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光と闇の楔  作者:
23/74

光と闇の楔 ~火の神殿と隠れ里~

客観的にあくまでなるべく固めにしてってたらなんかメリハリないなぁ?

まあとりあえず固定的にこのお話しはやってみよう、という感じの挑戦だし……

まあ、いろいろと試行錯誤のうちの一つ、ということで……

ピキッ…バシバシイッっ!

有無を言わさない何ともいえない音が周囲に響き渡る。

「…いやあの、ディア?それ…何?」

先ほどディアがどこからか手にした謎のムチらしきもの。

氷のムチ、とはいっていたがどうしてそれに触れただけで相手が瞬く間に凍りつくのか理解不能。

「え?だから氷のムチだってば。触れた存在すべてを氷の彫像にするだけの代物よ」

「じ…十分すぎるでしょうがっ!というか何それ!?何その最凶、最悪の武器はっ!?」

触れただけで、というのにおもわず叫ぶケレスの気持ちはおそらくまちがってなどいない。

急激に氷の彫像と化したさきほどまで溶岩の魔獣であったそれはその急激な変化に耐えられず、

しばらくすると

パキイッン…

透き通るような音をたてて木端微塵に砕けてゆく。

ちなみにこの現象は物質的な器をもっている存在であればほとんどのものに共通しておこる。

「ほらほら、さわいでないで、どんどんこいつらでてくるわよ?」

たしかに周囲の溶岩らしき塊からうねうねと溶岩スライムもどきは誕生、もしくは発生しているようだが。

だが、しかし。

「なんでそんな物騒なものもってるのよぉぉ~~!!!」

ケレスの叫びに答えてくれるものは…この場には…いない……


  


            光と闇の楔 ~火の神殿と隠れ里~








くるり、と回転するたびに周囲に飛び散る氷の粒。

それらは周囲の熱気とあいまってきらきらと宝石のごとくに輝いている。

「昔この現象をダイヤモンドダストっていってた存在達がいたわね~」

その光景をみてふとつぶやくディア。

まあその現象と今のそれとではかなり異なるが。

「…ねえ、ディアってもしかして、もしかしなくても、強い?」

そういえば、以前の屋敷探索のときにもあっさりと何か解決していたような気がしなくもない。

ケレス自身はよく覚えていないのだが。

「私?私は強くないわよ?だって大姉様とかにはかてないもの」

というかかの存在がいなければ自分もこうしていられはしない。

「姉?ディアって姉妹がいるの?」

「いるわよ?大姉様を初めとして私を含めて全部で十ほど」

「…大家族、なのね…」

「そうかな?私たちはけっこう少ないほうだとおもうけど」

おおい場所ではもっとたしか数があったはず。

たまたま自分達のところは生命体が誕生するほどに意思が固定されたのがその数であっただけ。

ケレスとディアの認識は根柢から違う。

しかしケレスは当然そんなことを知るよしもない。

また、ディアからしてみても自分の概念とケレス達のもつ人の概念が違う、とはわかってはいるが、

ディアの家族のような存在、というのがそういうことになるのだからそうとしかいいようがない。

「それより、そのムチ、いったいどういう仕組みなわけ?」

いきなり出現させたことといい、おそらく魔術か何かの類の武器なのだろうが、

しかしそういった物をつくれる存在はたしかごくごく限られていたはずである。

ゆえに首をかしげてといかける。

そんなケレスに対し、

「ああ、簡単なことよ。そのあたりにまだ自我ももってない卵達が多々といるでしょ?

  それらを一つにまとめて昇華させ卵の純度をあげてそれに武器、という器を与えてるだけよ」

さらに詳しくいうならば、今でこそ卵、と呼ばれているもの。

かつては原子や分子、と呼ばれていたそれらの密度をあげて形を作り上げているに過ぎない。

つまり、小さな水の分子一つでは普通の目にとまらないが集まれば「水」という形になるように。

氷の元ともいえる卵達を創り上げて一つに練り上げているに過ぎない。

混じりけのない分、そのぶんその効果も威力も格段に異なってくる。

もっとも、この方法はディアだからこそできる技、ともいえるだろうが。

普通はそのようなことをする場合、制約がかかりかならず精霊達の許可をとる必要が発生する。

しかしディアにはそれがない。

ゆえに自在に様々なものをこうして出現させることができるのだが。

「…それってかなり難しくない?」

「そう?特定の卵達を集めてひとまとめにするだけだから簡単よ?」

「いや、それってでもやるにはたしか精霊王達の許可必要なんじゃぁ……」

たしかそのように聞いたことがある。

ゆえにそういった武具を創る存在はごくごく少数である、ということも。

「ん~。まあ、今は制約をつけてるからね~」

何しろ以前、そんな制約をつけなかったらまあ好き勝手しほうだい。

あげくはついに自分達の住まうこの地まで破壊しそうになってしまっていた人類。

だから今いる存在達にはそのようなことを起こさないために制約を設けている。

「…今、は?」

何かいますこしかわった言い回しをしなかったであろうか。

ディアの言葉にすこし引っかかりをおぼえて首をかしげるケレス。

「あ、ケレス。そっちは違うわよ?」

そんな会話をしつつも、洞窟内をひたすら地下に、地下にと進んでいるディアとケレス。

さすがに火山帯、といったところなのであろうか。

一本道でなく道は複雑怪奇に入り乱れている。

正しい道、とおもって進めば元の場所にもどっている、などということはざら。

「え?でも他の道は溶岩で通れないわよ?」

今彼女達の目の前にある道は六本。

しかしそのうちの一本以外はすべて噴き出している溶岩に覆われどう考えても通れそうにない。

「風の通り道を感じれば正しき道はわかるんだけどね。とりあえず道はこうするのよ。

  ケレス、浮遊フロートできないんでしょ?」

浮遊フロートができれば一番いいのだが。

どうやらその術はいまだにケレスは所得していないらしい。

ちなみに、浮遊フロートとは体を意のままに浮かせる術の一つ。

風の精霊の力をつかった術の一つで使いようによってはかなり便利。

中にはその術を用いた移動手段もあったりする。

いまだに完全に空を自由自在にその術で飛びまわれる存在が現れないのは、

全身に風を纏い間接的に空気抵抗を無くすための簡単な仕組みであるがゆえに、

移動するときにかかる様々な抵抗を無力化することまではできない。

つまり、早く飛ぼうとおもえばとべるが、それに応じて体にかかる負荷は取り除けない。

ゆえに物を簡単にうかしたり、重さを減らしたり、という具合に利用されている術の一つ。

いいつつも、手にもっている鞭をかるく地面にピシリ、と打ち付ける。

それと同時。

ピシっ…ピシピシ・・・ッ

音をたてて瞬く間に湧き出ているマグマと、さらには周囲の壁までが凍りつく。

「……さっき、ディアが慣れてないと危ないってこういうことか……」

さきほど自分ももってみたい、とケレスがいったところ、扱いになれていないと危ない。

そうきかされてはいた。

しかしそれを今まさに目の当たりにした、という感じが否めない。

そもそも、普通に地下より湧き出ているマグマまでどうして瞬時に凍らせることができるのであろうか。

どうかんがえても理解不能。

「これも一瞬しかもたないし。さ、氷がとけないうちに、とっとと道を進みましょ」

この氷も地下より湧き出してくるマグマの熱にかかってはほんの一瞬のこと。

まあ周囲の壁の氷は少々のことでは解けはしないが。

「まあね。これに下手に触れたりあたったりしたら人間の体なんてあっというまに凍りついて。

 それでもって木端微塵、よ?」

そもそも、人類の肉体のほとんどは水で構成されている。

それらの水分が瞬時に凍りついたらどうなるのか。

水で構成されている云々、というのは今いきている人類達にいっても理解不能ではあろうが。

しかし、生きているかぎり、それが精神生命体などといった生命体でない以上、命の泉は存在している。

つまり今、ディアが手にしている氷のムチはまさにあるいみ最強の武器の一つ、といって過言でない。

「…そんな物騒なもの平気でもっていないでよ……」

「あら?こういう場所を通るにのはかなり便利よ?足場ができるし」

ディアの言い分はもっとも。

もっともだがこう目の当たりにするほうの身にもなってほしい。

それゆえにケレスは深くため息をつきつつ、

「…なんか、ディアに何いっても無駄のようなきがしてきた。それよりまだ奥は見えないわね……」

すでにあれからかなりの時間歩いている。

それまでにでてきた魔獣たちはことごとく、ディアの手にしたムチにより木端微塵に氷とかて砕かれている。

何だか嬉々として攻撃しているようにみえるのはおそらく気のせい…であってほしい。

そうケレスはおもっているのだが。

「マグマの熱量が少なくなってきてるから。そろそろ中間の間にさしかかるんじゃないかしら?」

「中間の…は?」

さらっと何やら聞きなれない言葉がきこえたような気がしおもわず聞き返す。

「あら?もしかして知られてないのかしら?精霊王達がいる神殿をかねてる場所にはね。

  それぞれ中間地点のような場所があって、訪れるものたちが休めるようになってるのよ。

  たしかここは水晶の間じゃなかったかしら?」

よもやこんな火山の中に集落がある、などと誰も夢には思わないであろう。

ゆえにこそ目をぱちくりさせているケレスに、くすくす笑いながら説明しているディア。

「…ディア、あなた、どこからそんなこと詳しくきいてるわけ?」

「まあ、いろいろとあるからね。私にも」

火属性を無効化する品をもち、この地に住まうものたち。

しかしその存在はほぼ外の存在達には知られていない。

彼らは基本、ひっそりと。

自分達に与えられた役目をこなしつつ、そしてまたそれぞれの精霊王達にと仕えている。

「あ、そろそろみえてきたわよ。ほら。あの水晶の壁がみえる?」

そんな会話をしつつしばらく進むとやがて視線の先に不釣り合いなほどに一部分。

なぜかごつごつした壁とは異なり水晶のみでできた壁。

「これ?これがどうかしたの?」

どうみてもただの水晶にしかみえない。

「ほら、こっちこっち」

するっとそんな水晶の一部にディアが入り込み…

「…って、えええええ!?」

水晶の壁の中に吸い込まれるように入ってゆくディアをみておもわず驚愕の叫びをあげるケレス。

「何おどろいてるのよ?ああ、見た目にだまされてるのね。

  これは光の屈折率を利用して目くらましになってるのよ。ここにきちんと道はあるわよ?」

ぱっとみため、よくよく注意してみなければそこに穴があいていることにはまず気づかない。

複雑に水晶がその場に形成されており、ゆえにぱっと見ただけではここは水晶の結晶が現れている場所。

そうとしかとらえれない。

この穴につながる道をみつけなくても延々と進んでいけばいつかは洞窟の最深部にと到着する。

しかしこの穴の先にある集落を抜けることによりその道のりは大幅に縮小される。

この道を知っているのもはここによく通っている存在達に限られるのだが。

当然、ケレスはそんなことを知るよしもない。

「ほわ~」

まず、水晶の隙間にできた道らしきものにはいってケレスが発した言葉は何とも間抜けなもの。

「ケレス?」

「いや、だって、だってこれすごくない!?」

周囲はすべて水晶の結晶体。

それぞれが壁に生えている光苔の光に反射してきらきらと輝き、

すでに地下深いというのに周囲を明るく照らし出している。

「そう?まだ等軸晶系 の鉱物がある場所のほうがいろいろと変化があって面白いとおもうけど」

そもそもここにある物質はかなり強度的には弱い。

紫水晶や紅水晶、青水晶といった結晶体とよばれし結晶がたしかにここには多々と存在している。

ゆえに様々な色にきらめきあい、ぱっと見た目は幻想的な空間、ともみえなくはない。

「まあ、こういった鉱石類は比較的、微量成分の影響を受けやすいから、こういう場にはよくあるけど」

特にここは火山帯。

水晶以外の鉱石、そしてまた特殊系統にはいる岩石なども形成されている。

「とう、じく?何それ?」

「あ~。そういう言い方は今の人達はたしかしないんだったわね~。ま、そういうものだ、というだけのことよ」

「?よくわからないけど」

かつてこの地が科学というものが発達し自然界における物質の根源が解明されていたときに使われていた言葉。

ゆえに今の時代の人々がその意味を知るはずもない。

「あ、そろそろ出口がちかいみたいよ?」

何か話しをはぐらかされたような気がしなくもない。

ディアの言葉をうけて前のほうをみてみればたしかに明らかに道の先が明るくなっている。

やがて水晶の道、ともいっても過言でない様々な結晶体がひしめく空間を抜けた先に、

ぽっかりと広がるちょっとした空間。

ところどころに置物のごとくに削られた様々な宝石類、としかおもえないようなもの。

地面や壁のところどころからつきでている水晶の結晶体。

「おや?おひさしぶりですね。こんなところにお客人とは。ようこそクリス・ヴィレッジへ」

開けた空間に抜けると同時、そんな二人にと声が投げかけられる。

「え?…え?…もしかして…エルフ?」

どうみてもエルフにしか見えないような気がしなくもない。

伝承にある妖精の姿そのもの、といってもいいのかもしれないが。

この場には人の形をした耳のとがった顔だちの整ったものたちと、

なぜか羽の生えているものたちの姿がみてとれる。

「ここに人がくるなど、久しぶりですね。…え~と、そちらのか…」

ケレスをみてしみじみとつぶやき、

次にディアにと視線をむけおもわず言葉につまる話しかけてきたエルフの一人。

紅き髪に緑の瞳。

そして肌の色は少しくすんだ紅き色。

ディアのもつ気配は独特すぎて間違えようがない。

ゆえに思わず言葉につまってしまうものの、

ちいさくディアが口元に指をあてたのをみてとり、はっと我にともどり、

「と、とりあえずようこそ。我々は歓迎いたしますよ。ここは滅多と旅人が訪れることのない地。

  おそらくこの地にこられた、ということは結晶、もしくは精霊王様に御用、ですか?」

ここにくる旅人の目的はどちらか一方に限られている。

ここでとれる様々な結晶体は純度がよく、それゆえに宝石類としてはかなりの高額で取引される。

また、特に水晶などは汚れをはらう効果もあり、淀みなどを浄化する目的でかなり重宝される。

ゆえによくこの地にも命知らずの存在達が一攫千金を目指してやってきていたりするのだが。

この地に訪れるものは、基本彼らが外にでたときにたまた見つけたけが人などがほとんど。

五体満足でこの地を訪れるものはそうそういない。

「え…ええと……」

話しにはきいたことがあるが、エルフにあうのは初めて。

ゆえに多少緊張気味のケレス。

「この子はサ…もとい、火の精霊王と契約の儀式のためにここにきてるのよ。

  私はちょっとなんでかたのまれたので鉱物の回収…でなかった採取」

「儀式?…ああ、どこかで感じたことのある雰囲気、とおもいましたら。

  あのアストレア家の家系ですか。母君はもしかしてアリス殿ですか?」

アリス。

アリス=アストレア。

それはたしかにケレスの母の名前である。

「え、そうですけど……」

「なるほど。やはり、ですか。ならここまでこられたのも納得ですね。

  いやはや、アリス殿にしろあなたにしろ人にしておくにはおしいですね」

どちらも傍にいる存在が存在。

そういう意味合いをかねてそういっているのだが。

「あの?母を知っているのですか?」

ケレスとしては戸惑うしかない。

というかこの口調だとよく知っているような気もしなくもない。

「おや?お聞きになっていないのですか?以前、あなたの母君のアリス殿は、

  我らが主とパーティーを組まれて冒険されていたのですが……」

まだアリスが一人前でないから、といって旅にでていたときに意気投合して

とある存在と行動を共にしていたことがあった。

ゆえに彼らはケレスの母をよく知っているのだが。

「あ~……なるほど。たしかに彼女なら話しがあう、でしょうね……」

さきほどちらっと当人と出会ったが、それで納得がいった。

以前に話しをきいた人間がケレスの母親、すなわちあの人間。

「…主と話しがあう人間がいるなどおもいませんじたから。我々としても貴重、なのですよ。あはは」

「……お疲れさま……」

彼らが何をいいたいのかさとり、おもわずねぎらいの言葉をかけているディア。

「いえ、あなたさまからそのようなことをおっしゃられるとは、何ともったいない。

  おや?そちらのお嬢さんは何か茫然としてますが…?」

今の会話の意味が今いちよくわからない。

しかし本能が詳しいことを聞くな、そう告げている。

しかしケレスとしても聞かずにはいられない。

「あ…あの?あなたたちの主…って…」

「ああ、もちろん。この神殿の主。火の精霊王、サラマンダー様のことですよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

さらっといわれてケレスとすればもはや言葉もでない。

いや、ちょっとまって。

かなりまって。

ということは、何!?

あのお母様って、火の精霊王と知り合い!?

いや、知り合いなのは一族すべてだけど…って、えええ!?

ケレスの心情はもはやパニックといって過言でない。

「あ~。ならケレスにはちょっとお守りわたしたほうがいいかもしれないわね。

  あのこ…いえ、見た限り絶対に何か罠とか仕掛けてそうだし。面白がって。二人して」

それはもう確信がもてる。

だからあの場でおそらくケレスをたきつけるように有無を言わさず洞窟へいくように仕向けたのであろう。

他の存在達が人間と結託していたずらをしかけてくるからどうにかしてください。

と以前泣きついてきたことがある。

そのことをふと思い出しおもわず苦笑してしまうディア。

何しろ意気投合した彼女達は互いに意見をだしあって、人間を問わず精霊達にまでいたり、

様々な実験…もとい、彼らいわくいたずらをしかけていたりする実績がある。

もっとも、そんな事実をケレスが知るよしもないのだが。

「まあ、主の性格はもはやどうにもなりませんからねぇ~…育て方としてはどうなんでしょうか?」

目の前のディアがどういった存在なのかはその気配で漠然と理解できる。

というかこの姿でこの地に幾度かやってきたことがあるので彼らとしても見知っている。

それがどうして人間の子と共にいるのかどうかはわからないが。

「あ~。なんかかまってほしかったのかいたずらはじめたのがきっかけだったみたいなのよね~」

いまだにケレスは茫然、としているのでディア達のとんでもない会話は耳に入っていない。

もしもはいっていればまちがいなく突っ込みをし、その言葉の真偽を問いただしていたであろう。

「まあ、それはそれとして。とりあえずしばらくこの子だけでも休ませてもらえるかしら?」

「それはもう、かまいませんけど。あなた様はどうなさるのですか?」

「まあ、今回用事があるのはこのケレスだし。私はただの付き添いよ」

「了解しました。では部屋を用意いたしますね」

「さて…と。ケレス。ケレスってば。何をいつまで現実逃避してるわけ?」

はっ!?

ゆさゆさとディアにゆすられてようやくはっと我にともどるケレス。

「え?あ、ディア?ええと…私……」

どうやらあまりに信じたくないことをきいたがゆえに一時的に記憶がとんでしまったらしい。

「とりあえず、ここでしばらく休んでから。ここから王の間にいきなさいな。

  私はのんびりとここでまってるから」

「え?ディアは一緒にこないの?」

てっきり一緒にきてくれる、とおもったのに。

「私はただの付き添い。大丈夫よ。ここからだと王の間までは一本道だから」

ここに入らなければ入り組んだ道を延々と下る必要があるが。

ここから火の精霊王がいる部屋までは一本の道にて繋がっている。

ちなみに罠とか仕掛けたりするのが好きな精霊王だがこの道だけはしないように、

と散々口をすっぱくしてエルフ達からもいわれていることから断念している。

あのままあの水晶の隠された道に入らなければ今度は溶岩に伴い、

様々な罠やいたずら、といった仕掛けを突破しながら地下に進んでゆくしか道はない。

あの水晶の隠された道を探し出すこと、

それがすなわち無事に火の精霊王の元にたどり着く近道、ともいえる。

まあ、それでもまったく罠がない、というわけではなく、

落とし穴程度の罠は一本道につくられてはいるのだが……

「ここからは知恵と勇気がためされるから、ま、がんばって」

「?…え、ええ……」

知恵と勇気?

ディアの台詞になかば首をかしげるものの、しかし休ませてもらえる、というのはありがたい。

何かどっと疲れている。

体がどうこう、というのではなく精神的に。

それがなぜか、というのはケレスにはわからない。

というか無意識のうちになかったこと、きかなかったことにしているケレスは気付かない。

ケレスは知らない。

ディアのいった知恵と勇気、という言葉にすべての意味が含まれている。ということを。

すなわち、ただの一本道ではない、ということを指し示している、ということを……




「で、うちの子を送ったから~。でもね。なんかお友達と一緒なのよ~。

  でもかわった子なのよ?なんというかそこにいてそこにいない、みたいな?」

とある場所。

開けた場所にてなぜかその場にある机と向き合った椅子。

真っ赤な椅子と机が周囲にぽこぽこ湧き出ている溶岩からみてもかなり風景に似合っている。

「そこにいて…?まあ、とりあえず。じゃあいろいろと試してみてもいいわけだ。

  アリスの子か~。話しにはきいてたけど。だけどいままで加護うけてなかったんでしょ?」

たしか今の今までいまだに他の精霊の加護をうけていなかったらしいが。

「ええ。先日とある湖の精霊に加護をもらったらしいのよ。それで早いけど試練をうけさそうとおもってね」

すでにここまで直接くるべき手段はもっている。

「数ある罠をカンパしてくるか。それとも里を経由してくるか、まあ楽しめそうではあるわよね。

  まあここで戦う以上、絶対に死ぬことはあり得ないんだけど」

「そうそう。だからしっかりと鍛えてやって~」

この空間の中においては創られたときに示された理が絶対となる。

この場における理は【死の概念の破棄】。

つまりどんな状態になってもかならず肉体から魂が抜けるようなことはありえない、という概念に基づいている。

つまり戦う場合には、傷が言えれば幾度でも再度挑戦が可能という形式をとっている。

もっともそのようにしたのはほかならぬ、彼女が何よりも楽しみたい、という理由から、なのだが。

挑戦者からしては逆にたまったものではないかもしれない。

何しろ体全体が焼け焦げようがどんな状態になろうが絶対に死ねない、のだから……

この空間を管理するもの。

それは、火の精霊王、サラマンダー。

その髪はマグマのごとくに常に燃え盛っており、その服もまた炎でつくられている。

基本、人間の形態を好み、ときおり人の姿を模して地上に赴くこともある。

そのときに、目の前の女性…マリアと知り合い意気投合した経緯をもつのだが……

「ま、サラ。私の子は結構強いわよ?おっちょこちょいだけど」

「あはは。ま、マリアの子だし、そりや、おっちょこちょいなのはわかるわよ」

ひさしぶりにからかいのある…もとい、手ごたえのある挑戦者がやってきそう。

本来の目的は契約だというのはわかってはいるがやはり暇なものは暇。

すこしばかり付き合ってもらっても問題はないはず。

そもそも、母親がそれを許可しているのだから何も問題はない。


…ケレスにとっては悪夢、としかいいようのない会話がなされているのだが。

当のケレスはそのような会話がなされているなど…知るよしもないのであった……





ちなみにこの隠れ里、別名、水晶の里、ともいいますv

  周囲がほとんど水晶に覆われている里、という意味でもあるんですけどね。

  基本の住人はエルフ族、そして妖精族、です。火竜族も滞在してますよ~(笑

  この地にいる彼らは毎回毎回サラ…つまりは火の精霊王のいたずらに頭を悩ませているのです・・・

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