クリスマス3
「トリは私ね」
リリーが無い胸を張る。
正直、二人のプレゼントで既に満腹というか……鏡花の想いの重さで胃もたれを起こしそうになっているんだが。
「なぁ……リリーはもう後日で良い?」
「じゃあ準備してくるね!」
聞いて?
リリーは勢いよく扉をはさんだ厨房の方へ駆けていく。
何だろう二人とはまた違う種類の物なのだろうか?
どうせパンツとかそんなんだろ、と思っていたのだが……。
椅子に座り、ぼんやりと待っていると厨房の扉が勢いよく開かれた。
「待たせたわね!」
そう言うリリーは厨房に行く前と服装が変わっていた。
普段から着ているガ―リーな服装から鏡花がいつも着ているような着物姿になっている。
「リリーさん似合っていますよ」
「素晴らしいな」
二人から絶賛する声が上がった。
「えへへー攻一はどうー? 似合うー?」
フリフリと手を振り、クルクルとその場で回りながらリリーは聞く。
「ああ、似合ってると思うぞ」
「うっ……! 素直に褒めると思ってなかったから動悸が……」
なんて悲しい生き物なんだ……いや原因俺か。
「それで? その着物姿を見せる事がプレゼントなのか?」
「フッフッフ甘いよ攻一。ここを見て!」
そう言ってリリーは自身の腰の位置を指差す。
「着物の帯! ここを引っ張ってあーれーってやつやらせて上げる!」
男性の夢なんでしょ? そう言わんばかりの表情のリリー。
「あ、いやいいです」
即断った。別に興味ないんで。
「ちなみにこれやるまで終わりません」
こいつ……! 脅迫まがいの事を……!
しょうがなしに俺は着物の帯を掴むとゆっくりと引っ張っていく。
「あ~~~れ~~~」
リリーは楽しそうに笑いながらクルクルと回り、やがて帯が全て解けると力無く地面に座り込む。
そして着崩れた着物を片手で抑え、赤面しながら言った。
「MerryChristmas……」
やかましいわ。
「クリスマスパーティも盛り上がってきましたね」
鏡花が微笑みながら言う。
狂気の宴の間違いでは?
「しかし攻一さん、クリスマスパーティにまだ足りないものがありますよね?」
「えっ、むしろ足りてるものあった?」
「そう……それは豪華な料理ですよ」
「それ以外にもあるよね?」
「本当は私達三人の手料理を攻一さんに振る舞いたかったのですが」
「早まるな」
「プレゼントの準備に時間を取られてしまいまして……申し訳ございません」
「いや気にしないでくれ、本当に」
「代わりに我が家のシェフが鍋で温まるのはどうか、と提案してくれまして」
「おお、いいね」
「クリスマスで鍋というのも合わないかとも思ったのですが……」
「全然そんな事ない」
「シェフが最高の出汁を作ってくれまして」
「本当最高。泣けてくる」
「――それで闇鍋やろうという話になりました」
「本当意味が解らない。泣けてくる」
狂気の沙汰だよ。
「せめて手料理要素が欲しいね、と三人で話し合いまして」
「そこ俺も含めた四人じゃ駄目だった?」
「安心しろ攻一」
「朔夜さん?」
「ちゃんと食べれる普通の物を入れようって決めてるんだよー」
「本当かリリーさん」
「食べ物で遊ぶのは良くありませんからね」
「素晴らしいな。普段俺で遊んでる奴らの言葉とは思えないよ」
「じゃあちょっと準備してきますね」
そう言って三人は厨房の方へ向かう。
俺は椅子に座り、ふぅと一息入れた。
……あいつら、俺で遊んでるっての否定しなかったな。
「攻一さん準備ができましたよ。あれ、どうかされました?」
「いや何でもない。鍋重いだろ。俺運ぶよ」
「台車で運ぶので大丈夫ですよ。ありがとうございます」
ガラガラと運ばれてくる鍋。
フワリと出汁の匂いが漂ってきて、もうそれだけで美味さを感じられる。
これでやるわけだ。闇鍋を。
イカれてやがるぜ。
「じゃあまずは私が持ってきた食材ですが……新鮮な野菜やキノコ等を準備させて頂きました」
「間違いなく美味いな」
「私はねーお肉が食べたかったからいっぱい買ってきたー」
「一番の問題児が問題を起こさなかったか……明日は嵐だな」
「どういう意味?!」
「最後に私だが……少々パンチが足りないと思ってな」
「………………………………」
「各国のデスソースを――」
ダッ――――ガツッ!
「どこへ逃げるんだ攻一?」
「逃げてない! 逃げてないから離せ!」
もう何を取ってもアウトだろそんなん!
あれ? でもこれ鏡花達にも被害がいくんじゃないか?
「リリーさん最近の鍋は一人毎に仕切られている物があってですね、今回はそれを使ってるんですよ」
「へー便利だねー」
せめて……! 闇鍋のルールくらいは守ってくれ……!
※ ※ ※
デスソース闇鍋の後ももちろん地獄の宴は続いた。
悪夢のビンゴゲームや闇のコスプレサンタが登場したりしたが……。
意識が朦朧としていてよく覚えていない。
というかもう語りたくない。
一つ、これだけは間違いないと言えるものがある。
今年のクリスマスはきっと生涯忘れない。
間違いない。
小ネタ
「あまりにも激辛な物を食べるとお尻が痛くなるらしいな」
「朔夜さん?」
「デスソース直飲み、か……」
「朔夜さん?!」
※ ※ ※
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