光と闇の楔 ~課外授業と襲撃未遂?~
今回もまたまた副題と内容がかみあっていない自覚あり。
戦闘シーン、詳しくいれたほうがいいのか悪いのか……
でもそれいれたら鮮血シーンとかちょこっとグロテスク?シーンとかも加わるし…
まあ、しばらくさらっと流す予定(あくまで予定
そろそろ敵さん?側の一つの付随がちらほらとでてきますv
「……なんか、ディアといたらわけがわからなくなってくるわ……」
先日も出向いた先で泉の精霊に出会う、という経験をした。
今度は今度で竜との邂逅。
ゆえにこそケレスとしてはそういわずにはいられない。
「そう?別に問題はないとおもうけど」
「おおありよっ!」
ここまで力があるのに今まで誰にも気づかれていなかった、というのも気にはなる。
しかし両親がいない、といっていたのもありそういう子供は多々といることから、
そういうこともありえるのかもしれない、と思いこもうとする。
が、しかし、そんな状態でどうやって自然と会話を成り立てることができたのかが理解不能。
一人で大自然の中で生活し、自然と語らって生きていたわけではあるまいに。
「さて。そんなことより、ヒギエアの根を換金にいきましょ」
町にかえるとき時間がかかるであろう、というので緑竜のクレマティスが近くまで送ってくれていたりする。
何でも子供をたすけてくれたお礼、とのことらしい。
たしかにそのまま帰路についても真夜中過ぎるのは目にみえていたので
あえてその言葉に甘えているディアとケレス。
ディア一人ならば別にそのまま移動すればいいのだが、ケレスもいるのでそうはいかない。
一緒に移動することはできはするがあまり目立つ行動はさけておきたいのが本音。
「……なんか、今日はどっとつかれたわ……」
何か今日は信じられないことが連続して続いた。
ゆえにほぼ寮の部屋に戻るなり倒れ込むようにして眠るケレスの姿が見受けられてゆくのであった――
光と闇の楔 ~課外授業と襲撃未遂?~
「う~ん、課外授業、か~」
そういうものがある、というのは知ってはいたがおもわず笑みが漏れてしまう。
「実戦しなければわからない、という先生達の意向、らしいけどね」
これまでの知識をもとにして自分達で薬草などを採取する実戦的な課外授業。
今、ディア達がやってきているのは王都から少しはなれた場所にあるとある草原。
この草原は様々な草花が咲き乱れており、中には薬草などといった草木も存在する。
ちなみにこれは総合科C組全クラスが参加しているがゆえに人数はかなり多い。
それぞれ引率の教師がついているものの、王都の外は町の中とは違い危険はつきもの。
突発的な出来事に対応する能力を培う、という意味合いをももっている。
総合科ならではの実戦授業。
ちなみに組ごとにどの場所に出向いて授業を行うかが決められている。
ディアが在籍しているC組は王都から少し離れた位置にあるちょっとした草原がその場所に指定されている。
A組ともなるとすこし難易度が高い位置にある場所が指定されており、
生徒達からは『悪意の場』、とすらいわれているのだが。
A組に在籍できるほどの実力があるのだから何があっても自分達で多少の対処はできてあたりまえ。
そういう解釈のもとにその場所は指定されているらしい。
今ディア達がいる場所はちょっとした開けた平原のような場所であり、
その先には生い茂る森が垣間見えている。
王都に続く道は裏街道、と呼ばれており、道をよく知っているものが利用する程度で、
基本的に利用する存在達は限られている。
平原、といっても生い茂る草木はちよっとした子供以上の高さがあり、
中には大人くらいの高さのものもある。
ゆえに視界的にはかなり悪い。
この中で指定された薬草などをいく種か見つけること。
それが今回の授業の目的。
「…なんというか、実戦的、よね~」
誰ともなくそんなことをつぶやく気持ちはおそらく全員の生徒に共通することであろう。
この場には当然のことながら人に害を加える生き物も多々といる。
それらを避けつつ、目的のものを探し出す。
いわば、サバイバル。
まあ、A組のように切り立った崖の上などに目的の品があったりするのでない以上、楽といえば楽なのだが。
気をつけるべきは、人をエサとして認識している生き物達や、触れれば毒を喰らう生き物達。
中には小さな体でもその毒で体を溶かし、自分の餌とする生き物もいる。
そういった自然界の生き物にも気をつける術を磨くこと。
それがこの授業のもう一つの目的。
生活していくうえでそういった危機意識はとても必要となる。
だからこそ実戦的にそれらを学んでいくしかない。
知識だけでしっているのと実戦で学んでいるのとでは実際に出くわしたときに対処の仕方がまったく異なる。
「はい。それでは、みなさん、それぞれ探索を開始してください。
ここにはパイルスネークなどもいますので十分気をつけてくださいね」
パイルスネーク。
毒を相手に注入し相手の肉体を溶かして喰らう雑食性の蛇。
「先生!そんな危険な生物のいるところでどうしろって!」
「大丈夫ですっ!周囲の危機管理把握、習得に役立ちます!」
「どんな危機管理ですかぁっ!」
生徒達から何ともいえない批難の声があがっていたりするのだが。
まあ、生徒たちの気持ちはわからなくもない。
まだ魔獣の生息地に戦闘の実戦、といって駆り出された授業よりはまし。
そう以前の実習をうけている生徒は半ばあきらめモードに陥っていたりする。
「一人で探すもよし。協力しあうもよし。それでは、解散です。
ただし、あまり遠くにいかないようにしてくださいね」
この先の森はあまり治安的によろしくない。
なぜか地理的に排除しても排除しても夜盗や盗賊といった輩が拠点を構えてしまう場所となっている。
まあ、周囲にさえぎるものも邪魔をしてくるものもいない裏街道。
悪いことをする場合、これほど便利な場所はない。
しかしそのせいで魔物もまた多々森の中には生息しているのだが……
「みんなまじめね~」
わらわらと判れては、さらにはそれぞれ話し合いチームを組んで必要な薬草を探す生徒達。
そんな様子をのんびりと眺めているディア。
そもそもわざわざ探さなくてもどこに何が生息している、などと
周囲の気配に耳を澄ませばすぐにわかるであろうに。
だからこそディアからしてみれば不思議でたまらない。
「…ディアさん、はやくしないと時間がたりませんよ?」
そんなディアを心配して引率してきた教師の一人が声をかけてくるものの、
「ですけど、先生。どこに何があるのか、皆が教えてくれるので急ぐ必要はないとおもいますけど」
それは本音。
「皆?」
「ここにいるすべての植物達が教えてくれてますけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ディアさん。あなた、言葉がわかるの?」
植物などの声をきける存在はごくまれ。
中にはそのような存在がいるのは知っている。
エルフなどがその例にあたることも。
しかしそれを実際に目の当たりにするのは数年に一人いるかいないか、の割合。
だからこそ、戸惑い気味に問いかける。
「わかりますよ?」
「……なるほど。ですけど他の生徒には教えないでくださいね。勉強になりませんから」
声が聞こえてしまう生徒に試練、といって行動するようにいっても無駄、というもの。
逆にそのことを知り他の生徒達が探し出す努力をしなくなる。
というのがもっともな懸念事項。
一人ならばまだいい。
それは個人のもつ特性であり能力なのだから。
「は~い」
別にディアとて彼らの手助けをする気はさらさらない。
完全に困っていれば話しは別だが。
努力するということはいろいろな意味で生きる意味となる。
「さてと。みんな、あそこに生えているアレ、気づくことができるかな~」
まさに気分は身守り気分。
示された薬草の一つはとある種族の花の中に紛れて生息するもの。
しかしその擬態は完ぺきで専門職にしているものですら身間違いみおとすこともしばしば。
だからこそ面白い。
どれだけの人数がそれに気づくことができるかが。
「…ディアさんの性格もかわってますね……」
アレ、というのに思い当たり、横にいる教員がおもわず苦笑する。
「それより、ディアさんも声がきこえるのは仕方ないですけど。きちんと品物はそろえてくださいね?」
「わかってます。それでは、いってきます」
「はい。きをつけて」
声が聞こえる生徒に何を気をつけて、とは言い難いが。
何しろ声が聞こえる、ということは危険すらも声で判断できる、ということなのだから。
それがわかっているゆえに苦笑まじりにディアを送り出す。
そんな教師との会話をかわしつつ、ディアはひとり、ふらり、と
ラムダ平原、と呼ばれるその地に足をむけてゆく。
ぴゅ?
『あらあら。どうしたのかしら?クリス?』
「びっ」
きゃいきゃいと無邪気に母親の周囲をとてぽてと走りまわっていた。
いまだにまだ自力で空を飛ぶことはままならない。
飛ぶときには風の精霊に願い体を浮かしては練習しているが。
誕生した直後に直接【触れあえたた】ことにより一応力だけは満ち溢れている。
ゆえに世界の異変も直感的に感じ取ることが可能。
「ぴっ、ぴゅっぴ~」
ふわっ。
クリス、と名付けられた幼子の声をうけ、ふわり、とその体を風の精霊達が包み込む。
『あらあら、遠くにいってはだめよ~?』
父親たる存在は、竜の里に出向いていっている。
我が子のことを連絡するために。
ゆえに今現在は子供二人とお留守番。
産まれたばかりで遊びサカリな我が子をみつつ、ほほ笑みながらも声をかける。
そんな彼女の視界の先で、ふわり、ふわりと竜の幼子は風にのってとある方向にむかって飛んでゆく――
ぽてっ。
「ぴゆるっ?」
何か飛んできたとおもったら。
それゆえにその姿をみておもわず苦笑してしまう。
「あらあら。一人でここまできたの?二人が心配するわよ?」
「きゅ、きゅ~」
ぽてっと空から風にのるように落ちてきたのは小さな半透明の生物。
その生物はすりすりと手で受け止めたディアの手の平の中で
まるで甘えるようにごろごろと体を摺りつけかわいらしい声を出していたりする。
「風の精霊とあそんでて、ここにきたの?」
「きゅるっ!」
くりっとした大きな瞳をくりくりさせて、ディアの言葉にこくり、とうなづく。
その様子ははっきりいって抱きしめるほどにかわいらしい。
「…ディアさん、何?そのこ?」
いきなり何かおっこちてきたのはわかったが。
ディアがさきほどまでもっていなかったはずの小さな物体もどきがとてもきになる。
ゆえにディアの近くで採取していた他のクラスの生徒が声をかけてくるものの、
「竜の子」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
さらっというディアの言葉に思わずその場にいた全員が唖然として口をぽかん、とあけてしまう。
いきなり竜の子、といわれても納得できるはずがない。
というか竜なんて存在はまず普通にいきていて滅多にお目にかかれるものではない。
そんな竜の…子?
ゆえに、さらっといわれても実感がもてないのも事実。
「いやあの、何冗談……」
一人がそういいかけたその刹那。
「ぴぎゅ~!!」
先ほどまでとは異なる、何か声に固い色を含んだ叫び声をあげる竜の幼生。
「あらら。だから風の子達はつれてきたのね」
どうしてまだ若い黄竜をこの場につれてきたのかそれを視てとり瞬時に理解する。
そんな会話をしている最中、ふと空気がゆらり、と一瞬揺らぎ、
そしてそれと同時に平原の一角の景色がぐにゃり、と歪む。
「な…なんですか?あれは?!」
ありえない景色に引率していた教師の一人が気づき思わず叫ぶものの、
次の瞬間、歪んだ景色の中から黒い闇が噴き出してくる。
そしてその闇は瞬く間に異形の姿をした生き物へと姿をかえる。
その頭はライオンで体は獅子、その尾は蛇。
その色彩のすべては漆黒。
「…な!?堕ちたキマイラ!?」
その姿をみて驚愕の声をあげる教師達。
キマイラ。
この世界の中でもかなり獰猛な魔獣、とされている生物であり、
通常攻撃などでは傷もつけられない。
もっとも、こちらから何か仕掛けないかぎり、相手も攻撃してくることはないが。
が、しかし、基本、キマイラという種族は肉食。
ゆえにお腹がすいていた場合、生き物は彼の餌と認識される。
キマイラの種族にも様々な形をしたものがおり、
その容姿が入り混じっている数がおおいものほど力が強い、とされている。
しかし、目の前に現れたキマイラはその普通の魔獣ではない。
どうみても【堕烙】しているのが見て取れる。
堕烙、という現象は魔獣だけにとどまらない。
様々な生物においてその現象は存在する。
いまだにその理屈は証明されていないものの、【悪意】ある【気】に取り込まれることにより、
それの手足となり、また破壊と殺戮だけを好む存在へとなりかわる。
実際は【ゾルディ】となるべく【意思力】が普通に生きている生き物へと入り込んで産まれる存在。
そのままその魂そのものが蝕まれて誕生する。
一般に【ゾルディ】として区別されるそれらとは異なり、物理的ダメージをなかなかおわすことができない。
それらを消滅、もしくは駆逐する方法はただ一つ。
より強い精神力をもって攻撃すること。
しかし普通の存在達は近づいただけでその【気】に充てられ気がふれてしまう。
下手をすればそのままそれの手足として操られる可能性もある。
普通はこんな場所にこんな存在がいきなり現れる、などありえなのだが……
「なぜ、こんなところに堕烙者が?!」
引率してきていた一人の教師が思わず叫ぶ。
実際にこんな場所に現れることは滅多とない。
それらが現れるのは基本、戦場に近しい場所に今までは限られていた。
それだけではない。
それが出現した文字通り、空間の歪みらしき場所からはどす黒い霧のようなものが噴き出している。
「まさか…瘴気!?」
魔界に存在している、といわれている瘴気。
この地上に出てくることはまずないはずなのだが……
「ぴぎゅっ!」
その気配をうけて警戒したように身を震わせる竜の幼生。
「あらら~。あっちとこっちの歪みがでるなんて、ほんっと役職は何してるのかしら……」
それらを管理しているはずの部署に対し思わずつぶやくディア。
そんなディアの言葉の意味はほとんどパニックになっている生徒達にはきこえない。
「先生、皆を安全な場所に誘導してください。それと風の結界を」
「え、ええ。みなさん、授業はいったん中止です!!」
教師達の悲鳴に近い声が響き渡る。
それとは対照的に淡々と述べているディア。
「まったく。歪みを担当してる部署は今度お仕置きが必要よね……」
それぞれの界にそれぞれ、世界がまじりあわないための部署がある。
門の管理とは別にどうしても世界に綻びが生じることがある。
それらを管理するための部署なのだが。
ばたばたとあわてつつも生徒達を呼び寄せている教師達とはうらはらにのんびりとそれをみていっているディア。
「きゅ、きゅきゅきゅ~?」
そんなディアにきょとん、とした視線をディアの手の平の中から向けてきている竜の幼生。
「やってみる?できるかな?」
「きゅ~!!!」
ディアの言葉をうけて、嬉しそうに甲高く鳴く。
その声が何ともこの場にはそぐわない。
それほどまでにかわいらしい声。
「ディアさんも早く避難を……って、え?」
ディアにも避難を呼びかけた教師が感じたのは膨大なまでの自然の気が集まる気配。
そして、次の瞬間。
「ぴみゅ~!!!」
竜の咆哮。
本来ならばそう呼ぶべきなのであろうが、小さな体から発せられたその声ははっきりいって小鳥の鳴き声のようなもの。
しかしその咆哮と同時、ディアの手の平の上にちょこん、と座った竜の幼生から光の息が発せられる。
光の息は周囲を覆い尽くそうとしていた瘴気をことごとく光の中にかき消してゆく。
これは黄竜の属性だからこそできる技。
他にできる竜族は光の属性をもつ一族に限られる。
光により闇を打ち払う。
薄い瘴気などならば他の存在、すなわち人族なども可能であろうが、
魔界から漏れ出た瘴気はかるく人の精神程度くらいは蝕んでしまう。
「…え?あの、ディアさん?その…いきもの?…何?」
おもわずそれを目の当たりにして目を点にして問いかける教師の言葉は
おそらくこの場にいるすべての存在の思いを代表しているであろう。
「竜の子供です。風の精霊とあそんでておちてきたみたいで」
嘘ではない、嘘では。
まあ、知り合いとかそういったことは一切説明していないだけ。
「さて…と。私はあちらのキマイラとすこしばかり遊ぶとしますか」
いいつつも、懐に竜をいれてかるくとんっと大地を踏みしめる。
念のために固まっている生徒や教師達に不可視の結界を施しておく。
「…どうやらこの気配。あいつらの手のもののようね~」
というか本当に何をしているのやら。
それゆえに思わずあきれた口調でディアがつぶやく。
以前からその活動がわかっているというのに今まで捕えるられていない。
自分が動けばさくっと解決するのはわかっているがそれだと意味がない。
それゆえに任せていたのだが……
ちなみに問題となる組織は実は、天界、魔界ともに存在していたりする。
それぞれがそれぞれ、それが世の中のためになる、と思い込んでいるがゆえにタチがわるい。
まあ長らくつづく平和の中でそんな勘違いをする生命がでてくるのは想定内。
しかしそれらを取り締まれない組織、というのもなさけなくもある。
「さて。すこしばかり遊んでもらいましょうかね♪」
くすっ。
とりあえず自分の姿は第三者の目からしてみれば普通にたたずんでいるようにしか見えないように仕向けてある。
ふわっ。
そういいつつも手をすっと頭の上にとかざすディア。
その手に突如として透き通った剣のようなものが出現する。
その剣はディアの身長ほどの長さを有し、片刃のそれは太陽の光を反射し七色に光る。
虹幻刀。
誰ともなくそう呼ばれているそれは、魔界、天界においても共通している武器の一つ。
武器など使わなくとも関係ないがやはりこう形に示したほうがわかりやすい。
という理由で創っている武器の一つだったりするのだが、その事実はディアしか知らない。
この刀、この世界、すなわちこの地球上に存在しているすべての属性を秘めている。
すなわち、この刀一つでどんな存在も無に還すことも、生み出すこともできるすぐれもの。
「さ、少しばかり遊ばせてくれるかしらね?」
くすっ。
目の前にはその脅威を本能的に感じ取り、ぴたり、と動きを止めた【キマイラ】の姿。
黒き塊がキマイラの口から発せられ、それが着弾した場所は瞬く間に死に絶えた大地となる。
その塊をかるく飛び上がりかわしつつ、くるっと空中にて一回転。
そのままキマイラの背後に位置し、
「Une ouverture(始まり)」
かるく言葉を紡ぎだす。
ディアの言葉をうけてキマイラの影響で死に絶えかけていた自然が瞬く間にと蘇る。
それと同時、ディアとキマイラの周囲をやわらかな光が包み込む。
そこは何も存在していない空間、といっても過言でない。
この場にはディアとキマイラ、その二つの姿しかどこをみてもみあたらない。
ふわふわとゆらめく光の空間。
まさにそう表現するしかない不思議な空間。
この空間は外界に影響をおよぼさないように精神世界面において張り巡らせたもの。
ここに干渉できる存在はそれぞれの上位たる存在のみ。
「ま、気配は完全に周囲のそれにしてるから、気づかれることはないし」
とりあえず、これから相手の動向をしることもできるはず。
組み込まれた【気】からこれを創りだし操る輩の意図を読み取ることは可能。
動きを活発化させているのはディアのもくろみ通り、ともいえるのだが。
「とりあえず、面倒なことになるまえにさくさくっと解決しておきたいしね」
それはディアの本音。
できうるならば代替わりの前に懸念事項は省いておきたい。
相手が【誰】かわからずに、相対することになったキマイラは…あるいみ、哀れ、としか言いようがない。
しばし、ディアとキマイラによるちょっとした剣舞と攻防がその場において見受けられてゆく……
ディアとキマイラがとある特殊空間に入り込んで戦っている同時刻。
「…いったい、何がどうなっているのかしら?」
「みたところ、ディアさんが周囲の自然にお願いしてる…というところ、かしら?」
何が何だかわからない。
わからないが、まがまがしい気配をはなっていたキマイラは今はそのなりを潜めている。
自然の気が濃くなっている空間に閉じ込められている、というのは何となくわかる。
おそらくその前で佇んでいるディアという生徒が自然に語りかけて何かしてもらっているのであろう。
そうでなければこの現象は納得できるものではない。
そもそも、あんな堕ちたキマイラを抑えられる存在は、自然界の精霊達をおいて他にはいない。
「というか。先生。あの生徒は自然の声が聞こえるんですか?」
「どうもそうみたいね」
「もしかして【言霊使い】、ですかね?」
「ああ、その可能性もあるかもしれませんね」
何しろ先日、滅多と手にはいらないヒギエアの根をかなりの量とってきた。
そうギルドから報告があがってきている。
ヒギエアの根はその採取の方法がかなり難しいことからそう簡単には採取できない品。
しかも一緒に行動していた別の生徒の報告によれば、ヒギエア達から根を差し出してきたらしい……
さすがに量が多いのでギルド職員が不思議に思い問いかけたらしいのだが。
当人はただ首をかしげるだけで、一緒行動していた生徒がかわりに説明した、とのこと。
その報告は一応、教師達に届けられている。
基本、協会学校に通う生徒達が依頼をうけた場合、何らかのことがあった場合を考えて報告をあげることを義務としている。
同じギルド協会、という組織の中であるがゆえにできる事柄。
もしこれが別の組織の中であれば、個人情報にかかわることなので、と断られるであろう。
しかし、もしも目の前で佇んでいる生徒が【言霊使い】ならばそれらのことも説明がつく。
そして今の現象も。
【言霊使い】の能力をもつ存在は自然界のすべてにおける生命と心を通わせ、
ときとしてその言葉をもってその行動を縛ることすら可能とされている。
能力の高いものはそれぞれの精霊王ですら意思を通わせ力を借りうけることができる、といわれている。
目の前の少女がどこまでの力をもっているかはわからない。
わからないがすくなくとも一般的にいわれている言霊使いの能力はもっている、ということであろう。
何しろ竜の子供すらなついているようにみえた。
いきなり竜の子供です、といわれた時には目が点になりはてたが。
もしも彼女が能力をもっているならば、
その気配を感じて自然界にもっとも近い気をもつ竜がよってきても不思議ではない。
彼らは気付かない。
その考えからして根本的に間違っている、ということに。
しかし、ある可能性がまったく考えられない以上、
ディアが【言霊使い】であることは、その場にいる全員の暗黙の了解として認識されることとなる……
さくっと戦闘シーンは削除。いや、ディアはあるいみ楽しんで遊んでますし。
まあ、どちらにしてもいくら堕ちた存在にさせられてしまったとはいえディアにとっては子供の一人、ですし。
ゆっくりと戦いつつもむしばまれた魂の浄化をもおこなってます
その事実は当然、誰にも気づかれてはいませんが
襲撃?といってもあまり襲撃になってないな……