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めぐみが屋上に着くとすでに山下が待ち構えていた。
「飯塚さん、話って何、手短に言ってくれないか?」
「あの~、私」とめぐみが思い切って言おうとしたら。
「ちょっと待ってくれ、」
「えっ?」
「これだけは、言っておかないと。俺は、飯塚さんとは、いい同僚でいたいんだ。」
その言葉を聞いて、めぐみの気持ちが一瞬で、遠のいて行った。呆然とするめぐみに
山下の言葉は、容赦なかった。
「言っている意味がわかるな。」
「はい。」
ただ、うつむいて返事をするのが精一杯のめぐみに、山下は、最後
「それに、俺、好きな人がいるから。」
めぐみの胸を貫いた。そして、心の中で”私が飯塚めぐみです。”と叫んだ。
しかし、その声は届かない。
「じゃぁ、お互いがんばろう」と言って、すれ違う山下
呆然と立ち尽くすめぐみを置いて、山下は、一人事務所に戻った。
山下がいなくなって、しばらくして、ガクッと足が崩れ座り込むめぐみ
どうしてこんなに苦しいの・・・
私はここにいるのに・・・
どういたらいいの?
めぐみは、泣いた。