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blue Violetルート

BVくんのルートです。多様性の話題を受け入れられない主人公に、担当の人魚がするアドバイスとは!?


 「多様性に対する苦手を克服したくて。」

 「うーむ、なるほど。多様性か、なんか難しそうだなぁ。」

 「お願いします!」

 私はシーラさんの肩を揺さぶりながら言った。

 誰にも相談すら出来ないし、もうここにしか希望がない。

 「今回はラベちゃんかなぁ。じゃあ早速ラベちゃんのところへ行ってね!」

 「ラベちゃん?誰ですかその人?」

私の疑問に答えることなく、シーラさんは私の背中をドンと押して追い出した。

 「ラベちゃんはー、多分断罪の部屋に居るはずだから、ここを真っ直ぐ行って!あとは...頑張ってね!じゃ、私仕事あるからぁ!仲良くしてあげて!」

 「えっ?断罪の部屋?ちょっと待って下さっ...。」

 私が振り返ると、もうそこにはシーラさんはいなかった。私は、少し困惑しながら廊下を歩き始めた。

 「.....。」

 私は願いを叶えに来たんだ。進まなきゃ。

 断罪の部屋?何だそれ。

 何処にあるの?それにラベちゃんとは誰のことなのだろう。

 分からない。私はとても不安になった。

 私の願い、本当に叶えられるのかな。

 すたすたと歩いて行くと、だんだんと廊下が薄暗くなっていく。

 人の気配がなくて、薄気味悪い。

 一刻も早く断罪の部屋に行かなくてはならない。

 そしてラベちゃんと言う人を見つけなくては、そう思ってあたりを見回した。やはり誰もいない。

 すると後ろから声がして来た。

 「あの...大丈夫ですか?」

 後ろを振り返ると、青紫色の長い髪と尾鰭の何やら大きな本を持った人魚が立っていた。

 「何かご用ですか?」

そう尋ねる目の前の人魚に、私は答えた。

 「あの...シーラさんに、ラベちゃん...って人を探すように言われて、断罪の部屋って場所に行きたいんです。」

 すると目の前の人魚は柔らかい表情になって「あなたでしたか。」と言った。

 「断罪の部屋はこっちです。案内しますのでついて来て下さい。」

 人魚が泳ぎ始める。

 「えっと...あなたは。」

そう聞くと、目の前の人魚は答えてくれた。

 「失礼しました。私はモルーア王国法務大臣、ペール・ラベンダーといいます。シーラ様の言っていたラベちゃんと言うのは私のことです。シーラ陛下に言われて此処に来たと言うことは、願いを叶えに来たんですね。」

 と言った。

 「そうです!えっと、シーラ陛下?」

 私がそう言うと、ラベンダーさんは少しきつい表情になって。

 「知らなかったんですね。さっきあなたの出会ったシーラ様は、このモルーア王国の女王陛下なんです。」

 「ご、ごめんなさい。」

 なんだかいたたまれない気持ちになった私は、謝ってしまった。

  「ああ、すみません。あなたを責めているわけではないんです。悪いのはちゃんと自己紹介しなかったシーラ陛下なので。」

 「は...はい。」

 しばらく泳いでいくとさっきの廊下より薄暗い雰囲気の、マーライオンの絵画が飾られている部屋に着いた。

 「ごめんなさい、今使える部屋がここしかなくって。」

 「ここが、断罪の部屋...。」

 「話しが逸れましたね。あなたの願いの話でしたね。さっきシーラ陛下から連絡がありました。『多様性に対する苦手を克服したい』と聞いてます。経緯を教えてもらってもいいですか?」

 「はい。」

私は不安な気持ちを抑えて、話し始めた。

 「私、最近変なんです。最近、性の多様性の話題が受け入れられないんです。トランスジェンダーとか、同性愛とか、そう言うのが受け入れられないし、なんと言うか、共感できないんです。特に、私は同性愛が苦手です。」

 「...。」

 「でも、嫌いって訳でもなくて、そう言う多様性を認めるのが苦痛なんです。けど、こう言うことを誰かに話したら、差別だとか多様性を認めない奴は最低だとか言われるんじゃないかって思って、怖くて。誰にも話せなかったんです。でもやっぱり、今の時代、こう言うことは受け入れなきゃいけないのでしょうか。」

 ずっと嫌だった、多様性の話についていけないのは、けど、受け入れるのも辛かった。

 やはり差別になってしまうのだろうか。

 「...。」

  ラベンダーさんはずっと黙ってる。 

やっぱり差別だとおもわれちゃったかな。

 性格悪いと思われちゃったかな。

 「一つ、いいですか?」

 黙って私の話を聞いて居たラベンダーさんがコホンと咳払いをする、そして彼は、

 「何を悩んでらっしゃるのですか?」

 「え?」

 私は目の前の人魚が発した言葉に、唖然としていた。  

 この人は何を言っているんだ?

 「いやだって、あなた、別に誰かを傷つけようとしてる訳ではありませんよね。全然変じゃありませんよ。」

 「どう言うことですか?」

 ラベンダーさんは続けた。

 「あなたは今、共感できないことを差別になるんじゃないかと言いましたね。まず、共感できないのと差別は別として考えてください。あなたは、差別がしたい訳ではないんですよね。それに、誰かを攻撃してる訳でもない。それなら問題ありませんよ。」

 私はイマイチ、ラベンダーさんの言っていることが理解できなかった。

 「分かっていないみたいですね。まぁ、簡潔に言うと、共感できないことは悪いことではありません。多様性を認めないのもまた多様性です。無理に認める必要はありません。当事者から見たら理解してくれる方が嬉しいかもしれませんが、苦手なら苦手、自ら関わりに行かず一人で『共感できないな。』と思っていればいいんです。勿論、共感できないからと言う理由だけで他人を攻撃するのは立派な悪です。けれど、あなたは今、誰かを傷つけようとしてる訳ではありませんよね。それなら大丈夫ですよ。」

 ラベンダーさんはタンザナイト色の優しい眼差しで、こちらを見つめている。

 「ひとりで...か。」

 「そもそも、本当に差別するような人は誰かに相談したりしません。断言します。此処に相談しに来ている時点で、あなたは心優しい人間です。悩む必要など微塵もありません。」

 そのラベンダーさんの言葉に、どこか安心感があった。心が楽になった、そんな気がする。

 「ありがとうございます、ラベンダーさん。私、楽になりました。」

私の言葉にラベンダーさんは、ニコリと笑い

 「それは良かった。」

と言った。

 「断罪の部屋、久しぶりに入ったけど相変わらず薄気味悪くて怖いよー、昔を思い出すなぁ。」

 後ろから知っている声がする。そちらに目を移すと、やっぱりそこにはシーラさんが居た。

 「シーラさん。昔を思い出すって?」

シーラさんは、少しむくれた顔になって、

 「昔、私が何かやらかすと、いつもこの部屋に連れてこられて、ラベちゃんに叱られてたんだ。まぁ、ラベちゃん以外にも、私を叱ったり怒ったりする人は居たけど。」

 「仕方ないでしょ、陛下がよくやらかすんですから。あの時は陛下も小さかったなぁ。それが、今はこんなに大きくなって...。」

 ラベンダーさんの言葉にほっこりすると同時に、一つ疑問が浮かんだ。

 「え?もしかして、シーラさんの方が年下?」

 「うん。私、ラベちゃんより5つ下だから14歳だよ。」

 えぇ?嘘でしょ、私より年下?女王様なのに?『人間で言う14歳』じゃなくて?

それに今、ラベンダーさんの5つ下って言った?ラベンダーさんは今19歳ってことなの?法務大臣なのに。

 「そうだよ、14歳は実年齢だよ〜。」

私の頭の中は更に混乱した。それに、今さらっと心読まれた?

 「それは置いといて。さっきちょっと聞いてたけど、多様性の問題って難しいよね〜。まぁ、口に出したり、行動に移したりするなら別問題だけど、心の中では何を思ってても大丈夫だから、安心していいと思う。」

 「ありがとうございます、シーラさん、ラベンダーさん。私、自信付きました。」

 「私はイチカちゃんを応援してるよ!」

 「はい!」


 その後、私は受け入れられないこととは上手く距離を置けるようになった。

・共感できない人やものとは自分から関わりに行かない。

・共感出来ないなら口に出さず一人でそう思う。

 この二つのことを徹底していたら、少し心が楽になった。

 たとえ価値観が合わなくても、『そう言う考えもあるよね。』と言ってくれる人に話せたら、思い悩まなくていいと思った。

 今、私はあの地底湖に行って良かったと思ってる。ありがとう、ラベンダーさんシーラさん。



 「ねぇ、ラベちゃん。今回のイチカちゃんの願い、態々ここに来る必要なかったんじゃないかな。」

 「陛下がそう言うの、珍しいですね。悩んでいる人が居たら助けたいっていうのがあなたのお考えでは?」

 「いやだって、もっと早くに多様性を受け入れられないってことを、他人に言いふらしたりしない信頼できる人に相談したら、きっと今日のラベちゃんと同じ答えが返って来たと思うんだよねー。本当に性格悪い人は他人に共感出来ない自分に不安を覚えたりしないし、イチカちゃんは喋り方からして、結構周りからも愛されてると思うし、心優しい人だと思うから。きっとイチカちゃんの周りの人も優しく一緒に考えてくれたんじゃないかな。」

 「うーん、まぁ確かにそうかもしれませんね。それじゃ、おやつの時間にしますか。今日のパーティのお菓子はレチェフランをグリさんが作ってくれたみたいですよ。一緒に味見して欲しいとのことです。」

 「やったー!」


読んでくださりありがとうございます。明日はVくんルートを投稿しようと思います。よければ是非読んでね!

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