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エッジ・ランナーズ  作者: 高梨真
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帰宅部希望

桜咲く、出会いの季節、4月。この時期になると、学校で行われる一大イベントがある。それは「部活動勧誘」だ。全国の学生達は、部の存亡をかけたこの戦いに勝利しようと必死になる。そしてそれは、この東雲高校についても例外ではない。今年も例年どうり、入学式を終えた新一年生たちを部員たちが待ち構えている。


藤浪健吾は疲れていた。両手には、たくさんのチラシを抱えている。179センチという高身長とスポーツ刈りのせいで、運動部の勧誘の的にされてしまったのだ。「君背が高いなぁ!バレー部入ろうよ!モテまくるぞ!」「サッカー部はどう?部員少ないし必ずレギュラーになれるよ!」「野球に興味ある?」これらの勧誘を健吾は「帰宅部希望なんで...」と言って躱そうとしたが、運動部の彼らを止めることはできず、結局勧誘された部活のチラシを全て受け取るハメになってしまった。それでもなんとか校門に辿り着けたのは、途中で小雨が降ってきて部員たちが去っていったからだ。本格的に降り出す前に早く帰ろうと思った矢先、「おおい、君まさか、藤浪健吾くんか?」と後ろから呼びかけられた、振り向くと、日焼けした男がそこに立っていた。いかにも無害そうな顔をしている。赤のネクタイ...新二年生か?だが、面識がなかった。「すいません、どこかでお会いしましたか?」と健吾は思わず聞き返してしまった。「俺は、小野陽介って言うんだ。中学生の頃、陸上の大会で君が走るのをを見たから顔を覚えてるんだ。君の走りに憧れてたんだ」陽介と対照的に、健吾の顔が曇った。陽介が続けて早口で言う。「ってそんなことより、君のような凄い奴がこの学校にいるなんて運命だよ!!」心臓の音が聞こえる。「陸上部はさ、去年俺が創設したんだけどさ、すごい顧問の先生がいて、あとは人数さえ集まれば大会にも」「人違いです。」健吾は堪えられず叫んでしまった。「え?いやいや、あー、藤浪くんって意外と冗談言うんだねぇ」健吾は、「すいません、本当に人違いです。僕は帰宅部希望なので。」とだけ言って薄く笑い、呆然とする陽介から逃げるように学校近くの駅まで走りだした。


駅に着く頃には、雨は本降りになり、健吾はびしょびしょに濡れていた。ぶるっと身震いしたのち、健吾は1人悪態をついた。「陸上部を創設しただと?余計なことしやがって。俺がどうしてこの学校を選んだと思ってるんだ。クソっ!」この時、健吾の顔が濡れていたのは、雨のためだけではなかった。


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