光と闇の楔 ~協会本部と打開策?~
メモ帳さんにとりあえず18~20kb以内に収まるようにして、
なろうでは四話以降は常に長さを区切ってます。
ちなみに打ち込みしてるのはホムペ作成ソフトさんで打ち込みしてたり。
こちらのほうは行間間設定を175%に設定してるので自分的には見やすいんですけどね。
やはり行間間隔設定とかあったほうがみるほうも確認するほうも見やすいです。
ちなみにこの間隔はいろいろと試行錯誤してこの間隔に落ち着いてたり
「う…うわ~~!!」
逃げても、逃げても、すぐにおいつかれる。
どうして自分がこんな目にあわなければならないのか。
「…見つけた」
「って、や…やめ…ああああっ!!」
始めてみたときにはその美貌に思わず見惚れた。
その背後にいる大人ほどの大きさの狼に気づかなければ、だが。
「……お父様をたべてる……」
ずぶっ。
何が起こっているのかわからない。
ふと気付けば少女の腕が自分の体にとのめり込んでいる。
普通ならば激痛とか何か感じるであろうに、痛みも何も感じない。
『ヘル。どうやらヤツラは食べ物の形にもしてばらまいたようだな』
こともあろうに、食材の形にしてばらまいているらしい。
それがよけいに腹ただしい。
「ほんと。お父様をないがしろにしすぎ」
基本は、魂が元となっている代物。
ゆえに、いくら物質的な形をとっていようとも、基本は魂。
つまり物質干渉を必要としない品。
体内に入り込んでいる異質ともいえる【魂の欠片】を取り出すのにさほど力は必要ない。
ただ、精神世界面、つまりは肉体、という物質に捕らわれている次元より別の箇所から干渉し、
内部にある欠片を取り出せばいいだけのこと。
傍から見れば少女…ヘルの手が男性の体を貫いているように完全にみえる。
みえるがその貫いた手からは血の一滴も流れていない。
目視的に貫いているようにみえるだけで、
実際は内部に取り込まれた【魂の欠片】を取り出しているだけに過ぎない。
しかし、人、というのは弱いもの。
自らの体がいきなり他人の手に貫かれたのを確認してしまうと、そのままその場にて気絶してしまう。
それは普通の人の感性からすると仕方のないことなのかもしれない。
が。
「……ここ他にもお父様を感じる」
『だな。…まったく、どれだけ父上の複製を創りだしたのやら……』
自分の本体は動けない。
ゆえに自らの力の一部を分けることにより、妹の手助けをしている巨狼フェンリル。
ロキとアングルホダの子供たち。
三人の子供のうち二人の姿が、様々な場所においてこれより後、見受けられてゆく……
彼らの目的は、ただ一つ。
ばらまかれた、父の【魂の欠片】の回収。
ただ、それだけ……
光と闇の楔 ~協会本部と打開策?~
もろい。
とてつもなくもろすぎる。
ギルド協会主催に大会にでている存在達は何かしら心に認めてほしい、
自分の力は人より上だ、そういった心がどこかしらに存在している。
中には純粋に自分の力がどこまでのものなのか見極めるため、と称するものも多々といるが、
しかしそういった者達もまた、心のどこかで人より優位に立つことを望んでいる。
潜在能力を開花、向上させる可能性のある代物。
そういっただけで、しかも金額も安く設定しただけで飛ぶようにうれてゆく【種】達。
「しかし、精霊界のみはそれが通用しませんでしたねぇ~」
伊達に一番自然と、否、【王】に近く、それでいて【意思】に近い存在ではない、ということか。
【意思】の存在を知りえたときには、かなり驚愕したものだが。
しかしまあ、それはありえることなのであろう。
自分達に意思があるように、自分達が住まうこの惑星にも【意思】があっても不思議ではない。
しかしその【意思】が目に見える形で干渉してこれるのかどうか、は判らないが。
霊獣界においては、まさに好奇心、猫を殺すのごとくに面白いほどに品物は裁けた。
かの地に住まうものは、その名のごとく、主に【獣】の属性をもつ存在が多い。
つまりは、基本、潜在能力的に弱肉強食の考えをもつ。
常に強くありたい、とおもう種族のものが多々と住まう地でもある。
そんな中でもしかしたら強くなれるかもしれないけど、まあお守り程度ならもってもいいかな?
とおもわしき代物が手にはいるとするならば…好奇心も手伝って彼らはそれらを手にしていた。
それらがもたらす結果など考えもせず。
かの魂が手にはいり、さらにはそれを複製する道具が手にはいったのが功を奏したといえよう。
ここまで自分達の思惑通りにコトが進むなど。
「しかし…邪神ロキの怒りはすざましいな……まあ、噂にはきいていたがな」
その怒りの矛先がむけられた、雷神ゼウスに同情する気はさらさらない。
というか自業自得。
そもそも、人の伴侶に手をだそうとするからそんなことになる。
かの雷神の女好きは他界でもかなり有名。
中にはそれこそ男の中の男だ!
と逆の意味で雷神を信仰している存在達もいるときく。
「とにかく。これで一通り、主要な場所には配り終えたか?」
ざっと地図を確認し、主要たる都市や村、そして王都などをもう一度よく確認しておく。
「…ユミルの地に入れなかったのがきついが…まあ、ここまでばらまけばよし、としよう」
これからのことを思うとぞくぞくしてくる。
混乱に満ちた世界がすぐ近くまでやってきていることに歓喜すら覚える。
「世界は新たに産まれかわる。そう、我らの手で……」
かつては、様々な界というものは存在していなかったらしい。
そこにいきるものが全ての未来を決定していた。
ゆえに、力あるものが全てを支配していた、といっても過言ではない。
伝道師達はそこまでいってはいないが、おそらくそういうことなのだろう。
そう結論がでているからこそのこの計画。
しかし、彼らは知らない。
力あるものが支配していた世界など、夢物語である、ということを。
それはただ、彼らのような考えをもつものが自分の都合のいいように解釈しているだけなのだ、と。
しかし誰しも自分の都合のいい夢をみようとするもの。
…それを成そうとして行動を起こすか、起こさないかは、それは個々の自由であり、判断次第……
次々と入ってくる報告に思わず頭をかかえてしまう。
この頭を抱える、という行動はここしばらくでいったい幾度行ったであろうか。
すでにもはや数えるのもばからしい数になっている。
絶対に。
「各支部から上がってきた報告ですと。様々な場所にて狼による被害が多発している模様です」
被害にあった存在達はといえば、ほとんどが生気を抜かれたようになっており、
中には気がふれているものもいるときく。
どうにか正気を保っていた被害者の話しをきくかぎり、
いわく。
『いきなり超絶美少女が話しかけてきて、ある品を譲るように迫ってきた』
いわく。
『死んだはずの子供がせっかくもどってきたのに子供をつれていきそうになり、
その子供が目の前で消滅した』
いわく、
『わけのわからないことをいわれ、体を貫かれた。
・・・にもかかわらず、体にはまったく傷一つついていなかった』
等など。
報告によっては内容もそれにともなう結果も様々。
しかし共通しているのは、美少女、という言葉と狼、という言葉。
それから導かれる結論は一つしかありえない。
「協会側としても何らかの対策案をださなければ、不審がられるのは間違いないのですが……」
ここまで被害が出ているのに何の対策もしない、となると協会の存在意義すら疑われてしまう。
それだけは何としても避けなければならない。
しかし、しかしである。
「冥界の王ヘル様に氷の覇王、フェンリル様。このお二方にかなう、とでも?」
「・・・・それは・・・・・・・・」
おそらくその予測は間違いない。
だからこそ頭をかかえるしかない。
はっきりいって彼らの機嫌を損ねれば、国一つくらいかるく一瞬にして焦土と化す。
一瞬で氷の大地となりはてるか、はたまた一瞬のうちに全てが朽ちるか。
どちらかを選べ、といわれてもはっきりいって選びたくない。
切実に。
「とにかく。彼らが回収しているのは間違いないだろう。
こちらからはそのような場面に出くわした場合、
その品は危険なので素直に手渡すように、と指示をするしかあるまい。
…他界から、特殊な品を回収にきている使者だ、とでも支部には連絡しておくように」
時折、ここ地上界には他界の特殊ともいえる品がまぎれることがある。
その都度、その界から使者がやってきてその品を回収にあたっている。
このたびの一件はそれとはまったく異なるが、前例があるそれにあてはめることにより、
少なくとも多少の混乱は防げるであろう。
「それと。こちらは申請書、です」
分厚い報告書のような何か。
しかしその紙の質をみておもわず姿勢を改める。
その紙はこの地上界ではありえない、霊力を編み込んでつくられた紙。
つまり、最高機密扱となる事例のみがよくこういう紙にて扱われる。
ある程度の実力、もしくは指定した存在にしかそれに書かれている文字は視えないようになっている。
「ふむ……なるほど。たしかに」
そこに書かれている内容は、たしかに指摘されればうなづくしかないような代物。
地上界において、神々の気を宿した代物を見つけ出す。
それは簡単なことではない。
中にはそれらに敏感な存在もいるにはるいが、それはごくごくわずか。
魔界においては本来その界にはありえない【光】であるがゆえに、
それを目安にどうにかこうにか探し出すことが可能となっているらしい。
しかし、地上界はそういった光も闇も混同して存在している【場】でもある。
ゆえに余計にそういった代物がばらまかれてしまった場合、見つけ出すのはしごく困難。
魔界、天界、そして精霊界より地上界に派遣員を使わして、それらの回収にあたる旨の許可願い。
むろん、地上界側とてこの申し出を断る利用はまったくない。
むしろこちら側からお願いしたいくらいの申し出。
各界におけるギルド協会本部からの申し出は、
地上界におけるギルド協会本部にとってもありがたい事柄。
「それについて、各界ギルド協会連合会議を行いたい…とあるか」
話しを敷き詰めるのにどうしても会議を行う必要性を感じたのであろう。
たしかに、どういった存在を派遣するなどその対応をどうするなど、決めるべきことは多数。
しかし、各界の協会が連携することにより、
すくなくともこの未曽有の危機を乗り越えられる可能性は高い。
何より、相手側…世界に反旗を翻そうとしているという反組織の思うがままにはさせられない。
「本部会議については、こちら側はいつでもいい、そう連絡しておくように」
「はっ」
その報告をうけ、報告書をもってきていたギルドの職員は部屋を後にしてゆく。
「さて…そろそろ我々の腹をくくる…か」
そしてもう一つ、あがってきている報告。
それは……【修学過程検証実技大会】、
通称【大会】に参加していた存在達がことごとく、種の浸蝕にあっている、という事実。
つまり、実力あるものから排除しよう、という意思がありありとみてとれる。
そして…問題なのは、
「…我が学校にも偶然ながらも優勝者がいる…ということか……」
まちがいなく、彼らはその標的にあの生徒を狙うであろう。
地上界における戦闘部門の優勝者。
その大会の最中、予期せぬ襲撃者があったとはいえ、表向きには優勝したことには変わりない。
生徒があそこまで勝ち進んだことも前代未聞。
しかし、彼女はギルド協会学校の生徒なのである。
生徒を守る責任がギルド協会側にはある。
先日、竜族の小さな少女の侵入をやすやすと受け入れてしまった経験上、
今の戦力というか防御力ではかの生徒を守りきれないであろう。
「さて…どうするべきか……」
ここは、やはり恥をしのんで他の界の戦力をあてにするしかない。
子供を守るのは、大人の役目、なのだから。
「あれ?今日はヴーリちゃんとディアは?」
いつものように学校に行こうと、朝一番に迎えにきたのだが、
部屋から出てきたのはなぜか先日やってきた臨時教師。
なぜかよくこの教師は気が付いたら親友…とケレス的にはおもっているディアの部屋によくきている。
それがさらに噂話を加速させている結果となっているのだが。
傍からみているケレスからすれば、恋愛がらみの噂はまったくもってアテにはならない。
そう結論づけている。
何しろ異様なほどに当人は気づかれないよう振舞っているようなのだが、それは勘としかいいようがない。
臨時教師はディアと、そしてヴーリをかなり敬っているのが見て取れる。
どちらかといえば母に対する絶対的な信頼とそして憧れ、といったところであろうか。
自分自身も母に対してそのような感情を抱いているのでそういったところに関してのみよく勘は働く。
「姫君は本日はシアン殿が連れてもどられていますよ。
あのかたは本日は一族との話し合いがあるとかで学校はお休みするそうです」
さすがに学校内で神竜、もしくはヴリトラ様、とよぶわけにはいかない。
とはいえ、彼ら悪魔にとって力の有無は絶対な掟。
ゆえに、妥協案として、ヴリトラのことを姫、と呼んでいるアスタロト。
さすがに、ディアこと補佐官ルシファーを呼び捨てにできるはずもなく、
ゆえに、彼は彼女のことを【あのかた】もしくは、【あの御方】と呼び称している。
…それもまた、噂にかなり拍車をかける結果になっているのだが……
いきなり呼び出され…というかもう問答無用で引っ張られた。
それをとやかくいうつもりはない。
ないが、いきなり。
「今日は他の姉様達との話しあいがあるから、学校側や皆にはうまくいっておいてね」
といわれて唖然としたのはいうまでもない。
他の姉様達、というのは彼とて一概にしっているわけではないが、
幾度か出会ったこともあるので何となくだが理解はしている。
…何でも王と同じく、他の惑星をすべている存在達、ということらしいが、
そこまで詳しく彼とて知らない。
この太陽を中心とした空間には十の惑星がある、ということはもはや魔界においても常識中の常識。
他の惑星にゆくことが許されているのは、各界においても実力者の中でも数えるほどでもいない。
魔界でいうならば、第一階級に属している五人、もしくは第一位に属している補佐官のみ。
アスタロトはそれらのこともあり、自分なりに必死で調べ、とある結論に落ち着いてはいるが、
それはおいそれと第三者にいえるような内容ではない。
「姉?ああ、そういえばディアって姉妹や兄弟多いっていってたっけ?
それよりアシュタロス先生、
いつも思うんですけど、どうやってこの寮にしのびこんでるんですか?
まあ、悪魔族であるらしい先生にいってもそれは仕方のないことかもしれませんけど。
ここ、一応、いまだに未婚のしかも年若い女の子が住んでいる場所だって自覚あります?」
下手な噂はディアをも傷つけかねない。
すでにやれ、恋人同士だの婚約者だのといった根もない噂が飛び交っているのが実情。
…まあ、完全に使いっぱしりのように扱っているディアをみればそういった噂はすぐに収まっているのだが。
しかし、噂、とは千里を走る、とは誰がいったものかまさに言い得て妙。
「…それは、私でなくて、あのかたにいっていただけますと助かります。
そもそも、いきなり何の連絡もなく突如として呼び出しとかされるのですよ?昔から。
そして呼び出した揚句に大体は面倒極まりないことを命じ…もといお願いされたりとか。
あとはいきなりどこかに飛ばされたりとか……」
思わず愚痴ってしまうのは、目の前の少女、ケレスの人柄が何となくわかったから、といえよう。
何しろあの補佐官に堂々と意見している人間の少女、などはっきりいって興味もでる、というもの。
もっとも、立場を知らないから言えるのではあろうが、それでも、
あの威圧に耐えつつも意見をいえる存在はかなりアスタロト達のような悪魔にとってはまさに貴重種。
「…そういえば、ディア、他者を対象とした【転移】がつかえたっけね……
…それは何といったらいいのか……お疲れ様?」
どういう知り合いなのかはわからないが、
この口ぶりからおそらくよくいきなり呼び出されていたのであろう。
それくらいは用意に予測はつく。
というか離れている場所にいても呼び出せるらしいディアって……
そんなことをふとおもうが、何しろディアの能力は【言霊使い】
かの能力はその言葉に乗せる力によって出来ないことはない、とまでいわれている力。
ゆえにそういうこともありえるのであろう。
それで納得してしまい、かける言葉もみつからず、とりあえずねぎらって言葉をかけるケレス。
疑問形になってしまったのは、
どういっていいかわからないがゆえにどうしてもそうなってしまうのは仕方がないこと。
アスタロトとしても普通の呼び出しならば問題はない。
他の存在からの呼び出しとかならばまちがいなく代理をたてる。
しかし、補佐官に関しては別。
そもそもそんなことをして機嫌を損ねてお灸をすえられてはたまったものではない。
「とりあえず、学校側にはすでに影をつかって伝えてはありますけど。
あと私は自分の仕事がありますしね。
誰かここにきたときのためにここにいるように、ともいわれてますし……」
本来ならばここは、害意あるものは入ることができないようにディアはしている。
しかし、逆にそれを逆手にとり、自分を狙おうとしている輩を捕まえることも可能。
捕えた存在の対処はすべてアスタロトにまかされている。
伊達に審問官の長を務めているわけではない。
そういった輩を捉え、口を割らせるのは彼にとってはたやすいこと。
「もしかして、先生って、ディアと【契約】でもかわしてるんですか?」
それだと彼のここまでディアに対する敬意の示し方もわからなくもない。
悪魔は契約には絶対忠実。
契約、という楔が彼らの力をしばり、その契約を保護にすることは存在的に許されてはいない。
もっとも、悪魔との契約はその願いに伴いそれなりに払う代償が大きくなる。
「それより、ケレスさん、はやくいかないと遅刻しますよ?」
いわれて、はた、と時間に気づき、
「ああ!?ほんとだ。それじゃ、先生、また!」
たしかにここで長話ししている時間はあまり残されてはいない。
質問をさらりとうまくかわされたことに気づくことなく、ケレスはあわてて寮を後にする。
そんなケレスの後ろ姿を見送りつつ、
「…あの御方が、我らが王の補佐官だ、としったらあの人間はどんな反応をするのですかね」
思わずぽつり、とつぶやくアスタロト。
しかし、その素朴な疑問にこたえるものは、この場にはいない……
「…って、大姉様!?それって本当!?」
思わず叫んでしまったのは仕方がない。
絶対に。
同じようにしてその場にいる全員も驚愕の表情を浮かべている。
思えば、このようにそれぞれが形をとり集合したのはいつ以来であっただろうとふと思う。
数多と同じくできた姉妹ともいうべき仲間達。
しかしそれぞれの大地において様々な生物は進化すれども全てが破滅の道をたどっていった。
中には別の惑星に移住していった者たちもいるにはいるが。
「たしか、あの場所って。三姉と同じように進化していったんだっけ?あそこって」
「でもまだあの地は霊力が満ち溢れてたから、そのあたりが違うかな?」
伊達に広い広大な銀河ではない。
自分達と同じように誕生した恒星群も多々とある。
そのうちの一つ、ここと同じような進化を遂げていたらしい恒星群。
そこもまた、そこに住まう存在達から【太陽系】と呼ばれていた。
「そこに【器】が移動してた…かぁ~。まあ、まだ継承していない、とはいえ器は器。
次代の【マァト】なんだし。歪みの修正においてそれほどぴったりな存在はいないでしょうね」
しみじみつぶやく、一の姉の台詞にその場にいる十名と一名が同時にこくり、とうなづきをみせる。
銀河があるからこそ自分達という意思がここにある。
そして、その銀河を構成しているさらに大きな【大銀河】。
大まかに、世界はいくつかの銀河団で形勢されている、といって過言でない。
ここでいう世界とは、文字通り宇宙のことであり、
全ての意思は宇宙の意思の元存在している、といって過言でない。
銀河とは、数百億から数千億個の恒星や星間物質などといったもの達が、
重力的にまとまってできている天体と呼ばれしものを指し示す。
時には、小宇宙や島宇宙、とも呼ばれる存在。
そしてそれらの銀河が互いにおける重力でまとまっている大規模な集団のことを銀河団、と呼び称す。
銀河団には数十個から数千個の銀河が含まれているともいわれており、
その実状をいまだに確実に把握しているものはいない、ともいわれている。
さらに、その規模が小さいものは銀河群、と呼ばれ銀河団という存在とは区別がされている。
そしてまた、
銀河群や銀河団が集まって、億光年以上の広がりをもつもののことを超銀河団、と呼んでいる。
それぞれの銀河にそれぞれの意思が存在し、その意思によって代替わりの仕方も様々。
中には消滅のそのときまで一つの意思のもと存在するものもいれば、
定期的に自らの意思を次代に引き継ぐ存在もいる。
大銀河、とは銀河団の中のほんの一部にすぎない、どちらかといえば、
銀河群ともいうべき少数規模の銀河が形を成しているもの。
その代替わりにおける準備が今現在、ちゃくちゃくと進行している。
その意思たる器の代替わり。
ちなみに、意思を継承した存在のことを彼ら意思はこう呼んでいる。
すなわち、【クイーン】と。
こればかりはどうしようもなく、定期的にと訪れる。
しかし、しかしである。
「…なんだって私たちが【生きて】いる間に誕生と代替わりがあるんですかね……」
思わず愚痴をいいたくなってしまうのは仕方がないかもしれない。
そもそも、運がよければ産まれてこのかた消滅までかかわらない出来事。
それが【器】の誕生と意思の【代替わり】。
自分達が存在している銀河の意思は【コスモス】。
かの【意思】は自らが抱擁している全ての【意思】の中から次代を選び後継者とする。
その後継者と選ばれてしまった意思は気づかぬまま、【後継者の試練】を与えられている、ときく。
「まさか、この中に後継者の試練うけさせられてる意思があったりして……」
冗談でふとつぶやき、思わずその場にいる全員が無言となり顔を見合わせ、
そして。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・・・』
ありえるかもしれない、しかしありえないかもしれない。
しかし、万が一、そうだとしたら、これ以上厄介事が増えるのは必然。
「そうだとすれば、三の姉様が一番可能性高いかな?」
「えええ!?何で私!?それより大姉様とかのほうじゃないの!?」
思わず悲鳴を上げるディアはおそらく間違ってはいない。
「あくまで私は皆を導く立場にいるわけだし。それに完全に導けてないものね。
その証拠に命あふれる星になったのは三の姫だけだし」
この地の命の源、ともいえる太陽の意思たる存在。
彼女、時には彼にもなるが、とにかくかの意思は自分達の子供たち。
すなわち自らの周囲を回る惑星の意思達を『姫』と呼び称す。
それは、惑星、とはすなわち母なる胎内であると同時に母なる大地でもあるがゆえ。
自らはより強く燃えることにより、抱擁している【意思】達の大地にその力を降り注ぐ。
ベテランの域に達した【意思】などは、自らが抱擁する全ての惑星群に命をはぐくむことができるらしい。
しかしそれまでの域に、まだ達していない。
それが悔しい。
何もできないままに、それでいて誕生した命が滅びゆく様を今までずっと見続けてきていた。
そしてそれは、それぞれの惑星の【意思】達とて同じこと。
「三の姉様のところの地上時間でいうところの四億年前の出来事でだいぶここも落ち着いたけど。
…まあ、人間達が創り上げかけてた時空装置もダテではなかった、ってところかな?」
かの装置の応用により、今では他の惑星にもかつては生存できなかった生命が多々と誕生している。
しかしされど四億年。
いまだ完全に進化を遂げているわけでなく、それでいてそれぞれの星の事情がかわったわけではない。
強いていうならばそれらの人類が創りだしたモノを応用し、
地球、とかつて呼ばれていた【意思】であるディアが行った結界くらいであろうか。
よりつよく、界別に世界を設定したことにより、太陽からの有害な物質をよりはねのけることに成功した。
そして、それらは必要な物質のみを取り込むことにも成功している。
ゆえに、今まで以上に大姉がより強く燃え盛っても大三惑星に影響を及ぼさない。
少し離れた周囲を回る惑星達にも加護を与えるためには、昔のような活動では生ぬるかった。
ゆえに、ここ四億年、かつてよりもより高い温度と物質を常に周囲に提供するようにしている、
大姉、と呼ばれている、この星系の要でもある、彼女。
様々な名で呼ばれてはいるが、一番、【ラー】という呼び名がかの意思的には気にいっている。
かつて大三惑星において文明が栄えたとき、かの意思のことを太陽神ラー、と呼んでいたことがある。
どうやらその系統でその呼び名が気に入っているらしいのだが、それはそれ。
今、彼らが存在しているのは、何もない空間、といっても過言でない。
その足元には燃え盛る惑星と、周囲をめぐる様々な色彩の惑星群の姿が垣間見えている。
ここは、彼ら、この星系における基本ともいえる空間。
この空間からは【太陽系】の全てが視通せるようにとなっている。
意思同士の繋がりのみで構成されている、特殊な空間。
強いていうならば、地球儀の太陽系版。
「そろそろ四億年に一度やってくる彗星もあるから、それの対応も必要だし」
かの彗星は四億年に一度、この場にもめぐってくるのだが、毎回毎回、
なぜかその起動はどこかの惑星に直撃するような軌道コースをたどってくれる。
そのたびに、意思達がどうにか干渉しそれを回避しているのだが。
「…ここまで重なる、というのはやはりだれか試練うけてない?」
「いやいや。それはないから。試練うけてるとしたら、器がいたという惑星の意思じゃない?」
実際にそんなとんでもない存在が自分の中にいた、とすると恐ろしすぎる。
つまり、下手をすればその【器】を中心にして一瞬のうちに宇宙空間に還りゆきかねない実情。
そうなればおそらく、惑星における【意思】ごとすべて呑みこまれてしまうであろう。
「私のほうは、この三の姉様基準でいくところの四億年でようやくいろいろと樹木が成長してきたけど」
「十姉様。他の生命いるようなら送りますよ?」
「ん~、今のところはいいかな?とりあえず樹木や植物達の成長具合を見守ってるところだし」
すでにきっかけとなる【始めの生命】となるべき【欠片】は受け取っている。
これ以上、あまり迷惑をかけたくはない。
さくっと早く進めるために、面白い仕組みを創りだしていた三の姉に願ったのはたしかに自分達。
しかしあまり頼りすぎては自分達の存在における意味がない。
試練をうけているかもしれない、という一抹の不安をこの場にて投げかけつつ……
しばし、ここ、
太陽系の主要たる惑星の【意思】とそして惑星達を抱擁している【太陽】である恒星と呼ばれし存在。
彼らの会合が静かに執り行われてゆくのであった……
序盤も序盤にでてきた、クイーンだの、マァトだのの説明がようやくここで正確に出てきました。
な…長かった…(自覚あり
銀河系の定義は、そういう説もあるのでそれらを利用しております。
銀河が多々とあつまって作られた大銀河の表現とか。
参考にしているのは、「現代宇宙論」です。
【マァト】、は古代エジブトで宇宙意思を示していた言葉です。
なのでそれを組み入れております。