yellowルート
Yくんのルートです。友達を助けたい、友達を傷つける相手をやっつけたい、そう言う主人公に担当の人魚が告げるアドバイスとは?
「友達を助けたくって!」
次の瞬間、シーラさんは笑顔になって
「イチカちゃんにも友達いるんだ、ちょっと意外ー。」
「ちょっと!余計なお世話ですよ!」
「ごめんごめん!じゃあとりあえず今回はレモンに任せるわ。では、早速レモンの所までレッツゴー!」
シーラさんは私の背中を強く押した。
「えっ?レモンって?シーラさん!あなたが叶えてくれるんじゃ」
「ごめん、私これからおやつだから。レモン多分突き当たり右の奥の部屋にいると思うから!」
「え?!ちょっと待ってくださ」
全部言い終える前にシーラさんの姿は見えなくなっていた。
「ええっ?!」
仕方なしにトボトボと歩き始めたが、
どうしよう、どこに行けばいいのか全然わかんない。
「えっと、たぶんここ?で右かな?」
意を決して角を曲がった次の瞬間、私は何かにぶつかって慌てて声を上げた。
「うわわわ!すみません」
「こちらこそごめん、大丈夫?...君、見ない顔だね。」
目の前には淡い黄色の尾びれの容姿端麗な人魚が立っていた。お団子ヘアで、かなり女性的な容姿だけど、声から察するにほぼ確実に男の人。
「あの、すみません。ちょっと迷子になってしまって...レモンさんって方を探しているのですが...。」
「あっ、シーラに言われて来た感じ?」
「はい!そうです。」
「そのレモンってやつ俺だよ。申し遅れました。俺はペール・レモン。シーラの部下で、この国で農林水産大臣をしているんだ。」
「そうだったんですね。」
農林水産大臣ってどんな仕事だったけ。
「それはそうと、シーラから連絡があったよ。友達を助けたいそうだね。」
「はい。」
レモンさんは言う
「じゃあ一旦俺の部屋行こうか。ついて来て。」
レモンさんはすーと泳いで行った。私もレモンさんについて行く。しばらく泳いでいくと。
「ここが俺の部屋だよ。」
周りにはたくさんの書類が置いてあった。レモンさんはこっちを向いて言った。
「さて、改めて聞くけど、君は友達を助けてたいんだよね。」
私はコクリと頷いた。
「なんで、助けたいのかな?」
シズカを助けるんだもん。ちゃんと話さなきゃ。私は今まであったことを順番に説明し始めた。
「私には、同い年の幼馴染がいます。
名前はシズカ。優しくて人当たりのいい女の子です。
シズカは生まれつき体が弱くて、幼い頃は入退院を繰り返していました。
辛い手術も乗り越えて、中学では少しずつ登校出来る日も増えていきました。先生やクラスメイトにも恵まれて、全く同じ様には過ごせなくても一緒に楽しんでいました。
今は私と同じ高校に通っています。
イチカと同じ学校で学生生活を送りたいからと、一緒に受験してくれました。クラスは離れてしまったんですけどね。
今のシズカは、とても健康そうに見えます。でも、一生付き合っていく病なので、みんなと同じ様にやりたくても出来ないこともあるし、薬も沢山の種類を時間通りに飲みつづけなくちゃいけません。
それでも泣き言ひとつ言わないで頑張るシズカを尊敬しているし、親友として誇らしいなと思ってます。
シズカは本当に努力の人で、勉強も良くできるし、笑顔がとっても可愛い天使なんです!!
私も自分のクラスで新しいお友達との出会いがあったり新生活に追われているところはありました。クラスが別れてしまって階も違うので直接シズカのクラスの様子を知る機会は無くて。
それでもシズカとは毎日登下校も一緒だし、何でも話しあえてると思ってました。
でも、偶にシズカの表情が暗く沈んで見える時があって、なんと無くだけど元気がなかったんです。
最初は体調を心配しましたが、検診の結果は良かったと聞いていたし 新しい環境で少しはしゃぎすぎただけだよと笑ってくれていたので 確かに楽しいけど疲れちゃう時もあるかって、納得していました。
そんなある日、お昼休みに先生からシズカのクラスまで教材を運ぶ様に頼まれました。そこで驚く光景を目にしました。
明らかにワザと聞こえるように
『病弱アピール来た〜』
『マジきも〜い』
と、シズカのことをイジって笑っている子達がいたんです。
「はっ?!何言ってんの?!やめてよ!」と言ったけど、クスクス笑いながら何人かで連れ立って行ってしまいました。シズカは白い顔を一層白くして俯いていました。
時間がないせいでクラスに戻るしか無く、その後の授業はシズカの事が心配で全く集中出来ませんでした。
あの子達は、何であんな酷い事がいえるの?
帰り道、いつも通り昇降口でまた合わせて二人で歩き出したけど、なんと切り出していいか分からなくて......。
ずっと無言で並んで歩いていきました。
私は味方だよって、伝えたくてそっと手を繋いでシズカが話してくれるのを待ってました。
二人で前を真っ直ぐ見ながら、なんだか泣きたい気持ちになったけど 一生懸命唇を噛んで我慢しました。
ギュッと手を握り返してくれたのを合図に、ポツポツと言葉を選びつつ涙声で教えてくれました。
悪い事なんて何もしていないのに、こんなに優しくていい子のシズカが傷つけられていたなんて。
すぐ気がついてあげれなくて、ごめん。本当にごめんねシズカ......。
私に心配をかけない様に一人で我慢していたけど、ここ最近毎日の様にシズカが薬を飲もうとすると悪口を言ってくるんだそうです。
『人前で薬飲んで、自分のこと可哀想だど思ってそう。』
『どう考えても病弱アピールだよな。』
『何でここに居るの?』
『居なくなればいいのに。』
こんな酷い事を言う奴らがシズカの周りに居るなんて!!腹が立って仕方なかったです。なんて幼稚なんだろう。想像力のかけらも無いの⁈
それからすぐ、担任の先生にも相談しました。朝会では全校生徒に向けて校長先生が思いやりについての話も出たけれど、当事者には全く響いて無いみたいで陰口は収まるどころか酷くなって居るんです。
それを伝えても先生は
『それなら薬を隠れて飲むってのはどう?』って、全く的外れな事を言って来て、悪い子達に罰を与えないんです!
私、あいつらをやっつけてシズカを助けたいんです!!力を貸してください!!」
ここまで黙って聴いてくれていたレモンさんが、大きく一度頷いてからゆっくりと話し始めた。
「いいかい?イチカちゃん。この世には、知名度に比べて患者数が多い難しい病気なんていくらでもあってな。」
「えっ?」
レモンさんの言葉に、思わず間抜けな声を出してしまった。それでも、レモンさんは続ける。
「知らない病気のことを全く理解してくれない人がいるってことも、知っておく必要がある。残念なことだけどね。そう言うことも理解した上で、不理解な人とは距離をとるんだ。」
この人は、何を言っているんだ?
「どう言うことですか、何が言いたいんですか?逃げろってことですか?」
レモンさんは言う。
「そんな言葉を使うような人々に、心を傷つけられる筋合いはないだろ。だから、君が今すべきことは...。」
「なんでですか?シズカはあんなに苦しんでるのに!なんであんな暴言吐く人間が野放しにされて、なんで被害者が逃げなきゃいけないんですか、おかしいよ!」
気づくと私は涙目になっていた。何故?私はただシズカを助けたいだけなのに……。
悔し涙を流す私と目を合わせながら、レモンさんは続けた。
「逃げろじゃないよ、距離を置けって言ったんだ。」
「.…..。」
私は、どうすればいいのだろう。
「さっきも言った通り、病気の人は周りの不理解も飲み込まざるをえない。ただ頑張って生きているだけなのにね。更に辛いことだよね。世の中、病気に理解して心配してくれたり寄り添ってくれる人は、実は結構貴重なんだよ。
自分のことの様に真剣に悩んで助けたいって思ってくれる友達がいるのは、シズカさんにとってとても幸せな事だね。」
琥珀色の透き通る瞳が優しく私を覗き込んでいた。
「だから、これからも君が寄り添ってあげてね。」
じんわりと胸が暖かくなって、怒りでトゲトゲしていた気持ちが緩んでいく気がした。
「すみません、大きな声出しちゃって。」
レモンさんは子供の様にくしゃっと笑ってくれた。
「いいんだよ。友達を大切にしてね。」
「はい!!」
私は大きく頷いた。これからも私がシズカと一緒に乗り越えていってみせる。そう決意を新たにする。
「うふふふ。レモンはイチカちゃんのこと気に入ったねぇ〜。」
いつのまにかシーラさんが来ていた。
「これは一肌脱いでくれるんじゃない?」
「一肌?」
「ふふふ、私達に任せてね!」
数日後
シズカへの嫌がらせは、嘘のようになくなっていた。
どうやらレモンさんが特別な力を使って懲らしめてくれたようだ。
なんでも、シズカが薬を飲まなかった時に起こる痛みを夢の中で超リアルに体験したらしい。
突如猛反省した子達から深々とした謝罪を受けたシズカは面食らうしか無かったそうだけど、もともと天使の様に優しい子だから大丈夫と笑って許してあげていた。
新しい環境になって自分を知ってらう時、ネガティブな内容をどこまで伝えるか、理解し合えるかのか。皆考えが違うから本当に難しい。
自分ごとにならないと優しさを示せない子達もいる。
でも、先ずは自分の直ぐ近くの大事な人の為になれる自分でいたい。
ありがとう、レモンさんシーラさん。
やっと半分です。明日はYGくんのルートを投稿します。明日の更新の後は少し次の小説が遅くなるかも。