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光と闇の楔  作者:
48/74

光と闇の楔 ~学校(協会)側は大騒ぎ?

北欧神話さんでは、長男、フェンリル、長女、ヘル、次男(末っ子)ヨルムンガルド。

になってますが、このお話しはあえてヨムを一番の末っ子に。

理由?それは母親を守る、という理由で末っ子が無難かな?

という理由です。

…それに、彼、産まれたときには、かわいらしい小さな、ヘビ、ですし。

容姿的に、末っ子のイメージが(苦笑





すべてはあのときから狂った。

狂ってしまった。

自分の容姿が罪だ、といって攻撃をしかけてきていた大人たち。

でも、それでも、父や母が守ってくれていた。

兄も。

大切な姉をも傷つけようとする彼らから必死に生きていた。

なのに…その大人が母を傷つけようとしたあのときから。

父は自分の力が足りなかったことに悲しみ、怒り…守れなかった自分を悔い。

視ているほうがつらかった。

だけども、父から告げられた言葉は自分達も率先して力をかそう、とおもった。

…すなわち、愚かな行為をする世界を一度浄化する。

補佐官様は好きだったけども、何よりも父と母、そして家族のほうが大切だった。

戦いを始めたとき、あっさりと補佐官様より直接に、

『傲慢になってるは事実だから徹底的にやってもいいわよ。

  …それで、あなた達の気がすむのなら、ね』

そういってくれたのが救いだった。

どうやら、あまり傲慢な考えをもちはじめていた彼らに補佐官様も危惧を抱いていたらしい。

その悲しみに肉体と魂が完全に浸食されそうになり、そこで補佐官様と王の力が発動した。

そして自分達に父と母を守るようにと命じられた。

命じられなくても自分達は自分達なりに立候補しようともおもっていたし、

また他のものがその役目になったとしても、まちがいなく見守ることを選んだであろう。

『いつか、世界にその力が満ちた時、心を閉ざした彼女もまた目覚めるでしょう』

その言葉が持つ意味は何なのかはわからない。

だけども、自分は母を…自らの肉体を石に変えてその身と心を守り抜いた母。

母を守ることのみあのときからこうしてここにいる。

だけども……

「?最近、ヘルやフェン兄さん達からの報告がないのは、どうしてでしょうか?」

それがきにかかる。

定期的に必ず何の異常がなくても連絡はきていたというのに。

【門】がある空間にゆきつくまでにとある自らが存在しているこの場。

この何もない空間のことを、別名【アザトス】ともいう。

その空間のことを無明の霧ともいい、無明の海、とも呼び称す。

その海の底にどぐろを巻き大切な母の体を守っているのが、ヨルムンガルド。

ロキとアングルホダの間に生まれた次男にして冥界の王ヘルの兄であり、

氷の覇王フェンリルの弟。

そのつぶやきは、ただただ周囲の霧のような海にと溶け込んでゆく……




        光と闇の楔 ~学校(協会)側は大騒ぎ?~





「ねえねえ!きいた!?また新しい先生がくるんだって!」


ここ、ギルド協会にしては連続して新たな教師がやってくる、などかなり珍しい。

これが協会本部でなく、支部にあたる学校ならばわかるが、本部に連続して教師がはいってくるなど。

はっきりいって数十年に一度あるかないか、というくらいに珍しい。


「あ~。やっばり最近、【ゾルディ】の被害が増えてるのもあるのかな?」


生徒達には、今何がおこっているのか、詳しいことは知らされてはいない。

否、生徒達だけではなく、一般の人々にも何が起こっているのか正確なことは知らされはいない。

ゆえに、いきなり突如として増え始めた害ある存在、【ゾルディ】。

その脅威にただただ日々おびえるばかり。

何でもその【ゾルディ】を生み出しえる【種】と呼ばれるものがばらまかれた。

というのは噂で知ってはいるが、その種がどういったものなのかはいまだに発表されていない。

噂がどこまで真実なのか、人々は疑心暗鬼になっているものの、

しかし、ギルド協会や王国側が国をあげて何かを回収しはじめているのは事実。

その事実は噂となり、

あっというまに王都といわず、他の国をも巻き込んであっという間に広まっている。

実際、他国においても、ギルド協会側と他国側とで何かを回収しているらしい。

その何か、がわかれば対策の仕様もあるような気もしなくもないが。

協会側に問い合わせしても、はっきりとした返事は得られないのが今の現状。

協会側としても発表にこまる品。

何しろ、不確定物質、ともいえる代物。

手にしようとする存在の潜在意識を読み取り、そのように変化する代物、などどう説明すればいいのやら。

中には死んでしまった子供の姿を形どる【種】すらあり、

子供がもどってきた、と喜ぶ親もいたりする。

あくまで種は相手の深層心理を【摸索】するので、外見上はまず気づかない。

魂の欠片、とはいえ力は神のもの。

それくらいの模倣はたやすいもの。


「なんかさ。最近は死んだはずの人がいきなり戻ってきたりとか。

  目の前の知り合いからいきなり魔獣が出てきたりとかするんだって。

  何でもその人が噂の種をもっていたらそういうこともありえるっていう噂だよ?」


どの時代においても、またどの世界においても、人、とは噂話しが好きなもの。

ましてやそれが自分の身に降りかかるかもしれない噂ならばさらに盛り上がる。


「それより、この前は魔界側からの臨時教師だったでしょ?

 アシュタロス先生、カッコイイよね~。も、私、先生が悪魔でもいいから傍にいたいっ!」

「…悪魔との契約はあまりお勧めできないよ~?転生もあやしいかもしれないし」


この世界において輪廻転生、という言葉はしごくもはや当たり前であり、誰でもしっている事実。

命はめぐり、冥界へと魂はむかい、そして新たな生を迎える。

生命論という授業でそのあたりのことはきちんと学校内においても教えている。

中には魂を喰らう悪魔もいる習っている。

そうなれば魂そのものが消滅してしまうので来世は絶対に望めない。

もっとも、前世のことも覚えていない状態で生まれ変わっても意味がない、と捕えるものもいるにはいる。

中にはそのように伝わっていても、所詮は伝説、死ねばそれまで、とおもっている輩も多々といる。


「まあ、先生が悪魔、というのはあの美貌だからわからなくもないとして。

   気になるのは名前、なのよねぇ。魔界の大侯爵と似通った名前、というのが気にかかるわ」


似通った、というかそもそも、アスタロトの別名の一つがアシュタロスである。

あまり変わっていない、といえばそれまでだが。

名がなぜか間違った伝わってしまい、面白いのでそのまま別名の一つ、としてその名を用いているアスタロト。

「大侯爵の子息か何か、なんじゃないの?」


実際、自らの子に同じような名をつける、というのはどの種族においてもよくやっているらしい。

特に後継者となる子に自らの名を継承させる、というのはよくあること。


「でもそんな大物がこんな人間界のしかも学校の教師なんてやるとおもう?」

それはたしかに。

そもそもそのような大物の子息とかならばそれなりの教育係りがついているはず。

「いや、ほら。逆に世間をみてこい、とかいって放り出す親っているし」


実際、身分を隠し、民に交じることにより

より世界を知ることが必要、とばかりにその制度を用いている国もある。

その制度が魔界においても普及しているかというのは彼らにも知るよしもない。

ないが、そういったこともあり、噂は噂を呼び、今現在、ここギルド協会学校の一番の話しの種。


「前回は魔界からの臨時教師、だったから、今度は別の界からの臨時教師、かな?

  可能性として精霊が出向いてくる、ということはまずないだろうし」


そもそも、精霊が出向くのならば、ここの土地を守護している守護精霊が姿をあわしそうである。

霊獣界から誰か教師が送られてくるとすれば、留学生ヴーリの関係者になる可能性が高い。

妖精界においては…今の地上界に彼らが存在するのはかなりきついものがあるであろう。

今現在の地上界はどこといわずに、常に負の気に満ち溢れている。

妖精達はそういった気にとても弱い。

まさか死者の国である冥界から誰かがやってくるなどありえない。

となれば、ありえるのはおそらくは、天界側からの使者くらいであろう。

伊達に、ここ、ギルド協会学校の中で様々な知識を教えているわけではない。

そのあたりの基本的な知識は生徒達にきちんと教育を施している。

それがどこまで自分なりに解釈し自分のものにしているかは別として。


「でも、問題は、もしそうだとしたら。また騒ぎがおおきくなるわね~」

「だよね~」

「「は~……」」

そんな会話をしていた生徒達が思わず顔をみあわせ盛大にため息をつく。


ため息もつきたくなる、というもの。

基本的に、ギルド協会学校で教育を施している教師などは公に種族などを公開することになっている。

それは生徒達がどんな種族でぞのような経歴の人物に教えてもらっているのか、

と心配する多々といる親や、またそれぞれの分野における責任者達からの声をうけてのことなのだが。

いくら資格を保有していたとしても、周囲となじめないような教育をうけていたのでは意味がない。

様々な職種によっては種族を問わず接触しなければいけないものもある。

学校はそういった耐性の場をつける場でもある。

生徒達の個人情報は守られてはいるが、

教師達の名は伏せられるとしても経歴などは簡単に公表される。

が、この公表、というのが今、彼女達が一番気にとめている事柄でもある。

何しろ魔界のしかもある程度の実力者…名からしておそらくまちがいなく実力者。

と勝手に解釈した存在達がこぞってアシュタロスに講義を受けようとしたり、

もしくは対戦を望んでギルド協会本部に掛け合ったり、直接学校に押し掛けたり、

という事例もすでに起こり始めている。

そこに、また実力者が加われば今後どうなるのか。

それは一生徒である彼らにはわからない。

わからないが、すくなくとも平穏無事にはすまないであろう、という予測はつく。


「なんか、ここさいきん、いきなり騒がしくなったよね?」

「うん。今まで平穏で退屈だったけど、なんかいきなり平穏ってすばらしいことなんだ。

  ってつくづく思い知らされてるよ」


今まで何ごともなく、何かがあればいいのに。

と毎日を怠惰に過ごしていた。

といっても過言ではない。

しかし、しかしである。

ここ最近はまさに下手をすれば命がけの事件が続いている。

それはすべてここ数カ月の間にいきなり降ってわいたかのように連続して起こっている。

三階位になるここにいたる年月になるまでこんなに連続して何か事件がおこったことなどいまだかつてない。


彼らは一般的には高学年、ともいわれている階位に在籍している生徒達。

ゆえに長くてすでに十二年以上このギルド協会学校に通っているものもいる。

もっとも、この学校は実力が全て、なのでその実力に応じて飛び階、は可能。

中には入学試験をうけてすぐに卒業試験をうけた強者も長い歴史上には存在している。

ちなみにディアが入学した階位は年相応の第六階位。

一般的にこの学校には六才のころから通いはじめるものが大多数。

孤児院などを得て入学する場合、その能力に応じて階位は決められる。

ディアの試験結果は年相応、とみなされたがゆえに、年相応の階位に振り分けられたにすぎない。

もっとも、ディアとしてはそのようにわざと調整をしたのだが。


「でも、ってことはまた明日も全校朝礼か~」

「あ~…あのながったらしい話しはどうにかしてほしいわよね。ほんと」


どちらにしろ、新たな教師がやってくるとなればまちがいなく全校生徒をあつめた朝礼、

もしくは集合がかかるはず。

ゆえにため息をつかさざるをえない生徒達。

何しろ全校朝礼などにおける教師達の話しはながすぎる。

あまりの話しの長さに時折貧血を起こす生徒がでる始末。

それでも意味のない長い話しをやめようとしないお偉いさんたちの気持ちは生徒達にはわからない。

たわいのない会話ではあるものの、

いまだ正式に発表していないにもかかわらず、天界から新たに教師がやってくる。

という噂はまことしやかに学校全体にと瞬く間にと広まってゆく……





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

どうしてこうなってるわけ?

思わず目を点にする。

確かに話しあいのためにしばらく意識を切り離していたのは事実。

ひとまず今後の対策などについても話し合い、戻ってそのまま登校しているディア。

そもそも、戻って、という言葉はあまり当てはまらないのかもしれない。

意識をただこちらに【戻した】、といったほうが正しい。

壇上にいるのは、なぜか見慣れた女性の姿。

それでなくても先日、リュカとともに行動を共に一時したばかり。

そのときには彼女に気づかれないようにしてはいたが……

「…なんで?」

それがまず始めの感想。

天界側から何らかの対策を施すために使者が使わされるのは用意に予測はつく。

つくがわざわざ女神の中でも主要の位置にいる彼女をここに遣わす理由が今いちよくつかめない。

ヴリトラがここにいる、というのを理由にしてみても、戦女神をわざわざ地上に遣わす理由がない。

そもそも、彼女とヴリトラが共にいればどのような結果になるのか、

天界側とてそれは十二分に承知しているはずである。

…もっとも、今の事情でかつてのような悪戯をしまくる、とは思わないが……

そんなディアの心情は何のその。


「みなさん。今日より、みなさんの自衛のための防衛術を教えてくださることになりました。

  天界よりの指導員、アテナ様です。みなさんも知ってのとおり、今世情が世情です。

  ゆえに天界側も魔界側も我々地上界の者は貧弱であることから配慮してくださり。

  こうして使者をよこしてくださいました。ありがたいことです。

  みなさんも今後ない機会ですので、いろいろと学んでくださいね」


というか度々あったほうがはるかに怖い。

それほどまでに、天界人と魔界人と地上人との力の差は歴然としている。

神気を抑えていても、その身からあふれる神々しさは隠しようがない。

ゆえにこの場に集められている生徒全員が壇上のアテナ、と紹介された女性に見惚れ釘づけになっている。

そこにいるだけで姿勢を正したくなるほどの気迫とそして美貌。

みるものを虜にするかのごとくの慈愛に満ちたほほ笑み。

免疫のない存在にとってはその笑みはかなり酷といえよう。

そして…この場にいるほとんどの存在がそういった免疫がとぼしいのも事実。


「…あの子…いまだに気配を隠す術…完全ではないのよね……」

緊張しているからか、おもいっきり気配を隠す術が完全に作用していない。

もっとも、始めがなめられてはおしまい、というのもあってある程度、気をはっている。

というのはあるのであろうが。

それでも、神の発する気というのは微量だけで人を失神させる効果をもっている。

それがわかっているのかいないのか。

おそらくそのあたりの力加減具合がいまだにつかめていないのであろう。

先日、調査にやってきたときは騒ぎにならないように、というのが根柢にあったがゆえに、

その気配もすべて確実に遮断し人になりきっていたようではあるが。

「防衛術…か」

たしかに戦女神である彼女ならばその対局にある防衛の仕方を教えるのにはうってつけ。

しかし、しかしである。

「よくもまあ、溺愛してる娘を何があるかわからないここに送り込んだものだわ。ゼウスも」

思わず本音がぽつりと漏れ、その場にて苦笑してしまう。

ヴリトラがここに滞在している、というのはおそらく反旗組織にも伝わっているはず。

だとすれば、彼らはここを重点的に攻めてくる可能性は遥かに高い。

もっとも、そのほうがディアにとってもかなり効率がよくて助かるのだが。

「…ヴリちゃんがもどってきたら、

  あの子と一緒になって悪さをしないようによ~~くいっときましょ……」

つい昔のクセがでて周囲を巻き込む悪戯をされてはおそらく人間達はそれらに耐えられないであろう。

下手をすれば確実に死ぬ。

まだ天界や霊獣界といったその器そのものが精神であり、精神の強さが器の強さ。

となっている界とくらべ、この地上界に住まう生命体の器はかなり弱い。

少し力を加えただけで簡単に器は壊れてしまう。

それはどの種族においてもいえること。

他界に本来生息しているはずの種族にはそれらの弱さは当てはまらないが。

神気を学校に来た時から感じてはいたので、誰か天界人がやってきているのはわかっていた。

いたがまさか彼女がきているなどとは思っていなかった。

意識をいまだに【外】にむけていたがゆえに気づけなかったというのもある。

今ここでいきなり気配を変えたりすればまちがいなく目にとまってしまうであろう。

今のディアはいつものごとくに、周囲にとけこんだ気配のままとなっている。

つまり、本来あるべき気配のままの状態でここにいる。

この場にていきなり気配を変える、ということは文字通り、壇上の上にいるアテナに気づきかれない行為。


「みなさん、初めてお目にかかります。今学校長よりご紹介をうけました。

  天界より参りました、アテナ、と申します。

  今後のこともありしばらくこの学園にて教師の役目をさせていただきます。

  みなさんが負の心に囚われないようにそのあたりはしっかりと叩き込むつもりですので、

  そのあたりは覚悟しておいてくださいね?」


裏を返せば、簡単に自分の心に負けるような鍛え方はしない、といっているに他ならない。

が、しかしその言葉の意味を完全に理解できるものはこの場においては二名のみ。


にこり、と祭壇上にと登り、生徒全員を見渡しつつもそう高らかに宣言するアテナの姿。

その声は慈愛にみち、なおかつ威厳にあふれており、その場にいる全員…二名を除く、が。

ともあれその場にいるほとんどの存在がその威圧感にと呑みこまれてゆく。

そんな生徒や教師達の反応はさらっと無視し、集められている生徒にと再び視線をむけ、

ふと、その視線がとある一点でとまり、その目が一瞬大きく見開かれる。

離れていてもその雰囲気が周囲に完全に溶け込んでいる、というのは左右にいる人間達をみても一目瞭然。

髪と瞳の色は異なれど、そのような雰囲気をもつ存在など限られている。

それゆえに、


「…Marque de la larme(ティアマト様)!?」


思わずその姿を凝視し、その場にて叫ぶアテナ。

今この場がどのような場なのか、まったくもって意識していない無意識の台詞。

無意識であるがゆえに、常につかっている【言葉】にて思わず叫ぶ。



どうでもいいが、状況を考えていってほしいものであるとつくづく思う。

そう思うディアの心情はおそらく絶対に間違ってはいないであろう。

そのまますかさずに相手の言葉を封じているディアはさすがとしかいいようがないが。

今の短い悲鳴のような声はどうやら周囲には聞こえていなかった、もしくは認識されてはいないらしい。

そもそも、目の前に神話とでもいうべき、伝説ともいって過言でない、戦女神がそこにいれば、

どうしてもその神々しさに皆目を奪われてしまう。

特に神気を多少解放していればなおさらに。

さらにいえば、戒めの旋律の言葉を扱ったがために理解できた存在がほとんどいなかった。

という理由もある。

約一名、その言葉をきき、一瞬驚愕の表情をうかべて目を見開き、

次の瞬間、すぐさまディアとアテナを見比べている存在がいたりするのだが。

今のアテナが発した声はまさしく、アスタロトが以前より予測していた事柄。

常に近くにいた戦女神アテナがそう断言とはいかずとも、

そう叫んだことにより予測の信ぴょう性がはるかに増した。

つまり、天界、魔界における補佐官は同一の存在である、というその予測。

となれば、彼女がつかえている【王】もまた同一の可能性がかなり大きい。

それは世界の根柢にもかかわることなので滅多なことでは口にはだせない。

ないが、それでも真理を追究したい、とおもうのは彼が彼であるゆえんでもある。




見間違い?

否、そんなことはない。

だけど、どうして?

人間にあの御方と同じ気配をもっている存在がいるなど思えない。

というかありえない。

全ての大気、世界そのものに溶け込んでいる、といって過言でないその雰囲気をもつ存在。

何よりも憧れて憧れて、手の届かない存在。

至高なる存在、王に唯一、絶対的な信頼を得ている存在。

補佐官ティアマト。

いくらその髪と瞳の色が違えども、その姿を見間違うはずもない。

だからこそ思わず、素で叫んでしまったアテナ。

しかしそのひとことの後、なぜか声を出そうにもだせなくなってしまう。

この感覚には覚えがある。

かつて神竜ヴリトラとともに悪戯をしかけていたときに、補佐官よりお仕置きをうけたことがあった。

それは声を封じる、というお仕置きであり、念波すらも封じられてしまった。

【声】もだせなければ、動作で物事を現そうとしようとも、それすら許されなかった。

唯一できたのは、ただ頭を下げて謝ることのみ。

魔界の補佐官ルシファーも素晴らしきかた、ときいていたので会いたくはあったが、

魔界の空気はアテナには向かないから、といって

父たる雷神ゼウスは魔界にアテナをつれてゆくことはなかった。

ゆえに遠くからのみしか魔界の補佐官にはあったことのないアテナ。

もしも近くで魔界の補佐官にも合うことがあれば、同じ雰囲気をもつ存在が他にもいる。

と勘違いしていたかもしれないが、彼女は不幸にも天界の補佐官しか知りえない。

もっとも、それが不幸なのか幸運なのかは考え方は人それぞれ。

そもそも、どちらの補佐官もただ髪と瞳の色を変えただけでそのように振舞っていただけ。

神竜や伝道師達はその事実を知ってはいるが他の存在には教えてはいない。

それはいわゆる暗黙の了解。

神と魔、光と闇が実は同一、とわかって混乱しないようにと設けられている配慮。

ならばべづ別に光と闇を統べる存在を創りだせばよかったのではないか、という疑念も生まれるが。

それでは意味がなかったのも事実。

そんなことをしても、いずれはやがてかつてのように均衡が保てなくなることは目にみえていた。

だからこそ、【意思】自らが兼用することにしたのだから。



アテナが口がきけなくなっているなど微塵にも思わず、

「え、え~。今、アテナ様からお話しがありましたとおり。

  これより後、みなさんの指導をしていただくことになります。

  かの御方は戦女神でもあられますことからみなさんは幸運といえるでしょう。

  何しろ、上位神であられます女神さまに直接指導をしていだたけるのですから」

何やら逆の意味で盛り上がり、熱意をこめて説明している学校長。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しばし、一瞬の静寂の後。


『えええええ~~!!??』

『うそぉ~~~!?』


講堂内に生徒達の何ともいえない叫びが響き渡ってゆく……






  …なんか今回もほとんど話しがすすんでない(涙

  とりあえず、これにてアテナが教師の一員にくわわりましたv

  さらっと全校生徒の前で暴露してたりしますけど、まあ全校生徒の誰をみて叫んだか。

  など普通はわかりませんしね。普通は……

  ようやく、騒動の要ともなる教師二人がそろったところで、学園生活の再起動v


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