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100奇譚  作者: 非辻 嫌欺
7/7

見透かされない - 4

私はにべーた。

かれこれ数ヶ月、萌衣と透子と学校生活を共にしている。


こんなホムンクルスな私でも、感情はあるんだと知った。

死にたくない。まだ、彼女らのことを忘れたくない。


「ドクター、私が死んだあと、記憶をγに引き継いでくれませんか?」

「ダメだ。記憶を引き継げば、それだけ管理が難しくなるんだ。簡単に言うんじゃない。」

「わかりました。ドクター。」


辛い。αは、よく自らを犠牲にできたものだ。


・・・


実験で幾度か死の淵に立ったことがある。

前回の死因を再現した、”強度実験”だ。

私たちIIシリーズは、死因を分析し、それの対策を施すというのを繰り返し、

最終的に形態がωへと移行した際、”ほぼ死なない”最強の生命体を作ることを目標としている。


そして、形態移行が完了した際、複数回の、強度実験により、死因に耐えられるようになったかを実験する。


そして残念ながら、私は死因を分析するために命を落とした。

焼死。それが、私の死因だった。


・・・


「初めまして。国立新生物学研究所から来ました。ホムンクルスII - γです。」


「また、死んじゃったのか。」

「…」

とーこちゃんも悔しそうだ。

「ねぇ、お昼食べよう?」

「いいよ。マシュマロしかないけど。」


・・・


Q.にがんまは怖くないの?死ぬの、

A.怖いよ。どうかしたの?


Q.記憶、なくなるの怖くないの?

A.いや、まだ実感が湧かないんだ。


「ね”ぇ~トランプ!」

「没収ー。いくよー。あ、にがんま、放課後教室残ってね。」


・・・


「―――これが、にあるふぁ、にべーたとの全てだよ。」

「死ぬたびに記憶がなくなっちゃうみたいだけど、とーこと私が教えてあげる。」

そう、これが、私たちの出した答え。

私たちが、前個体の気持ち、出来事、会話をつないでいく。

それでいい。それしかない。


「過去の個体はいい出会いがあったみたいだね。羨ましいよ。」

にがんまちゃん、そんな顔しないでよ。

悲しいじゃんか。


・・・


「ドクター、記憶の引継ぎをさせてくれませんか。」

「だめだ。」

「なぜ?」

「前個体は引き下がった。つまり私の考えは正しい。それで十分だ。あきらめろ。」

こっちは忙しいんだと告げる。


「いいんですか?私は、ふつうの人間より強いですよ?」

「チッ…スリープさせろ、カプセルに入れるんだ。」

ドクターの護衛がこっちに走ってくる。

まずは蹴り、右腹に六発拳を打ち込む。すかさずもう一人を左手で相手する。

「はっ!インスタントトレーニングの効果ですかぁ?これがッ!!」


「おい!研究所を爆破しろ!!研究個体が脱走した!」

「所長は!?」

「構わん!やれ!」


「なっ!!!」


・・・


「とーこ!いまどこにいる!?」

「え?なに用って。」



「―――にがんまの研究所が爆発した!」



「―――えっ」

すぐさまタクシーを呼んで、萌衣のところまで走る。

萌衣はなんか役に立ちそうなものを携えて待っていた。

「「国立新生物学研究所へ!!」」


・・・


研究所があったところには、ずいぶんと大きな穴が開いていた。

「この中にッ!!とーこ!いくよ!」

「えっなになになになに!!!!!!」

萌衣は、穴にダイブしていった!あたしを乗せて!

「ひぃぃぃ!!!このアホ羊!!」

「もえぴが羊たる所以!見せてやるぜ!!」



萌衣はその瞬間毛を体中から生やして、毛玉の中にあたしを包み込んだ!!

「女子力消えるからやりたくないんだけど!そうも言ってらんないよね!!」


ぽふっと着陸し、がれきの中からにがんまを探す。



「―――見つけた!!」



月明り一つない、暗い部屋。

「とーこ?来てくれたの?」

「うん。」

「ごめんね、いま見せられる顔してないから。」

にがんまは顔をそむけた。

「大丈夫。今は暗いから。透明だとか、ホムンクルスでも、見えないから。」

「そうだぜ!毛むくじゃらでも見えない!」


「そうか。見えないなら、いいかな。」

「そう。にがんま、監視されていない。見透かされないの。」



「「―――自由だよ、にがんま。」」



「ありがとう。みんな。」


・・・


暗闇の中で、人影が三人。

その影がいったい誰なのか、

その笑い声は誰のなのか、

誰一人見透かすことは叶わなかった。

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透子(とーこ)

中学校を卒業する直前、受験合格のお祝いにドライブに行った人間の少女。

ドライブ中に事故にあい、母親を亡くした。

自身も全身が激しく損傷し、もう助からないだろうと言われていた。

そこに、父親の伝手で医者が紹介され、多額の費用をかけて手術をした結果、

生身の骨だけを軸とした、ただ”光を浴びると透明になる”だけのタンパク質で構成された肉体になってしまった。頭蓋骨は激しく損傷していたため、頭は骨すらも透明である。


萌衣(もえ)

ビンボーなピンク羊頭角くるくるギャル。

わりと人の性格を把握することが得意で、人道的かつ合理的な判断を下す。

小中学校時代にビンボーでいじられキャラ的な扱いを受けていたのが嫌な思い出。


II(ツヴァイ)シリーズ

になんたらと呼ばれているが、ツヴァイなんていうかっこいい読み方がある。

完璧な生命体を作るための実験体として存在している。

死んだとき、記憶は引き継がれないが、死因のみを克服して復活する。

なお、研究所が崩壊したため、もう死ぬと復活はできない。

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