第10話「猫になっても好きでいてくれる?」
朝——
「……って、ああぁぁああああああ!!!」
ベッドの上で、かえにゃ(私)は叫んだ。
何がって、そりゃもう、昨夜のアレコレですよ。
霧崎さん、うち来て、撫でて、耳元で囁いて……あれ、夢じゃなかったの!?
現実!? あんなこと言ってた!?!? わたし死んでない!?
(霧崎さん……「現実の俺も、期待に応えたくなる」って……
それって……それって…………
脳がとろけるほどえっちに責めてやるよってこと!?)
「ひぇぇええ……生きていけないにゃん……!!」
お布団の中でバタバタもがく。
猫じゃない。人間なのに、脳みそが完全に発情黒猫モード。
……けど。
「猫になっても、好きでいてくれる?」
ふと、そんな言葉が浮かんだ。
いや、言ってないよ? 誰にも。
でもね、夢の中の私は、たぶんずっと思ってた。
霧崎さんが好き。
どんな形でも、そばにいたい。
たとえ猫でも、たとえ言葉が通じなくても——
(でも、猫じゃなくても、わたしはわたしで。
もっと知ってほしいにゃん。
霧崎さんに、かえにゃとしてじゃなくて……楓として……!)
その日。
研究室では、いつものように霧崎さんがデスクに向かって黙々とデータを見ていた。
昨日のアレが嘘だったんじゃないかってくらい、いつも通り。
(あれ……? 夢だった……?)
いやいや、違う。違う。
スマホに残ってる発情中♡の履歴も、掴まれた腕の感触も、黒猫クッションも——
全部現実。
つまり、これが霧崎さんの「平常運転」ってことだ。
(はぁぁ……このツンとデレの波、心臓にもたないにゃん……)
「天王洲、こっち来て」
「はひっ!?」
急に呼ばれて、ビクッとする。
そのまま霧崎さんの隣の椅子にぺたんと座ると、彼は何やら資料を差し出してきた。
「君の“夢の再現手法”、正式にプロジェクトとして申請する」
「ふぁっ!?」
「機材も、モニタリング体制も整えて、共同研究として進めたい。
もちろん、被験者は君。研究者も、君と俺。異論は?」
異論どころか……!
「ふ、ふぁ、はいぃぃぃぃ〜……っ!」
「それと——」
霧崎さんは、ふっと、私の耳元に顔を寄せた。
「次に夢で会ったら、 キス するから」
「へぶぅっ!?」
変な声出た。
でも、しょうがないじゃん!? その距離、その声、その内容……!
え、何!? えっちな夢の次回予告!?!?
し、指入れちゃいますねーみたいなテンションで“キスするから”とか言う!?!?!?
霧崎さんは、そのまま何事もなかったかのように椅子をくるっと戻し、作業再開。
(無理にゃん。心臓もたないにゃん……!!)
その夜。
私は、決意していた。
(行くにゃん……!)
つまり——また、猫になるにゃん!
もう、意地とか恥ずかしさとかじゃない。
私は霧崎さんに、夢の中でも現実でも、触れてほしい。
猫でも、人でも。
どんな形でも、好きでいてくれるなら——
ベッドに寝転がり、黒いバイブをゆっくり挿れる。
(準備OKにゃん……。
かえにゃ、また、霧崎さんに会いに行くにゃ……)
絶頂とともに、意識がスーッと遠のく。
次に目を開けた時。
見慣れた、でも少し低く見える視点。
耳の奥で、フワフワと音が響く。
そして——あの声。
「おかえり、ルナ」
「にゃ……!!」




