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光と闇の楔  作者:
29/74

光と闇の楔 ~留学生と会議の行方~

今回は、神々&魔の王様達がでばってます(自覚あり



「……なんというか、そちらの界も大変ですね……」

そう、としかいいようがない。

つい先ほど、霊獣界より報告はうけている。

「というか、何だって今回はこの地上界でいろいろとおこるんだ!?なあ!?」

そう叫ぶ、ナオトはおそらく間違っていないであろう。

絶対に。

そもそもどうしてこの時期なのか。

しかも自分が地上界を担当しているときに限って、である。

ゆえにナオトとしては叫ばずにはいられない。

「いや~。でも以前のときなんかは天界で大戦争、だったしね~」

そのきっかけとなった存在は今は魂を休めるためにと眠っている。

「あまりにひどくなったら毎回霊獣界にいくしな~」

眼下にみえるのは青い惑星。

かつて一度失われたかと思われたその惑星はかつてのような輝きを取り戻している。

「まあ、どんまい。ま、がんばってくれたまえ」

「てめぇ!担当の界をかえろぉぉっ!」

それでなくても彼はかなり楽をしているとおもう。

絶対に。

ゆえにのんびりといってくる人物にむかって思わず叫ぶナオトの姿。

「精霊界はでもいまだに混乱してますよ~。まあ、サラマンダーが口止めされたのもあって、

  いまだに他の王達は混乱してますからね~。毎回、【意思】が姿をけすときには必ず何かありますから」

たしかに。

かの存在が姿を消すときはかならず何かがおこる。

おそらくそれを見越して姿をわざわざ消しているのであろうことは用意に予測がつくからたまったものではない。

「まあまあ。ヴリトラも意思が傍にいるんだ。まさか大地をかつてのように壊滅させたりはしないさ。

  …たぶん。あのこも意思のお仕置きは嫌だろうしねぇ~」

それは本音。

というか自分達でもそれだけは絶対に御免こうむりたい。

「…大地の消滅とかになったら洒落になんないがな……」

「あ~。以前は大津波とかおこしたしな~」

「その前は大陸をけしとばしたっけ?」

「…そもそも、黄竜が誕生しなければかの地に意思がいるとは気づかれなかったのに……」

がくりとおもわずそんな会話をしつつもうなだれるナオト。

たしかに。

かの存在が生まれなければおそらくヴリトラは行動を起こさなかったであろう。

「…まあまあ。とりあえず今は、代替わりにそなえて基礎を強くしとかないとね」

「…あ~…まあ、他の界のことはその界の最高責任者たちにまかせるとしましょう。

  我々は本来あるべき役目。この世界の理の楔の役目を果たしましょう」


緊急的な集合会議。

しばし、とある一角において伝道師達の話しあいが繰り広げられてゆくのであった……






      光と闇の楔 ~留学生と会議の行方~









ざわざわ。

「はい。みなさん、静かに」

昨日の騒ぎの噂はいまだに学校全体に喧騒をまき散らしている。

様々な噂がとびかい、根も葉もない噂までもたった一日で尾ひれがついて広まっている。

その中心人物が自分達のクラスメートだというのだからなおさらに騒ぎもおおきくなるというもの。

いまだにその噂の中心人物は教室にきていないが、

何でも職員室にと呼ばれて出向いていっているらしい。

がらり。

そんなざわめく教室内に担任がいつものようにとはいってくる。

何だかここ最近、学校生活がかなり充実しているように感じるのは、

おそらく生徒たちの気のせいではないであろう。

これまで短期間でいろいろと事件等がおこったことはほぼ皆無といってもよかった。

しかしここ短期間で様々な出来事が続いておこっている。

それは直接生徒達に関係するものから、世間に関する噂にいたるまで広範囲にと渡っている。

「先生!結局、昨日の騒ぎはなんだったんですか!?」

クラスメートのディアが侵入してきたのは時部んの知り合いだ、そういっていた。

あのときの重く息苦しくなった教室内の空気はこの場にいる誰もが忘れてはいない。

それこそ息をするのもはばかれるまでに空気がより張り詰めていた。

人はそこまで周囲に影響を及ぼすことができるのか、ということを身をもって知った瞬間でもあった。

「まあ、とりあえず。落ち着きなさい。今日はみなさんに新しく学ぶ仲間を紹介します」

「「仲間?」」

最近、ギルドの入学試験あったっけ?

クラス担任のヘスティアの台詞に首をかしげる数名の生徒達。

ここ最近、新たに試験があった、とはきいていない。

そもそも、試験がある場合、前もって生徒達にも連絡がはいるようになっている。

それは万が一、生徒達から新たに試験をうける生徒予備軍の存在達へ情報がもれないための措置。

中には各能力によっては、【予知】という力をもっている存在もいる。

そういうものがもしも、出されるはずの問題を先に教えたらどうなるのか。

答えは簡単。

つまり不正ではいる生徒がいないように、とのギルド側の措置。

「はい。はいってもいいですよ?」

ざわめく生徒達をそのままに、扉のほうへと声をかける。

「ほら、いくわよ」

「う~。なんでいまさら勉強を~……」

「ヴリちゃんがきちんと勉強をかろんじてなかったらこんなことにはならなかったんだけどねぇ?」

扉の向こうでは何やらそんな会話がなされているようではあるが。

あれ?

今の声…もしかして、ディアさん?

その声の主に思い当たり、数名の生徒達が首をかしげる。

しかしもう一人聞こえてきた声には心当たりがない。

事実、扉の向こうがわではそんなやり取りがなされていたりする。

ディアと向き合っている少女はもはや涙目。

うるうるとその瞳に涙をためて見上げても、まったくもってディアは容赦はしていない。

そもそも容赦する必要性をまったくもって感じない。

「ほら、いくわよ」

「あ~ん、お姉様、ごしょうです~」

ずるずる。

まさに、ずるずる、という表現がふさわしい。

首ねっこをつかんでそのまま扉からはいってゆくディア。

その姿をみつつ、

…よく竜族をあんな扱いできるな……

あるいみそんなディアに感心してしまうヘスティア。

彼女は目の前の七歳くらいにしかみえない少女が竜族だ、と知っている。

だからこそ呆れ半分、驚かずにはいられない。

クラスメート達が目にしたのは、

みたこともない少女をずるずるとひっぱって教室にはいってくるディアの姿。

そしてそんなディアにほぼ首根っこに近い場所をひっつかまれて、

つまりは服の首あたりをつかまれてじたばたともがいている少女。

真っ白い髪は肩より少し長く、さらさらストレート。

わたわた手足を動かしてどうにか抵抗しようとしているのか、

その様子をみておもわずくすり、と誰ともなく笑みがこぼれる。

それほどまでに何ともほほえましいというか愛らしいというような動作にしかみえない。

先日着ていた服とは異なり、今の少女の服は黒い上下の服に身をつつんでいたりする。

スカートも履いてはいるものの、その下にはぴっちりとしたズボンもはかれており、

足元にはブーツのような薄茶色の靴を両足に履いている。

しかし何より特徴的なのはその真っ白いまでの肌、であろう。

そして薄茶色の上着を羽織っており、じたばたするたびにその上着がゆらゆらと揺れている。

「あ~ん、勉強きらい~!」

「ほら、しゃんとするっ!」

「……あ゛~。みてわかるとおり。ディアさんの知り合いで、今日から留学生としてくることになった、

  ヴーリちゃん、だ。どうも常識がかなり抜けているらしいから皆、いろいろと教えてやってくれ」

何やら漫才ともいえるようなそんなやり取りをみていておもわず魂が抜けそうになるものの、

はっと我にともどり、とりあえずこほん、と咳払いをひとつして生徒達に向き合い説明するヘスティア。

「まったく。あ、皆、ごめんなさいね。ほら、ヴリちゃん、挨拶!」

その場にしゃん、と姿勢をただし無理やりたたせ、頭をぐいっとおしつけつつも指示をだすディア。

「う~…うっうっ。なんでここにまできてまた勉強を~……

   でもお姉様のいうことだし……くすん。私はヴーリといいます。勉強はだいっきらいですのでよろしく!」

「…ヴリちゃ~ん?」

半ば瞳に涙をほぼためつつも、潤んだ瞳でそうきっぱりいいきっているヴーリ、となのった少女。

そんな彼女をじと目でみつつも注意を促しているディア。

「だって、何でわざわざ人間界においてまで勉強しないといけないのぉぉ~?

  お姉様のいじわる~、いじわる~……滅多にあいにきてくれないのにぃっ!

  こういうときだけは強制的なんだもんっ!」

「「いや、お姉様って…ディア(さん)の妹さん?というか人間界?」」

何やらヴーリ、と名乗った少女の言葉に生徒達はおもわず目を点にし、

とある言葉に関しておもわず突っ込む。

突っ込まざるを得ない、というほうが正しいが。

「霊獣界でも、どの界でも勉強は必要なのっ!

  毎回、毎回同じことをどうしていわせるのかなぁ?この子は?」

それでなくても産まれたときから同じようなことをいく度も幾度も言い聞かせているはず。

なのにこの性格はどうしてこうしてなおりそうにない。

そもそも、きちんと世界の情勢を把握しておかねば、立場上、ヴリトラはかなり困ったことになりかねない。

そもそも力を吸収しすぎて自身の力をコントロールできない状況にもなりかねない。

そのためにもきちんとどこまでが限度で、どこまでがほうっていい範囲なのか。

きちんと見極めるためにも【世界】の把握は必要不可欠。

だというのにこの性格はどうやら長き年月がたっても精神年齢的に子供なのかなかなか進歩がない。

「「いや、霊獣…界!?」」

今、さらっととんでもない名前がでてこなかったか。

ゆえに生徒達のざわめきがさらに大きくなってしまうのは仕方がない。

「くすん。だって~。最近皆あそんでくれないし~」

「あなたの立場からすれば遊んでいられないでしょう?」

「む~……」

そういわれれば反論の仕様がない。

というかそのように創りだされているのだからどうにもならない。

創りだされたその意味を嫌がっているわけではない。

遊びたい、ヴリトラとしてはただそれだけなのだから。

「というわけで、

  とりあえずしばらく人の世の常識を学ばすためにこの学校に留学、という形で通うことになりました。

  この子、ヴーリをみなさん、よろしくおねがいします」

「「いや、というわけでって、何が!?」」

にこやかに笑みをうかべてさらっといいきるディアの台詞にクラスメート全員の突っ込みが同時に重なる。

「とりあえず。ヴーリちゃんが暴走しないように。ヴーリちゃんの席はディアさんの横で。

  とりあえず、というわけで席替えをします」

「「先生も、何がとういうわけなんですか!?」」

席替えも今初めてきいた衝撃の事実。

というか、何が『というわけで』なのか生徒達からすればまったくもって理解不能。

しばし、混沌と化したともいえる現状がC組Aクラスの内部において見受けられてゆく……




「…はぁ?地上界。それも人間界側のテミス王国から混合会議の要請?」

それでなくても、補佐官様も王も姿をいまだに見せない、というのに。

どうしてこういうときに限って面倒なことが重なるのだろうか。

ゆえに頭を抱えてしまうのは仕方がない。

「とりあえず、知識を司るオーディンにそれらを任せるとするかな……」

会議といえばどうしても知識などが必要となってくる。

下っ端の神々を送り出してもいいが、ここはやはり上層部のものをだしたほうがよいであろう。

そもそも、魔界にしろ天界にしろ王が不在の今、

地上界においても何がおこるか予測は不可能。

互いの王が玉座にいることにより、聖と魔、光と闇のバランスが保たれて地上界も安定していた。

その安定が不在の状態でどこまで保たれるのかは、いくらゼウスでも予測不可能。

「…ノルンですら世界に関する未来は視れないからなぁ~……」

運命を司っているノルン。

しかしかの神が司るのはこの世界にいきるすべての存在達に関してのみ。

世界そのものに関しての未来は見通せない。

そしてまた、未来は決まっているものではなく、絶えず変化していっている。

そのときの一番可能性のたかい未来を視て予測しているに過ぎない。

ともかく、今一番重要なのは、

「…なんだってこんなに執務がたまるばかりなんだっ!?」

まさにそのひとことにつきる。

ほとんどが補佐官や王が片づけていたその他もろもの執務がすべて彼にと向けられている。

ゆえに今や彼はほとんど執務室につきっきりの状態と成り果てている。

まあ、遊び呆けなくていい、とは彼の妻談。

彼が遊び呆けている最中、その他の執務などは彼の妻、もしくは補佐官などが片づけていたのである。

今までの罪滅ぼしをかねてやりなさい。

と妻に強くいわれればゼウスとて言い返し用がない。

「……まさか、王も補佐官様も、私がよく他界などにでむいては遊ぶ罰をあたえてるのか?

  ヘラもヘラで罪滅ぼしをかねてやれ、とかいうし……」

ぶつぶつ。

文句をいいつつも、他に誰も山となっている執務をこなせるものがいないのだから仕方がない。

そもそも、最高責任者ともいえる王と補佐官が不在の今。

側近の役割をも兼ねている自分が代理ですべての執務をこなさなければならないのである。

「…こういうとき、ロキがいたときがまだマシだったんだ…とおもえるよ…ほんとに……」

自分がロキの妻にちょっかいをかけてしまったことからかつての騒動がおこったことは今や周知の事実。

その結果、ロキが暴走してしまったのだが…間違いなく責任は、彼、ゼウスにあるであろう。

「まあ、彼の魂は今は娘のヘルが。肉体は息子のフェンリルが守ってるし。

  …ああ、はやく目覚めて天界復帰してくれないかな……」

彼がつくる様々な聖具、そして魔具などは仕事においても有効な結果をもたらすものが多々とあった。

もっとも、逆に不利になるような代物も多々とあったのだが。

「…とりあえず、他界との都合もあるだろうが、反旗組織のこともあるしな。

  なるべく早いほうがいいだろう。…それとポセイドンにも確認をとらないと…

  ああもう!なんでこうまで忙しい目にあわなければならないんだっ!」

すでにもう幾度目だろうか。

執務室に何ともいえない叫びが再びこだまする。

しかし叫んでいてもどうにもならない。

そもそも、動かないことには仕事の量はまったくもって減ることはないのだから。

逆をいえば叫んでいる時間があるのならば動け、ということ。

仕事は時間に関係なく、常に増え続けているのだから。




「……深界の存在達は、いったい何を考えているのだ?」

しばらく大人しくしていた、とおもったら。

ここ最近、動きが活発化している。

深界。

それは海底の奥深くに創られている特殊な【界】。

この世界の【理】ができる以前までの地上における技術などが

そのままその【界】には伝わっているときいている。

しかし完全に詳しくは彼ら神々とて聞かされていない。

おそらく事実をしっているものは、王、そして伝道師達くらいであろう。

「しかし、地上界にまで直接でむいていった、というのが気にかかるな……

  ん?ゼウスからの通信?…とりあえず、ひさしぶりに宮殿にいくか」

考えていてもどうにもならない。

それに何より旧知の仲でもあるゼウスからの通信が入ったことが気にかかる。

それゆえに、すべての【界】の【海】を見渡すことのできるとある空間において、

様々な海の様子をみていた男性は座っていた椅子より重い腰をあげてゆく。

もっとも、旧知の仲、というよりは事実、兄弟、の関係なのだが。

その事実を知る者はあまりいない。

まあ、父たるクロノスに飲み込まれたときにゼウスに助けられ、それ以後、兄弟という関係よりは、

盟友、というような関係になっていたりするのだが。

いいつつも、どこか柔和な感じをうける青年はその場から立ち上がる。

青年が小さくつぶやくと同時、その姿は周囲に満ちる【水】に瞬く間にと溶け消える。

彼の名前はポセイドン。

すべての水を操る能力をもつ、【海の守護神】、【海神ポセイドン】。

彼が司るのはすべての界におけるすべての海。

そして、彼がいるのは、それらすべての界を監視するべく創られた特殊な彼の宮殿の中の一室。

ここには主である彼しかはいることが許されない。

他のものがはいろうとするならばそのまま水に瞬く間に消滅させられる。

彼以外にこの場にはいれるものは、おそらく、伝道師、そして【王】くらいであろう。

彼が向かうは天界。

神々が住まう宮殿。

彼は知らない。

弟であり、また盟友でもあるゼウスからとある依頼というかお願いをうける、ということを……




「地上界の人間界、テミス王国より混合会議の要請がありました。

  いかがなさいましょうか?サタン様?」

今、この場に補佐官や王がいない今、決定権は側近である彼にとある。

ゆえに報告にあった出来事を目の前の青年にと報告することは間違ってはいない。

「…なんで、毎回、毎回、王や補佐官様が消えたら問題がおこるんだ?なあ?」

そんな彼のつぶやきはおそらく間違ってはいないであろう。

それでなくても整った顔立ちが憂いを帯びた表情になり、よりいっそう艶を増している。

「仕方がないでしょう。王が不在の今、あなたが役目をはたさないと。

  そういうこちらとて、王や補佐官様が不在のため、品々の管理が大変なのですよ?

  私のほうは精霊、としての宰相の役目もあるのですから」

そんな彼の目の前では

漆黒の対の半透明の翼をもつ長い髪の見た目二十歳前後の青年がそんなことをいっている。

「ロフォカエ、か。精霊界のほうはどのような感じなのだ?」

「いまだに混乱のまま、ですよ。かつての騒乱の再燃か!?と各王達は混乱してます。

  それと、火の精霊王ですが伝道師フォルミ殿と旅に出られたようです」

魔界における財宝や財産、そして様々な情報などの管理を一手に任されているロフォカエ。

彼の本性は一応精霊の部類に入るのであるが、精霊界よりこちらに出向、という形ででむいている。

魔界での彼の立場は役職のままの【管理者】。

一応、魔界においては三魔に使えている形を形式的にはとっている。

「しかし。サタン。王が不在の今、確かに何かがおこっているのは確実だぞ?」

長く漆黒のつややかな髪を腰より長くのばし、整った目鼻。

誰もが一件しただけでおもわず見惚れてしまうような美貌の持ち主。

その左手にはなぜか蛇がまきついており、その容姿をさらに艶やかに引き立てている。

「では、このたびの申請にはやはり、アストロトにいってもらうとするか」

「我が、か?」

というかわざわざ人間の要請に自分のような大侯爵がでるほどではない、とはおもう。

しかし、世界で何かがおこっている。

それが何かはわからないが、すくなくとも何かがおこっているというのは見通せている。

「質問者に教養学を教授することができるお主が一番適任、であろう?

  様々な界の諸事情にも通じておるし。…何より、こちら側からの審問官の役目をも果たせる」

たしかに、彼…アスタロトは魔界における審問官の役目をもっている。

もってはいるが。

「わざわざ、審問官の王がでむくことにより、世界で何かがおこっている、というのを

  人間達にも知らしめることになりませんかの?」

そんな彼らの会話に口をはさむものが一人。

その身長よりも長すぎるのではなかろうか、というほどのあごひげをもちながらもその眼光はとても鋭い。

「バァルか。しかし、我はかまわんぞ。ひさしぶりに公認で地上界にいけるのだからな」

何よりも暇つぶしになる。

それに一応は役目を追っていくのだからいつものようにさぼるわけではない。

どうどうと口実としてさぼれるこの提案を断る道理は彼…アスタロトにはない。

しわがれ声で紡がれるその声にたいして、感情をともわない声でさらっと言い返す。

「では、きまり、だな。あまり大人数をでむかせては、おそらく混乱させるだろう。

  アスタロト。従者というか同行するものの選抜はお主にまかせる」

「御意に」

魔界における、重役会議。

この場にいるのは、魔王、そしてまた、大侯爵、といわれる実力ある悪魔達。


実質、魔界は彼らによって統率されている、といっても過言ではない。

そしてまた、大魔王、とよばれるものこそ、彼らが王、とよびし存在。

しかし、今、その王はその補佐官ともども行方知れず……




「会議!?」

今はそれどころではないとおもう。

切実に。

「しかし、すでに天界、魔界側からも参加する旨が報告ありましたし。

  それに何より、霊獣界からも参加するとの連絡がありました。長自らが参加するそうです」

例外というか例外中の例外。

よもや、霊獣界の中でも実力を誇る、あるいみ上層部トップ、ともいえる竜族。

その竜族の長が人間の要請でわざわざ会議に赴くなど。

しかし彼らは知らない。

どうして彼がその要請にこたえたのか、ということを。

まさか、神竜ヴリトラがその国に遊びに…もとい降臨してしまったから様子をみにいくついで、ということを。

「そういえば、サラから連絡があり。すこしばかり何か不穏な気配がするので、

  伝道師様が迎えにきたのをうけてしばらく地上を探索するそうです」

つい先日、そのような報告があったらしく、ようやくその報告がのぼってきたばかり。

「妖精界においては、何がおこっているのか把握するように、

  妖精王達から側近でもあるミルッヒ殿にその要請がでたらしく、彼女自らがでむくようです」

つまり、魔界、天界、妖精界、霊獣界。

すでにわかっているだけで四界もの存在達がこの会議要請にこたえていることとなる。

「……しかたありません。では、こちらからはウンディーネ。

  あなたはではもう一つの姿。水の精霊王ウンディーネの補佐官、ウィンとして参加してください」

自らが動かなければ気がすまない。

精霊王、としての立場ではなかなか下々のものが畏縮してしまって話しにならない。

ゆえに少しばかり気配と姿を変えて、同じ存在である、というにも関わらず、

一人二役をこなしている、水の精霊王。

その事実をしっているのは、精霊王や精霊神、そして各界の王、そして伝道師のみ。

「はい。精霊神ユリアナ様。その任務、しかと引き受けました」

最近、水が動いた、と報告をうけている。

だからこそきにかかってはいた。

水を司る精霊でもあるウンディーネは海を司る海神ポセイドンと密接なつながりがある。

だからこそ気になってしかたがなかった。

今回の一件はちょうどいい機会なのであろう。

様々な界のものがやってくる。

そうすればすくなくとも、何が起こっているのかくらいの目安にはなる。

何もわからずに行動しては何かあったときに対処のしようがない。

それは、永く精霊王、という立場をつとめているがゆえに身をもって知っている。

自らの意思は昔からあり、今のように実体を伴った姿で具現化することが可能となったのは、

この【世界】否、【惑星】の寿命からするとつい先日誕生したようなもの。

…あれから、四億年。

何もできずに世界が壊れてゆくのを視ていた。

そして、役目をうけたまわった。

だからこそ、今度は自分達が意思をもってうごけることがどれほど誇らしいか。

【意思】の思いに答えるためにも、自分達は存在している。

そう自覚しているからこそ、率先して動きたくなる。

「…しかし、ほんと、意思が姿をくらまされるなんて…また、何かがおこるんでしょうね……」

は~……

そんな目の前にいる一人欠けてはいるものの精霊王達三名の前で、静かにただ静かにため息を吐き出している一人の女性。

彼女こそが精霊王達の頂点にたつ精霊神、ユリアナ。

すべての精霊達の仮初めの生みの親。

彼女は【意思】にその役目を委託されたがゆえに、精霊達を生みだすことができている。

当人いわく、仮初めの生みの親、ということらしい。

つい先日、【意思】が直接精霊達を生み出したことは知っている。

だからこそ、これから何かがおこる。

というのを確信せずにはいられない。


…おそらく、再びすべての界を巻き込んだ何かがおこるのは間違いがないのであろう。

…ゆえに、ため息もつきたくなる、というものである……

そんな精霊神の心情はその場にいる精霊王達とて同じこと。

しばし、何ともいえない視線をかわしつつも、盛大にその場にいる誰もがため息をついてゆくのであった……





  悪魔達の定義は、ソロモン72柱や、悪魔学における様々な宗教感による定義。

  それらが入り混じってますので、あしからず。

  神々の定義にしても然り。様々な神話や伝承が入り混じってます。

  名前をみて、あれ?と思われる方々もいるとおもいますけど。

  というか様々な伝承などをも入り混じっての設定ですのであしからずv

  (いい例が悪魔における定義は様々な伝聞が混じってます)

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