光と闇の楔 ~特別処置と会議決定~
なろうにおいて。
H23/3/23日当日において、総合ユニークさんが千を超えました。
PVアクセスは八千。(びっくり仰天
みなさん、ありがとうございますv
ようやく神竜も学生さんにこのたびより(?)加わって、戦乱?への道が開けかけです…
まえぶりさんで、以前にあとがきでいってた、【界】の責任者達の名前の由来。
伝道師達の相談?をちらり、とをば……
「……これは……」
現実を新たに突きつけられた。
かつての青い地球の面影はすでにない。
原初の海。
そうとしかいいようがないその光景。
いたるところから直接地表奥深くからマグマが噴き出し、厚く覆われた雲からは絶えず雨が降り注いでいる。
しかもこの雨、太陽からの有害物質などをも含んでいる。
それらがなぜか【判る】。
反省とばかりに別の惑星に飛ばされていた。
そして戻されてみればかつての母星の面影はどこにもない。
それが彼らが利益のみを追求した結果もたらされた結末だと理解する。
あるものは、ただ、利益を、あるものはただその探究心を、あるものはただ、暇だから、という理由で。
そしてまた、便利性を目指し自然をないがしろにしていたのも事実。
『あなたがた人類のせいで犠牲になった他の命には罪はありません。
彼らには受け入れてくれる惑星へと移動してもらいました。
あなたがたはこれから、この惑星のあらたな【理の楔】の監視者になってもらいます。
二度と、あなたがたのような知的生命体が愚かなことを起こさないために……』
彼らの耳にと聞こえてくるとある声。
新たな理を創るにあたり、彼らはそれぞれ話しあった。
そして、自分達の文明の痕跡をどこかに残しておきたかった。
自分達という存在がいた、という証に。
だからこそ、昔より伝わる伝承を元にそれぞれの【界】を設定した。
それでなくても彼らが生み出していた時空干渉装置により他の次元の存在もある程度は把握されていた。
それらすべての界をつなぐことにより、一つの種族のみが暴走しないように、それぞれが監視する、
という制約をつけて。
星の意思より伝わってかつての文明。
彼ら人類が誕生するよりも前に栄えていた文明達の記憶。
『あなたがたの様々な思いは浄化するのに長き年月がかかるでしょう。
…なので、その思いを新たな生命として誕生させます……』
星が滅ぶ…否、まだ命にあふれていたときの結晶ともいえるそこに生きていたものたちの思い。
その思いより創りだされたひとつの生命体。
その生命体は古より伝わる彼らの伝承から、【竜】として誕生することとなった。
原初より始めに生み出されたのが竜という種族。
そう古代より伝わっていたその伝承のままに……
「…名前は、何にしようか?」
「……竜でおもいつく名……いろいろとあるが……」
「ヴリトラとか。麒麟とか?」
「ティアマト、というのもあったな。たしか…」
「いや、それは大地の基礎となった地母神の名前でなったか?たしか西アジアの」
「でもたしかあれは邪神に変化したという伝承では……」
『その生命はこの大地の楔として誕生しました。宇宙空間からの干渉をその力においてふさげるように』
有害な物質が降り注いでいては新たなかつてのような命あふれる惑星にはならない。
それゆえの措置。
「宇宙を塞ぐもの、でヴリトラ、でいいんじゃないのか?」
「「…まあ、それが無難、かな?」」
たしかに名前と神話が一致しているに越したことはない。
意見が一致しその旨を『世界の意思』こと『惑星の意思』にと伝える彼ら達。
『では、その生命体に体という器を与えることにしましょう……』
言葉が響くと同時、周囲は真っ白い光に包まれてゆく……
そして、彼らは【界】における存在達をも創りだす。
かつての神話等にもとづく様々な名前を。
そして、それにもとづき新たにそれぞれ器を得た存在達が新しき時を紡ぎだす……
光と闇の楔 ~特別処置と会議決定~
「まったく……」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
この突発的な行動は昔から変わらない。
ゆえに呆れ交じりにつぶやくしかない。
「……あ゛~…つまり、何か?その子は慕ってる君にあいたくて無理やり侵入した…と?」
それをきいてもはや教師達は呆れる以外他にはない。
というか目の前の生徒はどこまでいったい規格外なのか。
それにつきる。
先日はたしか精霊と意思疎通ができることが判明した。
今度は竜族に慕われている、とのこと。
目の前の少女が自分が竜だ、そういっていることからおそらく嘘ではないのであろう。
というか普通の存在にあっさりとこれでも実力に少しは自信のある教師達があっさりと負けた。
というよりよほど信憑性がある。
「だって…だって…お姉様にあわせて!といっても、関係者以外立ち入り禁止って……
わたし、わたし、あいたかったんだもんっ!」
「だからって無理やり侵入する子がありますかっ!まったく……あなたは、昔から……」
ダダをこねて大地を一つまるまる消滅したこともかつてはあった。
精神的に成長しているのかいないのか、そのあたりの判断がつきかねる。
ディア、と名乗っている生徒に怒られ、しょぼん、とし瞳を潤ませている少女からは、
さきほどまでの圧倒的な力はまったくもって感じられない。
『すいません。私が彼女を止められなかったばかりに……』
何やらこめかみに手をあて唸る教師たちにと、申し訳なくはなしかけている守護精霊、ティミ。
守護精霊ですら止められなかった、ということが少女が竜族なのだという信憑性を物語っている。
ティミは光の姿を形どり、ふわふわと申し訳なさそうに周囲を飛び交っている。
光に包まれたその姿はさほど大きくなく、大人のこぶし大程度。
飛び交うたびに周囲にきらきらと金色の光が舞い落ちている。
「とにかく、あなたはもどりなさい」
「やだ~!お姉様がここにいるから私もいるっ!」
「…迎えの要請、だそうかしら……」
おそらく伝えればまちがいなくすっ飛んでくるであろう。
そもそも役目を放棄してここにきているのは疑いようがない。
そんな彼らの会話は何のその、ディアと少女はいまだに何やら言い合っていたりする。
どうも平行線をたどっている…としかおもえないそのやり取り。
さきほどから、戻れ、戻らない、の繰り返し。
「あ゛~…ディアさん?その子とどういう知り合いなんですかな?」
そもそも、人の姿をとれる竜族と知り合い、というのが気にかかる。
というかそんな人間がいるのか、という疑問もつきないが。
「どうって、見たとおり、慕われまくってるんですよ…いつまでたっても甘えん坊でこまるんですけど……」
少女…ヴリトラからしてみれば自分に器をあたえ新たな命として創りだした【意思】を慕うのに意味はない。
というか彼女にとっては母でもあるのだからそれが当たり前といえば当たり前。
「本来、この子は霊獣界に住んでるんですけどね……竜の里を通ってやってきたんでしょうけど……」
おそらく今ごろ、側近をかねているシアンが激怒しているであろう。
少し確認して視ただけでもそれは一目瞭然であった。
どうして慕われているのかはよく分からないが。
しかしどうやら素直に怒られているのをみるところから完全に慕っているのは疑いようがない。
「ここはどうでしょう?この子にも学園で生活してもらう、というのは?
二度とこのようなことをおこさないためにも人間としての常識を学んでもらったほうがよくないですか?」
おそらく無理やり侵入しようとしたのは、そのあたりの知識が皆無だからなのだろう。
そう予測し、学校長がそのような提案をだしてくる。
連絡をうけあわてて学校にもどった教師や学校長、理事長達がみた光景。
それは小さな女の子がディア、と呼ばれる生徒にこってりと怒られている様であった。
侵入者はその小さな女の子であり、怒っていた生徒に話しをきけば、
彼女に会いたくて無理やり侵入してきた、とのこと。
それをきたときにはその場にいた全員がただただ頭をかかえるしかなかったが。
そもそも、その傍にはおろおろとした表情をしているこの地の守護精霊たるティミがいたのである。
守護精霊ですら止められなかったということはかなりの実力をその少女がもっていることを物語っている。
このたびはどうにかなったが、これからもディアがここで生活する以上、
もしくは卒業し他の場所にいったとしても同じようなことをしでかさない、とは限らない。
それゆえの提案。
「たしかに。では特別措置として入学許可をだしましょうか?」
「・・・・・・・・いやいや、先生達、ちょっとまってください!?いいんですか!?いいんですか!?」
そんな教師達、しかも学校長の鶴の一声で何やらとんでもないことが決定されようとしている。
ゆえにおもわず叫ぶディアはおそらく間違ってはいない。
というかそんなことになったら絶対に文句が自分にむいてくる。
それはもう、ほとんどあきらめに近い状態で。
「しかし。ディアさんといいましたね?
この様子ではあなたがいる限り、この子はまた同じようなことをしでかさないとも限りません。
このたびはまだ怪我人だけで済みましたが、力加減によっては死者もでかねません。
守護精霊様ですら止められない力をもっていることから
下手をすればかるく町一つくらいは壊滅させられる実力をもっている、と推測されます」
正確には町一つどころかこの地上におけるすべてを壊滅させるほどの実力をもっている。
「うっ…い…いいかえせない……」
事実、昔も同じようなことをしでかしているだけにディアも言い返し用がない。
そのあとの後始末にほとんどの神々、そして魔界の王達がこぞって尽力を尽くしたのは記憶に新しい。
たしかあれは四万年前のことだったかな?地球時間で。
そんなことをふと思うディア。
実際に今指摘されたようなことをすでにやったことがある実績がある以上、ディアも言い返し用がない。
人間たちの常識をとりあえず教え込んだものの、当の当人が覚える気が今までなかったのも事実。
まあ、たしかに、地界に出ていかないかぎり、関係ない、といえばそれまでなのだが……
「とりあえず、詳しくは会議によって決定することになりますけど。
ディアさん、あなたはこれ以上、その子が暴走しないようにしっかりと見張っておいてください」
「……はい……」
そういわれれば素直にうなづくより他にない。
というかおもいっきり目の前の少女ヴリトラが本気で駄々をこねれば、
こんな小さな町などあっというまに焦土と化す。
いくらディアが結界で覆ったとしてもその力の余波は必ずどこかにひずみが生じる。
「…ヴリちゃん。あとから徹底的にお仕置きだからね?」
「…ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……」
ため息をつきつつも、笑っていない瞳でヴリトラを見つめるディアの様子に、
ただただ体を震わせて謝っている少女の姿。
ふとみればどうやら教師たちは今後の対応を決めるために会議の時間帯を決めているらしい。
そんな教師たちの態度をみつつ、
…しょうがない。
どうやら決定事項は揺るぎようがない。
ならば。
そう確信しかるくため息をつきつつも、
「Comme pour la chose de mon intention, il devrait limiter le pouvoir du tu……」
――我の意思のもと汝の力を制限すべし……
ぽつり、と小さくヴリトラにむかって言葉を発するディア。
その直後。
淡く少女の姿が輝いた事実に気付いたものは精霊であるティミのみ。
その場にいる教師の誰ひとりとしてその事実にきづくことなく……
結局のところ、侵入してきた少女、ヴリトラはひとまずディアが引き取ることになったのであった……
『…すると、何ですか?成り行きで人間界の学校に通うことになった…と?』
とりあえず心配しているであろうことから許可をもらい早退し寮にもどり連絡をいれる。
目の前にはゆらゆらと揺らめく空間に映し出されている一人の男性の姿。
「とりあえずたしかに。今の常識身につけさせるのはいい機会かもしれないけど。
あ、そっちの仕事はきちんとこの子にやらせるから。仕事のみの【道】を張っておくわ」
「お…お姉様、仕事…って……」
「ヴリちゃん。あなた、仕事をほっぽってきてるんでしょう?きちんと仕事はこなしなさい!」
『…意思様のほうはいいのですか?たしか両界とも大混乱と化してるらしいですけど……』
よもや人間界に降り立っているなどとは夢にもおもっていなかった。
まあ、新たな後継者が生まれたことからその可能性も考慮していたが。
こう実際に事実を突きつけられれば信じるよりほかにはない。
ほいほいと彼女がここにいることで【道】をとおって誰もかれもがやってこられてはたまったものではない。
ゆえに、仕事のみ限定で【道】を開いておく。
「あちらは本来、それぞれの界の存在達がやらなければならないことだし。
それに、いつまでも甘やかしていては成長も望めないでしょう?シアン?」
それは本音。
何でもかんでも【王】がどうにかしてくれる。
そうおもっていると必然的に油断が生じる。
定期的にその満身創痍を砕く必要性があるのも事実。
だから今回の一件はちょうどいいとばかりにこうしてここにきているのだから。
バタン!
「ディア!今日の襲撃者がディアの知り合いって本当!?」
毎回、毎回思うのだが、ノックもせずにいきなり部屋にはいってくるのはいかばかりか。
もっとも、きちんと鍵をかけていないディアにも問題あるといえばあるだろうが。
そもそも、ディアとしては悪意ある存在にのみ反応する簡易的な鍵をつけているので、
悪意のないものは鍵のかかっていない状態としてそのまま部屋の中に入ることが可能。
「…ケレス。毎回、毎回いうけど、せめてノックくらいしてよね?」
はいってきた少女の姿をみとめため息まじりにつぶやくディアはおそらく間違ってはいないであろう。
「何いってるのよ!ディアこそそうしてほしいなら鍵かけときなさいっ!って…ディア?その子…だぁれ?」
学校内にてディアの噂をきき、本日の襲撃者が実はディアの知り合いだ、ということを聞きだしたケレス。
ゆえに襲撃の余波で運がいいのか悪いのか、とにかく授業が切り上げになったことをうけ、
急いで寮にともどり、ディアの部屋にとやってきた。
部屋にはいり、まず目にはいったのは、なぜか正座をして部屋のスミに座り込んでいる一人の少女。
歳のころはおそらく七歳くらいであろうか。
真っ白い髪に金色の瞳。
その髪の長さは肩より少し長い程度。
透き通るまでの白き肌は少女の愛らしさをさらに引き立てている。
しかも体全体をおおうような漆黒のローブを身にまとい、ちょこん、とそんな少女が座っているのである。
おもわず目をひかないわけがない。
しかもそれがみたこともない子供ならばなおさらに。
いくらここがギルド寮であり、けっこう様々な存在達が出入りするにしても、
こんな少女がここにいる意味がわからない。
一瞬、ディアの身内、ということが脳裏をよぎる。
たしか十人くらいいる、といっていたような気がする。
ならこの子はそのうちの一人なのだろうか?
ケレスがそんなことをおもいつつも、首をかしげていると、
「ああ。この子?知り合いでね。…私を慕ってやってきたみたいなのよ……まったく。
何をかんがえているんだか……」
そんなケレスの思いを察し、ため息まじりにこたえるディア。
まあ、知り合いといえば知り合いである。
彼女を【創った】のがディア当人、というのを除けば。
つまり知り合い、という言葉は嘘ではない。
…事実を示しているわけでもないが。
「?お姉様?このにんげん、だぁれ?サラマンダーの匂いがするけど?」
そんなケレスをみて首をかしげてといかけるヴリトラ。
「ああ。ケレス=アストレア。この寮の部屋の前にすんでいる同じ寮仲間よ。
ちなみに学校のクラスは総合科A組Aクラス」
「?」
ディアの説明にこくん、と首をかしげるヴリトラ。
「…ヴリちゃん、そのあたりの勉強は何をしてたのかなぁ~?」
ギルド協会における学校の勉学は必須として課していたはずである。
しかしどうやら当人は意味がわかっていない。
ゆえにこそ声がすこしばかり低くなってしまうディア。
「…えええと……あ、アストレア?ああ、サラマンダーの加護をうけている一族の人間か~。
私はヴーリ、よろしく!」
どうやら風向きが再び悪化しそうな気配をうけ、あわてて話題を変えて自己紹介。
ヴリトラ、と名乗れば面倒なことになりかねない。
ゆえに大概、彼女は他者に自分のことを紹介するときには昔の愛称で答えるようにしている。
それは今も昔もかわらない。
まあ、神々の名前は有名で、確実に真名をいえば間違いなく結び付けて考えられる。
もっとも、中には加護を得たいとばかりにわざとその名前と同じにする輩もいるが。
特にその兆候は人間族の中に多く見られている。
ヴリトラからしてみれば、神々、そして精霊達は彼女よりあとから創られた存在達なので、
どちらかといえば妹や弟的な感覚となっている。
そしてまた、神々や精霊王達も彼女を怒らせればどうなるか、身をもって知っている。
しかしわざわざそのことを説明する必要性はこの場においてまったくない。
「…精霊王様を呼び捨て…って、ディア、この子、だれなの?」
「ん~。一応、竜族」
「…は!?」
竜族でしかも人型をとれるということはかなりの実力者ということを示している。
たしか噂では守護精霊ティミ様でも止められなかったとか何とかきいたけど…もしかして…
とある可能性に思い当たり、
「…もしかして、今日、学校を襲撃してきたのって……」
「うん。この子。なんでも私にあいにきて、門前払いされたからって無理やりはいったらしいのよね……」
「…うわ~……」
どこか遠い目をしながらもぽそり、とつぶやくディアの言葉に
何といったらいいのかケレスとしても言葉が見つからない。
たしかに人型をとれる竜族ならば守護精霊と比べ物もならないくらい力の差があるのであろう。
それがどれほどのものなのかはしらないが。
「…ディアってなんかいろんなものに好かれてるのね……」
慕われて、しかも無理やりに侵入、しかも騒ぎまでおこす。
そこまでいくとさすがにうらやましい、とはおもわない。
むしろ大変だ、という思いのほうが強い。
「それで、これ以上この子が暴走しないようにって、学校関係者達が私に面倒みるようにって……」
「……御愁傷様……というか、どうして人型の竜族なんかとしりあったわけ?」
「あ~、まあ、いろいろとあって……」
ディアのことである。
きっと何かのはずみでなつかれたのかしら?
その可能性はかなりある。
言葉を濁すことからおそらくそれはほぼ間違いないのであろう、そうケレスの中で結論づける。
「…ヴーリ様…というか、ちゃんのほうがしっくりくるけど……
とりあえず、私はケレス=アストレア。ディアとはギルドでパーティーくんでるわ。よろしく」
「…パーティ?…お姉様、ずるい!私もはいるっ!」
「ヴリちゃん?あなたは、反省、という言葉がわかってるのかしら?ん?」
何だかとても面白そう。
それゆえにぱっと瞳をかがやかせてすかさずケレスの言葉に反応するヴリトラ。
そんな彼女に対してすばやく突っ込みをいれているディア。
「うう……だって、だって、だってぇぇ!いつもいつもみんな私におとなしくしてろっていうんだもんっ!」
というか彼女が暴れたらどうにもならない。
そもそも彼女のちょっとしたいたずらでもシャレにならないことがある。
……そのために、すべてのその場におけるものたちにおいて
霊獣界は他の界よりもさらに頑丈に結界が施されているのだが……
「あなたは自分の役目がわかっててもそうなんだからねぇ~……」
おそらくは多々とある【心】をそのまま具現化するようにして【魂】を創った結果なのであろうが。
しかし時がたってもこの幼い性格はどうやら治りそうがない。
もっとも、きちんと公私の区別をつけられるようになっているだけ多少はまし、
とおもうしかないのかもしれないが。
「…ディア、まあ、頑張って……」
どうやらディアを完全に慕っている、というのはうそではないようである。
どのくらいの力をもっているのかはわからないが、どうやらディアの意見はきくらしい。
つまりは、この見た目幼き竜族の【力のストッパー(枷)】がディア、といっても過言でない。
何やら会話だけきいていたら、目の前の少女が本当に竜、だとは信じがたい。
どうみても幼い子供が駄々をこねているようにしかケレスの目には映らない。
しかし、目の前の子供から感じる気配はあきらかに人あらざるもの。
だからこそ信じざるを得ない。
何となく先日であった緑竜と似通った気配をまとっていればなおさらに。
「それで、ケレスは何しにきたの?」
「ああ、今日のことききにきたのよ。ま、大体のことは今の説明でわかったけど。
ま、とりあえずしばらくはここにいるんでしょ?そのこも」
この調子ではおそらく帰る気はさらさらないであろう。
「まあ、人間界の常識をきちんと判らせるために、学校長がいうには学校に通わせるっていってたわ……」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
何かいま、信じられないことを聞いたような気がするのは、ケレスの耳の錯覚か。
「…なんか、ディアと知り合ってから奇想天外なことが続けざまにおこってるような気がするのは…
私の気のせいかしら……」
ぽつり。
ディアの説明をきき、しばし呆然としつつもぽつり、とつぶやくケレスの姿が、
寮の一室においてしばし見受けられてゆくのであった……
「また、面倒なことに……」
報告をうけ思わず頭をかかえてしまったのは仕方がない。
絶対に。
そもそも、どうしてこう続けざまに問題がおこるのか。
報告をうけたとき、本気でそう思ったこのテミス国王はおそらく間違ってはいないであろう。
その場にいた誰もが同じことを思ったのだから。
「まあまあ。聞けば竜の娘さんはあの少女に会いに来ただけ、というではありませんか」
「というか、やはり言霊使い、というのは間違っていないのかもしれないな……」
基本、言霊使い達は様々な存在に好かれる性質をもっている。
わざわざおいかけてくるほど好かれている、という事実がその信憑性をより増している。
「やはりここは、会議を提案するのが一番いい、だろうな」
人型をとれる竜があの少女のいうことを素直にきいているらしい、というのが不幸中の幸いか。
しかし守護精霊ですらその力というか行動を止められなかった。
そのことはつまりは、彼ら王国内のものたちでは手のうちようがない、ということを物語っている。
ならば、各界に要請して混合会議を開き、少しでも脅威を減らしておきたい、とおもうのは仕方がないこと。
「…できれば国に属してほしかったが。危険因子が訪ねてくる可能性がある、というのは失念、だな」
「ですね~。人型をとれる竜族など、簡単に町の一つくらいなら壊滅さらっとできますからね」
しかも当人?にその気がなくてもそれは可能、そう伝え聞いている。
また、伝説では人に姿をかえたまだ精神的に幼い竜がほしいものを手にいれられず、
駄々をこねてその駄々というものが人からしてみれば洒落にならず、
その反動で町が一つ滅んだ、という話しすら伝わっている。
…実は伝説などではなく、実際にそういうことがあったのだが……
その力を利用して悪用しようとする輩がでない、とも限らない。
そもそも、慕っているという少女になにかあったら激昂して何をしでかすかわかったものではない。
つまりはかなり扱いずらい存在になった、ともいえるのだが。
できれば国に属してその能力を使ってほしかった国の上層部のものたちのもくろみは
その報告をうけた段階でもろくも崩れ去っている。
「…まさか、天界や魔界のものにも知り合いがいるとかいわないだろうな?」
「あ…あはは…ま…まさかぁ……」
「いや、力ある言霊使いならば界を問わずに好かれる、ときくからな…わからんぞ……」
し~ん……
ぽつり、とつぶやく一人の言葉にその場にいる全員がおもわず静まり返る。
「…まあ、とりあえず、害をなそう、という輩が訪ねてこないことを祈るばかり…だな。
とにかく、あの子が言霊使いである可能性というかその事実は絶対に他にもらさないようにっ!」
それをききつけた存在に少女にちょっかいをだされて【竜】に介入されてはたまったものではない。
「竜の娘っ子は何という名前でしたかな?」
「たしか、ヴーリ、と名乗ったそうですが?」
「…それって、ヴリトラ様の名前をもじったものではないのですか?
となるとかなり高位の竜族の可能性もありますなぁ~……」
そもそも、神竜の名前に近しい名をつけられるということはその実力をも示している。
もしくはその加護をうけているかのどちらか。
「…まさか、竜王様方の娘子ではないでしょうな……」
「あ…あはは。まさか……」
いくら何でもそんな存在が人間になつく、などとおもえない。
否、思いたくない。
そうだとすれば絶対に誰もがかてない。
それこそその親たる存在か、もしくは伝説ともいえる神竜ヴリトラ以外思いつかない。
彼らは知らない。
娘、どころか、この地にやってきたのがその当の神竜ヴリトラである、ということを。
知ればまちがいなく誰もが卒倒し現実逃避をしたであろう。
それほどまでに常識から外れた出来事なのだから……