人の形
ネットで見つけたソレは、まるで生きているようだった。
──深夜2時
薄暗い部屋で、椅子に座って動かない人影があった。
この部屋の住人が購入した、百万円もする等身大の人形である。
その、無表情の人形を静かに見つめる2つの目があった。
以前、この部屋に住んでいた老婆だった。
部屋の隅で、正座して暫く人形を興味深く見ていたが、やがて立ち上がり、人形にゆっくり近づいていった。
「あ…あ…若い体…私の…ワタシの…わたしの…」
老婆は手を伸ばし、人形の首を掴んだ。
だが、何の反応も示さないのを不思議に思い、人形の顔を覗き込むと、ようやく人間ではないと理解した。
老婆は、¨ニヤリ¨と唇の端を吊り上げると、人形の中へ入り込んでいった。
──翌朝
この部屋の住人が、出かける準備をしていた。
途中、人形に近付くと胸元に手を入れ、ニヤニヤ笑みを浮かべていた。
それから何日か過ぎて人形から、異臭がするようになってきた。
不思議に思い、人形を調べていると、なかから老婆の遺体が出て来た。
幸せそうな顔をしていた。