見透かされない - 4
私はにべーた。
かれこれ数ヶ月、萌衣と透子と学校生活を共にしている。
こんなホムンクルスな私でも、感情はあるんだと知った。
死にたくない。まだ、彼女らのことを忘れたくない。
「ドクター、私が死んだあと、記憶をγに引き継いでくれませんか?」
「ダメだ。記憶を引き継げば、それだけ管理が難しくなるんだ。簡単に言うんじゃない。」
「わかりました。ドクター。」
辛い。αは、よく自らを犠牲にできたものだ。
・・・
実験で幾度か死の淵に立ったことがある。
前回の死因を再現した、”強度実験”だ。
私たちIIシリーズは、死因を分析し、それの対策を施すというのを繰り返し、
最終的に形態がωへと移行した際、”ほぼ死なない”最強の生命体を作ることを目標としている。
そして、形態移行が完了した際、複数回の、強度実験により、死因に耐えられるようになったかを実験する。
そして残念ながら、私は死因を分析するために命を落とした。
焼死。それが、私の死因だった。
・・・
「初めまして。国立新生物学研究所から来ました。ホムンクルスII - γです。」
「また、死んじゃったのか。」
「…」
とーこちゃんも悔しそうだ。
「ねぇ、お昼食べよう?」
「いいよ。マシュマロしかないけど。」
・・・
Q.にがんまは怖くないの?死ぬの、
A.怖いよ。どうかしたの?
Q.記憶、なくなるの怖くないの?
A.いや、まだ実感が湧かないんだ。
「ね”ぇ~トランプ!」
「没収ー。いくよー。あ、にがんま、放課後教室残ってね。」
・・・
「―――これが、にあるふぁ、にべーたとの全てだよ。」
「死ぬたびに記憶がなくなっちゃうみたいだけど、とーこと私が教えてあげる。」
そう、これが、私たちの出した答え。
私たちが、前個体の気持ち、出来事、会話をつないでいく。
それでいい。それしかない。
「過去の個体はいい出会いがあったみたいだね。羨ましいよ。」
にがんまちゃん、そんな顔しないでよ。
悲しいじゃんか。
・・・
「ドクター、記憶の引継ぎをさせてくれませんか。」
「だめだ。」
「なぜ?」
「前個体は引き下がった。つまり私の考えは正しい。それで十分だ。あきらめろ。」
こっちは忙しいんだと告げる。
「いいんですか?私は、ふつうの人間より強いですよ?」
「チッ…スリープさせろ、カプセルに入れるんだ。」
ドクターの護衛がこっちに走ってくる。
まずは蹴り、右腹に六発拳を打ち込む。すかさずもう一人を左手で相手する。
「はっ!インスタントトレーニングの効果ですかぁ?これがッ!!」
「おい!研究所を爆破しろ!!研究個体が脱走した!」
「所長は!?」
「構わん!やれ!」
「なっ!!!」
・・・
「とーこ!いまどこにいる!?」
「え?なに用って。」
「―――にがんまの研究所が爆発した!」
「―――えっ」
すぐさまタクシーを呼んで、萌衣のところまで走る。
萌衣はなんか役に立ちそうなものを携えて待っていた。
「「国立新生物学研究所へ!!」」
・・・
研究所があったところには、ずいぶんと大きな穴が開いていた。
「この中にッ!!とーこ!いくよ!」
「えっなになになになに!!!!!!」
萌衣は、穴にダイブしていった!あたしを乗せて!
「ひぃぃぃ!!!このアホ羊!!」
「もえぴが羊たる所以!見せてやるぜ!!」
萌衣はその瞬間毛を体中から生やして、毛玉の中にあたしを包み込んだ!!
「女子力消えるからやりたくないんだけど!そうも言ってらんないよね!!」
ぽふっと着陸し、がれきの中からにがんまを探す。
「―――見つけた!!」
月明り一つない、暗い部屋。
「とーこ?来てくれたの?」
「うん。」
「ごめんね、いま見せられる顔してないから。」
にがんまは顔をそむけた。
「大丈夫。今は暗いから。透明だとか、ホムンクルスでも、見えないから。」
「そうだぜ!毛むくじゃらでも見えない!」
「そうか。見えないなら、いいかな。」
「そう。にがんま、監視されていない。見透かされないの。」
「「―――自由だよ、にがんま。」」
「ありがとう。みんな。」
・・・
暗闇の中で、人影が三人。
その影がいったい誰なのか、
その笑い声は誰のなのか、
誰一人見透かすことは叶わなかった。
設定
透子
中学校を卒業する直前、受験合格のお祝いにドライブに行った人間の少女。
ドライブ中に事故にあい、母親を亡くした。
自身も全身が激しく損傷し、もう助からないだろうと言われていた。
そこに、父親の伝手で医者が紹介され、多額の費用をかけて手術をした結果、
生身の骨だけを軸とした、ただ”光を浴びると透明になる”だけのタンパク質で構成された肉体になってしまった。頭蓋骨は激しく損傷していたため、頭は骨すらも透明である。
萌衣
ビンボーなピンク羊頭角くるくるギャル。
わりと人の性格を把握することが得意で、人道的かつ合理的な判断を下す。
小中学校時代にビンボーでいじられキャラ的な扱いを受けていたのが嫌な思い出。
IIシリーズ
になんたらと呼ばれているが、ツヴァイなんていうかっこいい読み方がある。
完璧な生命体を作るための実験体として存在している。
死んだとき、記憶は引き継がれないが、死因のみを克服して復活する。
なお、研究所が崩壊したため、もう死ぬと復活はできない。




