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光と闇の楔  作者:
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光と闇の楔 ~しのびよる混乱~

そろそろ世界の混乱の序章に入ります・・・



「……はぁ!?」

報告をうけてまず言葉にでたのがそのひとこと。

というか、それでなくても王がいないこの時期に。

否、王が今いないからこそ、といったほうがいいのか。

「しかしこの時期に仕掛けてくるとは…王が玉座からいなくなったのを知っているのか?」

王が確かに世界を監視していなければ自由に動けるであろう。

そもそも、王はすべてを見通し、そして何かあれば修正していた。

もっとも、たしかに自分達はそれに頼りすぎていたような気もしなくはないが……

おそらくこれは自分達に課せられた試練なのだろう。

そう思わずにはいられない。

そもそも、王が失踪したのも絶対にこのたびの一件にかかわりがあるような気がする。

もうそれはひしひしと。

「……まさか、王…反旗グループに入り込んでません…よね?」

かの性格を考えるとやりかねない。

というか暇なので少しばかりはいってみてた、という一万年と少し前の出来事が頭をよぎる。

「と、とにかく。正確な情報を。そして魔界のほうにも連絡を。

  こちらの反組織ハスター・ホテップと、魔界の反組織テケリ・ショゴスとの接触状況を調べろ!」

『はっ!』

その指示をうけ数名がその場をいきおいよく飛び出してゆく。

「…はぁ。アテナからの報告では、リュカ殿が魔界に入り込んでいるらしいが…

  ……それも今回の一件にかかわりがあるのか?」

王の絶大な信頼を得ているのか、彼の任務は彼らにとて知らされることは一度もない。

娘からの報告は先日うけた。

あの娘が自分を育てたリュカのことを見間違えるはずもない。

そもそも、まだ幼かった娘の教育を彼にたのんだのはほかならぬ、彼…ゼウス自身。

「さて…愚痴をいっていても仕方がない。とにかく、まずはこの報告書の山をどうにかしなければ……」

補佐官殿も姿を現さない、ということはおそらく王とともにいるのであろう。

彼女は王がらみでなければ絶対に動かないしな。

そうどこかあきらめを含ませつつも、目の前に積まれている真っ白い書類のような束を見つめるしかない。

書類、といっても実際にそれらは紙というわけでなく、どちらかといえば霊力を練られて紙状にしたもの。

この紙は神々、また神々の許可を得たものでなければ扱うことができない。

いまだ、王が戻ってくる気配はない。

ゆえに側近の役目を兼ねている自分が動くしかないのが実状。

「…は~……」

ため息をつくと幸せが逃げる、とはいつ誰がいったことだったのか。

しかし、今の彼…ゼウスはそんなことを気にとめている余裕はない。

何しろ留守の間に世界の均衡が崩れることにでもなっていたら、

まちがいなく王のお仕置き…もとい、お灸がまっている。

王のお灸。

それは死したほうがはるかにまし、とおもえるほどの徹底した教育のし直し……




         光と闇の楔 ~しのびよる混乱~





「ふあ~……って今日もいい天気…って…なんだ、あれ?」

いつものように朝おきて村の中央にとある井戸にと水を汲みに出た。

ひんやりとした朝の空気はいつもと同じ。

だがしかし、その視線の先にいつもと何かが違う光景が目にはいりおもわず目をぱちくりさせる。

いつもならば朝霧がかかっており、目の前すら真っ白、といことはよくあることだが。

だがしかし、今目にはいっているものは……いつもの霧とは少し違う。

何というかいつもは真っ白なのに目にはいる霧のようなものは黒いような気がするのは青年の気のせいか。

しかし、その霧のような闇の塊は確実に自分達の住む村のほうへとむかってきている。

「…!?お~い!みんな、大変だ~!!」

ぞくり、と言い知れぬ予感がかけぬける。

ゆえにまだ朝も早い、というのに村にむけておもいっきり叫ぶ。

これはただ事ではない。

そう彼の本能が直感的に告げている。

「おい、何を…って、なんだぁ!?」

「うわっ!?」

朝も早い、ということもありその声をききつけてわらわらと近づいてくる数名の村人たち。

村の朝はとても早い。

まず家畜の世話にそれから薪割り。

ゆえに寝過ごしている村人の姿は滅多にみることはない。

ここはすこし辺境の地でもあることから滅多と旅人もあまり近寄らない。

「な…何だ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

…その日、正体不明の黒き霧が一つの村を飲み込み、

そこに暮らすすべての存在を喰らいつくしてゆく……




「あれ?ディア、その人…誰?」

ようやく息も絶え絶えにどうにか戻ってきてみれば、見慣れぬ人が二人、ディアの傍にいたりする。

ゆえに戸惑いつつもといかけるケレス。

そもそもこんな場所にそうそう人がやってくる、とはおもえない。

「あれ?ケレスはサラにはあってるんでしょう?」

そんなケレスの問いかけに逆に首をかしげてといかけているディア。

「サ…は?」

ディアはそういうが、ケレスは目の前の女性にあったことすらない。

何よりもこんな美人、一度あったら忘れるはずもない。

「この子…でなかった。彼女、サラマンダー、よ?ああ、姿が違うからわからなかったのかしら?

  それもしても気配のそれは変えてないんだけど…

  ケレス。あなた気配の読み取り訓練やったほうがいいわよ?」

いくら姿がかわろうとも、気配を変えていないのだから普通はわかる。

しかしどうやら外見にだまされ、その本質たる気配にケレスは気付かなかったらしい。

肩のあたりまである真紅の髪に真紅の瞳。

服装はそのあたりの旅人が着るような簡単なものでその腰には短剣らしきものが差してある。

簡易的な皮製の鎧に見えるそれらは火をすこしいじり皮のように見せかけているにすぎない。

旅人、といえども身を守る術は大切。

ゆえにこの世界においては大概、簡易的な皮の鎧くらいは常に身につけているのが常識。

もっとも、それらを身につけない旅人もいるにはいるが。

「サラマ…って、火の精霊王様!?って…ディア、もしかして精霊王様と知り合いなわけ?」

「まあ、知り合い、といえば知り合いだわね」

そもそも、彼女達を【創った】のもディアなのだから知り合い、という表現はうそではない。

もっともディアとしてはそこまで説明する気はさらさらないが。

「何でそんな大切なことおしえてくれなかったの!?」

「聞かれなかったし」

聞くも何も、普通まさか一般人が精霊王達と面識があるなど到底誰も思わない。

「それに、乙女には秘密がつきものよ?」

「「…乙女?」」

にこやかにさらっというディアの台詞に思わず異口同音につぶやくサラマンダーと傍にいる別の男性。

「あら?どういう意味かしら?フォル?それにサラ?」

にっこり。

そんな二人に対してにこやかに笑みを浮かべつつも問いかけるディアの目はまったく笑っていない。

「すいません、すいません。他意はまったくありませんっ!」

そんなディアにあわてて何やら懇願しているサラマンダーの姿をしばし唖然としてみつつも、

「…?ディア。あなたまさか、あのムチ、火の精霊王様につかったんじゃぁ……」

あの威力である。

火を核とする精霊王にすら威力があるような気がする。

切実に。

今の取り乱し用からしてその可能性が否定しきれない。

そんなケレスの問いかけに、

「ああ、あれ?よくつかってるわよ?」

あまりに聞き分けのないときなどは簡易的に凍らせたりして反省を促したりもしているので嘘ではない。

「ムチ?…ああ、あんた。このカタのアレ、をみたのか……

  この地となると、おそらく氷系統、か?」

伊達に長居付き合いをしているわけではない。

ムチ、という言葉だけですぐさまそれが何を意味しているのかさっし、

どこか同情した視線をケレスにむける。

「え?あ、はい。えっと・・・あなたは?」

「ああ、挨拶がおくれました。私はフォルミといいます。

  ちょうどここに用事がありやってきたのですけど。

  あなたがあの噂のサラと意気投合したという人間の娘さん、ですか」

当時、彼女がアリスと共に旅をするにあたり、ちょっとした話題にのぼっていた。

それ以後、二人して様々な実験を兼ねていろんな存在にちょっかいをかけだしたのだから彼らとしてもたまったものではない。

いくら、死ぬことがない、とはいえ様々な術、そして罠、あげくは毒などの実験体は御免こうむりたい。

そんな敬意もあり、アリス=アストレア、という人間に対してはちょっとした警戒対象になっていたりする。

ゆえにその身辺調査と監視もまた含まれている。

少しでも二人からうける被害を少なくするためのあくまでの処置。

サラマンダーだから、おそらく略してサラ、と呼んでいるのはわかる。

わかるがまがりなりにも火の精霊王。

常識的にあてはめればかなり崇高なる存在。

そんな人物を呼び捨てにするこの男性は一体?

そう怪訝に思いつつ、

「あ、ケレス=アストレア、といいます。あの?火の精霊王様やディアとお知り合いなんですか?」

「ディア?…ああ、このかたのことですか。まあ、そうですね」

というか、あまり今回はひねった名前を名乗られていないのだな。

そんなことをふと思う。

まあ、名乗っている名前の一つにティアマトという名があることからも名前をいわれても違和感がない。

「?」

そんなフォルミ、と名乗った青年の反応に思わず首をかしげるケレス。

今の反応はディアの名前を知らなかったようにもとれかねない。

しかし知り合い、といっていることからそのようなことはまずありえない。

まあ、私の気のせいかな。

そう自分の中で自己完結し、

「あの。それで、精霊王様やフォルミさんはどうしてここに?」

それが一番きにかかる。

何よりもどうして精霊王ともあろう存在が完全に人の姿をしてこの場にいるのかすら理解不能。

「え。ええ、私はサラと少しばかり旅をすることになりまして」

ケレスがこの場にくるまでに決まったこと。

地上において不穏な気配が漂ってきていることもあり、

共に旅をしつつそれらを見極め、そして解決すること。

ディアが認識しているだけでも最近そういった事例が多々とある。

ゆえにちょうどいいので二人にそう命令…もといお願いしたのだが。

しかしケレスはそんな事情を知るよしもない。

「…火の精霊王様、と旅?いったい?」

普通の人間が精霊王、とわかっていて旅をするなど聞いたことがない。

もっとも、その異例ともいえる事例がケレスの母、アリスだったのだが。

そんなケレスの至極当然ともいえる問いかけにたいし、

「すこしばかり地上界があわただしくなってますからね。

  その点、火の精霊王であるサラならば浄化の炎もつかえますし」

彼の能力はあくまでも対象者を把握、そして分析すること。

ゆえに実戦的にはあまり通用しない。

まあその知識が役にたつといえば役に立つのだが。

「さってと。とりあえずケレスの用事もおわったことだし。

  そろそろ地上にもどらない?二人も早く旅に出発して調べたいだろうし」

そんな二人の会話に割ってはいり、にこやかにいいきるディア。

言外に早く調べに行くように、といっているのだがその真意はサラマンダーとフォルミにしかわからない。

「たしか地上までの直通の【ゲート】があったはずよね。ここ」

「あ、はい。ございます。…というか自力でも移動可能なはずでは……」

ディアの問いかけにおもわず当たり前なことを思い出し、

少しばかり首をかしげて問いかける火の精霊王ことサラ。

「私は別にかまわないけど。ケレスもいるからね」

というかディアはその気になるだけでどこにでも移動が可能。

その姿を特定の場所に【模せば】それだけで移動できる。

しかし、人という器をもつケレスはそうはいかない。

「ま、とりあえず、ケレス。外にでましょ?もう契約の儀もおわったんでしょ?」

「え?あ、うん」

何だかものすごくはぐらかされたような気がひしひしとする。

しかしいつまでもここにいても仕方ないのもじじつ。

それゆえにどこか納得しないまでもディアに連れられ、

ゲート、と呼ばれている転移の陣へと移動してゆく……



かつてこの大地には様々な生命が誕生し、そして滅んでいった。

そんな中で人、という種族は自然とともにあり、そして自ら様々な知恵と知識を身につけていった。

中でも彼らの想像力はたくましく、それぞれの現象に様々な理由をつけた。

そして世界のすべては神々の加護のもとにある、そう考え自然を敬った。

いつのころからかその謙虚な心をなくしてしまい、

自らの住む大地を壊滅させるほどの力を開発してしまったのだが。

「やはり、あらたな理をつくるときに、それぞれの神話につたわる性格を元にしたのが間違い…か?」

「いや、それはないだろう。基本的にそうでもそれぞれ各意思をもってるわけだし」

今、彼らがいるのはとある一室。

一室、といってもその足元には青く輝く球体のようなものが浮かんでおり、

彼らはといえば真っ暗な中に浮かぶ長い机に並べられたそれぞれの椅子に腰かけている状態。

かつての人類の痕跡を残すという理由もかねて、あえて新しい理にそれらの概念を組み込んだ。

正確にいうならばその仕組みを創るときに彼らにその役目がふり当てられた。

古より伝わる伝承や神話をより忠実に、それらを元にして新たな世界の理の基礎を叩き出した。

そしてそれらを元にして【意思】があらたな【理】のもとにこの【惑星】を再構築、したのだが。

古代文明は基本的に宇宙意思、マァトを信仰していた。

それはその精神がより宇宙と繋がりがあったといっても過言でない。

すなわち、よりその精神が自然に近い状態ですごせていた証拠でもある。

そしてその概念は新たな人類に受け継がれ…

それ以後、各世界の神話にところどころでてくる状態になっていた。

しかし、今の彼らはその意思が実際に存在するものだ、と理解している。

だからこそこうして状況を伝えられておもわずそんなことをぼやいているのだから。

「しかし…代替わり…だからですか。【意思】がいきなり改革しようとしだしたのは……」

「いきなり姿を消したって聞かされたときにはまた何かある、とは覚悟していましたが……」

しかし今度の一件はそんな生易しいものではない、と物語っている。

そもそも、彼らの知識で知っている現象。

当時地上で反映していた古代文明、そして恐竜、とかれらがいっていた存在達を滅ぼした原因。

それが代替わりにおける器誕生、というものであった、そう彼らは聞かされている。

そのときのことを実際に経験したものはこの場には一握りもいないが。

「地球の意思の意見はわかりましたけど。他の星達の意見はどうなってるんでしょう?

  一番影響があるのはおそらく太陽だ、とおもうのですけど」

最近、黒点の発達が異様に多い、とは聞かされてはいたが。

太陽の精神状態を考えればそれも致し方がないことだ、と話しをきいて理解したのも事実。

かつてはその身を様々な物質の膜でおおっていたその役目を、膜はそのままに、

天界、という別の鎧を纏うことにしているこの惑星。

ゆえにそういった外の様子を調べることもまた彼らの役目の一つ。

今、彼らがいるのは門の狭間。

つまるところ宇宙空間と地球の狭間に位置する空間に滞在しているこの現状。

フォボス火山より寮に戻ったディアはその空間にすべての【伝道師】達を呼寄せた。

彼らの意見を聞くもくてきと、それと自分の行動に干渉しないように、と釘をさすために。

「しかし、天界と魔界の反旗メンバーが手をくむとは……

  これもまた予測のうちの一つというか確定された出来事、なのですか?意思よ?」

「あなたたち、あいかわらず口調が固いわね~。まあ別にいいけど。

  まあね。とりあえずかわいらしい反抗は反抗期のままきちんとお灸は必要でしょ?」

一人の伝道師の台詞ににっこりとほほ笑みながらもこたえるディアの様子に、

その場にいる全員が有無をいわさず瞬時に凍りつく。

彼女がお灸をすえる、というその言葉をはっしたのち。

そのとぱっちりがよく自分達にむかってくることがある、と彼らは身にしみて理解している。

それゆえの反応。

「…なあ、フォルミ?ボース?振動状態解析してそれらを破壊することは可能か?」

「それやっても精神体には意味がないとおもいますが」

「そもそも、器となっている肉体はそれで壊滅させることは可能ですけど。

  いまだに精神生命体の振動数は確定していませんよ?」

もっとも、確定していなくともそれらを今さら研究するつもりなど毛頭ないが。

そんなことをすれば下手をすれば宇宙空間そのものの定義を覆すことになりかねない。

星達にも意思があり、そしてまた星を擁する銀河にも意思がある、とわかった今ではなおさらのこと。

下手をすれば自身の研究が簡単に銀河空間そのものすら壊滅させてしまうかもしれない。

かつては研究途中で地上が壊滅的なダメージをうけ自らも死してしまったが。

しかしその研究をしていたのは紛れもない事実。

ゆえに、こうして彼らもまた伝道師、としての役割を担わされ罪を償いつづけさせられている。

まあ、暗黒物質の振動状態把握から、それを壊す概念にまでたどり着く前にあの出来事がおこったのだが。

「だけどそれだけならまだいいわ。問題は、今回のこれをさっさと片付けておかないと。

  時代の器がここにくる可能性がある、ということなのよ」

ぴきっ。

そんなディアの…否、【意思】の台詞にその場に集められた伝道師達は硬直してしまう。

「あなた達も知ってのとおり。時代となるべき意思は宇宙の歪みにも反応するからね。

   まだここは惑星、という一つの世界の中の歪みでしかないけど。

   だけどそれでも可能性としてはないことはないしね」

もうそうなってしまい、下手をすればこの太陽系ごときれいさっぱり消失してしまう可能性すらある。

たかが一介にしかすぎない星自身、何ができる、というわけではないが。

いくらそれぞれの星の意思達ですら、この自分達が位置している【大銀河】の意思には逆らえない。

自分達をはぐくんだ太陽、というそものもが銀河という名の海の一つの砂にしかすぎないのだから。

つまり、小さな砂一つがどうあがいてもあらがえようのないこと、というのは存在する。

それでも。

「ま、この星の中においては外からの来訪者以外ではどうにかなるけど。

  あなた達をここに集めたのは他でもないわ。

  今回の一件に触発されていろいろと行動を起こす存在がいるから。

  それらを徹底して壊滅させときなさい。方法は各自に任せるから。

  まあ、あまりにひどい考えであったりした場合はあなた達の仲間にするという可能性もあるけどね」

すなわち、死ぬに死ねない償いをさせられる、ということ。

「神獣界においてもたしかに不振な動きというか考えをしているものがいるようですし……」

「霊獣界になんて、自由に地界におりて騒ぎたいといってる馬鹿達もいますけど……」

いずこの界にも問題児、というものは少なからず存在している。

それらが自分の心の中で思っているか、もしくは行動に移しているか、は別として。

別の存在が自分達のおもっているようなことをした場合、自分達も我先に、

と思う輩がいるのもまた事実。

ゆえにこうしてディアはこの場に全員を【呼び寄せた】。

しぱし【門】と界の狭間にてディアと伝道師達の話しあいが繰り広げられてゆくのであった……





「闇に取り込み、喰らう能力…か。やっかい…だな」

村一つが壊滅した、と話しをきいた。

ゆえにその真偽を確かめるためにこうして直接出向いてきたわけだが。

この場にのこる残留思念よりその力の波動は読み取れる。

闇の泉にのまれたものはその容姿をかえ、その闇の住人となる。

【深界】に属するはずの存在までもがどうやら表にでてきてしまっているらしい。

一体ここ最近、何がおこっているのか。

地上界だけではない。

天界においても、魔界においても、様々な界において異常事態が起こっている模様。

常に連絡を綿密にしてはいるが理由がわからなければどうしようもない。

おそらくは、王が姿を消したことと連動しているということはわかる。

魔界においても王が姿を消した、とのこと。

光と闇。

魔と聖。

それぞれの力のバランスが保たれていてこそ世界は安定していた。

そのトップが姿を消したこととこのたびの一件がどうしても無関係とはおもえない。

しかし、姿を消した、とはいえ滅んだとかでないのは嫌でもわかる。

姿はみえなくとも感じる力は淀みない。

魔界においても然り。

王が姿をけしてもその魔界の空気というか気は淀みなくいきわたっている。

「しかし…深遠のものたちまでもが表にでてきているとなると…やっかい、だな……」

彼ら深遠のものたちには天界のものの力は通用しない。

ましてや魔界のものの力も通用しない。

あえて通用するとすれば精霊達の力、くらいであろう。

しかしその力は半端なく下手をすれば力のない精霊くらい自分達の眷属に変換させてしまうほどの力をもつ。

おそらくは精霊王達の助力を嫌でも仰ぐことになるのであろう。

「しかし…テケリ・ショゴスだけでなく、こんどは深遠のものたち…

  どんどん仕事がたまってくな~…は~……」

おそらくきちんと報告はしなければならないであろう。

深界との道のほころびは一応修正しておいた。

おいたが……

「主様…僕一人じゃ、絶対にこれって荷が重いよ……」

いくら彼の精神年齢がとてつもなく他の神々よりも多い、とはいえこればかりは慣れない。

そもそも、今の肉体における年齢はたかがこの惑星時間に換算して二万八千ほど。

「そもそもさ~。

  罪をある程度おかしたものたちを深遠のものたちに設定した主様ってどうなんだろ?だよね~」

完全なる引き金をひいた存在達は伝道師、という存在へと変化させられた。

それ以外にかかわった者たちはことごとく、

深遠の存在、もしくは悪魔などといった存在に変化させられている。

つまり、彼らもまた許されることなく罪をつぐなっている状態なのだが。

しかし伝道師達とはことなり、彼らはかつての記憶をもっていない。

この機会に一気にとりあえず徹底的にあぶり出す。

それが意思の意向。

そしてそのように意思からも彼らに気づかれることなく干渉し行動をおこすように仕向けている。

「まあ、最近、どの界の存在達も多少だらけてきていたからあるいみ刺激になっていいのかな?

  さってと。とりあえず深界にいってみますか。…話しきいてみないとどうにもなんないしね~。

  あ~。面倒。というかリーダーもリーダーだよね。

  僕がどの界にも自在にいけるってのを知ってるからってさ~」

趣味で界渡りをしている、と以前教えたことがあるせいか

ことあるごとに自分に話しをもってくるのはやめてほしい。

切実に。

まあそれが彼…リュカが与えられている役目に直結する内容だったりするので、

あえてそれらを受けているリュカなのだが。


ディアが伝道師達と相談している同時刻。

地上のとある小さな村。

今朝がた、突如として謎の滅びを迎えた村の中において一人ぽつん、とたたずむ一つの人影。

そんな彼…リュカのつぶやきは周囲の風にとかき消されてゆくのであった……



三者三様。

人それぞれ。

各界における存在達の思惑も各自様々。

それぞれの思惑を抱きつつも、しずかにより静かに混乱が忍び寄っている世界の現状。


しかし、普通に暮らす人々は、今、何が起ころうとしているのか、などとまったく知るよしもない――



ちなみに、この話は一話につき18KB~20KB以内で区切るようにしてあります

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