greenルート
greenルートです。執拗に暴言を吐く友達を止めたい主人公に、担当の人魚がするアドバイスとは?
「友人に暴言を止めて欲しくて。」
「んー、なるほど、お友達ね。私にも友達みたいな人いるけど、昔はしょっちゅう怒られてたな。...じゃあ今回はグリちゃんに任せる。では早速グリちゃんの所へレッツゴー!」
「グ、グリちゃん?」
シーラさんは私の背中を勢いよく押した。
「え?シーラさん!?あなたが叶えてくれるんじゃ、ないんですか?」
「ごめん私今呼ばれてるの!多分グリちゃん図書館にいるからそのまま突き当たりの部屋まで行って!」
「....。」
振り返るともうそこにシーラさんは居なかった。私は、長い長い廊下を歩き続けた。願いを叶えてもらうのだから、ちゃんとしなきゃ。周りを見回しながら歩くと、周りには恰幅の良い男性が描かれた絵画や、魚の模型のようなものがあった。8分ほど歩いて、ようやく突き当たりの部屋についた。目の前には「Library」と書かれた大きな扉がある。おそらくここがシーラさんの言ってた図書館だろう。ドアノブに手を添えた瞬間、私は急に不安になった。けれどここまで来たからには願いを叶える以外の道はない。私は意を決してドアを開けた。
そこには膨大な量の本が遥か上までびっしりと並んでいた。図書館だから当然だけど。私は辺りを見渡すが、誰もいない。
「誰かそこにいるのですか?」
急に背後から男の人の声がしてびっくりする。
「あ!」
「おっと驚かせてしまいましたね。失礼ですが、どなたですか?」
そこには淡緑色の髪にヘアバンドをつけた美しい人魚が立っていた。女性的な容姿だが声を聞くとおそらく男性だ。
「私は、イチカといいます。シーラさんに、グリちゃんって人を探すように言われて。」
そう私が伝えると、目の前の人魚は柔らかい表情になった。
「失礼しました。私はペール・グリーン。この国で福祉大臣を務めております。グリちゃんと言うのは私のことです。シーラ女王に言われて来た、ということは願いを叶えに来たのですね。」
「はい!...シーラ女王?」
「はい、あなたが先程出会ったシーラ様は、このモルーア王国の女王陛下なんです。」
「そうだったんですね。」
「とりあえず座りましょうか。」
グリーンさんは、目の前に椅子を持って来てくれた。私は勧められるまま、その椅子に腰掛ける。グリーンさんも向かいの椅子に座った。
「では、改めて、貴方の願いを教えてください。ゆっくりで大丈夫ですよ。」
私はゆっくり頷いて、話し始めた。
「私には、凄く気分の浮き沈みが激しい友達が居るんです。名前はシズカ、顔もよくて絵も上手くて、気分が良いときはとても優しい子です。けど、最近、あの子がおかしいんです。私の容姿をバカにしてくるんです。『あんたブスなんだからやれよ。』って掃除当番を押し付けられたこともありました。周りから雑に扱われるのは慣れているので別に良かったんですが、最近あの子の嫌がらせがエスカレートしてるんです。先生に相談しても、『あの子は心に病気を持っているし、根は優しいから、大目にみてあげて。』って、言われて、心に病気を持っているなら仕方ないかなとも思うんです。家族には、心配かけたくないので、話していません。私、あの子のことを友達だと思って接していたのですが、だんだんその感情に揺らぎが生まれてきちゃって、私があの子を突き放したら、嫌われちゃうかなって、さらに嫌なことされるのかなって思って、怖くて、悩んでて。正直、あの子が私に嫌な言葉を使わなくなれば、それでいいんです。これ以上暴言を吐かれるのは正直限界です。お願いです、あの子を止めて下さい。」
私がそう話し終わると、グリーンさんが数秒沈黙した後、こう言った。
「残念ですが、私達が出来ることは何もありません。とりあえずあなたは距離を置きましょう。」
「?え?」
思いもよらないグリーンさんの言葉に、私は困惑した。
「何で距離を置くんですか?願いを叶えてくれるんじゃないんですか?」
グリーンさんは、さっきより少し怖い顔で話した。
「あなたを傷つけてくる人と、無理に関わる必要はありません。あなたは先程、シズカさんは病気だから攻撃的になるのも仕方ないと仰いましたよね。例え病気だとしても、他人に酷いことをしていいことにはなりません。先生も、『あの子は根はいい子だから。』とあなたが相手の真意を汲み取らなきゃいけないかのように言ってくるのも謎ですし。どちらか一方が無理矢理我慢していなければ続けられない関係はどう考えても健全とは言えません。自分に惨めな思いをさせてはいけません。今すぐに離れた方がいいです。雑に扱われることに慣れてはいけません。まず、あなたは自分のことを大切にしましょう。」
「何で、雑に扱われることに慣れてはいけないんですか?私、こんなに元気なのに。」
「気づいていないようですね。自分を大切に出来ない内は、他の人も大切に出来ません。今は元気でも、シズカさんと無理に一緒にいると、いずれあなたは壊れていきます。悪縁に執着していては、本当にあなたに必要な良縁があなたから離れていってしまう。」
グリーンさんの言葉に私は焦ってこう返してしまった。
「私、シズカと一緒にいるの、無理じゃないです。私があの子から離れてしまったら、あの子は...。」
「では、何故先程シズカさんの暴言を限界だと仰ったのですか?何故此処へ来たのですか?」
「っ...。」
「あなたは、既に心に限界が来てるんですよね?そんな状態でこれ以上心に負荷を掛けると、今以上に、あなたにも、シズカさんにとっても最悪な結果になりますよ。今は、距離を置いた方がいいです。シズカさんはきちんと心の治療をしたら、いずれ止めてくれる時が来るかも知れせまん。自分がしたことを反省するかも知れません。けど、今無理に一緒にいる必要は微塵も無い。イチカさん、まずはあなた自身を守ってください。」
グリーンさんの言葉を聞いて、私は黙り込んでしまった。けど、グリーンさんは言う。
「自分自身が元気じゃないと、シズカさんを支えることは出来ません。シズカさんを見捨てろとは言っていません、距離を置けば良いのです。シズカさんは天涯孤独で支えてくれる大人が周りに一人もいなくてイチカさん以外の依存先がない訳ではないんですよね。それならきっと大丈夫です。ゆくっり休んで下さい。」
その言葉に、私は救われ、安心した。
「休む、か。」
「そうです。休むのです。」
「休もう休もう!」
後ろを振り返るといつの間にかシーラさんが来ていた。
「イチカちゃんはとても優しい人だね、嫌なこと言われても、変わらない姿勢で。私だったらすぐ逃げちゃうと思う。とりあえず、今は離れとこうね。」
「はい、グリーンさんシーラさん、ありがとうございました。私、スッキリしました。」
「よかったね。」
シーラさんがそう言い終わると、グリーンさんが、
「ところでシーラ様。」
「ん?」
「何故、イチカさんをここまで案内しなかったのですか?」
「あっ。」
「あっ、じゃないですよ、ウーナ様達に見つかったら本当にアウトなんですよ。」
「グリちゃんが迎えに行けば良いじゃん!」
「ならせめて『またお客さんが来たから迎えに行ってあげて。』の連絡くらいくれてもいいじゃないですか!」
そう会話する目の前の二人に、私は聞いた。
「ウーナ様って誰なの?」
「ウーナは、私のおばあちゃんなの。すっごく厳格ですっごく強いの。けど、私達が人間の願いを叶えているのを良く思ってないから、見つかっちゃダメなの。」
「そっか、ならさっき案内しなかったシーラさんが悪いね。」
「ちょっと!」
シーラさんがほっぺを膨らませて言った。すると、遠くの方から大きな声が聞こえて来た。
「しーーーーらーー!」
「この声は?」
「まずい!おばあちゃんだ!さっき倉庫でお菓子漁ってておばあちゃんとの会議出てないんだった!」
グリーンさんが焦りの声をあげて言う。
「何してるんですか。見つかっちゃいますよ!」
「よし、イチカちゃん、とりあえず今日はここでバイバイだよ。ごめんね!」
「良いんです。私、お二人のお陰で楽になったので。」
「バイバイイチカちゃん!」
「さようならイチカさん。」
そう言ってシーラさんが私に手をかざすと、次の瞬間には海に入る時の地底湖に戻っていた。
あの後私は、勇気を出してシズカと距離を置いて、話さないようにした。そうしたら、幾らか心は平穏になった。他人に期待しすぎず、「この人はこうだから仕方ない。」と心の中で諦めて距離を置くのも、いいかもしれない。
その後、グリーンとシーラ様は書類部屋に向かって、シーラはウーナに怒られた。
「シーラ、ちゃんと会議の時間くらい守りなさい。女王としてはしたないわよ。」
「ごめーん。」
「全然謝る気ない様ね。今夜のパーティーのお菓子は抜きかしら。」
「おばあちゃん!待って、今日レチェフランあるんでしょ、私も食べたいよ!」
「それならちゃんと仕事しなさいよ。」
ウーナがそう言うと、シーラは書類の整理を始めた。やっぱりやる気出せば仕事できんじゃん、と、グリーンは心の中で思った。
やっと8ルート目です。おそらく近いうちにblue Greenルートも公開すると思います。みんな気長に待っててね!