red violetルート
RVルートです。許せないことがあるとすぐ口が出てしまう主人公に、担当の人魚が告げるアドバイスとは!?
「人に優しくなりたくて。」
私がそう言うと、シーラさんは鋭い眼孔でこちらを覗いていた。
けど、すぐにシーラさんは笑顔になって
「人に優しくなりたいのか、今回はピーちゃんがいいかなぁ。」
「ピ、ピーちゃん?だれですかその人?」
「じゃあ早速ピーちゃんの所へゴーゴゴー!」
そう言うとシーラさんはいきなり私の背中を押して来た。私の疑問が解決されてない。
「え?シーラさん、願いを叶えてくれるのってあなたじゃないんですかぁ?」
シーラさんが言う。
「ごめん、私今から500枚くらい書類整理しなきゃだから!ピーちゃん会議室に居るはずだから、自分で探してね、ごめんね!」
振り返るともうそこにシーラさんは居なかった。
私は深呼吸をして長い廊下を歩き始めた。
それにしても、ピーちゃんって人は誰なんだろう、海の中に住んでるからやっぱり人魚なのかな。
しばらく歩いていく、が。
「あれ?ここどこなんだ?」
私は思いっきり迷子になってしまった。
シーラさん、せめてメモ書きでもいいからこのお城の地図を渡してくれれば良かったのに。
まぁそう言い出せなかった私も悪いけど...と、考えていると、
「こっちです。」
「え?」
背後からいきなり声が聞こえて来て、驚く。
振り返ると、そこには淡い紫よりの撫子色の尾鰭と髪の子供の人魚が立っていた。
シーラさんよりかなり小柄だが、どこかシーラさんより大人びて見える。撫子色の人魚は言う。
「ようこそ、モルーア王国へ。お姉さん、願いを叶えに来たのですね。」
「そうですけど...。」
私はつい反射的に言ってしまった。
「じゃあこの辺初めてですよね!さっき女王陛下から連絡があったんです!願いを叶えに来た人を会議室に連れてってあげてねって。」
すると撫子色の人魚は私の手を掴んで泳ぎ出した。結構速い。
「このお城、結構構造が複雑だから、迷子にもなっちゃいますよね。」
「ちょっと、あなたは誰なんですか〜!」
しばらく泳いで行くと、『conference room』と書かれた扉の部屋があった。
撫子色の人魚が扉を開けると、そこには椅子と机の並んだ空間が。
「ふう、ここが会議室ですよ。」
「えっと、あなたは...。」
「あ、自己紹介忘れてました。僕はペール・ピンクといいます。このモルーア王国の経済産業大臣です。」
撫子色の人魚は申し訳な無さそうな顔でそう言った。この人が...。
「もしかして、貴方がシーラさんの言ってたピーちゃんって人なの?」
「そうです!大正解!」
ピンクさんは、屈託のない笑顔でそう言った。
この笑顔になると、少し幼く見える。
この人は一体何歳なんだろう。よく人魚の肉を食べると不老不死になるって聞くから、人魚本人の寿命も本当に長いのかもしれない。
200歳とか?
「年齢?17歳ですよ。」
ピンクさんはすぐ言いだした。え?この人今私の心読んだ?17?若すぎない?私より年下なの?経済産業大臣なのに。
「いやぁ色々あってシーラ女王陛下にスカウトされちゃって。人魚の寿命は人間と同じくらいですよ。シーラ様達王族は別だけど。」
「そう、なんですね。」
シーラさん、女王様だったんだね。
「えっと、私はイチカっていいます。えっと...。」
「ああ、ごめんなさい、願いを叶えたいって話でしたよね。話が逸れましたね。シーラ様からの連絡で聞いてます。お姉さんの願いは、『人に優しくなりたい。』でしたよね。」
「はい。もっと人に優しくなって、いい人になりたいんです。」
「その願いを叶えたい経緯とか、教えてくれますか?」
「はい。」
私はなんだか居心地が良くなって、口を開いた。
「私、昔から学校でも、職場でも、家族の前でも。何と言うか...性格悪くて、正直すぎて、意地悪なんです。」
「どんな風に意地悪なのですか?」
「少し空気が読めないと言うか。よく、他人の話に割って入って、自分の話をしちゃうんです。それに、私はよく人に対して思ったことをすぐ言ってしまいます。『うざい』とか『不快』とか『嫌い』とか、疲れている時はさらに顕著で、そう言う言葉をよく他人に使って怒られたりしてしまいます。他人の話に割り込んでしまうのは、しないよう頑張っても、その人が間違ってると思うと我慢出来ないんです。私、ただ自分の話をしたいだけで、他人の話は聴かない。あまつさえ聞いてもらえないとすぐに不機嫌になる。自分に吐き気がして、何で私はこんなにダメなんだろうって、毎日思って。私、性格悪いなぁって、このままじゃ本当に誰からも嫌われてしまうし、人に優しくなれない自分も嫌いで最低で、クズだなぁって思うんです。...どうしたらいいかわからないんです。」
やっと話せた。ずっと誰にも打ち明けてこなかった、私の悩み。今日でこの悪い自分ともお別れだ。
「あのですねぇ。」
ここまでずっと私の話を黙って聞いてくれて居たピンクさんが話し始める。
「確かに人の話に空気を読まずずかずかと割って入ってしまうのは良くないけど、お姉さんはお姉さんが思ってるほど性格悪くはないってことは、最初に伝えておきます。」
「?」
思いもよらないピンクさんの言葉に、私の頭は混乱した。
この人は、私の性格は悪くないと言ったのか?
「いや、もちろんよくない部分もありますし貴方が悪い所もありますが、お姉さんは自分が思ってるほどの悪人ではないと思います。」
「どうしてですか?私、すぐに機嫌悪くなってそれが態度に出てしまうのに?」
「いや、だって本当に最低で性格悪い人は、自分の悪くて改善するべき所に気づけないし、他人に優しくできない自分を嫌悪したりしませんから。ちゃんと自分が改善すべき所を自分で分かってるじゃないですか。まずは、お姉さんはちゃんと自分に優しくならないといけません。自分に優しくなれない人は、他人にも優しくなれないですから。ゆっくり努力することです。そうしたら、いずれ元の優しいお姉さんはお姉さんの中に戻って来るはずです。」
ピンクさんの言葉に、少しだけ肩の荷が降りるのを感じた。けど...。
「具体的にどのように努力したらいいのか...。」
ピンクさんは言う。
「...あなたは、他人と比べて少しこうあるべき、とかこれは間違ってるって言う気持ちが抑えきれない人なんだと思います。
なので、相手がどうしてそう思っているのか話をよく聴いて、その人はそう思うんだなぁと納得出来たら、変われるんじゃないかな。そうすればお姉さんはまた一つ成長出来るはず。
相手の話をよく聴くって、興味を持ってないとなかなか難しいですよね。
今までの嫌な体験による思い込みを一瞬手放して、何でもやって見るつもりでアンテナを伸ばしてみてください!」
「アンテナを伸ばす...か。とりあえずやってみます!」
「応援してますよ!お姉さん!」
「はい!」
「ピーちゃん、ええこと言いはる。」
急に後ろから声が聞こえてくる。振り返るとそこにはシーラさんがいた。
「シーラさん、いつから此処に?」
シーラさんはくたびれた表情で言う。
「いやーやっと書類整理が終わってさ〜」
私は思い出す。さっきシーラさんと離れてから何分経ったのだろうか、15分も経っていないはずだ。
思わず聞き返してしまう。
「たった15分で500枚書類整理できたんですか?!」
ピンクさんが言う。
「500枚は絶対少ないでしょ、少なくともざっと2000枚はありましたよ ね。さっき部屋で見ましたよ。」
「え?2000枚?」
増えたんだけど。
「ちゃんと片付けて来たよー!」
「シーラ様ったら、本気出せばすぐ仕事なんて片付けられるのに、いつも後回しにして〜」
「あはは〜。」
ピンクさんとシーラさんのやりとりに私は何処か微笑ましくなる。
「それはそうと!私もイチカちゃんを応援してるよ!」
「僕も!」
「ありがとうございます。私、帰ったら早速実践します!」
その後私はどんなことでも相手が何故そう思っているのか決めつけずに、会話するようにしている。
そしたら私の人間関係はいくらか良くなった。
今までの嫌な経験も今後に活かせるように、日々努力している。
これからは、他人の気持ちも汲んで考えられるように。
明日はRルートを投稿しようと思います。みんな楽しみに待っててね!