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学園の卒業パーティーで追放されました〈裏〉

 追放屋に届く通信のほとんどはイタズラである。しかし、稀に本気の通信が届く。


「依頼はあるか?」

「ハイ。イチケンアリマス」

通信の内容を聞く。今回の依頼主は冒険者などではなく、ある国の高貴な方。依頼主は名乗ってはいなかったが、内容でバレバレだ。


 簡単にまとめると、王子の婚約解消の際、上手く根回しなどをしてほしいという依頼だ。不幸になりそうな人物は悪人と婚約を解消された公爵令嬢のみだが、公爵令嬢の方は隣国の王太子と仲が良いようだから問題はない。むしろ幸せになれるかもしれない。


 俺の追放屋としてのモットーは「誰も不幸にならない追放」だ。普段は冒険者パーティーを担当することが多いが、頑張ってみようか。


「さて。まずはマノン・ルロワについて調べるとしますか」

大きく伸びをして旅人に扮するための装備を着る。夜が更ける頃、俺は件の国の王都へ向かった。



「胸糞悪い」

調べた結果をまとめた紙を眺めながらため息を吐いた。


 マノン・ルロワ子爵令嬢はルロワ子爵の私生児だ……と言われている。私生児ですらなく利用するだけに引き取ったなんて言われているものだから、魔力を用いて血の繋がりがあるか調べたところ、全くなかった。


 彼女はルロワ子爵と娼婦との間にできた娘ということになっており、その美貌を買われて、子爵に六歳の頃に引き取られた。彼女の母は彼女に興味がなく、金と引き換えに、喜んで娘を子爵に渡したそうだ。ただ厄介払いができてラッキーぐらいにしか思っていなさそうだ。


 彼女の子爵家での生活環境はかなり悪かったようだ。父は道具としてしか観ておらず、義母は血の繋がりのない()を当然憎んでいる。使用人たちは娼婦の娘という最下層から子爵家令嬢となったマノンに冷たく接しており、食事が出されないことも多いらしい。彼女の兄は彼女に何度か迫ったことがあるそうだ。


「悪事を晒せば、ルロワ子爵は簡単に破滅しそうだ。……調べるのに時間がかかった割には楽な終わり方だ。時間が余ったから他の腐った貴族も晒し上げておこうか。ルロワ子爵の悪事だけを報告したら依頼主との関係性を察されてしまうかもしれない」

久しぶりの大仕事になりそうだ。偉い人(知り合い)にも手伝ってもらおう。



 依頼主の追放を見届けるため、使用人として学園の卒業パーティーに潜入する。目玉の婚約解消は案外すんなりと終わり、いきなりの婚約解消で静まりかえっている会場から、公爵令嬢は予想通り隣国の王太子に連れられ出て行った。今回の卒業パーティーは悪い意味で歴史に名を刻むことになりそうだ。

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