ゾンビVRゲーム(?)9
ほんの少し覗ける程度に扉を開ける。
熊は相変わらず我が物顔で歩いていた。
問題は廊下の造りだ。
地下一階と同じく、突き当りが見えていて一本道になっている。
側面の壁にはこれも同じく三つの扉があった。
どれかの扉の先に下に降りる階段があるのだろうが……。
やはりどうしても熊が問題だ。
さて、どうするか……。
ボブ達を囮にしてどこかの扉に駆け込む?
いや三人で連携すれば何とかいけるか?
どれもしっくり来ないな……。
『森のくまさんとか流しましょうか?』
「あ、鏡花さんはちょっとだけ静かにしてもらってもいい?」
『解りました』
「少年こういうのは勢いが大切だ」
ガチャ
「――はっ?」
考えていたその横でボブの一人がおもむろに扉を開いた。
「さぁ行くぞ弟よ!」
「ああ、兄者!」
二人のボブは勢いよく熊へ駆けていく。
――パタン。
そして俺は静かに扉を閉じた。
……尊い犠牲だったな。
――ガチャガチャガチャ!
「少年! 少年、開けてくれやっぱり無理だった!」
「マジで食われるから! 少年頼む!」
「いやお前ら本当に何がしたいんだ」
仕方なしに扉を開けると熊ももうすぐそこまで来ていた。
ボブ達が扉を通ると同時にすぐに閉める。
「よし、これで何とか……」
熊も流石に扉は破壊できないだろう。
時間も余裕が無くなってきてるし……今日はもうここらで引き上げるか。
「お前ら、今日のところはこれで終わりにしてまた明日に――」
言いつつ、地下一階に上がる階段を登り始めた、その時。
ガチャ――という音と共に扉が開いた。
「……はっ?」
見ると熊が手でドアノブを回し扉を開け、通った後に後ろ手に扉を閉めていた。
人間が中に入っていらっしゃる?
「ガウガウガウガウ!!」
「やっぱそうなるよな!」
熊が四足歩行で猛烈に迫ってくる。
扉を開けた時は普通に二足歩行で歩いてやがったくせに……!
『あるー日♪ 森のー中♪ 熊さーんに♪ 出会―った♪』
「鏡花さん音楽止めて!」
「兄者!」
「おう弟よ!」
「お前ら何を――」
階段を駆け上がっている中、二人に足を掛けられすっ転ぶ。
「よしチャンスだ兄者!」
「今の内に逃げるぞ弟よ!」
「おま、ふざけ――うおおおい熊熊熊!!」
眼前に迫る、体毛の一本一本さえ見て取れるリアルな熊。
その後、俺は命からがら何とか逃げ延びた。
動物園にはしばらく行きたくなくなった。
※ ※ ※
「お前ら絶対許さないからな」
「そんな事言うなよ少年」
「無事だったから良いじゃないか少年」
複合施設までの帰路の中、後ろを付いてくる二人。
無事だと? ふざけているのか?
熊が警察署を出ても追ってきた時は本当にもう駄目かと思ったぞ。
ようやっと撒いたと思ったら平然と二人して出てきやがって……。
「もう夜になるし拠点へ戻るんだろ? 俺達も連れて行ってくれよ」
「何だかんだ役に立つってのは解るだろ? 三日目の行動の幅も広がるぜ」
「………………………………」
ボブ達の言う通りではある……が、素直に頷けない俺が居る。
「……解った。だが次また同じ事やったらゾンビを引き付ける餌役だからな」
「解った解った。右大殿筋に誓おう」
「じゃあ俺は左大殿筋ー」
ケツの筋肉に誓うな。
二人はマッスルポーズを取りながら俺の後ろを歩く。
しかし、明日は三日目。最後の日か……。
俺は少し考え事をしつつ歩き、その後無事に拠点までたどり着いた。
床に横たわり眠るよう考える。
短いような長いような二日目はこうして終わった。
小ネタ
ゾンビゲーなのにあんまりゾンビと戦わないなこのゲーム。
※ ※ ※
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