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めぐみの騒動を思い出しつつ、家路についていた島内・・・
玄関の前まで行くと、優香が立っていた。
しばらく、立ち止まる島内
島内のほうをじっと見つめる優香・・・
そして
かすかな声で
「ごめん・・・」
そうつぶやいた。
あれは、2年前・・・
島内がプロポーズをしようと決めていた日だった。
優香は、自分の夢を追い、島内を置いてアメリカに旅立ったのだった。
突如、目の前にあらわれた優香・・・
動揺する島内・・・
島内の脳裏には、別れた時の風景がよみがえってきた。
そして、
動揺し優香を直視できないでいたのだった。
しばらくして、
優香が「光一さん・・」と話しかけようとした。
島内は、俯き優香を無視し家に入ろうとした。
その瞬間だった。
ある言葉が島内の背中をおした。
「会ったほうがいいと思います。」
気がついたら振り返り優香を抱きしめていた。
優香も彼に身を任せた。
しかし、
次の瞬間、優香を抱きしめていた手が彼女から離れた。
そして、
島内は、自分の気持ちを伝えた。
「ごめん 今日は帰ってくれ・・・」
その頃、めぐみは、悩んでいた
電話すべきかどうか
そして、自分が誰かという事を話そうかどうか
島内を見つめる優香、
その瞳にはかすかに涙が・・・
島内はその姿に言葉を失う。
そして
優香に背を向けた。
島内背中を見つめる優香
もう一度
「ごめんな・・さ・・・い」
しかし
島内の背中が少しずつ遠くなる。
一歩、そして、また、一歩と
優香は思わずその背中に抱きついた。
「ごめんさい・・・本当に・・・」
動きを止めた島内
優香の手を見て、
ゆっくりとその手をはずした。
「すまないが。今日は帰ってくれ。」
島内は同じ言葉をもう一度繰り返した。
再びゆっくりと歩き始める島内
そのまま家に入って行った。
それをただ見つめる優香・・
瞳に溜まっていた涙がとめどなく流れていた。
家に入った島内、閉じた玄関にもたれかかり、
眉間にしわを寄せ、
うつむき、
頭に手を当て少し首を振った。
昔の記憶がよみがえる。
「私、留学したいの。」
優香の言葉に驚く島内、
「急にどうしたんだい。」
「前から思っていたの。」
「どうして、黙っていたんだ。」
「反対するでしょう?」
「それは・・」
「やっぱり反対なんでしょ。」
優香の言葉に戸惑う島内、
「ちょっと、考えさせてくれ。」
数日後、
やはり山内は優香と離れられないと思った。
そして、
留学に反対した。
結局、
二人の話は、平行線のまま、また数日が過ぎた。
島内は、ある決断をした。
明日、プロポーズしようとそうすれば、
彼女も思いとどまってくれるだろうと
「優香、明日あいているか?」
「ええ・・」
「じゃぁ。6時にかたつむりで待っている。」
「わかったわ。」
5時についた島内、その手には婚約指輪
そして、
優香を待った。
「お客様、これをお預かりしています。」
店員が手紙を持ってきた。
「これ?」
不思議そうにその手紙を見ると優香からだった。
光一さん、ごめんなさい。
わがままな私を、お許しください。
今日、旅立ちます。
優香
その手紙を見て慌てる島内、急いで空港まで向かった。
しかし、
その頃、優香を乗せて飛行機は、まさに離陸の瞬間だった。
「光一さん、ごめんなさい。」
そんな光景を思い出し、頭を抱え玄関に座り込む山内。
しばらく、
島内の家の前で、涙を流していた優香、ふと気付くと鼻血が出ていた。
彼女は、慌てて鼻血をふき取り、とぼとぼと家路についた。