1
びしょ濡れのふたり
「ちょっとまってろ。」
山下は、玄関にめぐみにを待たせた。
しばらくして、上半身裸になった山下があらわれた。
「うわ~」と驚いためぐみに
「何を驚いてんだよ、これも着てろ」とタオルと服を渡した。
それを見るめぐみ、山下の方を見て
「洗面所借りてもいいですか?」
「いいよ」
めぐみは、洗面所で着替えていた。
上着を着替え、ズボンを脱いだとき、
ガチャと山下がはいってきた、
「キャッ」
声をあげためぐみ
「なにが、きゃっだよ。男のくせに・・・」
山下は、上は白い大き目のYシャツ下は、何もはいていないめぐみの姿を見て、
少しどきっとした。
「ちょうど、今から、飲みたいから・・・付き合え。」
そういい残して洗面所を出て行った。
しばらく、めぐみは動悸がおさまらなかった、
というより、
何でこんなに、セクハラを受けるの?と思っていた。
そして、深呼吸して、洗面所を出た。
めぐみが山下の前に座ると
「ほら」
山下が缶ビールを差し出した。
「今日は、元気ないですね~」
めぐみが聞くと、
「う~む」
「この間の彼女とはどうだったんですか?」
しらばく、めぐみをにらむ山下。
「なっ・・・なによ。」
めぐみは、立ち上がり山下の方へ動いた。
それを見て、はぁ~とため息をし、山下はつぶやいた。
「ずっと・・・俺の片思いだったんだよ。」
「片思い・・・か」
めぐみは、山下の横に座り、山下と優香のことを思い出した。
缶ビールをグビと一口飲み・・
「はぁ~」とため息をついた。
無言でめぐみの方を見る山下、
そして、
「お前こそ、何だよ。ため息なんかついて。」
「あっ・・いや・・・なんでもない・・こっちのこと」
めぐみはあわてて
「で・・どうするの?」
聞き返した。
「どうするって・・」
「告白するの。」
「それは・・・」
「じゃぁ、あきらめるの」
「誰が」
山下は少しにらんだが、すぐにかなしそうな顔をして、
「そうだな~」
その言葉を聞いて、
あの二人、お似合いだもんな
それに、私の入る隙間もなさそうだしと思い再びため息をついた
「何、ため息をついてるんだ。」
「あ・・いや・・」
めぐみが戸惑っている時、携帯がなった。
「ちょっと・・」
携帯をとるめぐみ
「はい、?・・・雨がやんだら、かえるから・・」
と話を終えた。
「だれ、彼女?」
興味本位に聞く山下。
「誰でも、いいじゃないですか。ところで本当にあきらめるんですか?」
めぐみが切り返した。
「そうだなぁ~、あきらめるか。」
「だったら、あの娘なんかどうです?」
「あの娘?」
「この間、喫茶店に来ていた。・・」
「あ、奥山、・・・奥山は、無理だ。」
山下が言った後、しばらく考え込んだ。
ふとあることを思い出し、
そして
めぐみをじっと見た。
めぐみは山下の行動に躊躇して、
「なんですか。私の方を見て」
「飯塚、お前、実は女ということにして、俺の彼女をやってくれないか」
「はぁ?」
その言葉を聞いて驚くめぐみ
「奥山は、部下だし、むげに断れない。」
「なら、なおさら、こんな方法は、無理じゃないですか。それに、わたしは、女です。」
山下は、もう一度、めぐみをジーと見た。
「な・・なによ・・」
しばらくして、めぐみの頭をバチッと叩いた。
「いた~い。なにすんのよ。」
めぐみは、叩かれたところを両手で押さえた。
「何を言ってるんだ、どう見ても男だろ。」
山下は頭を抱えためぐみを見て言った
「いたた・・」
言いつつ、めぐみはため息をついて、
「好きになってくれる女性の方がいいんじゃないんですか。」
「いやなんだよ、あいつだけは、手伝ってくれんのか?」
「それが人に頼む態度ですか?」
めぐみは断ろうとした。
すると、山下は、両手をあわせて
「頼む、この通りだ。」
「本当に、彼女が嫌いなんですね。」
「ああ」
「どうしてなんです?」
「そこまでいわないとだめか?」
「まぁいいですけど・・・、いたずらに傷つけても効果ないよ・・」
「じゃあ、どうしたら。・・・」
山下は考えていた。
「じゃぁ~」
めぐみはあくびをした。
ふと、山下がめぐみに目をやるとうとうとして、今にも眠りそうだった。
おとこのくせに、かわいい寝顔をしてやがる・・・
気が付くと、じっと、めぐみを見つめていた。
しばらくして、いかんいかんと思いめぐみから離した。