表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と闇の楔  作者:
14/74

光と闇の楔 ~日常にある光景~

さてさて。今回は副題と内容がほぼ噛み合っていない自覚あり・・・


「…まいご、ですか?」

「ええ。どうやらあの森には行き先を見失った幼子の魂が迷い込んでいたようです。

  それでその魂を守るために森の精霊達が生き物をよせつけなかった…と」

村にともどり、とりあえずどうしてあのような状況になっていたのかを説明しているディア。

汚れのない魂はすぐに影響をうけてしまい、時と場合によればそんな魂を悪用しようとする輩すらいる。

だからこそ精霊達は子供を守るためにと、森になにものも入れないように細工した。

「ほ~。そういうこともあるのですか」

「あるんですよ」

説明されてもよく意味がわからない。

わからないが、実際に解決した、といわれて村人を森にいかせてみれば普通に入れた。

おそらく嘘ではないのであろうが、しかし……

「あなたは魂ともはなせるのですか?」

「普通、だれでもその能力はもってるはずなんですけどね~。なぜか忘れられてるだけで」

その気になればすべての存在がその力をもっている。

ただそれを必要とせずに忘れてしまっているに他ならない。

自然が常にそこにあり、常に彼らに対して呼びかけているように。

「それはそうと、これはお約束の報酬、です」

「あ、そんなにいりませんよ?」

「いえ、これは約束ですので……」

ただ、魂をあるべき場所にかえしただけでこれほどもらうのは心苦しい。

「なら、今日のお昼をおごてくれるので、チャラにしませんか?」

「しかし…。それではこちらの気が…それにいいのですか?」

「別にたいしたことしたわけでないですし」

「いや、しかし、約束は約束で……」

そもそも、たったのあれだけでこの村の全財産ともいえる金額をもらうのはかなり心苦しい。

どちらにしても依頼書に完了の拇印さえもらえればディアとしてはいいのだから。


しばしそんなディアと村長によるやり取りが村の一角において見受けられてゆく……




光と闇の楔 ~日常にある光景~





「み~つ~け~た~っ!」

何やら不穏を纏った声が聞こえてくるのは気のせいか。

おそらく気のせいではないのではあろうが、

しかしその声の主が誰かわかっているからこそ思わずくすり、と笑ってしまう。

「何騒いでるの?ケレス?」

のんびりと休憩時間ということで校庭の隅に位置している裏庭のとある一角。

ほとんど人気もよりつかないその場所にて木によりかかるようにしていたディアが、

何やら息をきらせつつも険しい表情でいってくるケレスに対して問いかける。

「騒ぎもするわよっ!何一人で依頼うけて、しかも!しかも!ずっとまっててもかえってこないしっ!」

ギルドに問い合わせてもどこにいったかは不明。

おそらく学校が始まる前、つまりは昨夜までにはかえってくるであろう。

そうおもって張っていたがそれも無駄となった。

ならば、と部屋にもどりすぐに戻ってくればわかるように注意していたはず。

仕方なく翌日もまた休みかな?とおもい学校にきてみればディアはすでに登校しており…

これで騒がないほうがどうかしている。

さすがにA-AとC-Aクラスの位置はかなり離れており、

途中の休憩時間に教室にいくことができなかった。

ゆえに昼休みに問いただそうと教室にいってみれば…ディアはとっとと教室からでていった、とのこと。

食堂にも姿がみえず、かなりの時間探しまわっていたケレスとすれば騒ぎたくなる、というもの。

――それでは、また。

『またね』

先ほどまで会話していた精霊がふわり、とその場から離れてゆく。

もしもこの場に精霊の姿が視えるものがいるならばその姿が大地にとけてゆく様子がわかったであろう。

「私とパーティーくんだんじゃなかったの!?」

さがすことしばし。

ようやく裏庭のほうでそれらしき姿をみたかも、という話しをききようやく見つけたケレス。

すでに休み時間の残りはほぼなきに等しい。

「あれは、あのときだけ、でしょ?」

「何いってるのよっ!一緒にうけたほうが資金面的にも能率いいのにっ!」

「いやでも、私、一人のほうが楽だし」

そもそも、あのときは勝手にいつのまにかケレスが契約していたがゆえに仕方がない、と思ったのも事実。

「それに、今回は学生向けの依頼ではなかったしね」

希望をすれば一般向けの仕事も受けられる。

そのかわり失敗したときの違約金がかなり高くなりはするが。

ディアの台詞はうそはいっていない。

「それより、それをいうためだけに私をさがしてたの?もう昼休みおわるのに?」

「そういうディアはこんなところで何してたのよっ!」

「秘密♪」

ただ、報告をうけていただけだ、といっても意味がわからないであろう。

それにわざわざ人に教える必要性はさらさらない。

「せっかくお昼を一緒にたべながらいろいろと問い詰めようとおもったのにっ!」

「…はやくたべないと、時間ないわよ?教室でたべれば?」

その手にお弁当をもっていることからどうやらまだ昼ごはんは食べていないらしい。

「ディアはもうたべたの?」

「ん~、まあ……」

その質問には言葉を濁しておく。

そもそも、ディアからしてみれば別にものを食べなくてもよい。

しかし、人としている限りは何かたべないと不振がられるのもわかっている。

ゆえにここでのんびりと報告をうけていたのだが。

当然そんなことをケレスが知るはずもない。

「あ、そろそろ教室にもどらないと。ケレスももどって早くたべたほうがいいわよ?」

「だ…だれのせいだとおもってるのよぉぉ~~!!」

すくっと立ちあがりながらも、ぽんっとケレスの肩に手をおきつつ、

校舎のほうにと歩いてゆくディアにむかい思わず叫ぶケレス。

別にディアがケレスと約束していたわけでもない以上、それは誰の責任でもない。

しいていえばケレス当人の責任である。

しばし人気のない校舎の裏庭にケレスの叫び声が響き渡ってゆく……



「はい。それでは本日は魔術についての授業を行いたいとおもいます」

午後からの授業は主に魔術と精霊術の実技。

魔術担当、ラケシス=パルテノーネ。

先日の召喚授業のときに何かあったための待機職員としてあの召喚の間にいた教師の一人。

「魔術、といっても今回行うのは精霊魔術です」属に精霊術、ともいいますね。

   これは日常的に必要不可欠な術であり、また簡単な術ならば誰でも使用することができます」

大きな威力のものはそれなりに請う必要性があるが、小さい威力のものは普通に扱える。

「たしか、先日の召喚授業で成功された生徒がいましたね……

  ああ、たしかディアさん、といいましたね。前にでてまずはお手本をみせてあげてください。

  そうですね。何の術でもいいですので」

いきなり指定されておもわずきょとん、と首をかしげるしかないディア。

「先生、私、はいってまだ数日もたってませんけど?」

ディアの意見も至極もっとも。

だがしかし、

「召喚術が使用可能ならば他もできるでしょう?」

にっこりと有無をいわさずディアを再び使命してくる。

たしかにできはする。

するが……

どうやら断れそうになさそうな雰囲気をみてとり、再び盛大にため息をつき、

「…なんだってまだ新入生な私に何もかもやらせようとするんでしょう?」

目立ちたくない、というのになぜゆっくりさせてくれないのやら。

そんなことをおもいつつも、

しぶしぶながらも手まねきされている以上ゆっくりと前にとでてゆくディアであるが。

「それでは、ディアさん、みなさんにわかりやすいように示してください」

どうやらいっても無駄のようである。

「…は~。わかりました。とりあえず、Lumière(光よ)」

ぽっ。

前にでてきたディアが言葉を紡ぐとともにその指先にちょっとした光の球が出来上がる。

大きさ的にはさほど大きくなく親指と人差し指をくっつけて円を描いたくらいの大きさ。

本当ならば言葉はなくてもいいのだが、いかんせん人の目がおおすぎる。

何よりもこの教師に目をつけられれば後々かなり面倒なことになるのは請負。

パルテノーテ家の家系のものは属性すべてに耐性があり、ゆえにその筋ではかなり有名。

それ以外の様々なことにも精通しており、知識の賢者、とすらいわれている一族の一人。

そんな人物に目をつけられれば面倒なことこのうえない。

「ほう。ディアさんは光属性なのかな?」

「いえ、そのあたりにいた光の幼生に頼んだだけです」

自然界にもそのあたりに精霊の幼生達は多々といる。

それに少しばかり声をかければこのような現象は誰にでも起こせる。

「なるほど。精霊の子供…か。精霊の声がきこえるわけだ。ならばあのときの現象もうなづけるな」

一人何やら納得しているようであるが、まあだいたい精霊の声が聞こえるものは、

精霊の好意もあり術の威力が格段に増すことがある。

妖精でなく幼生、その意味を悟り、横でうなづいているラケシス教師。

「しかし、それでは実演にならんな……普通に使うことはできないのか?」

「私はいつもこの方法ですので……」

「ううむ……」

自らの力でではなく、力を借りての現象の具現化。

たしかに悪くはない、ないが普通はほとんど精霊の声を聞くことができない。

ディアの実力をみてみたかったが、いつもこの方法で使用している。

そういわれればもともこもない。

逆をいえばこの方法だと自分の属性も得て不得手も関係ない。

ゆえに生徒達の見本にはなりはしない。

「仕方ない。それではディアさんは席にもどって、では次はラーク君!」

ディアを仕方なく席にと戻し、次なる生徒を使命する。

「え、は、はいっ!」

ラーク、といわれた緑の髪の人物が緊張した面持ちでたちあがる。

「それでは、ラーク君。さきほど私がいったとおりに何でもいいから実演してみるように」

「は、はいっ!我は情熱の熱き炎にねがいたまわらん 【火球ファダー】!!」

こちこちになりつつも言葉をはっし、その直後、ラーク、と呼ばれた少年の手から、

ちょっとした炎の球…のはずなのだが、まるで柱のようなそれが出現する。

「おいっ!」

どおんっ!

刹那、彼の目前にちょっとした炎の球が出現しそれはもののみごとに一直線にむかってゆく。

…はずなのだが、彼が発した炎の球が生徒達の座っている席にたどり着く前。

すなわち、教壇と机との間にていきなり何かにさえぎられたかのようにと爆発する。

「……威力というか術は場所を考えてつかうように……」

念のために教壇側に術を隔離する結界を張っていたがゆえに被害はなかったが、

もしも結界をはっていなければまちがいなく教室は火の海と化していたであろう。

「は…はいっ。す、すいませんっ!」

火球ファダー】。

それは初期たる初期の炎の攻撃術の一つ。

炎の精霊に請い願うことにより発生するちょっとした光の球体を飛ばし対象に着弾する。

ちなみにアレンジ具合によって対象がいくら動こうが追尾することは可能。

この世界で一番よく使われる術が火と水であることからもっとも普及率が高い術の一つ。

しかし今のように威力の指定などを願わない場合、時として威力がヘタに増すことがある。

今のはその典型的な例、であろう。

おそらく今の術で威力が異様にたかくなったのは、精霊の言葉が聴こえる。

という生徒がこの場にいるからであろう、とラケシスは結論ずける。

基本、精霊達はそういった存在が大好きで何か手助けできないか、

そう思い願ってもいないのに勝手に集まる傾向がある。

ゆえに、そんな中で自分達に願いの言葉が向けられて、

威力の調整も何もできなかったのであろうことは簡単に予測可能。

「…ディアさん。すまんが精霊達に威力をはりきらないようにいってもらえますか?」

そのことに思い当たり、おもわずコメカミを抑えつつも、席に戻っているディアにと話しかけるラケシス。

「あ、はい」

その言葉に素直にうなづくディア。

たしかに、自分を慕って集まってきているのは事実なわけで否定できない。

自分の先ほどのアレはすこし相手が考えているものとは異なるが大きくみればおなじようなもの。

それに何より気配を感じて周囲の精霊、もしくは幼生達が集まってきているのも事実。

「Ne l'exagérez pas beaucoup?」

いいこだからしばらくおとなしくしててね。あまりむりしないようにね?

その意味合いをこめて言葉を紡ぎだす。

ここには先ほど産まれたばかりの精霊達も存在する。

ゆえに静かに優しく語りかけるディア。

「まあ、今のがいい例になったとおもうが。術の威力は精霊の加護の具合で決まる、といっても過言でない。

  今はたまたまというかそこのディアさんが精霊の声が聞こえる、ということで、

  おそらく精霊達がこの場に異様に集まってきているがために起こった現象だ」

精霊達が完全に気配を隠していたから気づかなかったが、

よくよく感じてみればかなりの数の精霊が集まっているのがわかる。

伊達にラケシスとてパルテノーネ家の家名を名乗っていない。

「…しかし、精霊の気配をも完全に隠してるとは……」

精霊達が率先して気配を隠しているのか、またまたディアがそうしているのかそれは判断つきかねない。

しかし、精霊と相性がいいのはどうやら間違いないようである。

こういった生徒がごくまれに現れるので教師はやめられない。

原石も磨かなければただの石。

そんな原石達を磨きあげて世界にはばたかすのが何よりも自らの使命だ、とラケシスは感じている。

「先生?」

おもわずつぶやくラケシスの言葉をききとがめ、横にいたラークが首をかしげて問いかける。

「ん?あ、ああ。すまん。ではもう一度」

「は。はい。我は情熱の熱き炎にねがいたまわらん 【火球ファダー】」

ぽっんっ!

今度は先ほどとはうってかわり、かわいらしいちょとした拳程度の炎の球体がその場に出現する。

「よし。それでいい」

今度はあえて出現した炎に干渉しその場にとどまるようにと細工しておく。

「これらはまず日常的に基本的につかっている術だ。しかし初期であるからこそ毎日の鍛錬は必要。

  この感覚を完全に自分のものとすれば上位の術も夢ではない」

相手が上位の精霊であろうと基本的に精霊達に請い術を発動させることには変わりがない。

だからこそ日常的に使われている火と水の術は術の会得鍛錬に持ってこい。

「よ~し、それでは今から順番に名前を呼ぶのでそれぞれ挑戦してみるように」

おそらくざっとみたところ、このクラスの大半は自分の力のコントロールは身についているらしい。

しかしいまだにその力の奮い方がわかっていない生徒もいるのがみただけでわかる。

力を完全につかえる存在と、そうでないものの判断は纏っている【気配】で容易にわかる。

例をあげればディアの気配のそれが完全に周囲と一体化し気をつけてみていなければまちがいなく、

そこにいても身落としてしまうほどに周囲に溶け込んでいる、という具合に。

もっとも、ディアは特殊中の特殊なのだが当然、そんなことをラケシスが知るよしもない。

しばし、ラケシスの指導のもと、

それぞれの生徒が術を発動させるべく四苦八苦してゆく様子が、

総合科C-Aの教室にて見受けられてゆく――




「ねえねえ!精霊の声ってどうきくの!?」

先刻の授業がおわり、なぜかディアの周りにはクラスメート達があつまってきていたりする。

ゆえに戸惑わずにはいられないディア。

先刻の授業でどうやらディアが精霊に好かれやすい、というのがわかったがゆえに集まってきたらしいが。

好かれやすい、というよりはどちらかといえば甘えられているというのが正解なのだが……

「ど、どうって。普通にしていれば自然と聞こえるはずなんだけど?」

そもそも、産まれたときはすべての存在が彼らの声が聞くことができる。

なのに成長に応じてその【耳】を閉じてしまっているのは他ならないそれぞれ各個の責任でもある。

そんなものがあるはずもない、きこえるはずがない。

そういった概念を大人達が子供に無意識に伝えることにより、

子供たちもまたそのようなものなんだ、とおもい、【声】から耳を背ける結果となっていたりするこの現状。

それをどうこうとやかくいうつもりはないが、

だからといって声がきこえる存在を特殊だ、とおもうのはどうにかするべき事柄。

ゆえにディアとすればそう答えるよりほかにない。

「もしかして精霊の声がきこえるってことは他の声もきこえるの?」

どうやら集まってきているクラスメート達は好奇心の塊のようでいろいろと質問してくる。

そんな様子をみてくすり、と笑いながらも、

「まあ、普通の自然界の声は大体きこえるけど」

その気になれば聞こえないものなどはないが、それはあえていわずに無難な説明をしておくディア。

「え~!いいな~。私も動物さんとかと話したい」

「それは獣使いの能力開花させたらできるでしょ?」

そんな一人に別の生徒が突っ込みをいれていたりするが。

「だって~。あこがれるじゃない。動物さんたちとはなせるのって。植物とかとかもさ~」

「で、食事のときに生野菜とかがでて、たべられる前の心境を彼らから聞かされるてもいいわけだ」

すこしばかり夢見がちになりかけているその生徒に少しばかり釘をさしておく。

『そ…それは…そういうのって…きこえるの?』

ただ話せれば楽しい。

そういうことしか考えていなかったらしく戸惑いぎみにディアにといかけてくる生徒達。

「きこえるわよ?中にはたべられたくないからないてるものもいたりするし。

  ああ、動物とかなんかは食材にするためにさばかれるとき何ともいえない叫びをいってたり……」

「いやぁ!…わたし、今のままでいい……」

能力は良い面もあれば悪い面もある。

それらすべてに対して覚悟してこそ能力を得る資格がある。

「まあ、慣れれば自分できく声ときかない声は分別して聴こえないようにすることもできるけどね。

  だいたい能力が開花した当時は全部の声をききながら生活することになるんじゃないのかしら?」

実際それで精神の安定を狂わした存在もいたりする。

…表ざたにはなってはいないが。

それらの存在達は良い面のみを考えて能力をえたがためにそういう状況に陥った。

様々な声が聞こえる、ということは様々な悲鳴も聞こえる、という同意語に気付かなかった。

そして、能力の開花が進むにつれ、自分が望むわけではないが他者の心の声すら聞こえるようになってくる。

これもやはり自分でコントロールが必要なわけで、人の心の闇を聞いてしまった存在は大概立ち直れない。

そういう試練を乗り越えたものが【共鳴】能力を得ることができる。

共鳴、とは文字通り、すべてのものに共鳴しその心を通わせる能力。

その能力は別名、心の証明、ともいわれているもの。

つまりは心の強さを証明するものであり、その【共鳴】の能力をもつものに悪いものはいない。

そして彼らは精霊達にも好かれる存在となる。

しかしその能力の保有者は世界中で今のところ数名ほどしか確認されていない。

「ディアさんの能力って、やっぱり共鳴、なの?」

「私のはそれとはまた別。ただ精霊達に好かれる性質なのよ」

好かれる、というか慕われる、というか甘えられている、というほうが正しいが。

しかしその言葉にウソはない。

「ディアさんのもつ雰囲気がそうさせるのかな?」

「たしかに。ディアさんってなんかそこにいても自然に完全にとけこんでるしね」

実際に目の前にいるのにときどきそこにいないような感覚に陥ってしまう。

そしてまた、傍にいると何だかとてもここちよい。

まるで、母の腕に抱かれ眠っていた赤ん坊のときのような心地よさがそこにはある。

すべてを包み込む…何かわからない雰囲気がディアにはある。

説明されないまでもその場にいる全員がそのことを感じ取っている。

「さあ?」

そんなクラスメート達にほほ笑むだけで正確な回答をださないディア。

かれらの言葉はあるいみ的確。

しかし彼らはそのことには気づかない――


「Le depart qui a fendu lumiere ouverte, et obscurite du sommeil,

  et l'enfant de l'atome est debout et est maintenant nouveau ici」

――(光よはじけ闇よねむれ 原子の子供たち 新たな旅立ちを今ここに)――

ふわっ。

何やら周囲で騒ぐ生徒達に関係なく、先ほどから気になっていたがゆえにある言葉を紡ぎだす。

先ほど新たに生まれた精霊の幼生達を言葉とともに送り出す。

この場に感覚の鋭いものがいればディアの周囲に温かな気配が濃縮したのがわかったであろう。

しかし、いまだに別の話題で盛り上がっている生徒達は気付かない。

「?今の言葉、何?」

「その旋律の言葉ってよく精霊達に語りかけるときに使われる言葉だよね?

  だけどかなり難しくて今ではほとんど使う人はいないってきいたけど」

そもそも、発音などが少しでも異なれば用をなさない。

この言葉でなくても他の言葉で代用できるのだからわざわざこの言葉を使用する必要性もない。

ゆえにあまりこの言葉は一般的には使われていなかったりする。

「まあ、今はほとんどこの言葉は使われなくなってるけどね。昔はある場所でよく使われてた言葉なのよ?」

嘘ではない、嘘では。

この言葉が母国語であった国はたしかに存在していた。

…もっとも、その国がある公式を見つけてしまったがために武器開発が進んでしまったのも事実だが……

「ディアさんってどこからそんな知識もらってるわけ?」

「やっぱり精霊さん達からいろいろと教えてもらえるの?」

まだ年齢的にも十三、という年代のはずなのに知識が豊富。

しかも知りえないことまでよく知っているっぽい。

ゆえにこその疑問。

「知ろうとおもえば誰でもいろいろと知ることはできるものよ?」

そう。

それだけの覚悟があれば誰でも知ることは可能。

かつて人類がおこした罪に目をむけるかどうかはそれぞれが決めること。

いまだに伝道師達がきちんと説明してもその事実を捻じ曲げて伝えるほどに人は愚かな行為を繰り返している。

一部にはきちんと歴史を伝えようとするものがいても、周りがそうさせていない。

それが今の今までずっとつづいている。


真実はそれぞれがきちんと見つめ、そして答えをみつけなければいけない、というのに……



次回は資格試験の予定・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ