光と闇の楔 ~補佐官とアスタロト~
悪魔における定義は、いろいろ参考資料を混ぜごチャにして設定しております。
つまり、おいしい所だけとって、それらをまとめて設定、という形です。
悪魔は様々な定説がありますが、神々においてはそういったのはないですし(苦笑
まあ、この話しは堕天使だの何だの、というのはまったくもって関係ないです(きっぱり断言
ちなみに、でもなぜか人間側はそのような解釈をしていることはあったりします(笑
ともあれ、ようやく今回、ディアの本当?の正体暴露(一部)v(今まで散々暴露してますが…笑
・・・そのうちに、まともに設定資料集を編集しますので、
それらをつくってから物語のラスト(最終回後)にでも人物等の設定集を上げたいとおもいます……
(今現在は、メモ帳にランダムに裏設定を書きなぐっている状態なので)
「サタン様。混合会議に出向く人材ですがどうなさいますか?」
今はとにかく、魔界にばらまかれたとおもわれる【欠片】の回収が最優先。
とはいえ、先日の襲撃において魔界側からも【窓】を通じて地上界に漏れ出した輩も多々といるときく。
【扉】は基本、器をもっているものは通れないが、しかし裏を返せば、器のない、
すなわち、魂だけの状態もしくは精神体のみの状態でならば簡単に通り抜けられる。
移動した先で宿る器を手にいれればそれにこしたことはない。
「リュカ殿の報告があがってきたが、
どうもテケリ・ショゴス側はまず手始めに地上界をその手にいれるつもりらしいな」
報告があがってきた、というか彼が報告をもってきたときにはかなり驚いた。
そもそも、王の命で彼らの組織に侵入していたことすらも知らなかった。
まあ、彼が単独行動をとっているのはいまに始まったことではないが。
しかし、仮にも側近の立場にいる自分にくらいはその報告はあってほしいとつくづく思う。
「うむ。とりあえずバァルとあとはアスタロト殿くらいでいいのではないのか?
彼らとて様々な知識を得られる機会でもあることだしな」
それに何より、彼らほどの実力者ならば、自らの身を【分ける】ことも可能。
ゆえにこちら側、すなわち魔界側の執務が滞ることはありえない。
「おそらく、このたびの会議においても、ヤツラは何か仕掛けてくるだろう。
それを絶対に見逃さないように」
アジトさえつかめばどうにかなるであろうに。
というか、どうやって彼らの仲間に取りいって、諜報員をこなしているのかがかなり気にかかる。
まあ、彼、リュカの実力はサタンだとてよく理解していない。
わかっているのは、【王】と【補佐官】の絶対的な信頼をうけている、ということと、
さらには、天界側の【補佐官】にも信頼をうけている、ということくらいである。
「では、アスタロト様にそのようにお伝えいたします」
魔界の中の地獄界を治めている三実力者に仕え、かの地の宰相を務めしもの。
ルキフゲ・ロフォカレ。
バァルにおいては彼の支配下になるのでさほど問題はないが、アスタロトに関しては彼の上司にあたる。
深く敬意を示し、うやうやしくその場にて膝をついた後、
そのまま声の主は瞬く間にと闇にとけきえてゆく……
光と闇の楔 ~補佐官とアスタロト~
「…っ!は~…は~…は~……」
死に目をみる、とはまさにこういうのをいうのかもしれない。
人間などといった存在は息をしなければ確実に死が訪れる。
しかし、自分達魔界に住まう悪魔に関しては生命力は基本、【魔力】。
圧倒的な力と、そして魂すらをも押しつぶさんばかりのものすごい威圧感。
久方ぶりにこの威圧感を感じたような気がするのは、おそらく彼、アスタロトの気のせいではないであろう。
魔界において上級位についている彼とてまったくかなわない圧倒的な力。
魔界を統べる実力者を数名述べよ、といわれれば、まちがいなくアスタロトはその上位五名の中にはいる。
さらに、魔界の中の地獄の実力者をあげよ、といわれれば確実に三人の上位者の中に名前を連ねている。
それらの名前の中には、魔界の王たる魔神とも、大魔王ともよばれている存在の名前は存在しない。
そもそも、かの存在は魔界そのものともいわれている巨大すぎる存在であり、
その存在を実際に垣間見たものは王を補佐する補佐官しかいないともいわれている。
そして、それは天界における天空神、もしくは絶対神とよばれている王にしても然り。
その存在もまた補佐官しか実情を知りえない、といわれている。
そのまま押しつぶされるように両手をつき膝まづき、とにかく息を荒げるのがやっと。
「ロトちゃん。前からいってるけど、人をいきなり試すようなことは軽々しくしないようにね」
そんな彼にと、聞きなれた、それでいて威圧感漂う、それでいてどこか安らげる声が聞こえてくる。
全身に脂汗を流しつつも、どうにかこうにか視線をあげれば、
いつのまに場所を移動したのか、アスタロトにも理解できないものの、
真っ暗な空間にぽつん、と真っ白いテーブルと椅子が置かれており、
その椅子に優雅に座りつつも自分を視ている少女が一人。
先ほどまでみていた姿はといえば、髪の色は白なのか銀色なのか不明な色であったが、
今いる目の前の少女の髪の色は金色。
金色の髪に金色の瞳。
彼の見慣れた姿そのもの。
異なるのはその服装くらいであろう。
ギルド協会側が奨励している学生用の制服を着こなしているゆえに違和感をうけてしまう。
ギルド協会側が奨励している制服は、男女問わず基本、動きやすさを重視したもの。
もっとも、基本的には服装の自由が認められているのでこれらを着ている生徒はあまりいないのだが。
動きやすさを重視している、とはいえ、上はシャツ、下はズボンに別れており、
その上に紺色の上着を着こなし、ついでに胸元には色違いのリボンがつけられている。
このリボンの色などで所属している学科とクラス、そして階位が判るようになっている。
この空間にも覚えがある。
伊達に幾度もこの空間につれこまれ、お仕置き…もとい、お説教をうけていたわけではない。
「…ルシファー様、戯れが過ぎるのではございませんか?というか、お久しぶりでございます。
…で、何でこんな人間界で人間のしかも生徒なんかやっておられるんですか!?」
まず聞きたいのはそこである。
そもそも、魔界において王以外においては第一の実力者ともいわれている彼女、ルシファーがどうして地上界。
しかもそこでギルド協会学校の生徒などをしているのかが判らない。
ご丁寧に魔界から姿をけしてまで、である。
彼女の行動は昔からわからないことが多いが、それでも聞かずにはおられない。
それでなくても、王と補佐官が姿をけして、審問官である自分のもとに、
様々な問題が持ち込まれているのは…記憶に新しい。
「最近、あなた達が怠惰だから、よ。最近、ほとんど職務怠慢になってるからね。
喝をいれるのに少しばかり離れただけよ。傍にいたら甘えるでしょ?」
「…うっ……」
それをいわれればもともこもない。
たしかに最近、彼女の手を煩わすようなことが増えていたような気もしなくもない。
しかし、しかしだからといっていきなり報告もなしに突如として姿をけしてほしくないものである。
それも王ともども。
「それより、タロちゃんは何しにきたの?
まさかお姉様に会いに来ただけ?それだと私といっしょだねっ!」
そんなディア…否、今の姿はどうみても、魔界の王の補佐官たるルシファー以外の何ものでもない。
ないが、そんな彼女の横でにこやかにそんなことをいっているヴリトラ。
「……納得しました。それで神竜ヴリトラ様までがここにこられているわけですか……」
何となくそんな予感はしていたが。
まさかそれが事実だとは。
ゆえに何となくおもいっきり魂からして疲れたような気がしてしまうアスタロト。
タロ、と呼ばれることに抵抗はあるものの、もはや抗議しても無駄だ、とあきらめている。
簡単に呼び名を変えてくれるのならば、この数億年、とっくに呼び方は変わっている。
「そういえば、ロトちゃん。こんどここで混合会議が開かれるようだけど。
サタンがあなたを派遣員の一人に抜粋してるみたいだけど…ってまだ報告はうけてないみたいね」
いくら魔界にいなくても、そのあたりの情報はたえずきちんと把握している。
「…私が、ですか?…というか、相変わらずどこにおられても状況は把握、ですか……」
どこまで力を秘めているのかわからない。
だからこそ畏れ、敬う。
どう頑張っても目の前の少女達にかなうとは到底アスタロトとて思っていない。
一時期反抗期に陥り、反逆しようとしてこっぴどく怒られたのはいまだ記憶に新しい。
いまだ声はかすれるものの、どうにか正気をとりもどしつつも、ディアの言葉に答えるアスタロト。
「リュカが他界にもテケリ・ショゴスとハスター・ホテップ側の動向を報告したからね。
それをうけて、他界も警戒を強めて、
さらに会議に出席する存在も実力のある存在を選んだんでしょ」
事実、【意思】の指示をうけて、リュカは今わかっている現状報告を全ての界に行っている。
組織の仲間達に気づかれないように行えているのはさすがとしかいいようがない。
それもまた、界渡りのリュカの能力の一つでもあるのだが。
「天界側からは、隻眼の神オーディンと運命の神ノルン。
護衛に戦いの神アテナがくるみたいね。ひとまずこのたびの会議では天界と魔界。
その二界の上層部の一部のものがくることで話しはまとまったみたいだし」
精霊界からも一応参加するらしいが、
精霊に関しては常に地上界においてどこにでも具現化してもおかしくないのであえて説明ははぶくディア。
深界側からは今回の会議には参加しない、と報告をうけている。
そもそも、今の段階でかの界も自分達が常に行動すべきかどうか、いまだに意見がわかれている。
行動、とは全ての界においてある程度の生命を一度自分達の界に取り込むこと。
かの界の意義はあまり知られていないが、全ての界に危険が迫ったときに
特定の生命体を一度界に取り込み保管する役目をも担っている。
その役目をきちんと認識している存在達があまりいないのも事実なのだが。
霊獣界からは、当然のように竜王シアンが出向くことになっている。
妖精界に関しては、会議に出席できる状況ではないので断りの旨が王国にと伝えられている。
妖精達はさほど力はもちえていない。
そこに、ロキの魂の欠片ともいえる代物がばらまかれた。
その対処に今、かの一族は全力をあげている。
それゆえに会議どころではないのも事実。
妖精王達の指導のもと、必死で【欠片】を集めているのが実情。
この世界に主たる界はほぼ次の通りに分けられている。
天空にある、といわれている天上界。
精霊達が住まうとされている、精霊界。
霊獣たちが住まう、とさわている霊獣界。
使者が集うといわれている冥界。
妖精達が住まうといわれている妖精界。
様々な種族のものが暮らす地上界。
闇の力を糧とする種族の住まう魔界。
魔界においてはそれぞれの特性において別にいくつかの区分けに分けられている。
たとえば、白亜界とよばれている夜明けのこない場所。
常に灼熱を伴う暑さの熱界。
この世の様々な苦行が形をなした地獄界。
主たる実力者達が住まう、とされている静寂界。
等など。
魔界、といってもかなり広い。
そしてそれは、天界においても同じようにそこそこの特性によって呼び方が決められている。
こちらのほうは、【界】という呼び方でなく、各場所の名前をつけて区分けをしている。
「とすると、ヴリトラ様がこちらにおられる以上、霊獣界からはシアン殿、ですか。
精霊界側からはおそらく、ウィンディーネ様が補佐係りの形式をとってウィン殿で参加のあたりですか?」
ディアことルシファーの説明をうけて、すばやく頭の中で情報を組み立て構築するアスタロト。
導きだされた答えはディアの満足いくもの。
「そ。まあ、会議まではまだ間があるでしょうけど。
これからこの国は様々な界の重鎮ともいえる存在が集まってくるからね。
そこを反旗組織達が狙ってくるのは間違いないし。そこをちょっばかり叩こうとおもってね」
何やらさらっととてつもない恐ろしいことをいっていないだろうか。
目の前の補佐官様は。
叩く、という単語がでてきたが、彼女が動けばどれだけ被害が拡大するかわからない。
むしろその行動一つでこの地上界全てが焦土となっても不思議ではない。
「あと、ロトちゃん。いっとくけど、私はここでは、あくまでも人間のディア、だからね?
補佐官だとか、そのあたりのことをいわないように」
アスタロトのことを、ロト、と呼ぶのはごく限られた存在のみ。
ティアマトとルシファー。
その二人からのみこの呼びかたをアスタロトは受けている。
もっとも、彼の中ではこの二人が実は同一人物だ、と疑念視しまくっているのだが。
実際その通りなのであるが、その事実ははっきりいって知られていない。
「オーちゃんがくるの?でも、お姉様?オ~ちゃんだと、お姉様の雰囲気に気づかない?」
ディアの説明をうけてすこしばかり心配そうにいっているヴリトラ。
彼女も彼の性格はよく知っている。
一時など、彼女を悪、として片っ端から排除しようと動いた時期もあったりした。
その都度、こてんぱにヴリトラが叩きのめしていたのは今ではいい思い出の一つ。
「あの頑固な堅物が気がついたとしても認めようとするはずないから大丈夫よ」
きっぱり断言。
それだけはきっぱりと断言できる。
かの神、オーディンは自らが信じることは信じるが信じないことは何があっても信じない。
つまりかなり頭が固い。
ゆえに堅物、として天界でもその性格は知れ渡っている。
自らが正しいとおもえば、それがいくら間違っていようとも突き進もうとするので、
彼の部下達は実際、かなり迷惑を被っている。
「まあ、オ~ちゃんの頑固さはもはやもう筋金入りだからね~。
だけどだったら私はあまりうろうろとしていないほうがいいかな?
あのオ~ちゃんのことだから、また諸悪の根源!とかいってところかまわず攻撃してきそうだし」
実際、今でもそのようなことが起こりえているのだから情けない。
自分が思いこんだことは時がたとうともその非を認めようとしない。
そのせいで実力はあるのだが、あまり主だった役職に彼はついていない。
否、つけさせてはいない。
一度、彼を実力ある役職につけたときにおおごとになったことがある。
勝手に地上界を戦乱に陥れて世界を浄化しようとしたことがあったほど。
当然、こっぴどく【王】の怒りに触れ、しばらく謹慎処分と成り果てたのだが。
それでも懲りてないのがあるいみすごいといえばすごいといえよう。
「そうなったらとりあえず、頑丈なグレイプニルの鎖でがんじがらめに拘束しましょう。
それでなくても今そんな馬鹿なことをされるのは面白くないからね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ディアとヴリトラによるとてつもない内容の会話。
横できいているアスタロトとしては生きた心地がしない。
ゆえにただただその場にて硬直するしか術はない。
「まあ、ノルンちゃんもくるんでしょ?なら未来を視通しつつ行動制限させとけばいいかな?」
「そうね。とりあえずノルンに行動を先読みさせておいて、
それ以外の場所には動けないように制約かけとくのも一つの手ね」
その場にアスタロトがいる、というにもかかわらず、
知識の神でもあるオーディンについての対策を話しているディアとヴリトラ。
かの性格をより知っているがゆえの会話とはいえ話しの内容が内容。
自分のようなものが聞いていてもいい内容なのかすらも判らない。
そもそも、オーディン神は天界において屈指の実力を誇る神の一人。
アスタロトも屈指の実力を持ちえる悪魔ではあるが、それでも順位的には彼のほうがおそらく上。
魔界における全体的な立場、王や補佐官を除いた立場的にはアスタロトは五番目の地位にあたる。
実力からすればオーディンは上位に食い込める力をもってはいるがその性格ゆえに、
天界における上位組には数えられていない。
天界における実力者はといえば、側近代行をしている雷神ゼウス。
各界の海を束ねている海神ポセイドン。
各界を監視する立場である視神ヘイムダル
破壊と新生を司る破壊神シヴァ。
世界の光源と闇を司る光神ホルス。
この五名が実質的な実力者とそれに伴う地位にいる神々であろう。
そしてまた、天界における王もまた、世界そのもの、ともよばれる存在であり、
ゆえに比べるのも畏れ多い、とすらいわれている存在。
それを補佐している補佐官のティアマトの実力も計りしれず、
普通の神々とはまた異なる立場として認識されている。
「まあ、頑固もののオーディンは仕方ないとして。とりあえず、ロトちゃん」
「は、はいっ!」
いきなり話しをふられ、その場にて姿勢を正すアスタロト。
「あなたも会議に参加するなら、オーディンの様子に気をつけておくように。
あの子のことだから、下手をしたら反旗組織の口車にあっさりのって、そのまま町を壊しかねないから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、はぁ……」
そういわれて、そんなことはありえない。
といえない自分がかなり悲しい。
というかオーディン神とあまり付き合いはないが、それでも性格や噂話しは嫌でも耳にはいってくる。
そもそも、たしかロキが反逆したのも彼の行動の結果だったはずである。
もっとも、完全なるきっかけをつくったのはゼウス神に他ならないのだが……
「まあ、当日になったら力を封じる魔道具を渡しておくわ」
「そ・・・そこまでしますか……」
「そうでもしないと、ほんとあの子は暴走するわよ?まちがいなく」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そこまでいわれるオーディン神って……」
きっぱりいわれて何となく彼女がオーディン神のことをどうおもっているのかはっきりと確信する。
だからこそため息をつかざるをえない。
彼女がそこまで確信をもっている、ということはこういったことは今までにも幾度もあったのであろう。
「あまりひどいようだと一度、人間に身をそのまま完全力をどこかに封じて
しばらく転生やらせてるのも一つの手よね……」
「でも、お姉様?前それやったら人間界で彼、おもいっきり戦争しかけまくってましたよね?」
「そうなのよね~。…一度、完全に消滅させる、というのも手かしら?」
「ん~。自我を完全に崩壊浄化させてから?そうするなら、私オ~ちゃんの魂たべてみたい♪」
さりげにとんでもない内容がまたまた繰り返されているような気がするのはアスタロトの気のせいか。
内心だらだらと汗を流しつつ、
「と、ところで。その、ルシファー様?ヴりトラ様?
あなた様方はいつまでこちらにおられるのですか?
私としましては、否、我々としましては、
ルシファー様には王ともどもご帰還願いたいのですが……」
それは本音。
というか彼女がここにいたら何がおこるかわからない。
というか何をしでかすかわからない。
そうなれば自然と審問官長でもある自分の仕事が増える結果にもなりかねない。
「時が満ちるまではここにいるわよ」
「時?」
時、という意味がアスタロトにはわからない。
ゆえにこそ首をかしげて問いかける。
「そう、時が満ちれば、全ては判るわよ」
時が満ちる。
それは、今回の反旗組織の攻撃のことではなく、代替わりにおける異変を指し示す。
しかし、代替わりはこの太陽系全てにおける災害になりかねない重要な事柄。
ゆえにおいそれといえるようなものではない。
何しろ下手をすればこの太陽系そのものすらあっさりと消滅してしまいかねない事柄が起こるかもしれない。
そんな途方もないことを話すわけにはいかないのも事実。
それに対する対処は自分達のような存在達でどうにか対処しなければならないのだから……
「さて、とりあえず、話しはこれだけ。それじゃ、廊下にもどりましょうか」
いって。
パチン。
軽く指を鳴らすと同時。
刹那。
まばゆいばかりの光が周囲を覆い尽くす。
あまりの眩しさに目を閉じ、次に眼を開いたアスタロトがみたものは。
先刻までいた場所とまったく変わらぬ景色。
つまり、ギルド協会学校の校舎の一部である廊下の一角にたたずんでいたりする。
ふと前をみれば、髪と瞳の色を変えたルシファーこと、ディアと名乗っている少女の姿が目にはいる。
「さて。それじゃ、案内の続きにいきましょうか?ロトちゃん?
それとも大侯爵っていったほうがいいかしら?」
「…カンベンシテクダサイ……」
相手が補佐官ルシファーと理解してしまった以上、大侯爵とよばれるのも、
敬語を使われるのも心臓…もとい、魂に悪すぎる。
しばしそんなやり取りが廊下の一角において見受けられてゆくのであった……
「アスタロト様」
何だかとっても疲れた。
それはおそらく気のせいではない。
彼女に案内してもらった、というだけでも精神的に疲弊した。
ここで食事の一つでもしたいがそんなことをすれば騒ぎになるのは間違いないであろう。
少しくらい魂のつまみ食いをして力を回復させたいのは山々なれど、
ここに彼女がいる以上、そのようなことをして万が一怒られでもしら命がいくらあっても足りはしない。
来客用の応接間に入り、思わず腰を深くおろしため息を一つつくアスタロト。
そんな彼の元に彼の足元の影から声が投げかけられてくる。
「ロフォカレ、か」
その声の主にすぐさま思い当たり、許可をだす。
ルキフゲ・ロフォカレ。
アスタロトに使えている六柱の上位精霊のうちの一柱でありながら、彼の組織の宰相をも務めている存在。
魔界における地獄界においては地獄の首相すらをも務めている。
闇の精霊であり、ゆえに闇を操るのにたけている。
精霊であるがゆえに精霊界とも通じており、精霊界などの情報も常にアスタロトの耳にと入れている。
闇を操る能力をかわれ、補佐官ルシフィーより財宝類の管理を一手に任されている存在でもある。
そういえば、とおもう。
先ほどのルシファー様の説明に彼がサタン様から依頼をうけて動いているとかいってたな。
そのことに思い当たり、つかれているがそれをどうにか振り払いつつも、
「何用だ?」
いつものような口調で自らの影にと語りかけるアスタロト。
「サタン様よりのご連絡事項を報告いたします。
近日この地、地上界のテミス王国で執り行われる混合会議ですが、
アスタロト様にその会議に参列していただきたいそうです。
もう一人は我が配下にもあたります、バァル・ゼブブが参列いたします」
バァル・ゼブブ。
別名をベルゼビュート、とも呼ばれている魔界における魔王の一人。
嵐乱の王とも呼ばれている悪魔の一人。
彼が選ばれた理由の一つの腕がたつことと、アスタロト達の次に知恵が回る、ということに他ならない。
何かあれば彼の能力において敵に気づかれることなく近づくことも可能。
そもそも、姿を消して追撃者を襲撃したものにつけておけばおのずと本拠はつかめるであろう。
それゆえの人選。
同じような名前でよく混合される魔王の一人にベルゼブブ、という魔王がいるが、
バアル・ゼブブとは異なる悪魔であることは疑いようがない。
少なくとも、ベルゼブブの実力はアスタロトと同列かもしくは多少どちらかが上にあたるか否か、
というくらい実力は拮抗している。
ちなみに、ベルゼブブの別名は蠅王、ともいわれているが、
戯れに女性の姿を好むこともあり、その姿のときはドゥルジ、という悪魔の名前で呼ばれている。
ベルゼブブとドゥルジが同一悪魔である、という事実は魔界上層部の一部のものにしか知られていない。
「わかった。了解した、とつたえておいてくれ。
…それと、会議まで魔界にもどってまたくるのも面…いや、こちらのことを良く調べておく必要もある。
我はしばらくここに滞在するがゆえに、後のことはまかす」
「御意に」
影より声のみ響きわたるが、最後の言葉をきっかけに気配は瞬く間にとかききえる。
「さすがに仕事が早いな。…まあ、あちら側はあいつらに任せるとして…
……我はあの御方達のことも気になるし……すこしばかりここに滞在するとするか……」
おそらくここにいる意味は他にも何か確実にある。
ゆえにこそ、しばしここに滞在することを決意するアスタロト。
ギルド協会学校。
どうやらこの地上界においてギルド協会側の安息は…果てしなくまだ遠いようである……
今回は、ほとんど各界の説明や、魔界における序列?の説明とかになってしまった(汗
まあ、オーディンが参列する。というのをいれられただけで容量的にはよしとするかな?
ともあれ、次回で混合会議、です