ゾンビVRゲーム(?)5
『大きな音を出しすぎたみたいですね』
「誰のせいだ誰の」
ゾンビに向かって構える。
何だかんだ初めての邂逅だ。
さて、どうするか……アキ子を囮にして逃げるか?
「…………………………ん?」
ふと二体のゾンビに違和感を覚えた。
姿形は映画やゲームに出てくるポピュラーなゾンビだ。
動きもその例に漏れず、よろよろと歩いてくる。
だがその歩きに既視感を感じた。
「……お前らもしかして朔夜とリリーか?」
ピタッと動きを止めるゾンビ二匹。
そしてゾンビ同士で目を見合わせる。
……どうする? って感じなんだろうがもうその動きでほぼ確定だ。
「多分朔夜辺りは攻撃して欲しいんだろうが……ちょっと見分けが付かないな。四つん這いになってくれたら解りやすいし攻撃しやすいんだが……」
「…………………………!」
二体の内の一体が素早い動きで四つん這いになった。
「よしじゃあリリーの方を攻撃するか」
朔夜ゾンビがショックを受けたような動きをするが、それでもちょっと興奮しているようだった。
リリーゾンビが一歩前に出る。
「攻一ちょっと待って!」
「あ、普通に喋れるのね」
「私達は女の子なんだよ……それなのに少しは躊躇ったり迷ったりしないの?」
「いや全然顔面グーでいけるけど。ゲームだし。見た目ゾンビだし」
「下衆男じゃん! 何て事言うの!?」
「ああ、だがすごく興奮するな」
「朔夜はいつまで四つん這いなの?! 早く立って!」
四つん這いのゾンビってシュールな光景だな。
「うう……しょうがない、撤退よ! 攻一、足を洗って待ってなさいよね!」
多分、首を洗って待ってろって言いたかったんだと思う。
最後まで残念な二人はバタバタと去っていった。
「……まぁ……拠点作成の作業に取り掛かるか」
最初に遭遇したゾンビがアレとは……。
何とも言えない気持ちになりながらも俺は作業の為に移動を始めた。
※ ※ ※
いくつかある候補から拠点に選んだのは二階にあるスタッフの休憩室だ。
テーブルのある談話スペースに、給湯室、更衣室もあってそこそこの広さがある。
小さいながら窓もあるので、もし出入口からゾンビが押し寄せても脱出が出来る。
鍵が部屋の中にあったので内からも外からも施錠できるのもいいところだ。
俺はアキ子と協力してある程度の食料と水を部屋の中に運び込むと早々に睡眠を取る事にした。
これ以上遅くなると二日目に響く可能性がある。
体を横にして頭の中で眠るように念じる。
次第に画面が暗転していき、完全に暗くなった――と思ったらすぐに明るくなり時間が朝になっていた。
「睡眠時間は飛ばされるのか」
『はい、特に問題がなかった場合そうなります。野宿等ではいきなりゾンビに襲われている場面に飛ぶ可能性があります』
怖っ。……まぁでも現実だったらそういう感じになるか。
俺は横になっていた体を起こす。
「さて……早速行動を始めるかね」
『二日目はどうするんですか?』
「一日目がほぼ拠点作業で終わったからな。二日目は二つほど目的地を決めて探索してみようと思う」
本来のプレイだったら二日目は拠点の補強をした方が良いのだろう。
防火シャッターやバリケードを築いたり、他のフロアから有用な物資を集めたり。
ただ今回は三日間限定なのだからそこまでする必要はないだろう。
安全に寝泊りできる場所があるだけで十分だ。
俺はマップを開いた。
いくつか気になる場所はあるが……まずは、そうだな……。
「よし、決めた」
俺は物資を運ぶついでに手に入れた大き目のリュックを背負うと立ち上がり、拠点の扉を開いた。
※ ※ ※
「わっ、すごい! 朔夜、一瞬で夜が明けたよ!」
「ふむ、聞いていたとはいえ驚きの光景だな」
つまり今、攻一は起き二日目の行動を開始しようとしている訳だ。
「リリー、プランBに移行しよう」
「とうとうやる訳だね?」
「ああ、鏡花にも伝えよう。きっと攻一も喜んでくれる」
小ネタ
「攻撃し続けても死なないゾンビって新しいな」
「ありがとうございます!」
「朔夜やめて?」
※ ※ ※
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