くじけぬ執念と、環境の掌握にゃ!
しかし、キラの魂の最深部にある、一人の「人間」としての誇りは、この程度の敗北で死に絶えるほど軟弱ではなかった。理不尽な世界の中で、何度も冷たい風に晒されながらも、大切なものを守るために生き抜いてきた不屈の執念が、ズキズキと痛む脳を強引に再起動させる。
(一度の敗北で立ち止まっていられるか。守るべき拠点が、人脈が、そして俺をアニキと呼ぶ仲間がいるんだ……!)
キラは小さな舌で汚れを舐めとり、鋭い瞳を取り戻した。真正面からの力押しが通用しないのなら、確実に仕留められる「罠」にハメるまでだ。
キラは猫耳ネットワークをフル稼働させ、倉庫周辺の人間の動線や、周囲の環境の観察を開始した。
(あの装甲ネズミは、穀物袋の匂いと特定の温度に執着している。そして、倉庫の入り口には、人間たちが設置した、重さ数十キロの鉄板を落とす大型魔獣用のギロチン式捕獲罠があるな……)
キラは怪我を押してトコトコと立ち上がった。
今回は、自分の魔法を直接の武器としては使わない。巨大な罠を最高のタイミングで発動させるための、「仕掛けのスイッチ」として使うのだ。
倉庫の天井付近の梁へと音もなく忍び込み、罠のロープが繋がる滑車のボルトに狙いを定めた。
白猫は静かに息を整えた。
ネズミが走るスピード、罠が落ちる位置、ロープを焼き切るタイミングを頭の中で完璧に計算し、大気の中に罠を仕掛けていく。あとは、あいつが仕掛けのスイッチを踏むだけだ。




