クリスマス1
俺は解っていた。
間違いなく今日、奴らはくる。
何度も何度も何度も経験してきた。
何をかって?
――あのバカ三人が俺の部屋へ常識を超えた方法で侵入してくる事をだよ。
最初はまだ優しかった。
夕食に睡眠薬が入っていて、次に起きた時には俺の部屋で俺をオトす作戦会議が開かれていた。
いや話してみたら優しくなかったわ。
普通に犯罪だったわ。
二回目はまだ普通のやり方だった気がする。
鍵を掛けてたのに普通に開けられて入ってきた。
ただ他に二人ほど何でかタンスとトイレから出てきた。
何時間も部屋に居たんだがいつから入っていたのだろうか。
それからも俺は抵抗を試みた。
誰にも言わずに一人で部屋の鍵を変えた。
流石に勝手に人様の家の部屋の鍵を変えるのは問題だろうか。
そう考えたところで普通に鍵を開けて鏡花が部屋に入ってきた。
何で? って表情を俺は浮かべていたと思う。
鏡花も何か? って表情を浮かべていた。
いや、何か? じゃないよ。怖いよ。
それから俺は手段を選ばなくなってきた。
ドアノブを外したらどうだろうか。
朔夜が鉄山靠で扉をぶち破ってきた。
その時、朔夜はこう言った。
――ありがとう、良い訓練になった。
いやありがとうじゃないんだわ。
そしてなぜか、破壊された俺の部屋の扉は一週間は直らなかった。
鏡花曰く空いてる業者がいなかった、とか言っていたが絶対に嘘だ。
次に俺はドア、窓等の外界に面しているものに板を打ち付けた。
俺も出れなくなったがそんな事は二の次だ。
食料も部屋に備蓄した。
正気のままではあいつらには対抗できない。
全ての作業が終わった時、部屋の床の一部を開けてリリーが出てきた。
無言で親指をぐっとしてくる。
多分その親指を折っても俺は許されてたと思う。
そして今日だ。
多くの人が待ちに待ったクリスマス。
俺もイケを遊びに誘った。
練習だと断られた瞬間、俺は別に待たなくなったクリスマス。
ふざけるな作者。一体いつからイケが登場してないと思ってる。
登場人物少ないくせに管理が杜撰すぎるだろう。
いや落ち着け俺。
今は奴らだ。
奴らは必ず部屋へ侵入してくる。
今日まで俺は入念に準備を重ねてきた。
ドアや窓には鉄板を打ち付け、更には溶接した。
トイレ、タンス他、隠れられるものは全て確認済み。
隠し扉や抜け道も出来る限り探し、潰した。
……俺の勝ちだ。
笑みを浮かべ、ベッドに寝転がる。
クリスマスくらいはゆっくりと過ごさせてくれ。
――と、その時だ。
ゴゴゴ、と地響きと共に地面が揺れる。
地震か?!
そう思ったが違う。部屋の壁が上にスライドしていっている。
この部屋自体がエレベーターの様に下に移動しているんだ。
驚き、戸惑っている間に部屋の変化は終わった。
ワンフロア下の食堂と厨房とつながり一つの大きな部屋になっている。
食堂の椅子には三人が居た。
鏡花がゆっくりと口を開く。
「ごきげんよう攻一さん」
たった今ご機嫌悪くなったわふざけんな。
「いや待て待て待て、今の移動? は何だ?」
「数ある秘密兵器の内の一つです」
数あるってところに恐怖しか感じない。
「今日が何の日か、攻一さんご存知ですか?」
「クリスマスだろ?」
「そう……つまりクリスマスパーティですよ」
「今から?」
「今からです」
今、昼の3時だけど?
「じゃあ第一番、リリー。モノマネやります」
何かいきなり始まった。
「細かすぎて伝わらないモノマネ。BLの同人誌を見てる時にすごく良いシーンを読んだ時の攻一のキモいリアクション」
はっ倒すぞお前。
「……うんうん……うんうん……デュフッ! マジカタルシス!」
ぶっ飛ばすぞお前。
「すごく似ています」
「もう攻一そのものだな」
「えへへ」
いや似てないだろ! ……似てないよね?
「じゃあ第二番、九条朔夜。皆で録画した映画を見ていた時の攻一の気持ち悪い行動」
やめろ! 何で俺のキモいモノマネ限定みたいになってんだよ!
「……ちょっと待ってくれ朔夜……ちょっと早戻ししてくれ……あ、ここから再生を頼む………………ここに映ってるエキストラ、マジ好みげへへ」
絶対言ってない! 絶対言ってない!
「そういえば言ってましたね」
「言ってたーそれに似てるー」
「いや絶対言ってないって!」
鏡花は懐に手を入れると取り出した何かの機械のスイッチを押した。
ウィーンと天井からスクリーンが降りてくる。
『……ちょっと待ってくれ朔夜……ちょっと早戻ししてくれ……あ、ここから再生を頼む………………ここに映ってるエキストラ、マジ好みげへへ』
「……………………………………」
ニコッと笑う鏡花。
どこから録画してたの……?
小ネタ
やっと正確な日付が解りそうなイベントきたな。
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