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光と闇の楔  作者:
27/74

光と闇の楔 ~授業と侵入者?~

とりあえず、戦闘シーンもどきはオブラートに包んだ表現につとめてます。

まあ正確な光景は各自で脳内変換して想像してください…(他力本願

ようやく主人公の傍に力ある存在達が集い始めるところまで……


「ようやく次なる長が誕生した、か。しかし……」

「ヴリトラ様?」

目の前の少女の言葉に何らかの意図を感じ取り思わず首をかしげる。

「シアン。それでその後継ぎが生まれたのはどの地においてじゃ?」

「はい。テミス王国の近く、です」

「なるほど……」

先日その近くで魔界の反旗メンバーが何か無理やり道をこじあけたはず。

ならば近くにいても不思議ではない。

「報告ごくろう」

「……何かたくらんでませんか?」

伊達に長い付き合いではない。

【自分達の】がこのようなそっけない態度をとるときには必ず何か裏がある。

「何のことじゃ?」

・・・・・・・・・・・

絶対に何かたくらんでいる。

…警護の兵士と、そして警戒するための警備の兵士をさらに倍以上に増やしておこう。

…また、いきなり抜け出されてはたまったものではない。

自分達の王…人の容姿をしているときのその姿は七歳かそこらの少女…にしかみえないが。

実質はこの世界ができたときから存在している、といわれている至高たる竜の神。


そんな彼女の態度に半ば確信に近いものをいだきつつ、心の中で固く決意する竜の王たるシアンの姿が、

ここ、竜の里の奥深く、霊獣界に通じる扉の奥の神殿の間にて見受けられてゆく――






           光と闇の楔 ~授業と侵入者?~






「…というか、ディアさん、あなた、はじめっから卒業試験うけたほうがよくなかったですか?」

おもわず呆れつつもそんなことをいってしまうのは仕方がない。

何しろ自分達が教えるよりも、彼女が説明したほうがはるかに判りやすい。

さらにいうならば自分達ですら知らないような仕組みまで加えて説明してくれるのだから呆れる他ない。

今日は朝から王室のほうからギルド協会全体に長達の出向命令があった。

ゆえにある程度の実力あるものたちはそちらのほうに駆り出されている。

今、この場にいるのは駆り出されなかった教師達。

もっとも全クラスを補えるくらいにはきちんと教師の数はたりてはいるが。

しかし教師歴二年になる彼とてこのような利発な生徒は滅多にお目にかかれない。

A組Aクラスにおいてならばありえるが、ここはC組。

つまりは簡易的実力検査の結果中間地点に位置する生徒達がいるべき場所。

「え?でも普通、入学してから、それから卒業は当然でしょう?それに私には後見人もいませんし」

事実、ディアには後ろ盾になるような存在は存在しない。

ゆえに普通にこの学校に入学することにしたのだが。

どちらにしても資格は一生もの。

一度所得しておけば後々困ることはない。

以前に所得したのはこの仕組みができてすぐだったので今の時代では通用しない。

たしかに後見人もいない子供がいきなり卒業試験をうけて合格したとしても、

それは何か裏があるのではないか?

と勘繰られても仕方がない。

もしくはその合格証書が偽造されたもの、と疑われる可能性すらある。

そもそも、そう簡単に偽造などできない仕様になっているのだが、人の噂とはそういうもの。

授業中、ディアにとある質問をし、教師達ですら知らないようなことを踏まえて説明したディア。

ゆえに教師としては苦笑するより他にない。

そもそも、卵達の原理というか精霊の卵、という存在そのものがいまだに発見されていない以上、

精霊達よりそのことを聞いていても実際にどのようなものか想像することはまず不可能。

想像することができなければそれに対して力を借りうけることもできはしない。

そもそも、力を借りる、ということは逆をいえばしっかりとイメージができ想像することが必須となる。

「そこまでの知識があってどうしてこのC組なんですかねぇ。ディアさんは……」

教師の疑問も至極もっとも。

そこまでの知識があればまちがいなくA組に振り分けられていてもおかしくはない。

「無難な場所で学びたかったですし。それにA組はたしかこの国の王子とかおられるのでしょう?」

下手に一緒に勉学していて自分のことが知れ渡ってしまえばそれこそ本末転倒。

というか下手をすれば国をあげて保護するなどわけのわからないことをいいだしかねない。

それだけはディアとしても何としても避けたい。

もっとも、そういいだした場合、

きれいさっぱり記憶操作をして自分に関してのことを消す、ということくらすはするつもりではあるが。

「あ~。たしかに。A組にはそれなりの権力や血筋の存在達がおおいですからねぇ。

  ディアさんはそういった人達が苦手、なんですか?」

「苦手、というか利用されそうになったりするのが嫌なだけです」

それは本音。

彼女のことを知ればその力を利用しようとする輩もでるであろう。

…もっとも、協力する気などはさらさらないが。

そういう輩はちょこっとお灸をすえる程度で抑えるか、

もしくは他人を巻き込もうとした時点で完全に壊滅させるか、のどちらか。

「なるほど。まあ、人はそれぞれ思うところがありますしね。

  とりあえず、ディアさん、

  今の説明をもう一度、みなさんにもわかるように説明してあげてもらえますか?」

今のディアの説明ではおそらくよく意味がわからない生徒達もいたであろう。

自分もいまいちよくつかめなかった。

「まあ、いいですけど……。なら古の言い方をもじって説明しますね」

今の世界に昔のような人間達が発見した科学的概念はない。

原子は物質を構成する具体的要素。であり分割不可能な存在。

元素は性質を包括する抽象的概念。

素粒子は物質を構成している最小の単位。

分割不可能な性質をもつそれらに様々なものが付随し新たな命となる。

おそらく四億年前の科学的根拠を話されても今の人々にはまったくもって理解不能。


しばし、ディアによる物質とは何か、その概念。

そしてまた、精霊達の産まれる原理、といった話しが教室において繰り広げられてゆく――



ふわり。

とっん。

体全体に風を纏わせてすとん、とその場に降り立つ。

視界にうつるのはちょっとした王都を守るための門と壁。

「さて、と。たぶん間違いなく、おられる、とおもうんだけどね~」

せっかくわずわらしい、これでもか!とおもえるほどにふやされた監視の目をかいくぐってきたのである。

もしも自分の予感が外れていたらとてもさみしい。

てとてとてと。

まさに、てとてと、という表現がふさわしいような少女が一人、町へむかって歩きだす。

「うん?なんだ、お嬢ちゃん?一人かい?」

どうみても七歳くらいの少女が一人であるいていれば不審におもわれる。

それが町の中ならいざしらず、外からくればなおさらに。

「む~。外見で判断しないてください。あ、これギルド証です」

いいつつも、薄紫色をした上着の中より身分証明書にもなるギルド証を取り出し門番にとみせる。

「ほう。…ん?…お嬢ちゃん、竜族…なのか?」

そこにかかれている種族に一瞬目を丸くさせる。

本来ならば種族などという項目は当人の意思で隠せるのだが、外見が外見。

ゆえに彼女はわざとその項目だけはわかるように設定してある。

…もっとも、その種族も多少あるいみ偽っているといえば偽っているのだが。

「はい。たぶん年齢だけでいったらあなたよりかなり年上ですよ?」

にこやかにそういう目の前の少女。

真っ白い髪に金色の瞳。

薄紫いろの上着をはおり、上半身には淡い桃色の薄い服を着込み、

下半身には茶色いズボンを履いている。

さらにその上から漆黒のローブを纏っているのだからぱっと見た目、何ともいえない格好になっている。

女の子だからスカートのほうがいいような気もしなくもないが、この姿がやけにこの少女にはよく似あう。

腰のベルトには小さな短剣がいちおうさされてはいるが、滅多とつかうことなどはない。

ローブ、といっても前で完全に止めているわけでなく、

どちらかといえば羽織っているような形で着込んでいる。

「…何か最近、かわった存在達がよくくるなぁ~……」

つい先日もかなりかわった入国者をみたばかり。

ゆえにぽそっとつぶやく入国審査をしていた門番の男性。

「変わった?他にも他種族のものがきたんですか?」

きょとん、としつつといかけるそんな少女の言葉に、

「ん?ああ、魔族なんだが、ギルド証の裏書に他界の構成員の証が……」

あれをみたときにはかなり驚いた。

まあ、人あらざるものであるからこそできるわざなのかもしせれないが。

しかし、普通の存在が簡単に他界を行き来できる、などはっきりいって聞いたことすらなかった。

ゆえにあの場ではいわなかったがかなり内心驚いていたのはいうまでもない。

「他界の?…ああ。もしかして界渡りのリュカのことですか?」

そんな裏書証をもっている存在などまず限られている。

普通はそれぞれの界において混乱をさけるために必要とあらばギルド証を登録する。

ちなみに混乱をさけるために偽名や種族を偽ることもある。

まあ、たしかにギルド登録のときに、実は慈愛の女神です、だの破壊神です、などと。

そんな肩書をわざわざ律義に申告する神々や魔界の王達などまずいない。

そもそも、そんな力ある存在達がギルドに登録している、などといったい誰が想像できようか。

「ん?なんだ、お嬢ちゃん、知り合いか?」

「ええ。まあ」

というか、お兄ちゃん、ここにきてたんだ。

そんなことをふとおもう。

ならばやっぱりここにぜったいにいるっ!

どこかそう確信しつつ、

「それで、はいってもいいですか?」

「かまわんよ。しかし、くれぐれも種族がバレナイようにするんだぞ?

  中には竜族の鱗などは高級品だからといってからんでくる馬鹿どももいるかもしれないからな」

実際に、それほどまでに人の中での竜の位置はかなり高い。

その身より取れる鱗や牙などといった品々は薬にもなれば威力のある武器防具にもなる。

そしてまた、農作業で使われる道具にすら利用できる。

つまり、あるいみで万能。

もっとも、人に姿を変えられる竜族はかなりの力を要しているのでどう考えてもかなうはずもないのだが。

そんな常識的なことすらわからないバカタレ達もいるのも事実。

そもそも、人と竜の力の差においては圧倒的なまでの差がある。

それすらわかっていない輩が多いのもまた事実。

「大丈夫です。ここにきたのは人探しですから」

人、といえるのかどうかはわからないが。

何しろこちらから出向かなければいつまた会えるかなんてわからない。

そもそも、話しかければ答えてくれるが実際にやはり姿をみたい、というのもある。

昔はよかった。

まだ他の界が創られていないときは常に傍にいてくれたのに。

そうおもうとすこしばかり一緒にいるであろう他の界の存在達がうらやましくなってしまう。

「そうか。ま、無理はするなよ?」

人の姿を模している、ということはかなり力のある竜なのであろうことは予測はつく。

つくが…竜族の精神年齢だけはよくいまだに人間達はわかっていない。

数百年たっても人間の精神年齢的にはいまだに幼児並み、という存在も多々といる。

見た目が七歳程度のこの竜の少女の精神年齢がどれほどまでかはわからないが。

しかし、見た目と精神年齢はにかよる、そう彼ら兵士達は習っている。

ゆえにいくら強くてもその精神年齢が子供、であるならば何かおこったときとんでもない悲劇となる。

まあ、そこにいたるまでにかならず守護精霊が直接干渉しことなきを今までは得ているのだが……

「は~い。どうもです」

とりあえずぺこり、と頭をさげて、そのまま町のほうへと足をむける。

そんな少女の後ろ姿を見送りつつ、

「しかし、魔族のあの兄ちゃんといい、この前のどうみても神族といい。さらには竜族…

  この前、近くに魔界からの道が開いたことと何か関係してるのか?」

自分としては平和にくらしたい。

切実に。

今まで兵士を務めてきてこれほど短期間に様々な各界の存在にあったことなど一度たりとてない。

何か、が確実におこりかけている。

しかし、それが何なのか…しがない一兵士である彼には判るはずもない……

「さって。ティミから情報を脅し…もとい、誠意ある話しあいをして聞き出しますか…ね?」

町に入ると同時、少女がにこやかにほほ笑みつつつぶやく。

それと同時…少女の周囲に光が収縮してゆくが。

しかしその現象に気づく存在達は誰もいない。

それは少女が自分に不可視の結界を張っているからに他ならない。

本来ならば、人、が神を直視する、などできないのだからして――



ビ~ビ~ビ~!!

突如としてけたたましく鳴り響く、耳につく高い音。

それと同時、各教室の教壇のよこに設置されている水晶が淡く光る。

『緊急事態発生、緊急事態発生。何ものかが侵入いたしました。

  相手の素性はわかりません。繰り返します。緊急事態発生。緊急事態発生。

  拘束しようとした教師はかえりうちに会いました。

  教師のみなさんは生徒達から目を離さないでください』

この水晶は何かあったときの緊急連絡用のような媒介のようなもの。

この水晶の映像と音声は学園の中心部にある制御室より発せられており、

中心部においては随時、学校内部の様子を視ることができている。

それらは精霊達の協力によってそのようなことが可能、となっているのだが。

ざわっ。

その内容を聞き咎め、クラスの中がざわめく。

それはどの教室においても同じこと。

悪意あるものではない、とは断言できるが、返り討ちにあった、というのが気にかかる。

そもそも、悪意ある存在だとすれば

この王国を守護している守護精霊よりはるかに実力のあるものが入り込んだ。

そうとしか思えない。

しかしそのような存在がこんなしがない学校に侵入してくるなどとは思わない。

ならば、悪意なく純粋に何かの目的のために入り込んだ侵入者。

そう捕えれるのが筋。

しかしその悪意なき純粋な目的、というのは一番タチが悪い。

当人に悪いことをしている、という自覚がないので保護結界すらも通用しない。

さらには一つのことを盲信しているせいか人の話しなど耳もかたむけない。

「たしかこの学校って侵入者用の結界ほどこされてなかった?」

「うわ~。まさかこれって避難訓練とかじゃないよな?」

何かどこかずれた生徒達の声がきこえてこなくもないが。

たしかにこの学校では事前連絡もなしにいきなり各種の訓練を行うことがある。

なぜかご丁寧に幻獣を召喚し学校が襲撃された、という形を疑似的に作り出すことすらある。

ゆえに幾度かそれを経験したり、

もしくは話しをきいたことのある生徒がそのような反応してしまうのは仕方がない。

「静かに!ううむ…たしかに、訓練、という可能性もなきにあらずだが……

  しかし現状がわからない以上、今日の授業はひとまず中止、だな」

何しろ訓練を行う場合、教師達にすらそのことを伝えていなかったりすることは多々とある。

だから余計にタチがわるい。

訓練なのか実戦なのか、その心構えによっては行動に制限がでてくる。

つまりは、どちらにしても実戦、として心構えをしておかねばいざ、というときに対処ができない。

いまだに水晶からは警戒警報のような言葉が常に発せられている。

「…ここってそんなことがあるわけ?」

先ほど訓練云々といっていた生徒に問いかけている生徒も多数。

親がこのギルド協会学校の卒業生ならばその話しは子供に大概つたえてある。

しかし関係者がいなければそのような話しはまず表ざたになりはしない。

そもそも、そんなことが広まれば訓練の意味がなくなってしまう。

常に緊張感をもって行動すべし。

これがこの学校の概念、でもあるのだから。

ざわざわといまだに教室内部が騒がしい。

が。

「……先生……」

「ん?何だ?どうした?」

ふと顔をしかめて一人の生徒が手をあげる。

そんな生徒の姿に気づき、問いかける教師であるが、

「…すいません。どうも馬鹿やってるの私の知り合いのようなんですけど……」

あの子は何をやってるのよっ!

精霊達から伝わってきた光景に思わず頭をかかえたくなってしまうのはおそらく気のせいではないであろう。

「ディア?それって?」

そんな生徒…ディアの台詞にきょとん、として問いかけている別のクラスメートの姿。

「今、精霊達から映像が送られてきたんだけど。ほんっと何をしてるのかしら……

  すいません、すこしばかりお仕置き…でなかった、話しあってきてもいいですか?ふふふふふ……」

そういうディアの目ははっきりいって笑っていない。

気のせいだろうか。

ディアがそういうと同時に教室の温度がかなり下がったような気がするのは。

何だかわからないままにその場にいたすべての存在が本能的に硬直してしまう。

それは存在における本能が警告する畏れ、なのだがそのことに気づくものは誰もいるはずもなく。

そういいつつも、カタン、と席をたちあがり、教室からでてゆくディアを止められるものは……

…誰、一人とていないのであった……



「む~。ああもう、面倒!というか、なんでここまでしつこいのよっ!」

『……ヴリトラ様。それは仕方ないのでは…というか無理やりにはいったのは貴方様で……』

次から次にやってくる捕獲者という名の存在達。

そんな彼らをいともたやすく受け流し、

それでも気絶だけでとどめているのはさすが、としか言いようがないが。

「だって、中にいれてほしいっていってもダメ、っていう人間がわるいのよっ!」

ティミを呼び出し、確認してみたところ、ここにおられることはわかった。

ならば、というので会いに行こうとギルド協会が経営している学校に出向いたのだが。

関係者以外は立ち入り禁止、といい門前払いをくらってしまった。

少し考えればわかりそうなことなのだが、しかし彼女にとってはそれは心外。

そもそも、どうして【母親】に会いにきただけなのに断られなければいけないのか。

母でもあり姉でもあるかの御方を自分がどれだけ慕っているのか人間達は判っていない。

だからこそ強行突破した。

それに気づいてあわててティミも姿を現し、説得しようと試みたが

今のところすべて無駄な徒労と化している。

それでも彼女がその能力の一つでも発揮したり力を解放したりすれば

こんな王都くらい瞬く間に消し飛んでしまう。

それだけは避けなければ。

そう心ひそかに決意し説得しながらも常に少女…ヴリトラと共に行動しているのは、

この王都の守護精霊たるティミ。

「くっ…まさかこんな子供にやられるとは・・・っ!」

実力者のほとんどが王宮にいっているとはいえ見た目七歳程度の女の子に圧倒的に負けている。

そのことが精神的に彼らにとってかなり屈辱的となっている。

「ああもう!次から次にっ!…面倒だからいっきにせん滅しちゃおうかな……」

それでなくても力を手加減して相手を気絶させているので疲れるというのに。

次から次へとこちらの話しをきくことすらせずに攻撃してこようとする大人たち。

『お、落ち着いてくださいませ!ヴリトラ様!そんなことしたらこの王都は消し飛びますっ!』

ぽそっといったその台詞にあわててそんなことをいうティミ。

たしかにシャレにならない。

それでなくても目の前にいるこのヴリトラは【意思】の次に実力のある存在なのだ。

それをしっているからなおさらに。

「いたぞ!侵入者はあそこだ!」

「な!?子供!?」

「油断するな!他の仲間達も攻撃一つできずに倒されてるぞ!」

何やらそんな声が反対側の廊下のほうから聞こえてくる。

みれば数名の大人たちが二人の姿を確認しこちらにむかってきているようである。

そのまま、少しばか距離をおき、口ぐちに何やらいいつつも臨戦態勢をとる大人たち。

まったく……

この存在達は何をいっているのであろうか。

おもわず呆れてため息がでてしまう。

そもそも、自分が創られた定義を彼らは知っているのであろうか。

否、知らないであろう。

ゆえに意思ある言葉を紡ぎだす少女…ヴリトラ。


『La haine de la personne me laisse; un dragon』

―― 我は人の憎悪が産み落とし龍


『La personne regarde en bas et l'envie et l'envahit et le pollue』

―― 人は蔑み、妬み、侵し、汚す


ただやみくもに創られたわけではない。

あのとき世界に充満していた【心】において【ヴリトラ(我)】は創られた。

人が人であるかぎり、そしてまた、各心が人のそれであるかぎり、その力は不滅。

産まれたときよりその存在意義もわかっていた。

自分の存在、それすなわち、当時生きていた存在達の結晶ともいえるもの。

何よりも神々達の心もまた力にと直結する。

心とは強くあり、そしてまた簡単に堕ちゆくものなのだから。


『Gyve comme la signification d'existence de ce but』

 ―――そのための存在意義たる枷


彼らが疑心暗鬼になるたび、逆にその力はヴリトラの力にと変換される。


『Mon nom est Vritra Demeurez dans le tu corps, et le fait; pour soupçon

  Brûlez complètement la totalité le coeur』

――― 我が名はヴリトラ。汝らその身に宿りし疑心にて その心を焼き尽くせ


いちいち相手をするのも面倒。

こうなったら手っ取り早く、彼らから自分に対する疑心を取り除いたほうがはるかに早い。

『ち…ちょっと、ヴリトラ様ぁぁ!?』

いきなり【戒めの旋律】を唱え始めたヴリトラにただただうろたえるしかないティミ。

「「な…うわぁぁっ!?」」

ヴリトラの言葉をうけ、その場にいたすべての存在達が青白い炎に瞬く間にと包まれる。

その炎には熱はない。

ないが全身を突き刺すような痛みは絶え間なくおそいかかる。

「さて、と。これでうるさい追っては……」


どくっん。


ぞくっ。

ようやく追ってがいなくなった。

そうおもい、ようやく本来の目的。

捜索を開始しようとしたその矢先。

何が、というわけではないが本能的に何かがどくん、と反応する。

それと同時、全身を突き抜けるような寒気が瞬時にヴリトラにと襲いかかる。

「ヴ・リ・ト・ラ?あなたはここで何・をしてるのかしら…ねぇ?」

それと同時、底冷えするような…まるで地の底から這い出てきたような深い、深い声が聞こえてくる。

その声はたしかに待ち焦がれていたもの。

だが、だがしかし。

こ…この口調は!?

だらだらだら……

その意味を察し、その場にただただ固まってしまうヴリトラであるがそれはそれで仕方がないであろう。

『ううう。すいません。お母様、ヴリトラ様をおとめできませんでした~……』

一方でその声をかけてきた存在の姿をみとめ、半ば泣きながらも訴えている守護精霊ティミ。

それと同時。

ドッンっ!

ものすごいまでの重圧がヴリトラの体全体に襲いかかる。

「さってと。ヴリちゃん?きちんと説明してくれるかしら…ねぇ?」

「…お姉様…ひどい……」

さすがのヴリトラもすでに涙目。

体を動かそうにも自由がきかない。

そもそもその場に完全にヴリトラは重力によって押しつぶされている格好になっていたりする。

しかもご丁寧にヴリトラのみ限定、で。

涙目で声のしたほうを振り向けば、ヴリトラが探していた姿がそこにあったりする。

するが、その目は全く笑っていない。

「まったく。神竜ともあろうあなたがこんなことろで何やってるのよ?ん?」

そう。

目の前の少女は紛れもないこの世界の神竜。

「…お姉様こそ…なんだってこんな人間の学校なんかにおられるのですか?

  私、私ずっとお姉様とお会いしたかったのにっ!最近まったくあいにもきてくださいませんしっ!」

それでも重力に押しつぶされながらも抗議の声をあげる姿はさすが、としかいいようがない。

周囲にいる大人たち…すなわち、この学校の関係者達はいまだに炎に包まれているので、

そんな彼女達…いうまでもなく、ヴリトラとディアの会話は耳に届いていない。

それでなくても彼らの体はいまだに炎につつまれてその痛みに苦しんでいたりする。

その炎は彼らが疑心、という負の心を捨てないかぎり消えることはない代物。

しかし、人、というものはどんな状況であれ一度抱いた疑念や思いこみはそうそう消せるものではない。

ゆえにこそ炎の勢いは弱るどころかますます勢いを増していたりする。

この炎は精神に作用する炎であるがゆえに物質的な影響はまったくない。

つまるところ…いくら炎につつまれていようが周囲の物に燃え移る心配は皆無。

ヴリトラのいいたいこともわからなくもない。

そもそも、彼女がヴリトラに直接会いに行ったのは…すでにもう一万年以上前のことなのだから……


しばし、関係者達が炎に包まれている、という異様な光景の中、

そんな少女達の会話がその場において繰り広げられてゆくのであった……







  ようやくだせた!神竜、ヴリトラ!

  性格的にはかなりの甘えんぼさん。

  だけど元となった感情が感情なのでかなり冷徹非情でもあります。

  だけど主人公ディアの前では甘えん坊な女の子v

  ちなみに、彼女、伝道師達にも頭があがらなかったりします(笑

  ちょくちょく役目放棄して脱走するので竜王達は頭をかかえている次第です

  世界を再構築するにあたり、意思がその力の一部を彼女にあたえているので、

  実力的にはディアの次、となっております。

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