たしかに自分には彼女はいない。
しかし目の前のしかも先ほどあったばかりの子供にそんなことをいわれたくはない。
「わめいてないでいきますよ。それともこの森の中で迷って餓死します?」
「なっ!お、おいっ!」
男が叫んでいる最中、そのまますたすたと歩き出す少女をあわてておいかける。
彼とて理解はしている。
いくら鈍い自分でも森全体が入ってきたときと異なり
雰囲気がまったく異なっているということくらいはきづいている。
そしておそらくは、目の前の少女のいうとおり、
少女とともにいなければ自分は森からでることはできないであろう。
それは直感。
すたすたと先をすすむ少女をあわてて追いかける男の姿が、
森の一角においてしばし見受けられてゆくのであった……
「はい。登録を確認いたしました。それでは学園の入学試験の内容をご案内させていただきます」
入学試験をうけるにあたりギルドで一つの依頼をうけ、その品を先刻ギルドへと持ち込んだ。
その依頼中に一人の男性と知り合ったりもしたのだがすでに森から出ると同時に別れている。
男からしてみればいろいろと聞きたいことがあったのだが、
少女の姿を見失ってしまったのだから仕方がない。
少女はそこに『いた』のに男性が気づけなかった、というのを別として……
ギルド協会が経営しているこのギルド学校協会。
学校の背後に協会、がついているのは同じくギルドが経営しているからに他ならない。
つまりはギルド協会の一端であることを物語っている。
もっとも、判りやすい名前にしたほうがいいだろう、というのでこの名称になっているのだが。
今、彼女…ディアがいるのは学校ギルド支部の出張所。
いわば出先の機関のような場所。
冒険者ギルドからこちらにきたのはつい先ほど。
ギルドの受付から案内状を渡されここにきた。
「どの学科がいいとか特にありますか?」
「いえ…特には……」
ギルドが経営している学校は様々な分野に及んで学科をかまえている。
「それでは総合科が無難ですね。学校の説明はおききになりますか?」
「はい。おねがいします」
周囲には数名、同じ目的で説明をうけている人々の姿が目にとまる。
中にはすでに成人しているような人も見受けられていたりするがそれはそれ。
それは別に珍しいことでも何でもない。
「それでは、それぞれの学科の説明をしたいとおもいます」
今、彼女達がいるのはとある一室。
簡易的に並べられた机といす。
その椅子に座り目の前の教壇らしきものにたっている人物の説明をきいている状態。
「それぞれの学科にはギルド同様、ランクがあります」
こちらは、A~Dクラスと分かれるようにとなっている。
一般的にAクラスはそれぞれが得意分野として極めよう、もしくは資格を取りたい人達が在籍している。
簡単に説明するならば、建築業を行いたいものは、建築家のAクラス、ということとなる。
もっとも、Aクラスにいけるのはすでに基礎ができているものたちに限るのであるが。
逆にDクラスの場合は基本的な基礎知識から教えをこうことになる。
そして、今、ディアが説明をうけた総合科、とは言葉通り、様々な学科を総合したもの。
簡単にいえば浅く広くそれぞれの知識を学ぶ学科でもある。
そこから自分が興味を抱いた学科を選考し、別の学科に移籍することは可能。
この場にいるそれぞれがそれぞれにあるいみ判りやすい格好、といえば格好をしている。
一人はローブを全身にまとっている男性。
一人はその筋肉質から体力系?の仕事につきたいであろう、そんな人物。
ちなみにどうみても年齢は成人年齢を超えているようにみえるのはおそらく気のせいではない。
そして一人はおそらく十代後半くらいであろう。
それでいて分別を踏まえたような表情をしており、
凛とした姿勢を崩さないままに説明を聞きいっている。
ちなみにその手元にはしっかりと、『世界の歴史』という題名の本が握られている。
一人、これといって特徴のない格好をしているのがディア。
とはいえよくよくみればその容姿も他のものよりも格段に勝っているのだが。
なぜか周囲に溶け込むようにほとんど目立っていない。
「まず、みなさんには試験をうけていただきまして、それから仮入学、となります。
そして仮入学後の試験を得て、学校への入学を許可いたします」
そうほいほいと受け入れるだけの余裕が組織にあるわけではない。
ゆえにこそふるいはかけられる。
といっても、
この試験に合格しなかったものは補助的な役割を果たしている場所にと優先的にはいることができる。
もっともそちらのほうは実技を伴いながらの実習ということになるのだが。
簡単にいえばそれぞれの希望分野の技術師などの元で見習いしながら学ぶ、という形になる。
もっとも普通に入学してもそれを希望すればその方法をとることも可能ではあるが。
試験の内容はごく簡単。
全体的に均一された問題に記入するのみ。
世界史。
妖精学。
魔聖学。
薬草学。
魔科学。
総合学。
これらが主な科目となり、総合学は様々な職業などの基本に対する質問などが問われている。
だいたいこの試験において今現在、
自分がどの分野における知識をもっているのか簡易的にではある
が把握が可能。
自分が何をしたいのかわからないものなどは
よく今現在の自分が最も知識があるであろう部門にいきかける。
もっとも、それから向上心を発揮すればいいがそのまま現状にあまんじていては先はない。
総合学においては様々な特殊職業などのことにも触れられている。
自分が今どのあたりにいるのか、自分自身をしるのもまた大切なこと。
簡単な説明がなされた後、それぞれに試験の用紙が配られる。
ちなみにこの用紙には特殊な薬品と魔術が使われており、偽造などができないようにとなっている。
この部屋から持ち出したりすれば紙ごと燃える仕組みとなっている。
また、何かに書きうつそうとしても同じく、紙は燃え上がる仕組みが組み込まれている。
ようはどんな内容の試験が出たか詳しく外に漏えいしないがための処置。
とはいえまったく漏えいさせてはいけない、というのではなく。
どんな内容だったのかくらいならば、
細かいとこまで詳しくなければ第三者に受験者達が話すことは可能。
そんな形なのでいうまでもなく機関の一つとして今までの傾向と対策を用いた学院もまた用意されている。
大概はそこに通い、そして本格的に試験をうけるものが多数なのだがそれにはどうしても資金がかかる。
資金力のないものたちは
ギルドから出された試験的な依頼をこなして学校への入学試験の許可を得るしかない。
ギルドは大概誰にでも平等にその門をひらいている。
生きとし生けるものの可能性、というものを開くために。
「それでは、今から試験を開始いたします。できた人から退出してもかまいませんが。
一応制限時間というものはありますのでご了解ください」
基本的な説明をしたあとにこの場にいる全員を見渡し別の職員が書類の束をもって部屋にと入ってくる。
配られる必須科目は一度にすべて。
自分の得意な分野から片づけてゆくのもよし、ゆっくりととりくむのもよし。
ちなみにきちんと休憩時間、というものも設けている。
ギルドの協会学校の試験は基本、いちにちがかりで執り行われる。
ゆえに問題をなかなかとけないものがいた場合は真夜中にまでおよぶこともある。
「それでは、はじめてください」
時間をどうつかおうがそれは各自の自由。
が、しかしその試験中に参考書などを読んだりする行為があった場合はそっこく失格となる。
まあ、それでも失格となっても再び挑戦する権利は剥奪されていないのだから再挑戦すればよいだけのこと。
「…さて、と。どうするかなぁ~……」
一番無難なのはCクラスに滞在するようにしむけ…もとい、計算すればいいだけのこと。
しかし、ここで数年ものんびりとやっていたらどこから話しが漏れるかわからない。
確か今までにも半年、もしくは一年くらいで卒業したものもいたはず。
「やっぱり。あれくらいがちょうどいい…かな?」
うん。
そう一人ごとをいいつつも一人納得しおもわずうなづく。
「…すこし、あそんでみますか…ね♪」
ふと面白いことを思いつき思わず笑みを浮かべるものの、そんな彼女の姿に誰も気づかない。
「さて…と。どれだれの存在がこれの解釈、できるか楽しみね♪」
ふふ。
それに何よりもきちんと【彼ら】が役割を果たしているのか見分ける基準にもちょうどよい。
この世界で共通している文字と、かつてあった文字。
それらを組み合わせて問いの意義と答えをかきこんでゆく。
「あまり時間早くても目立つし…しばし、のんびりとしておきますか」
どうせまだ昼時にまでは時間がある。
昼時に合わせて試験用紙を提出すればよい。
部屋の前で様子をみている監視係りに気付かれることなく、
しばしほほ笑む少女の姿が見受けられてゆく……




