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第13話「夢のにゃかで、ふたりきり」

「……じゃあ、次は一緒に、夢で会いますか?」


「もちろん」


最高のおかずとバイブを忍ばせ

静かに、まぶたを閉じる。


ベッドの中で、深く深く意識を沈める。


(霧崎さんと、夢の中で。今度は、最後まで……)


ドクン、ドクンと高鳴る心音。

体の奥でじんわり広がる熱。

あたしは、ゆっくりと意識を落とした。


目が覚めたとき、あたしはもう猫だった。


「にゃ……ん」


黒くて小さい前足。

ふわふわの肉球。

ひくひく動くしっぽ。

そして——


「来たな。天王洲」


霧崎さんの声。

そこには、スーツでも白衣でもない、部屋着姿の彼がいた。

でもその目は、どこまでも鋭くて、どこまでも優しい。

そして、何より、私を私と認識してる……!


「やっぱり、これが君だったんだな。……かわいいよ、天王洲……」


「にゃあっ!?!?」


照れる暇もなく、霧崎さんの大きな手があたしの背中をなでる。

ひと撫でされるたびに、電流みたいなゾクゾクが背中を走って——

あっという間に、あたしはへなへなと床に倒れこむ。


(やば……! 現実より……エロいにゃん……!!)


「この耳……こんなに敏感なんだな。ここ、好きだろ?」


耳の先をそっと、撫でられる。


「にゃぁ……あっ、そ、そこは……っ!」


言葉にならない声がもれる。

なのに霧崎さんは、わざとゆっくり、意地悪く、何度も何度も耳を撫でる。

次第にそれは、首筋、あご、そして胸元へ。


「……っ、ん、にゃ、あ……」


舌が、あたしの首筋を這う。

あのときと同じ、いや、それ以上に丁寧で、執拗で、優しい。

猫の体は正直すぎて、背中が勝手に反って、足先がピンと伸びてしまう。


「っ、霧崎さん……霧崎さん、好き、です、にゃ……」


「……俺もだよ。天王洲」


その声は、夢の中なのに、どこまでもリアルだった。

あたしの小さな体を抱きかかえると、霧崎さんはそっとベッドに横たえた。

まるで本物の恋人のように。


「天王洲の姿でも、猫の姿でも——どちらでも、君を抱きたいと思うんだ」


(なにそのセリフぅぅぅぅぅ!!)


完全に、心の臓が破裂しそう。

理性がギリギリにゃん。

でも……今日は、起きない。


そう——脳波を調整するアロマを部屋に焚いてきた。

絶頂しても夢から醒めない実験、成功するかもしれないにゃん……!


「じゃあ、今日は——キスの続き、してもいいか?」


「……っ、にゃ……お願いします……」


唇が近づく。

今度こそ、ちゃんと。夢の中でも、現実の気持ちで——


「可愛いよ。夢でも現実でも、俺は君のこと——」


——ちゅっ。



鼻先が触れるくらいの距離。

目を閉じた霧崎さんの睫毛が、まつげ美容液のCMよりも美しくて、

その睫毛の根元から流れる熱が、唇に直結してる感じだった。


「……んっ……」


夢の中なのに、声が漏れる。

猫の体で。霧崎さんの腕の中で。

私は……恋に溺れたまま、完全に、女の顔になっていた。


霧崎さんの手が、私の背中をゆっくり撫でる。


毛並みを逆立てるように、指先がゾクゾクするラインをなぞって——

そのたびに、私の中の何かが溶けていく。


「お前、ほんと……変な猫だよな」


そう言って微笑んだ霧崎さんの瞳は、

どこか切なくて、でも優しくて。


「もっと……お前のこと、知りたくなってきた」


——え?


(え、え、ちょっと待って、それって……!?)


「こっちに来いよ」


彼の手が、私の猫のあごをそっと持ち上げる。

首輪をつけた猫のように、されるがまま。


(やばい、やばいにゃん……!!これは……これは……っ)


次の瞬間、霧崎さんは私を抱きかかえるようにしてソファへ。


まるで、子猫を甘やかすみたいに私の体を包み込む。

でもその指先は、どこか——やらしい。


背中から腰にかけてなぞる手。

太ももの内側へと自然に滑り込む指。


(にゃにゃにゃ!?どこ触ってんですか!?!?)


「は……っ、う、うそ……そこ、は、っ……!」


私はもはや猫なのか女なのか分からなくなるくらい、

ぴくんと腰が跳ねた。


猫の体なのに、ちゃんと快感が来る。

それもすごいスピードで。


「このへんが、弱いんだ?」


「にゃああ……っ!」


声が漏れるたびに、霧崎さんの目が細くなる。


「やっぱ変な猫……」


「そ、そうだにゃん……変な猫ですにゃん……!!」


夢だからなのか、それとも霧崎さんが変なのか、

なにがどうなってるのか分からないけど、

もうどうにでもなれって感じで、私は目を潤ませながら彼に身を預けてた。


「……ちゃんと見せて。どんな顔してるか」


「にゃぁぁぁあん!!」


その瞬間、彼の指がぐっと、深く入って——


——目が覚めた。


「ぴゃっっ!!」


現実の布団の中で、私は跳ね起きた。

薄暗い部屋。

鼻先が冷たくて、脚の間がびしょびしょで。


目が覚めたとき、視界が真っ白だった。


「あれ……まだ……夢?」


いや、ちがう。

これは……現実。ベッドの感覚はある

でも——


「……にゃ、にゃっ!?」


顔の上に謎のメモが置いてあった。

背筋が凍る。慌てて内容を確認する。


「次は、現実でも。朝食を冷蔵庫に入れておいた。起きたら温めて食べるように。——霧崎」


「し、知らないうちに部屋に来てた!?!?!? え、なにこれ、なに、これ!!?」


————夢と現実が交錯する。


(いや、もしかして……全部、まだ夢……?)


頭が追いつかないまま、あたしはメモを胸に抱えて、ベッドから転がり落ちた。

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