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ゾンビVRゲーム(?)3

「リリー、攻一が行動を始めたようだ」


 私は隣にいるゾンビ――リリーに声を掛ける。


「オッケー。鏡花、今攻一はどの辺りにいるの?」


『スーパーのある大型複合施設へ向かって移動しています。攻一さんの初期位置は先ほど送った通りです』


「解った。……しかし、攻一の情報を流してくれるのは助かるが、私達と攻一の両方をナビゲートするのは大変だろう。本当に大丈夫か?」


『大丈夫です。私達のあの目的の為でもありますから』


「ごめんね、ありがとう」


「出来るだけ鏡花の負担にならないよう心掛けよう」


「そうだね……それにしても朔夜の姿すごいよ。もう完全にどこから見てもゾンビだよ」


 ゾンビから完全にゾンビだと言われる。


 ……形容しがたい不思議な感覚になるな。


「リリーも完全にゾンビになっているぞ。……ちなみにだが私は気持ち悪いか?」


「うーん……結構気持ち悪いかな」


「ありがとう!」


 攻一にも言って欲しいものだ。出来れば蔑んだ目で。


「攻一もこの姿なら容赦なく攻撃してくるだろうな……」


「私は攻一を襲って衣類を剝ぎ取りたい!」


 私達はどちらからともなくハイタッチを交わした。


「よし、攻一の元へ急ぐぞリリー!」


「うん!」



 ――五分後



「鏡花! 応答してくれ鏡花! ゾンビに囲まれてる!」


「何で?! ゾンビなのにゾンビに襲われてるんだけど?!」


『恐らく朔夜さんとリリーさんのゲーム内での認識が人間になっているのだと思います。すみませんすぐに直すように伝えます』


「なんかすごい多いんだけど最初はゾンビそんないないんじゃなかったっけ?!」


『多分バグです』


「不具合にバグに……何で私達がこんな目に……くそっ――嫌いじゃない!」


「朔夜お願い落ち着いて!」


「ギューニクッ! ギューニクッ!」


「ゾンビの鳴き声特徴ありすぎじゃない?!」


「牛肉が好きなんじゃないか?」


「牛肉なんてないよー」


「豚肉ならあるんだけどなメス豚だけに」


「朔夜落ち着いて! あ、いや落ち着いてるか」


『朔夜さんリリーさん不具合が治るまであと5分ほど掛かります』


「トリニクゥ! トリニクゥ!」


「ジンギスカーン!」


「バサシ! ウマイ!」


「もう動物園行ってよー!」


※ ※  ※


「お、着いたか」


 歩き続け、目的地である大型複合施設にたどり着いた。


 ここに来るまで一度もゾンビに出会わなかったが……まぁ進行と共に増えるって言ってたしこんなもんか。


「入り口はどの辺りだろ?」


 きょろきょろと見回していると数十メートルほど歩いた所へそれらしきものが見える。


 そこへ向かう途中で俺は鏡花へ呼びかけた。


「なぁ鏡花、気になってた事があるんだがゾンビに嚙まれた場合、感染とかはどうなるんだ?」


『………………………………』


「ん? あれ、鏡花?」


 また回線の不具合か?


『……すみません攻一さん。聞こえてはいたのですが、こちらからの声が時折届かない場合があるみたいです』


「まぁ、テストプレイだしな」


 不具合はしょうがないだろう。


 言いつつ入り口に着いた俺は、施設内をのぞき込んで見た。


 見渡す限り、中にはゾンビの姿はない。


『どこか一か所に集まってるのかもしれませんね』


「あ、そうなの?」


 序盤の少なさに加えてどこかに集まっているならこの遭遇率の低さにも納得がいく。


 でも集まるってどこに集まってるんだろう……。


 NPCが集中している施設でもあるのだろうか。


 考えつつ、用心をしながら施設内に足を踏み入れていく。


『攻一さんの先ほどの質問なのですが』


「ん? ああ」


 ゾンビに噛まれたらどうなるのかってやつか。


『プレイヤーキャラクターは感染に対し抗体があるという設定になっていますので、噛まれてもゾンビになるという事はありませんが相応の傷は負うことになります』


「なるほどな」


 よくあるゾンビゲーとそのあたりは変わらないか。


 一階のフロアを進む中、そこでふとある物を見つける。


 この大型施設のフロアマップだ。


「あるとは思ってたが……割と早くに見つけられたのはラッキーだったな」


 早速フロアマップを確認する。


 今歩いている1階にはバスのターミナルにクリーニング屋にコーヒー豆売り、本屋……。


「なんか役に立たなさそうなのばっかりなんだが……」


 現実感大事にしすぎて店のチョイスをミスってないか?


 コーヒー豆とかどうするんだ? いや飲むんだろうけどさ。


『ちなみに本屋では置かれている本は全て読む事が出来ますよ』


「えっまじで?」


『はい、その他コーヒー豆は日数が更に経過した際に嗜好品として物々交換で価値の高い物として扱われますし、バスターミナルからは大勢のNPCと共にバスで遠征する事も出来ます』


「あー……なるほどな」


 すごいとは思っていたが、まだ俺はこのゲームを舐めていたみたいだ。


 そもそもこのゲームのコンセプトは現実世界でゾンビ感染が広がったらどうなるのか、というものだった。


 荒廃していく世界では身の回りにあって普通だった物はどれもが貴重な物資になる。


 その辺りも含めて探索をするべきなんだろう。


 ……まぁ俺がプレイするのは3日間だけなんだけどな。

小ネタ

「なるほど……ゾンビか……」

「朔夜?」

「天職かもしれないな」

「朔夜落ち着いて?」

「鏡花に……現実にも……」

「朔夜落ち着いて?!」


※ ※ ※


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