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「こんな早くに面会なんて、どうしたの。まだ7時よ」
突然、病室に入ってきた山下を見て優香が驚いた。
山下が出勤前に面会にきていたのだ。
「いや、昨日、遅かったんで、それと今日、来れそうにないから」
「それだけ?」
「それだけだよ。」
「それと、昨日は、本当にごめんなさい・・心配掛けて。」
優香はあらためて謝ってきた。
「そうだよ、本当に驚いたよ。・・・それに光兄ぃには、もっと驚かされたけど。そういえば、光兄ぃは?」
そう言って山下は、辺りを見まわした。
「ジョンとお散歩よ。多分、ひょっとしたらめぐみと会ってるかも。」
「えっ・・・」
「そういえば、めぐみにも謝って・・お願いできる?」
「自分から言えば」
「めぐみ、いつ来るかわからないから」
「俺も同じだよ。いつ会えるかははっきりしないから。」
「何言ってるのよ。めぐみをいつも誘ってるくせに。」
「えっ?」
「知ってるわよ~めぐみと欲のみに行くんですってね。」
「それは・・」
「ひょっとして、めぐみのこと好きなの?」
「あのなぁ~」
慌てる山下を見た優香、もう・・顔に出てるんだからと楽しそうに。
「ひょっとして?図星?」
「さっきから、めぐみ・・めぐみ・・・ってところでいつからそんなに仲良くなったんだ・・・あんまり言うと、光兄ぃに嫉妬されるぞ。。。」と山下は話題をそらそうとした。
山下の言葉にあきれる優香・・・本当に・・・かわいいんだから
「あら、いけないの。めぐみってよんだら。・・・・ひょっとして、妬いてるの?」
山下は、冷静さを失った。
「おれが!? 妬いているって。」
「かわいいわよねぇ。めぐみ・・・」
優香は山下をあおった。
「な・・何を・・・俺は・・ただ、めぐみと会っていたら。光兄ぃがやきもちを妬くって。」
「わたしも最初は、騙されたもの。めぐみちゃんに・・・」
「めぐみちゃん?・・・あいつは、男だろ・・・」
山下はため息をついた。
「どうしたの? 好きなんでしょ?」
山下はうつむいて。また、ため息をついた。
「なにか、あったの?」
「いや・・・」
「ふ~ん」
「そろそろ、会社に行く時間だから・・・じゃぁ、また。」
会社で仕事をしていた山下、ふとめぐみのことを思い出し、ため息をついた。
「山下さん。」
奥山が声をかけた。
「なんだ?」
そう言っておもむろに顔をあげる山下、いつもの歯切れのよさがない。
「今日、めぐみ」
奥山が言いかけると山下はびくっとなった。
「なに、驚いてるんです?」
「いや、なんでもない・・・」
無理に驚いた表情を隠す山下。
「めぐみ、今日休むそうです。」
「そうか・・・」
山下の様子が気になった奥山は心配して
「なにか、あったんですか?暗い顔をして」
そう話しかけたが、山下は、適当にうそをついた。
「本当になんでもない。・・・友人が入院しただけだ・・・」
「そうですか。」
奥山は、山下の前から去った。
そして
しばらく歩いて
「めぐみも二日酔いでも、出てくるのに・・めぐみになにかあったのかしら」
思いつつ自分の席に向かった。