第18話「猫、だけじゃ満足できなくなってきたにゃん……」
(やばいにゃ……これはもう、完全に……)
私は今、休憩室のソファで、霧崎さんとふたりきり。
しかも。
「……で、その夢の中で僕は何をしてたの?」
「な、なんのことですかにゃん!!?」
「今、“にゃん”って言ったよね?」
(ひっっ!!!)
もうダメだ、いろいろ漏れてる。
当たり前のように語尾に“にゃん”ついちゃってるし、表情ゆるんでるし、
なにより——
(今の私は……“夢の中の霧崎さん”にすっかり中毒にゃん……)
研究記録No.018:
【今の私は、猫になった夢でえっちなことをされるだけじゃ、満足できなくなっている】
そう。はっきり言ってしまえば、夢の中の霧崎さんに犯されることに、私は慣れてしまったのだ。
そして、慣れた先にやってきたのは——
**「もっと、してほしい」**という、欲望。
(だって、もう何度も何度も夢で攻められてきたし、体の反応もよく分かってるにゃん……)
だけど。
問題はそこじゃない。
(夢の中じゃなくて……“現実の”霧崎さんにも、ちょっと期待しちゃってる……ってこと)
自分でも、それがヤバいことくらい分かってる。
明晰夢に没頭するのは趣味の範囲……のはずだった。
でも、霧崎さんの視線や、たまに見せる意地悪な笑みを見ていると、
どうしても夢の記憶と重ねてしまう。
たとえば、今この瞬間——
「……なんか、顔に出てるよ。妄想してた?」
「へっ!?してませんにゃん!!」
「“にゃん”って言ってる」
(うぅぅ……もうだめにゃん……)
しかも霧崎さん、完全に楽しんでる。
夢の中のドS霧崎と、現実のクール霧崎が、
じわじわと同一人物になっていく——そんな感じ。
「天王洲。次の夢も参加していい?」
「へ?」
「いや、だから。“研究協力者として”って意味で」
(うわあああああそれってつまり……!?)
“家に霧崎さんを招待する”という、とんでもない選択肢が当たり前になってきた。
しかも本人の口から。冗談のようで、本気にしか聞こえない。
だって霧崎さん、あんな真顔で……!
(いやでも、そんな……霧崎さんが、家の中で……)
脳内に浮かんだのは、より生々しくなった“明晰夢シーン”。
霧崎さんが、私の猫耳を撫でて、
「こっち、来いよ」って低い声で言って——
(ほんとに、もう猫だけじゃ足りないにゃん……)
かえにゃは決めたにゃん……
「霧崎さん……次の夢、わたし……“ヒトのまま”で参加したいです………」
「……ふふ、ついに言ったね」
霧崎さんは、静かに微笑んだ。
その笑みは、今まで見たどんな夢より、どんな現実より、
いちばんゾクッとするやつだった。




